Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷の鬼ごろし(2)

2005/02/17 09:24:13
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「…もし…、…もし…!」

「…んぁ…?」

鬼がのたぁっと目を覚ましてみると、先ほどの少女が彼女の上に屈み込んでいた。心配そうな表情をしている。

「あの…なんだかお辛そうに見えますけど…大丈夫ですか?」

「んん?」

言われて、彼女は泥のような頭の中をフル回転させてみた。…ああ、確かに、力尽きて前のめりに倒れて寝てる姿勢は、ひょっとしたら行き倒れか何かのように見えるかも知れない。

「別になんでもな」

ぐぅ~…。

盛大に腹の虫が異議を唱える。萃香は気まずげに頭を掻いた。

「あの…よろしければこれ、いかがですか?神社で頂いたのですが…。」

と、彼女が差し出したのはおいしそうな一山の団子。もう一度、腹が盛大に抗議のデモ行進を行った。我慢不可能だ。もう労働者の不満は抑えられない。我慢する理由も特にないし。

「非常によろしいっ!」


-少女暴食中-


「ふー、ごちそうさまー。」

舌でぺろりと唇の食べかすを拭き取り、萃香は笑った。ようやく人心地…じゃなかった、鬼心地がついたと言うものだ。これで、どこかに転がり込むまでは十分に腹がもつ。団子をくれた恩人は、そんな彼女を嬉しそうに見ている。ただ、ちょっと悲しそうにも見えるような気もする。団子を一つも残さなかったのはさすがに悪かっただろうか?

「それじゃあ…私、これで失礼しますね。お使いの途中ですから。」

立ち上がりかける姿をようやくじっと観察しながら、萃香は彼女を呼び止めた。

「はい?」

振り向く彼女の瞳は、いまだ閉じたままだった…先ほどからずっとこのままだ。多分、目が見えないのだろう。

「…名前。」

手足はおいしそうではあるがちょっとばかり細く、顔色もあまりよくはなかった。こうして見ると、今食べるのはちょっともったいないと思えた。彼女はもっとおいしそうになれるはずなのに。いや、どちらにせよ食べないけど。

「…はい?」

珍しいほど邪気のない顔だった。実際、よくこの幻想郷で生きていられるものだ。

「だから、名前。あんたの名前は何ていうの?教えて欲しいんだ。」

彼女は少し考え込んだ後、慎ましやかに告げた。

「小夜(さや)…と言います。」

「小夜、ね…わかった、覚えとくわ。」

鬼の娘は満足し、にんまりと笑った。そして、彼女が帰って行くのを、その後姿が見えなくなるまで見つめていた。何だか懐かしい気分だった。そう、この構図はちょうど…。



(続く)

やりたいネタや場面だけ思いついて書き始めるんですが、そこまでを文章で繋げるのが難しいんですよねー…というわけで第2話です。なんだか一話ごとが短過ぎるかも知れません…。
どこかで見る程度の能力
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