Coolier - 新生・東方創想話

東方冬幻郷 -Snow dreams-

2005/02/15 00:42:34
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「あ~あ。どこもかしこも雪と氷ばっかりねえ」
 白い少女は不満げにつぶやきながら雪原を飛び回る。どこもかしこも寒くなったらさぞかし楽しいだろうと思っていたが、最初の数万年でもう飽きが来た。そして今や百万年近く寒いため、見るもの聞くものどれもが寒い奴らしか居なくなってしまった。
「あいつが暑いばっかりで暇だ、って言ってたときは贅沢なやつだって思ったのになあ」
 ずいぶんと、あの暑いのも会っていない。今度気候を変えるときは謝ってやることにしよう。
「今度は『変わり目』のやつにがんばってもらうように言おうっと。暇だって言ってたもんね」
 とりあえずは、永く寒い時期を短くしてもらうことから始めよう。いずれは一年ごとにぐるぐる回るようにしてやる。そうすれば生き物ももう少しはやる気を出して、面白おかしくなってくれることだろう。
 少しはにぎやかになった未来を幻想して、少女は自分の時間が終わるのを待つことにした。





















 カランカランと鈴が鳴りドアが開く。
「寒いぜ寒いぜ寒くて死ぬぜ。おーいストーブ、もとい香霖いるかー?」
 少し癖のある金髪に黒いとんがり帽子を被った、どこから見ても魔法使いにしか見えない少女・霧雨魔理沙は駆け込むように香霖堂に入ってきた。
「ずいぶんと客として来たんじゃないことが判りやすいな、魔理沙。もう少し歯に衣着せても罰は当たらないと思うよ」
 概ね客として現れない魔理沙に、香霖堂店主たる森近霖之助は一応忠告してみた。
「なんだ目の前にいるじゃないか、香霖。って香霖ストーブはどうしたんだ、無茶苦茶寒いぞストーブ。何で点けてないんだ香霖ストーブ」
 よほど寒いのか、言っていることがそろそろおかしくなってきている。
「今お茶を入れてやるからちょっと落ち着け。火鉢の方に当たってるといい」
「ストーブを期待してきたんだけどな。うーさぶいさぶい」
 ストーブストーブと連呼する魔理沙に苦笑いしながらも、香霖は茶を入れてやるために奥へと向かった。まあ確かに魔理沙が寒いと悲鳴を上げるのも、解らないでもなかったことだし。


 季節の上ではすでに初夏。なのに幻想郷は数日前から雪に覆われていた。





-東方冬幻郷- Snow dreams





「ったく。梅雨も終わったっていうのに、何でまた雪なんかが降ってやがるんだ?」
「さあね。ただの異常気象か、どこかの妖怪が悪さでもしてるんじゃないか? 前者は僕の領分じゃないし、後者なら魔理沙向きだろう」
 突然の寒波の始まりは霜が降りたことから始まった。そんな事もあるのかと珍しく思っていたら今度は雪だ。まさかこれが平常気象ということはないだろう。
「それよりもまずはストーブ点けてくれ、香霖。あれならすぐ暖まるだろう?」
 熱い茶の入った湯飲みを大事そうに抱えながら、寒さに身を縮めた魔理沙が要求する。外から流れてきたというあのストーブは、燃料さえあればお手軽に部屋が暖まる優れものだ。
「それがね、魔理沙。実は燃料がない」
「あー? 燃料なら紫のやつが、幾らでもくれるんじゃなかったのか?」
 いつぞや燃料が無くなったときに境界に棲む怪・八雲紫は、それくらいなら幾らでも持ってると豪語していたはずなのだが。
「確かにあれからは燃料が無くなる度に、いつの間にか現れて補充してくれていたんだけどね。…まあそのたびに、何かしら持って行かれるんだけどさ」
 外から来た暖を取る道具を使うには、やはり外から来た燃料が要る。供給が不安定な燃料を安定して供給してくれる紫はありがたかったが、そのお代とばかりに外からの漂流物を好きに持っていってしまう。
 まあ何も払わないことの多い魔理沙や霊夢に比べればましと言えばましかも知れなかったが、さすがは妖怪である。しかしそう考えると魔理沙達は妖怪より妖怪っぽいのか、などと霖之助は嫌な結論に至ってしまった。
「先日、紫の使いの式が来てね。実は彼女は寒くて、冬眠してしまったんだそうだ」
「なにぃ! んじゃあストーブは点かないのか、香霖!?」
「残念ながらね」
 まるでこの世の絶望をすべて詰め込んだかのような顔で、魔理沙は頭を抱える。
「なんてこった。寒い中、香霖堂まで来たっていうのにストーブが点かないとは。客に対するサービスがなってないぜ」
「ストーブ目当てに来たんなら客じゃないだろう。それにそんなに寒いのがつらいなら、自分で解決してみたらいいじゃないか?」
 やっかいごとに首を突っ込むのは、魔理沙にとって趣味の一つみたいなものだと霖之助は思っている。霖之助としてはこれだけ妙な事態になったのだから、とうに動いているとばかり思っていたのだが。
「それも考えたんだけどな。ただの異常気象だったら、何とかする用意が整う前に大概異常じゃなくなる。かといって自分で妖怪退治して解決するのも寒くてなあ…。やっかいごと引き受け係が、解決してくれることを期待してるんだけどな」
 やっかいごと引き受け係とは、まあ霊夢のことだろう。普段はさほどアクティブなタイプでもないが、やっかいごとには割と首を突っ込むことが多い。
 カランカラン。
「こんにちは霖之助さん、ストーブは息災かしら?」
「やあ霊夢、って君もストーブ目当てか」
 噂をすれば影か本日二人目の来訪者は、おめでたい紅白二色の巫女・博麗霊夢だった。あくまで来訪者であって客ではない、おそらく。
「よう、霊夢。ストーブなら紫と一緒に冬眠中だぜ」
「あれ、居たの魔理沙」
「目の前にな。そんな事より、この寒さを根本的にどうにかする気はないのか? 寒くて今にも冬眠しそうだぜ」
 他力本願にも魔理沙は霊夢に、この事態をとっとと解決するよう提案した。よほど動きたくないらしい。
「あんたも紫みたいに冬眠するの? まあ寒いけど、じき終わるんじゃない?」
「あー? なんだ今回はやる気無しか。じきじゃなく、すぐにでも寒さを何とかしたいんでな」
 そう言いながら魔理沙は壁に立てかけていた箒を掴み、出入り口の方に向かった。
「行くのかい、魔理沙?」
「あんまり騒ぎを大きくしないでよ?」
 声をかける二人に魔理沙はにやりと笑ってみせる。
「あんまりにも寒いからな、しょうがないぜ。まあこの私の行くところ、騒ぎが起きない道理はない。どこに行ってもな」
 ドアを開けて箒にまたがると、魔理沙は爆音とともに遙か遠くに飛び去った。



