Coolier - 新生・東方創想話

白玉楼の庭で -『破壊者の』恐怖- +

2005/02/01 12:32:24
最終更新
サイズ
21.63KB
ページ数
1
閲覧数
626
評価数
0/30
POINT
1110
Rate
7.32
※これは、白玉楼の庭で -『破壊者』の恐怖- の続編です。一応。

※設定上に以前投稿した「結界と境界の交点」が入ってます(むしろ濃いです)。

※自分自身納得が行かないので修正+別結末書き足し。そっちは鬱かも。

※タイトルの癖にフランドール出番少ないかもです。































-----------------------------

「…え?」

「皆、壊した…だって?
 アリスも、か…!!」

「フラン…まさか…パチェも…?」

「…美鈴や…館の皆は…?」






唖然とする一同。
その中で、一人だけ殺気交じりの妖気を練っている者が居た。


「………今、何て、言った?
 お前が…橙を、壊した…だと?」

「…橙って、化け猫の事でしょ?
 壊したはずだよ。コレ、でね。」

笑いながら、レーヴァテインを解放する。
以前霊夢と魔理沙が戦った時より更に禍々しい紅に彩られた、フランドールの狂気を現す物。



「…貴様、ふざけるなああぁぁァァッッッ!!!!」

藍は長い爪を実体化させ、フランドールに飛び掛る。

「止めろ、藍!落ち着け!!」

…自分で言って何だけど、聞く訳が無いよな、こいつは…。



「遊んでくれるの?
 でも、簡単に壊れないでよね。」

フランドールがレーヴァテインを恐ろしい勢いで振り回す。
熱風が辺りに吹き荒び、流石に藍も近寄れた物では無い。
互いに牽制しながら距離を取り合う。

「くっ…。お前は、お前だけは…!」

「…私が何か悪い事でもしたの?」

「お前が分からなくても良い…。
 死んで貰う!」

藍が符を取り出し、発動する。
「仙狐思念」だ。
弾幕が展開、同時に藍は弾幕に紛れて姿を消す。
フランドールはその弾幕を最小限の動きで回避する。
藍の狙いはそれなのだが。

「あれ?…見失っちゃったかな。」

「…掛かったな。
 この状態では回避も出来ないだろう。
 イリュージョン…だ。」

フランドールの真後ろに藍が現れる。
正面、左右には弾。後ろには藍。
完璧に策に嵌ってしまって居ると言える。
しかし、フランドールは楽しそうに笑うだけだ。

「あはは、簡単に後ろ取られちゃったなぁ。
 面白いわ、あなた。」

「…お前に…お前何かに、橙は!!」
藍が、爪を振り下ろす。





ジュワッ。

…蒸発した。

「……な…。」

「まだ、お姉様にも言ってなかったけど…。
 二本同時に出せるようになったのよね。
 結構、楽しかったよ。じゃあね。」

いつの間にか、フランドールのもう片方の手にはもう一本のレーヴァテインが発生していた。
二つのレーヴァテインを、呆然としている藍に向けて---




爆音が響き、閃光が彼方まで奔る。
閃光が収まった時、そこに藍は…居なかった。

「…冗談、だろ?」

「あれ?また何も無くなっちゃった。
 おかしいなぁ…。」

「……………。」

その場に沈黙だけが残る。
そして、





「ごめんなさい、幽々子。また遅れちゃったわ…。
 って、貴女の家の庭って、こんなに酷い形だったかしら?」



藍の主、紫が現れる。
…こいつは何時も、最悪のタイミングだ。



「…藍は、何所へ行ったの?
 此処に居るはずなのだけれど。」

「……………。」

「藍って、さっきの狐の人の事…かな?
 その人なら、私が壊しちゃったと思うよ。
 何も無くなっちゃったから、良く分からないけど…。」

「…今、何て?もう一度、言ってくれない?」

「さっきから何度も言う羽目になってばかりだなぁ。
 橙って言うらしい猫を私が壊したって言ったら、いきなり襲ってきたから…。
 その人も、私が壊したの。このレーヴァテインでね。」