「ハァ!」
 斬。
 小柄な半人半霊の少女が放った二百由旬を凪ぐ一閃は、広大な白玉楼の庭を切り開く。白玉楼の庭に積もった雪は、魂魄妖夢の一振りでもって聖者の行脚の如く切り裂かれた。
 幻想郷を襲う異常気象は、どうやら死者の住まう冥界にまで波及しているようだ。妖夢もここ数日は庭木の手入れに加えて、雪かきが日課に加わっていた。真冬の如く降るわけではないのでさほど手間がかからないが、もとより色々雑務の多い身としてはなかなかにつらい。
「妖夢~。妖~夢~」
 加えてこのように主人に呼ばれると、余計な仕事が増えるのが常である。付随して要らない心労が加わることも多い。とはいえ不満はあっても、敬愛する主人の呼びかけに答えない妖夢ではなかった。
「お呼びですか、幽々子さま」
 刹那の間に距離を詰め、主たる桃色の髪の亡霊少女・西行寺幽々子の前に妖夢は控える。「お願いがあるんだけど」
 妖夢の苦労の大半は概ね、このような幽々子の言葉から始まる。春を集めろと言われたり、団子が足りないと言われたり、夜通しで宴会をすると言われたり。
 表面はなんでもないように取り繕いながらも、一体何をやらされるのかと妖夢は戦々恐々としていた。まあ本人は取り繕っているつもりなのだろうが、それを含めて丸判りになる程度の取り繕いようだったが。
「ちょっとこの冬を終わらせてきて」
「はい。かしこまりました、幽々子様。見事この冬を終わらせて見せましょう」
 そう言っては見たものの多分それはちょっとで済まないんじゃないか、と思いつつ妖夢は主の命に従い現界へと向かった。


「今回、幽々子は何もしないのかしら?」
「妖夢に動くように言ったわよ。それに冬を退かせるなら、半分でも生きている者の方がいいわ。そうじゃない、紫?」
 事象の隙間から顔を出して、いつの間にやら白玉楼に現れたのは大妖・八雲紫だった。
「冬は死の季節。確かに生者の方が向いているかもね、半人前でも」
「ところで紫が冬眠した、って藍が申し訳なさそうに言ってたけど起きてるじゃない」
 つい先日に突然の冬を何とかしようと紫のところに行ってみたのだが、居たのはいつも苦労人な狐と寒さに震える猫ばかりであった。
「冬眠してたわよ、さっきまで」
 悪びれた様子もなく紫はしれっと言い放つ。いつも何かたくらんでいるように見える、と人妖問わず大概の者に言われるだけあってとびきりに胡散臭い。
「も~。紫に何とかしてもらおうと思ってたのに、妖夢に任せることになったじゃない」
「でも解っていたんでしょ、だいたい」
 意味ありげに紫は幽々子を見つめた。いつも何かしら意味ありげな態度を取る紫だったが、幽々子には何となく解るらしい。
「あなたが動かないって言うことは、そうなんでしょうね。ここには、たいしたことは起きない」
 確認するように幽々子は紫に言った。
「そうね、私が気にするようなことは何も起きないわ」
 紫もまた幽々子の言葉を認めた。紫の言葉に、幽々子は意志を込めた視線を返した。
「でも私は、外にあるこの国も結構好きなのよ、あまり覚えていないけどね」
「だったら妖夢が吉報を持ってくるのを待っていようじゃない、一杯やりながらね?」
 紫の言葉に幽々子は少し表情をゆるめると、
「でも妖夢はちょっと頼りないのよね~」
 と笑いながら言った。
「あらあら、ひどいご主人様ねえ。でも暇人がもう一人くらい動いてるわよ、きっと」
「それなら妖夢と併せて1.5生者になるわ。それなら妖夢でも何とかなりそうね~」
 二人はくすくすと笑いあって、信用されていない不幸な庭師の帰りを待つことにした。せっかく妖夢が居ないのだから、二人は気兼ねせずに秘蔵の酒でも飲む事にした。



「さーて飛び出しては見たものの、特に心当たりはないんだよな。何となく当たりは付けているんだが」
 このような寒いことをやらかすやつにはだいたい二人ほど心当たりがあったが、どちらもこんな大事をやらかすには不似合な上に片方は現在留守のはずだ。
 留守ではない方がよく居る湖に行ってみたが、その他の氷精一匹すら見あたらない。しかし、これは十分異常といえるだろう。普段山ほど居る氷の妖精が、この寒いのに一人としていないのだから。
「まあせっかくここまで来たんだ。聞き込み捜査でもしておくかね」
 今回は霧で隠されているわけでもなし、氷精達の遊び相手になる必要もないから目的地はすぐ見つかるだろう。辺りの魔力を軽く探ると、魔理沙は悪魔の棲む館があると思われる方へと向かった。


 湖に浮かぶ島にそびえ立つ紅い悪魔の住まう館・紅魔館。その門番たる華人小娘・紅美鈴は寒さに震えていた。
「うーあー、さーむーいー。咲夜さんもこんな時くらい休みにしてくれたっていいのにー。そりゃあ妖怪が寒さごときでどうにかなったりしないけどさあ…」
 すまして立っていれば美麗な顔立ちと長く美しい赤髪に、性別問わず感嘆のため息を漏らすことだろうが概ねそのような態度でいることはない。今も気を廻らせているおかげで寒さ自体は何ともないのだが、この寒空の下ろくに来ない侵入者を警戒しているのは精神的にうすら寒い。
「うー。なんでこんな寒さくらいどうって事無い、って言っちゃったんだろー。寒くて無理、って嘘でも言っておけば良かったなあ」
 ごまかした先を想像してみると、『そう、がんばって耐えてね』、とにっこり笑って言い放つ瀟洒なメイド長の姿が幻視された。だめっぽい。
「うわー。よく私こんな職場環境で働いてるなあ。待遇改善求ム! って言ってみようかなあ」
 直接言う気は全くなかったが。理由はナイフが刺さると痛いからである。
 とはいえ他人からはわりと不幸が似合う、と称される今日この頃だったが言うほど職場に不満はない。妖怪の長い生、大敵は生存ではなく退屈なのだ。適度な刺激があるのがよい。
「お~い。中国~」
「中国言うな!」
 適度と過度の境界線上にいる黒白の爆発物が、ろくでもない仇名で呼びかけてきた。いかにも中華風の服装と実際中華系の妖怪であることから、的確な呼び名ではあったが本人にはいたく不満な呼び名である。
「まあ分かりやすくていいじゃないか。おまえ以外に中華系のやつは少ないしな、この界隈」
「良くないッ! 喧嘩売ってるなら買うわよ、3割引で!」
 にやにやしながら箒に乗ってゆっくり降りてくる二番目にろくでもない災害に、美鈴は鼻息を荒くして抗議する。ちなみに一番ろくでもない災害は、主の妹君が暴れるときである。
「まあ今日は喧嘩を売りに来たわけでも、トレジャーハントに来たわけでもない。ちょっと聞き込み捜査に来たのだ」
「紅魔館は聖杯が眠る古代遺跡じゃないっての。いい加減に本返さないと、リトルが泣いてパチュリー様が火を噴くわよ?」
「それは後ろ向きに考慮するぜ」
 いつまで経っても空白のままの本棚に泣きはらす小悪魔と、喘息をものともせずに冷たい怒りをまき散らす魔女の姿が幻視された。まあ本は戻ってこないんだろうな、とは思いつつ美鈴は続きを促してやることにした。
「んで聞き込み捜査ってのは何よ」
「実はだな、氷精達がどこに消えたのかを聞きたくてここに来たんだ」
 確かに氷精達は異常気象と前後して、この湖から消えていた。美鈴は直接見ていたわけではないが、気の流れを見てだいたいは移動先も把握もしていた。
「だいたい判るけど。やっぱりこの変な冬を何とかしに行くわけ?」
「寒いのは苦手でな。そう言えばメイド長とお嬢様は動いてないのか?」
 やっかいごとに首を突っ込むのは、咲夜はともかくレミリアは結構好きなはずなのだが。
「曇りが多いからレミリア様はわりと気に入ってるみたいよ、この状況。ただ他人の思惑に動かされるのが嫌らしくて、ジレンマに悩んでたけど」
「あー、んじゃあ中立ってところか。まあ邪魔はされずに済みそうだな。んじゃあ悪いが引っ越し先を教えてくれ、今度飯でも食わせてやるからさ」
 イメージに反して魔理沙の料理は絶品であったので、なかなか魅力的な交換条件だ。
「それはいいけど、この寒さ妙なのよね。いや、なぜか妙じゃないのが妙なんだけど」
 自分でも何を言っているか解らなくなってきたが、美鈴固有の感覚なのでいまいち伝えづらい。
「何となく解らんでもないが。霊夢もやる気無しだったしなあ」
 美鈴に氷精達の居場所を聞いて、魔理沙はその位置を頭にインプットする。
「あんたがどうにかなるとは思わないけど、一応気を付けなさいよ? フランドール様の遊び相手が減ると、私に回ってくる災難が増えるんだから」
「その災難は私も減らす方向で行きたいもんだな」
 軽く冗談を言い合って二人は笑った。
「じゃあちょっくら勇者をやってくるぜ。じゃあな、中国!」
「中国じゃなーーーーーーーーーーーい!」
 箒に乗って飛び去る魔理沙に、美鈴は絶叫をあげて抗議した。



「餓鬼道に堕ちたるが如く喰らい付け!」
 妖夢の一閃とともに生み出された妖弾の嵐は、雲霞の如く妖夢を取り囲む氷精の群れに襲いかかる。かなりの数を巻き込んではいるが、この妖術に耐えてまだ襲いかかってくるものも少なくなかった。
 通常、妖精の類は大した力を持ってはいない。その妖精がまとめ役ですらない、いわゆる雑魚とされる程度の者でさえ妖夢の妖術に耐えるものが居る。これは全くもって異常としか言いようがない。
 現界へ来てからというもの徹底的に怪しそうな者を斬って斬って、ついに本当に怪しそうな辺りまで来たのはいいがあまり状況は芳しくはない。ちなみにこのようなやり口を、概ね人は辻斬りという。
「もう少し戦略を考えて動くべきだったわね」
 今更気にしてみても仕方がない。どうせ考えるよりも先に体が動くタイプなんだし、斬れば判るからいいじゃない、と半分開き直ってもいた。
「ここから先は通行禁止ですよ、妖夢さん」
 そう言って姿を現したのは緑の髪の大妖精。
「確かあの騒がしい氷精と一緒にいた人ね。トリルとか云ったかしら。怪しいから、斬る」
 特に親しいわけでもなかったが、宴会の席などで見かけたことはあるし少し話したこともある。確かやんちゃなあの氷精の保護者のように振る舞っていたはずだ。
「いきなりですね、辻斬り幽霊さん」
 まるで客をもてなすように微笑みを絶やさないトリルだったが、この状況下ではむしろ一種異様な雰囲気を醸し出していた。
「やはり怪しいな。あと辻斬りではなくて捜査よ。それに私は半分は生きてるわ」
「ではここで捜査は打ち切り。事件は迷宮入りですね」
 そう言うとともに、トリルから莫大な妖気が溢れ出す。その他の妖精から予想はついていたが、明らかにあり得ない力を発している。
 宴会などで見かける人妖の中で真の力を隠していると思われる者は少なくなかったが、この大妖精はそのリストに入っては居なかった。その感覚は幽々子や紫のような規格外の者に対しても、正しく機能している。己の未熟さによる見落としとは考えにくい。
「そうは行かないわ。黒幕の判明で捜査は急展開だ。すべて斬れば判る!」
 この大妖精やその他の妖精に力を与えた黒幕は、間違いなく存在する。
「妖怪が鍛えた楼観剣に、斬れぬものなどほとんど無い!」
 宣言とともに神速の踏み込みが、大妖精との間にあった間合いを零にする。魂魄の剣の一撃は常に必殺を期して放たれる。
 しかしその一刀は、大妖精の手に生じた数本の氷のくないによって防がれていた。
 現状は一対多数。足を止めれば集中砲火を受ける。初手の不発を悟り妖夢が飛び退くと同時に、大妖精の口から人にも霊にも聞き取れない声が上がる。
「---------!」
 声に反応し無数の氷精達が、妖夢を仕留めんと冷たい砲火を放つ。ある一団は妖夢を直接狙い、またある一団はその逃げ道をふさぐように弾幕を張る。本来その統制された冷たい殺意の群れは奔放な妖精達にはまるで似合わなかったが、氷で出来た刃の如く殺気立つ今の氷精達には似合いすぎるほど似合っていた。
 この濃密な弾幕の中、大きく避ける余裕は妖夢にはない。しかし妖夢は掠める氷刃の群れに臆することなく、霊気妖気をよじりあわせて反撃の機を待つ。
 そして弾幕に現れる一瞬の隙間。
「我が一閃よ、六道を廻れ!」
 八芒星を画く二刀の剣閃が六界を廻り増幅され、おびただしい弾の群れとなって放たれる。当たるを幸いに繰り出された圧倒的な弾の雨は、十重二十重に取り囲んでいた氷精達の大半を地にたたき落とした。
「最早残りは少ない。おまえを斬って、誰が黒幕かはっきりさせる!」
 今度こそ防ぎ得ない一撃で大妖精をたたき落とそうと、妖夢は気勢を上げる。
「残り少ないって何がですか?」
 トリルがくすりと笑って腕を振り上げると、まるで先ほどの一撃が嘘であったかのように何もない空間から無数の氷精達が現れる。
「なっ!?」
 幻想郷の一体どこに、これほどの氷精が居たというのだろうか。しかし一人一人が木っ端妖怪程度はものともしないほどの妖気を放つ氷精達が、目の前に溢れる現実は揺るがない。
「残念。やっぱり事件は迷宮入りですね」
「そいつはどうかな?」
 突然上から降って湧いた声に、二人は上を見上げる。
「私の魔砲は月をも射抜くぜ?」
 スペルカードによって極小に短縮された詠唱が、地に無数の魔法陣をバラ撒く。天より降り注ぐは星々の光をまとう弾丸。地上より放たれるは月をも穿つ魔砲。普通の魔法使いが放った一撃は、今度こそ氷精の群れをなぎ払った。
「騎兵隊だぜ、追いつめられ役」
 妖怪退治の後にはぺんぺん草すら残さない、と豪語する魔法使いはぬけぬけと言い放った。
「ま、魔理沙!? って追いつめられ役って何!」
 失礼な発言を追求する妖夢に、魔理沙はにやりと笑う。
「いやいや。ヒーローの活躍には、お前さんみたいな端役Aが不可欠って言ってるのさ」
「~~~~~~~!!!!」
 助けられたのは事実なのであまり強くも言えず、妖夢は顔を真っ赤にして沈黙してしまった。
「あー、トリルのやつはやっぱ逃げたか。氷精達も実体化が解けてるしな、予想通り自力は大したことが無いっと」
「あ、あれ? 本当にいない」
 いつの間にやら無数に倒れていた氷精も、彼女らを統括していた大妖精も姿が見えなかった。
「やはりあいつの空間転移はなかなか効率がいいな。妖精界か何かを経由してるんだろうが、そのうち研究してみるか」
 魔理沙はなにやら頷きながら辺りを見て回る。
「…とりあえず助けられた礼は言わせてもらう」
 色々納得行かないところはあったが、妖夢は一応魔理沙に礼を言った。
「ああ、気にするな。ピンチになるのを待ってただけだ」
 一瞬キョトンとしたあと、妖夢は怒りに肩を震わせた。
「あーんーたーはー!!」
「まあそう怒るなよ。見物していて色々予想がついた。あいつらが何をやってるのかもな」
 そう言って魔理沙は呪文を詠唱し、最後の締めと指を鳴らす。すると氷精達が倒れていた辺りから、何かが魔理沙の手に向かって萃まる。
「ん? それは…」
「萃香の力をちょっとパクってみた。まあ本家みたいな出鱈目な使い方は出来んが。あいつ霊夢かアリスのところによく出入りしてるからな、研究しやすいんだよ」
「あなたまた人の術を…」
 魔理沙のあまりの手癖(?)の悪さに、妖夢は呆れた声を上げた。
「安心しろって。ちゃんとお前さんの術も、いくつかすでにパクってる」
「へー、ってパクって欲しいんじゃないってば!」
 抗議を無視して魔理沙は続ける。
「今回の小道具はこれだな。お前も見覚えがあるんじゃないか?」
 そう言って妖夢に見せたのは先ほど萃まってきたもの。それは青々しい木の葉だった。
「これは? …! 季節の断片!?」
「それもおそらくは夏だな、今の季節柄。幻想郷の夏を徹底して奪っていけば、いずれ冬にもなるってモンだ」
 いつぞや妖夢が集めた春の分でも、春が冬に戻った程度。今回は夏が冬に逆戻りだ。
「今回動いてるのは氷精で、立ち戻った季節は冬。氷精だけでこんな事が出来るならとっくになにか起きてるだろうしな、バックが付いてると見て間違いない」
 氷精を従えうる存在で季節に関わっていそうなもの、となると答えは決まっている。
「…レティ・ホワイトロック」
 妖夢は噛み締めるように、冬になるとどこからともなく現れる妖怪の名を口にした。
「あいつにはお前も会ったことがあるよな? それで妖夢、お前の心証ってやつを聞かせて欲しい。あいつはクロか?」
 妖夢は考え込む。あの騒がしい氷精と漫才のようなやりとりをしていた取るに足らない妖怪、それがあの西行妖を巡った一件のおりの第一印象だ。しかし時折感じたあの違和感。まるで中身を入れていない巨大な器のような気配。
 そして普通に訪れた冬に会ったときはごく普通の妖怪に感じられた、普段は。だが妖夢の感覚は時に、まるで巨大なものの一部だけが目の前にあるかのように感じていた。
「…クロよ、多分。彼女は冬のおまけなんかではないわ。でも私の感覚でいいの?」
「武術家の感だとか閃きみたいなものを、私は結構買ってるんだ。私にはない感覚だからな。それに私の予想とほぼ合致するしな」
 魔理沙は箒を掴んで妖夢を手招きする。
「移動するなら箒に乗った方が楽だぜ。美鈴の気孔地図によると目的地は近い」
 魔理沙は頭をこつこつ叩いて、脳裏に刻んだ位置を確認する。
「二人乗りしても大丈夫なの?」
「なーに、二人で乗っても音速くらいなら軽いぜ?」
「それはやめて…」
 飛行すること数分、明らかな異常地帯が見えた。幻想の力に頼る必要もない、明らかに温度が違うのが判る。
 陽炎が揺らめく場所。そこは幻想郷中の夏を集めたかのように夏の最中だった。