「それは、殺した。
 そう解釈して良いのかしら。」

「まぁ、そうとも言うのかなぁ。」

「…そう。」

「一言だけで済ますのか…。仮にも、お前に仕えてた奴だぞ?
 …おい、お前…。」




紫が、自らの髪を縛っているリボンを一つずつ外して行く。

(…何故。)

ぱさ…

(…何で、こんな事に。)

「……………!!
 お前、正気か?!また、何もかも壊すつもりなのか?!
 扱えないんだろ…!」

ぱさ…

「…?あぁ、そう言えば貴女は知っていたわね。
 扱えなかったのは昔の話。今までこれを外すつもりは無かったけど。
 藍と橙は私の家族。
 私の家族に手を出した報いを与える権利ぐらい、私にだってあるはずよ。
 ………誰にも、邪魔はさせない。」
(何で、私の下からは全てが無くなって行くの?
 もう、失くしたくない…傷付けたくない…)

ぱさ…

「そんな事の為の物じゃ、無いだろう…!!」

「…なら、何の為?何の為に私はこんな…こんな力を持っているの?」
(何で、こんな事に…!)

「っ………。」

ぱさ…




紫が、最後の一つを外す。次の瞬間、





世界が、紫色に染まった。



いや、正確には何も変わってはいない。
ただ、「見える」者にとっては一目で分かる程の「力」に溢れていた。



「なっ?!」

「これが…同じ妖怪?」

「紫様が、こんな力を…?」

「そんな筈が…。」

「まさか、これ程とはな…!!」

「紫……。」



「貴女…誰だかは知らないけれど、藍と橙を殺した…。
 確かに、そう言ったわよね?
 奈落に叩き落してあげる。報いを、受けなさい。」

「え…?あ…。」

明らかにフランドールは狼狽している。
無理も無い。つい先程まで何も感じなかった相手から、凄まじいまでの殺意を受けているのだ。
それも、自らを超える者から。





「…悪いな、私はお前を邪魔させて貰う。」

「何故?」


「確かにあいつにはアリスもやられた。
 それは許せないさ。
 でも、今のお前を放って置く訳にも行かない。
 …何となく、だけどな。
 お前はまず落ち着いた方が良いじゃないか?
 このままフランドールを殺しても、きっと後悔するから。」


「私も、邪魔させて貰うわね。」
「お嬢様がすると言うのなら、勿論私も力になるわ。
 …確かに、私自身が納得しているとは言えないけれど。」

「あんな子でも、私の妹。だから…、指をくわえて見ている訳には、行かないわ。
 フラン、少しあっちへ…。出来れば、館まで帰ってなさい。」

「無駄ね。もう、この外は朝にしてあるわ。」

「なら、此処で止めるしか無いみたいね…。」



「…私は、手出しするのは止めとくわ。
 こんな事、私の手出しするような事じゃないし、ね…。」

「…幽々子様、私はどうすれば…?」

「…妖夢、貴女はさっきの炎の剣の余波で、
 結構な数の怪我霊が出ていると思うから…そっちへ行って。」

「…分かりました。では…。」



「結局、貴女達三人が私の邪魔をすると言うのね?
 手加減はするけど、死んでも知らないわよ。」
(…止めて。邪魔をしないで。)


「死ぬ思いなら、今まで何度もしてるんでな。
 …行くぞっ!!」

…等と言いつつ、一気に距離を取る。
底の知れない相手に近距離戦を挑むなんて只の馬鹿だ。

「ふふ。少し遊んでみても良いかしらね。
 私は、この符達を使う事は無いと思っていたけれど…。」




「まずは私から行くわ。…まさかこの符で倒せるとは思わないけれど。
 紅符『スカーレットマイスタ』!」



多量の弾がレミリアから生成され、今まで見た事が無い程の速度で放出する。
無数の弾が高速で紫に向かって殺到する。…本気だ。





「…貴女一人と言わず、全員で掛かって来た方がいいわよ?
 夢幻『仏性三十二重結界』」



弾が一点に収束し、紅に包まれる。
そのままなら、全て命中していたはずだ。



「…そんな、こんな事が?!
 これまでで一番強く、放ったと言うのに…!」


弾の奥から出て来た紫は、全くの無傷。
それどころか、無数の結界の一つにも綻びが出来ていない。


「幾ら吸血鬼と言えど、神仏の守りを破るには程遠いようね。
 …今度は、こっちから行かせて貰うわ。
 遊霊、夢想封印…」


私を除くほぼ全員が動揺するのを感じる。
そりゃそうだ。今この場ではあいつと私以外では知らないんだから。




「……『天』!!」



凄まじい光と共に、無数の弾が全方位に放出される。
最早弾「幕」じゃない。「塊」だ。
光で目が眩む為に良くは見えないが、どうやら放出された弾が更に分裂しながら飛んで来ているらしい。