 そこはまるでプライベートビーチ。白い砂浜に緩く押し寄せる波。さんさんと降り注ぐ太陽。そこには水着の少女が一人、寝そべって夏を満喫していた。
「んー、トロピカルトロピカル♪」
「トロピカル♪ じゃない!」
 バオッ。
 突然無体な突っ込みを後頭部に激しく受け、少女は啜っていたフルーツジュースを盛大に吹き出した。
「ちょっと! いきなり何するのよ! ってあんたはボケ亡霊の部下A!」
 ずきずき痛む後頭部を押さえて抗議の声を上げるのは、蛍の妖怪リグル・ナイトバグ。いきなり後頭部をどやしつけられたら怒るのは当然である。
「幽々子様に失敬なことを言うな、このGめ!」
 突っ込みに使った鞘に入れたままの白楼剣を振り上げて、妖夢は怒りをあらわにした。端から見るとまるで逆ギレである。
「Gじゃないって言ってるでしょ! 夏の風物詩、蛍様だっての!」
「そんな事はどうでもいい! せっかく高まった雰囲気をどうしてくれるんだ!」
 もはや難癖に近い言いぐさだったが、これから最終決戦というつもりで来た妖夢には気が抜けること甚だしかった。
「おいおい、妖夢。それは夜明けのテンションだぜ…」
 さすがに魔理沙も箒の上から呆れたように突っ込みを入れる。
「げ、魔理沙まで! いいや、ちょうどいいわ。いつぞやの借り、まとめて返してやる!」
 戦闘態勢に入ったということか、リグルは服を水着から普段の服装に変換する。
「いつぞやみたいなおかしな夜じゃなけりゃ、あんた達なんかに引けを取るもんか!」
 リグルが召還した蛍の使い魔は、踊るようにして彼女の周りを飛び回る。
「さっさと斬りつぶして進ませてもらう!」
 妖夢は二刀を構えると気勢を上げ、必倒の一撃を放たんと身をたわめる。
「やれやれ、テンションの高い連中だぜ」
 魔理沙は大げさに肩をすくめて嘆息する。
 リグルは意外にも妖夢相手にがんばっているようである。しばらく生暖かく見守ってやるのも良いだろう、と魔理沙はギャラリーに徹することにした。


「ハァハァ。なかなかやるな…」
「そっちこそなかなかやるじゃない…」
 いつの間にやらお互いの健闘を称え合っているようだ。美しきかな友情。
「あー。もう終わったか?」
 いつの間にやら敷物に横になって夏を満喫していた魔理沙は、適当な調子で二人に声をかけた。
「「魔理沙!」」
 真剣勝負をしていた横で魔理沙がごろごろしていたことに気づいて、二人は同時に怒声を上げた。
「…あーもういいわよ。レティのところ行くんでしょ。結界解くからとっとと行きなさいよ…」
「やっぱり彼女の仕業か。ところでリグルは何でこの件に協力していたんだ?」
 氷精以外で敵として現れたのは、リグルが初めてである。妖夢が抱いた疑問ももっともな話だ。
「協力したら余った夏をくれるっていうからね。私って冬とかあんまりアクティブに動けないからさ、渡りに船ってわけなのよ」
「なるほどな」
 リグルは懐を探ると青い葉を取り出して妖夢に手渡した。
「はいこれ、私がもらった夏。結界解くからちょっと下がってね」
 リグルの体が強い光を放ち始める。その光はまるで鼓動をするように明滅すると、空の色地面を塗り替えていく。南の島を再現したかのような砂浜は嘘のように消え失せ、一面の雪原が置き換わるようにして姿を現した。
 その中心にはまるで英雄譚にでも現れるような、凍り付いた城がそびえ立っていた。
「おいおいおい。これじゃあ本当に私が勇者やらなきゃいけないぜ」
「狙って作ったのか、これは…」
「それじゃ、寒いから私はここで。うーさぶさぶ」
 まるで本物の魔王が潜んでいそうな城は、門を開け放ち侵入者を待つかのようだ。
「この先に待ってるのがチルノだのレティだと思うと、どうにも締まらないな。なんかどんでん返しとか無いのか?」
「いくら何でもここまで来て別人が出ることはないでしょ…。それに氷精達の尋常じゃない妖気を考えれば油断は禁物だ。」
「…まあ確かにな。せいぜい魔王退治と洒落込むとするか」
 軽口を叩きながらも、二人は氷の城の中へと入っていった。


 城の中は完全に氷で覆われていたが、その氷は全く溶ける様子が無く足も滑らない。そしてあれほど大量の氷精をトリルが従えていたというのに、城の中には氷精が居る気配もなかった。
「おかしいぜ。あれほど氷精が居たのに、ここには一人も出ないなんてな」
「外に居た分で使い切ったんじゃないの?」
 魔理沙は妖夢の言に首を振った。
「いんや。あれの大半はレティの使い魔で、幻想郷産のものはほとんど居なかった」
「そこまで判るの?」
 今度は魔理沙は首を縦に振る。
「レティの使い魔ってのは私の予想だけどな。あの氷精のほとんどは幻想郷のやつとは違う波長を持っていた。氷精研究家の私がいうんだから間違いないよ」
 始終いい加減な肩書きを増やすのが好きな魔理沙ではあったが、この言に関してはまじめな顔をして言っている。実際、それなりに研究しているのかも知れない。
「おそらくは生み出すつもりなら、いくらでも召還してくるだろうさ。ただあいつらが呼び出された目的は、もちろん戦闘の為じゃあない。夏を集めるためだ。それが現れないって事は、どこかで集めているか… もう集めきったかだ」
「って、それじゃゆっくりしてる暇無いでしょ!」
 魔理沙の言葉にさすがに妖夢は焦りを覚えた。こうしている間にも、この冬はもう手遅れになるかも知れないのだ。
「急ぐ必要なんか無いわよ。あんた達はここで、ゲームオーバーなんだから」
 凍えた城内に幼い声が響き渡る。いつもの必死な様子とはまるで違う、決意を込めた表情で氷の妖精・チルノは二人の前に立ち塞がっていた。
「お前さんがラスボス前とはな。時代も変わったもんだぜ」
 魔理沙はやれやれと大げさに肩をすくめた。
「ラスボスもなにもないよ。あんた達はここで冷凍保存、レティのところには行かせない!」
 チルノの気勢とともに、身を切るような凍えた妖気が辺りを覆う。これほどの妖気を持った妖怪は幻想郷にもそうは居ない。
「魔理沙、油断するな! この妖気尋常じゃない…」
「私も驚きだぜ。ほとんどなんでもありだな、これは」
 そしてさらにもう一つの気配が出現する。
「お帰りはこちらですよ、お二方」
 現れたのは大妖精・トリル。
 二人の放つ妖気は魔理沙と妖夢といえども楽に勝てるレベルではない。だがむろんそんな事で引くような二人ではない。
「残るは三人。私たちより二人多いだけよ」
「あー。何だ、そう考えるとなんて事無いぜ」
 妖夢は覚悟を決め、魔理沙はにやりと笑う。
「それじゃあいっちょ派手に行くか! 私の恋の魔砲で、凍ったハートなんざ一撃必殺だぜ!」
 スペルカードの多重による強大な魔力を瞬間起動、脳に刻んだ制御式は気合いとともに瞬時にそれを支配し両手から放出させる。二条のマスタースパークが、同時にチルノとトリルに炸裂する。
「ちょっと! いきなりそれは無いじゃないですか!」
 爆炎から飛び出てきたトリルが少し焦げながら抗議をしつつ、氷のくないの嵐を投げつける。
「そいつを喰らって残ってるやつが言う台詞じゃないぜ」
 くないの隙間を抜けながら、魔理沙は抗議を受け流す。そしてトリルの注意が魔理沙に向いた一瞬、神速の歩法でもって妖夢が斬りかかっていた。
「斬!」
「しまっ…」
 妖夢の一閃がトリルを凪ぐ。限界に達した彼女は、実体化を保てずにこの場から消え去った。
「まずは一人!」
 そう声を上げた瞬間、はじかれたように妖夢が身を引いた。妖夢が居るはずだった空間を冷気の渦が駆け抜けると、通り道にあった空気そのものが凍り付いて砕け散った。
「こんのー! はずれた!」
 地団駄を踏んでチルノが悔しがる。チルノの方もマスタースパークを受けて未だ健在のようだ。やはり焦げていたが。
「…何となくこの二人にマスタースパークを耐えられると、アイデンティティが揺らぐな」
「仕方ないだろう。実際に今の二人は結構な難物よ」
 一人は倒したが、残ったチルノが放った冷気は空気さえも凍らせる威力である。
「トリルのカタキー!」
 チルノが生み出した氷弾の嵐は二人を挟むように迫ってくる。巻き込まれればおそらくいかなる防御も効果をなさないだろう。
 しかし魔理沙は臆することなくその真っ正面から加速した。なぜなら二つの嵐の間はまだがら空きだったからである。頭の上を抜かれたチルノが魔理沙を見上げる。
 その瞬間にはすでに、妖夢がチルノの目前に迫っていた。妖夢は二刀でチルノに斬りつけながら通り過ぎる。
「じゃあな、チルノ」
 魔理沙はそう言って無詠唱で生み出した魔弾を、置きみやげとばかりに降り注がせる。
「やれやれ、連中の頭が緩くて助かったぜ。それじゃあラスボスのところへ向かうか」
「そうでなかったら洒落にならなかったな。それじゃ急ぎましょ」


 ずいぶんと長い道が続く。ただ、別に迷わせる意図はないのかまっすぐな道だったが。
「いい加減、黒幕に登場してもらいたいもんだな」
「くろまく~」
 気の抜けた声とともに現れたのは冬の妖怪・レティホワイトロック。ただし今度は本当に黒幕として。
「緊張感のないやつね」
 またも気勢をそがれたのか妖夢は不満げに言った。
「いいじゃないの、真面目すぎると禿げるわよ?」
「私は禿げたりしない!」
「いやいや、妖夢は気苦労が多いからな。もしかすると禿げるかも知れないぜ」
「…」
 どうやら緊張感がないのは魔理沙も同じらしい。妖夢は二人に調子を合わせるのをやめて、話を進めることにした。
「夏を集めて幻想郷を冬にしようという企みもここまでだ!」
「ああ、それはハズレ。まあ今は冬になっちゃってるけど、幻想郷は今日にでも平常に戻るわよ」
「へ?」
 意外な反応に妖夢の目が点になった。てっきり冬の妖怪がいつまでも居座るために、この騒ぎを起こしていたと思ってたのだ。
「あー。そんな事だろうと思ったぜ。要するに幻想郷の今の状態はとばっちりか」
「魔理沙は解ってたみたいね。これからずっと冬になるのは外の世界よ。むしろ幻想郷の季節はますます色濃くなるはずね」
 妖夢は二人の言っていることがサッパリ解らず混乱している。二人とも斬ったら解るかな、などと辻斬り思考がよぎったほどだ。さすがに実行しなかったが。
「つまりだ。もしも幻想郷の方にちょっかいを出してるんなら、とっくにそういうのに熱心なやつが動いてるはずなんだよ。なのに霊夢はやる気ゼロで、紫に至っては冬眠だぜ。その上妖怪どももサッパリ動いてない」
 二人は、特に紫は幻想郷を守るためならば常になく動く。その二人が沈黙を守っているということは、幻想郷の危機ではないと言うこととほぼ同義なのである。
「それで二人ともどうするの? 別に放っておいても幻想郷は元に戻るわ。外に義理があるわけでも無し、気にせず帰るのも手じゃないかしら」
 黒幕当人が勧めるのも何だったが、事実このまま放っておいても幻想郷に不利益が生じるわけでもない。
「ところで聞いておきたいんだが。外を冬にするらしいが、どれくらい居座る気だ?」
「今回は短めにしようかなって思ってるのよね。だからせいぜい一万年くらいかな」
 …
「いちまんねん?」
 妖夢は目を点にして呆然と呟く。この妖怪はどんなのんびりスケールで生きているのか、と問いつめたい気分だった。
「冬って言うか、それ氷河期だろ」
「そうとも言うらしいわね」
「それじゃあ却下だな」
 魔理沙は脊椎反射でもするように、あっさりレティの提案を取り下げた。
「ふはははは。いかしてかえしてやろうというのにおろかなにんげんめー。でも何でよ?」
 レティは棒読みで悪役台詞を吐いてみた後、不思議そうに聞き返す。
「まだ私は外の世界を見物してないんでな。氷河期にするのは、私がじっくり見物した後にしてくれ。そうしたら二回楽しめるしな」
「あっはは、ひどい勇者様も居たものねえ。妖夢はどうかしら? 私の名にかけて、幻想郷の冬は今日で終わり。別に奪い返す必要もないわ」
 レティは魔理沙の意見にひとしきり笑った後、今度は妖夢に話を向けた。
「…確かに季節は元に戻るのだろうけど。幽々子様は私に冬を終わらせろ、とおっしゃったわ。冬が過ぎるのを待て、と言われたのではない」
「お堅い意見だけど多分正解よ。あの人も外なんて今更気にする事無いのにねえ」
 レティは肩をすくめながらも静かに微笑んだ。
「邪魔することには決めたけど、お前の目的は何なの? 外を長い冬にしてなんの得がある?」
 妖夢は浮かんだ疑問をレティにぶつけた。冬にしか居られないと言っても、幻想郷で過ぎた冬は、おそらく外のどこかに移っているはずである。あえて氷河期にするほどの意味は感じられなかった。
「得って言われてもねえ。お仕事って言うかなんて言うか。強いて言うなら、そろそろ氷河期の季節となりましたがいかがお過ごしでしょうか、ってところかしら」
「ふむ。冬としての仕事って事か。やっぱり本当に冬の妖怪なんだな」
 納得したように魔理沙が頷く。 
「さっぱり解らないんだけど…」
「つまりこいつは冬なんだよ。誤解を生むが、あえて言うなら冬を司る妖怪だな」
「なるほど。…ってすごい大物じゃない!」
「気にしないでいいのよ、大物かどうかなんて。どうせ相手が何だって、ここでやることが変わるわけでもなし」
 レティは底の見えない妖気を顕わにし始めたが、そこに気負った様子はまるで無い。
「まあそういうことだな。やるのは弾の遊びだ。お前相手なら雪合戦か?」
 にやりと笑いながら魔理沙も戦闘態勢に入る。
「雪合戦じゃ私が有利すぎるわ。あなたはいつも通り、殺人怪光線でも吐いてればいいの」
「ならば私は冬を斬ればいいと言うことだな」
「そうそう。あなたはいつも通り、辻斬りしてれば万事解決よ」
「辻斬りではないわ。斬れば解るのよ」
 妖夢は二刀を抜き放ち、泰然と構えを取る。
「ではお二人さん。長い冬の幻想、しばしご堪能下さいな」
 レティの妖気が世界を浸食、いや別の世界をねじり込む。凍り付いた城もかつてあった景色も失せ、空は永遠の鈍色、大地は永久の凍土と化し、止むことのない永劫の吹雪が舞う。
「ここがラストステージ、アイスエイジ。お寒い時代のホットな弾幕を召し上がれ」
 レティがなでるように腕を振ると、遙か上空に小さな氷塊がいくつも生じる。
「おいおい、あんな小さいのじゃいくら降らせ…て…も…」
 馬鹿にしようとした魔理沙の台詞が、だんだんと尻つぼみになる。
 遠近法を採用した小さな氷塊は、距離が縮まるほどにみるみる大きくなっていく。轟音とともに落下してきたのは家ほどもある氷の山。それが驟雨の如く降り注ぐ。
「うわっと! てい!」
 避けきれないものを寸断しながら、妖夢は避けに徹して機会を待った。
「おっと、こら。これ、は、弾が、っとでかすぎだろ!」
 魔理沙は魔弾で氷塊を破壊しつつもレティを狙っていたが、避ける隙間が少なくなかなか攻撃に集中出来ない。
「あら? それじゃあ小さい弾もどうぞ」
 ご要望にお応えしてとばかりに、レティは氷刃の群れも追加してやる。
「「頼んでない!」」
 馬鹿みたいに大きい癖に密度の濃い氷塊の雨に、氷の刃まで追加されてはいよいよつらくなってくる。
「魔理沙! 余計な事言わないでよ! ますますきつくなったでしょ!」
「私のせいなのか? まあ道を開けてやるから、その棒っきれをたたき込んでくれ」
「どうするの? あと棒っきれじゃないぞ、試してみるか」
「それは勘弁だぜ。どうするもこうするも、私のやり口は決まっているだろう? 恋の魔砲でぶち抜いてやるんだ、よっ!!!」
 スペルカードが解放され、魔力の渦が突き進む。マスタースパークは降り注ぐ氷塊と、まき散らされる氷陣を蹴散らしながら、レティを目指して突き進む。
 妖夢はさらにその後を追って、氷塊を切り裂きながら神速で間合いを詰める。業風をまとった妖夢の身は、氷刃程度では傷つきもしない。そして爆裂する魔砲の閃光に乗じて叩き付けるべく、妖夢は二刀を引く。
 しかしその瞬間妖夢の眼が捉えたのは、雪の結晶のごとき防御陣でもって完全に魔砲を遮断しているレティの姿だった。
「冬の寒さは恋の破局。冬の荒波を越えるにはこれじゃあ足りないわよ?」
 格好の的となった妖夢に、レティは氷の散弾を放つ。妖夢は高密度の高速弾幕を双剣でかろうじて弾きながら、何とか距離を取る。
「レティまで来てついに完全に防がれたか。まあ恋は障害があった方が燃えるもんだぜ」
「何か手があるの?」
「出力を上げればいいぜ」
 あまりにも短絡的な返答に妖夢は目眩を覚えた。
「そんな力任せな…」
「何を言う。弾幕はパワーだぜ?」
 魔理沙は自信満々に言い放つ。この自信の源泉があるのなら少し分けて欲しいと妖夢は思った、百倍くらいに薄めてから。
「せっかくビームを見せてくれたんだし、私もビームを返してあげるわ」
 そう言ったレティの目の前に、冷たい気流の渦が生じる。それは氷弾をはき出しながら回転を加速し、中心から激しい閃光を放った。狙いが甘かったのか二人には当たらなかったが、通り過ぎていった方から凄まじい爆音が鳴り響いた。
 あんなものに狙われるのはまずいと考え、二人は高速で動き始める。
「ちょっと何あれ! 冬界隈でビームとか出るの!?」
「ありゃれっきとした自然現象だぜ。高々度放電現象、スプライトとか言ったかな。私も実物は初めて見たが。しかし本当に妖精とか妖怪が出すと、あまり有り難みがないがな」
「あんな物騒なものが、そもそも有り難いわけ無いでしょ!」
「あっれ、外れちゃったわねえ。いっぱい作ったら当たるかな?」
 話はより物騒な方向に向かっているようである。指をくるくる回すような動作をしながら、レティは次々と微少サイズの雷雲を周りに生み出し始めた。
「急いで破壊しましょう、物騒だし」
「確かに善は急げだぜ、物騒だしな」
 ゆるゆると近づきつつ定期的に放たれる物騒な破壊光線を避けながら、二人は冷気の渦を破壊していく。魔理沙は多量の魔法陣と魔弾をバラ撒き、妖夢は剣術妖術を駆使して冷気の渦を攻撃する。
 だがそれでも物騒な怪光線発射装置は数を減らしてくれない。渦が生み出される速度が破壊速度を上回っているのだ。どうやらレティにとってこの小さな雷雲を生み出すのは大した労力でもないらしく、いい加減にしか見えない動作で渦はぐんぐんと数を増やす。一方二人が渦を破壊するにはそれなりの攻撃を打ち込まなければならないため、適当な動作で破壊兵器を量産するレティの動作に追いついていない。
「手数が足りんな」
「手数を増やすわ。我が半身よ、生者の如く具現せよ! 幽明求聞持聡明の法!!」
 印を斬り編んだ妖術が、妖夢の半身を妖夢自身の鏡像が如く転化させる。猛然と攻撃を加える二人の妖夢と魔理沙に、無尽蔵に増えると思われた冷気の渦は数を減らし始める。編み目のように張り巡らされた雷光は、今や穴だらけとなった。
「今ならば行けるな」
 妖夢は半身を戻し、身をたわめて次の一撃にすべてを集中する。今のレティに生半可な攻撃は通用しない。魔理沙ではないが最大威力を叩き付けるのみ。
「春風よ、桜の香りを運べ! 現世を越え遙か冥界は、西行の地までも!」
 春の風をまとう斬撃が、冬を切り裂いて突き進む。切り裂いた冬を春へと塗り替えながら、桜を愛した故人の元まで届かんとする一撃はあらゆる防御を貫いてレティの下へと春を伝える。
 瞬間、広がっていた冬の世界は消え失せ春の陽気が辺りを覆う。
「終わった、か?」
 力を失ったのかレティは消え失せ、辺りを覆っていた冬も最早無い。しかし妖夢の言葉に魔理沙は首を振る。
「いいや、まだだぜ。今の季節はもう初夏だ。なのに辺りは春の空気、おかしいだろ?」
「確かに、む?」
 考え込むまでもなかった。辺りを覆う春の空気が、いつの間にか弾幕を生み出している。
「これは多分、最後は結界を抜けろと言うことだろうな」
「斬って解ったのか?」
「斬って解った」
 妖夢は自信ありげに頷く。
「なら長居は無用だな。後ろに乗れ、一気に抜ける」
「抜けられるの?」
 妖夢の言に、魔理沙はいつも通りにやりと笑う。
「いつも言ってるだろ、弾幕はパワーだって、なっ!!!!!!」
 完全な最大出力、魔砲を全開にして放つファイナルマスタースパーク。恋の魔砲に細かい種類分けなどどうでもいい。どれだけ気合いを入れているのかを示してやればよいのだ。原液のまま放たれた魔砲の天の川は空間を貫き、境界を破壊し、結界の綻びを作った。
「あの穴めがけてひとっ飛びだ。しっかり捕まれよ」
 妖夢を後ろに乗せ、魔理沙は魔法の箒のリミッターを片っ端から解除する。
「行くぜ! ブレイジングスター!!!!!!!!!!」
 加速を省略して一気にトップスピードに乗せる。強固な防御結界が空気との衝突を防がなければ、生身の体など消し飛ぶほどのスピードだ。さすがの妖夢も掴まっているだけで手一杯になる。
 春の空気が生み出した弾幕の隙間を、完全に慣性を無視した動きで彗星は駆け抜ける。
 春の空気を抜けた先には、むせ返るような夏の熱気が満ちていた。夏の気配は歓迎のつもりであるかのように、そのギラギラした陽光を集めたような光線を降り注がせる。彗星は光に身を削られるようにしながらも、さらに勢いを付けて先へと向かう。
 夏の空気を抜けた先には、赤と黄に染まった葉が舞う秋の空気。ゆらゆらと揺れながら行く手をふさぐ紅葉のごとき弾幕が、いつまでも舞い散り続ける。舞い散る弾の落ち葉を吹き飛ばすように、彗星は結界に開いた穴に飛び込んだ。


「しかし最後のあれは何だったんだ。最後の悪あがきなのに冬は無しだぜ」
 結界から脱出しながら魔理沙は疑問を口にした。冬の妖怪が張った弾幕結界の癖に、冬の気配を欠いた弾の群れ。疑問に思うのも無理もない。
「あれはきっと彼女が見た夢だ。冬の妖怪である彼女が決して至ることのない、季節の幻想」
「それも斬って解ったことか?」
「ええ。未熟な私は、斬らなければ解らないもの」
 そして二人は結界を抜けた。外で待っていたのは既に薄れた冬の気配と、その妖怪レティ・ホワイトロック。
「ゲームクリアよ、お二人さん。永い冬は少し先延ばし。その間に見物でも世界征服でも済ませておいてね」
 言葉を発している間にも、みるみるその存在は希薄になっていく。
「それとついでに礼を言っておくわ。氷河期ってつまんないんだもの」
「おいおい、冬の妖怪がそれでいいのかよ」
 魔理沙が笑いながら突っ込みを入れる。
「それじゃ、チルノ達によろしく言っておいてね」
「もう行くのね」
「ええ。では次の冬にまた会いましょう、この幻想郷でね」
 レティは優雅に礼をすると、余韻も残さず冬の気配とともに消えた。
 幻想郷は冬が来ていたのを忘れたかのように、初夏の空気を取り戻す。降り注ぐ陽光は一点の曇りもなく、幻想郷は冬が夢見た季節に染まっていた。




 博麗神社は宴会の真っ最中だった。特に理由が無くても騒ぎたがる連中が多いこの界隈、突然の冬が過ぎたなどというイベントを逃すはずもない。人間、人妖、妖怪に悪魔、果ては式や鬼まで萃まって神社をぶっ壊せとばかりに大騒ぎしていた。
 ただし本当に建物を破壊すると巫女がマジ切れして暴れ出すため、今のところは皆ぎりぎりで自重していた。いつまで保つか分かったものではないが。
 中国風の妖怪は己の名前を連呼していたり、蛍の妖怪はものすごい勢いで西瓜を食っていたり、亡霊は従者を褒めたり落としたりして遊んでいたりした。
 氷精は相方の大妖精になだめられながら、ふて腐れた様子でちびちびと酒を飲んでいた。
「よう、チルノ。珍しく酒の方に走ってるな。失恋でもしたか?」
 からかうように魔理沙はチルノに話しかける。
「あ、魔理沙さん」
「んなわけあるか、ばかー! あんたが邪魔しなければ、レティもずっと居座れたのに!」
 湯気でも出しそうなほど憤慨して、チルノは両手を振り回して文句を付ける。 その反応に魔理沙は意外そうな顔をした。
「そりゃお前レティに騙されてるぞ。あれが成功しても氷河期になるのは外でこっちじゃないぜ」
 魔理沙の言葉にキョトンとするチルノだったが、次第に意味を理解したのか怒りを爆発させる。
「あんの雪見大福~~~~~~~~~!!! 私まで騙しやがって~! 今度会ったら英吉利牛みたいに冷凍保存してやる!」
「あ、チルノちゃん…。行っちゃった」
 トリルが止める間もなく、チルノは大食い大会をやってる方に向かって突貫していた。
「馬鹿は元気な方がいいぜ。沈んでるチルノなんざ不気味でしょうがない。」
「ふふ。そうかも知れませんね。でもレティさんたら私たちまで騙してたなんて…」
 そうは言うもののトリルに怒っている様子はあまり見受けられなかった。
「まあせっかく季節はずれにここに来れたんだ、お前さん達と騒いでみたかったんだろうさ」
「そうですね、きっと。でも結局、レティさんは冬にしか居られないんですね…」
 トリルはレティのことを想い、少し表情を曇らせた。季節はずれに現れたところでレティが居る以上、結局季節は冬にしかならない。どこまで行っても冬は冬でしかないのだ。
「まあ冬にしか居られないなら、冬にたっぷり歓迎してやればいいさ。さしあたっては騙された恨みの分で、歓迎してやればいいんじゃないか?」
 いかにも悪巧みを持ちかけるような顔でのたまう魔理沙に、思わずトリルも人の悪い笑みを浮かべてしまう。
「そうですね。チルノちゃんと一緒に氷付けにしちゃいましょう。でもレティさんって凍るのかしら?」
「さあな。私も興味があるからな、そのときは是非とも呼んでくれ。何なら協力するぜ、冬の妖怪研究家としてな」
 妙な肩書きを持ってきた魔理沙の顔を見て、トリルは思わず吹き出してしまった。















 幻想郷の夏はまだ始まったばかり。けれど季節はいずれ巡る。次の冬までしばしのお別れ。
 また会いましょう、レティ・ホワイトロック。
 また遊びに来るわ、幻想郷。
 あなたは気付いていない。あなたの脳内では幻想と妄想の境界が曖昧になっていることに。

 こんにちは、初めての人は初めまして、ごきげんよう。
 基本的に萌え成分とかが含まれていないSS書きの人妖の類です。

 この作品は最萌えに何となく投下した、レティの萌えない支援文が妄想源になっています。ガラに合わないポエミィなのも投下したりもしましたが。
 レティメインのつもりですが、ラスボスなので出番はそんなにありません。むしろ魔理沙と妖夢が自機キャラなので出番多いです。
 初作の続編っぽいものも書いたりしていましたが、先に出来たこちらを投下してみました。前作読んで下さった方、ありがとうございます。望外の評価を受けてハァハァしてました。

 ここまで読んで下さった方、ありがとうございました。

追記:エルブスは環状の発光現象の方で、放電現象の方じゃありませんでしたね。すっかりぼけてたです_| ̄|○
 蛇足ですが、レティが気象精霊であるというようなつもりは全くないです。彼女らは異種族ではあっても、怪異ではないと思いますし。でも作中のやりとりは、弾幕ごっこに近いかも知れませんね。
人妖の類
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コメント



0.2390簡易評価
3.100レティの崇拝者削除
待ちかねた・・・・
待ちかねたぞレティ・ホワイトロック!!!!
レティの素晴らしさを顕現した素晴らしき作品でした
次回も期待しております!!!
11.無評価名前が無い程度の能力削除
簡易点数評価30
気になった所
・魔理沙・妖夢の口調に違和感
・妖精の輪の作り方
・レティは結界を抜けられるのか

たぶん気象精霊記だろうと決め付けて
エルブスは水分を過冷却で氷にした時の余りの熱エネルギーを使っているため
氷や雪からじゃ作れない
それ以前に吹雪とか起きてたら乾燥しすぎで水分がほとんどないが
妖精の輪よりパワーアップしたスペカ使ってた方が合っていたと思う
20.90夜空に妖精を幻視る削除
エルブス(妖精の輪)自体は発雷時に地面-雷雲間に放射される
電磁パルスによって大気中の電子が励起され、雷雲の上空(熱圏)の大気が
広範囲(直径数百kmに達する場合もある)にわたりドーナツ状に
発光する現象です。
発生時間は非常に短く、頻繁に発生するにも関わらず観測する事が困難です。
励起するソースが電磁パルスなのか、磁気層で加速された電子の流入なのかの違いだけで、
その現象自体はオーロラに近いものです。

むしろ作中のビームという手段からはエルブス同様、
雷雲上空の発光現象であるスプライトの方がふさわしいかもしれませんね。
こちらは簡単に説明すると落雷で発生する特殊な電場によって
雷雲上空の絶縁が破壊され、電離層から雷雲に向けて文字通り電子ビームと
呼んでも過言ではない電子の流入が起こり、大気が赤く発光します。
また、日本海側の雪の多い地域では雪起こしと呼ばれる非常に強力な冬の雷があります。
こちらはその名の通り雪の前兆とされています。
冬の到来と共に姿を現し、春の訪れと共に姿を消すレティには案外雷も相応しいのかもしれませんね。

上記の点のみ気になりましたが、全体として非常に読みやすく、
キャラの魅力を引き立て、読後感も素晴らしい、高度にまとまった作品であると感じました。
次回作にも期待しております。

>>名前が無い程度の能力様
気象精霊記において説明される方法からして自然界に存在するエルブスとは
似ても似つかない別物です。
22.70nanasi削除
おおー。
格好良いレティは良いものだー。
41.100名前が無い程度の能力削除
解説の人ナイス。スプライトがなにかよく分かった。まあ
北陸に住んでいる身にとって、冬の雷はレティとだいぶ印象違うけど。
それはともかくいい作品だ。十分ゲームにできるレベルだ、
といっても過言ではないかと。