「お嬢様、私の後ろに。
 魔理沙、退いて!時符『プライベートスクウェア』!!」

どうやら、相手と弾だけを目標に時間を止めるつもりらしい。
確かに、この系統の符は発動に時間が掛かるが、この距離なら間に合うはずだ。
符が、力を解放する。





だが、何も止まらなかった。

「え………。」

「馬鹿、ぼさっとするな!
 魔符『ミルキーウェイ』!!」

咄嗟に咲夜の前に出てミルキーウェイを起動する。
直前まで迫った弾塊を符の放った弾と発動余波の障壁で何とか食い止める事に成功した。
…拡散型のスペルに、一点集中型のスペルで相殺が精一杯か。情けない…。

「…こりゃ、掠っただけでもヤバイな。」

「何故、時が止まらなかったの…?」

「咲夜、多分あの妖怪が原因よ。
 貴女の力は空間と関係が深いでしょう。
 今、この空間はあの妖怪が支配しているわ。
 …さっきから、私にも運命が読めないしね。」

「そういう事だな。もう時間停止は止めとけ。無駄だ。
 それより、あれは…。」

「そんな事が…。」
「出来るなんて…ね。」


紫は「夢想封印 天」を起動している。
しかし、その前に発動した「仏性三十二重結界」がまだ消えていない。
あれだけの力を持ったスペルを、同時に二つ。

「本当に、不味い事になったかも、な…。」



可能な限り距離を取り、一つの方向に絞って弾を放つ。
攻撃なぞ考えてはいない。ただ、相手の攻撃を相殺するだけで精一杯だ。
こちらの消耗ばかりが激しくなってくる。




「…これだけじゃ、まだ凌がれるみたいね。
 もう一枚追加よ。…避けられる?
 縛霊『夢想封印 地』」
(もう、倒れて…)



紫がスペル名を宣言すると同時に、今度は異常な速度の札が辺りに放たれる。
それぞれが急角度で転回し、自由に動き回れるスペースを殺してゆく。
…封魔陣がベースか…?
ギリギリで何とか少し空間がある場所に逃げ込む。

「…こりゃ、次の手が大体予測出来るな。
 どうも、あいつの使う符はベースが存在するみたいだ…。」

「そうね…って、お嬢様、後ろ!」
「…?!」

何度か軌道を変えた札が、今度は戻ってきた。
回避には成功したが、これでは本当に厳しい。
そんな事も出来るのか…!

「くそ、このままじゃジリ貧は決定的だな…。」

二枚目の符を使いながら、思わずそう呟く。

「そうね…相手は、予想以上に化け物だわ…!」



「…そうよ。私は、化け物…。
 もうそろそろ、終わりにしましょう。
 後が支えているわ。
 これで…詰み、よ。もう、スペルでの相殺すら持たないでしょうね。」
(化け物…私は何度、この言葉を聞いた?)


そんな馬鹿な。
まだ、増えるのか?!



「三十二重結界、解除。
 ………業霊『夢想封印 人』!!」



今度は、速度がそう速くない札が乱発される。
しかし、その後は…。
やっぱり、私の想像通りだった。
迫ってくる。それも、二度、三度…最早数えている暇は無い。



どうする。
この状況を打開するには…。

幸い、紫はこちらに対して警戒は殆どしていない。
この油断を使うしか無いか・・・?



「魔理沙、危ないっ!」

咲夜の声で前方に目をやる。
一つの符が私を狙って飛んで来ていた。
この位置では、完全に避けるのは無理だ。



ズシャァッ!!

「痛ッ!」
「大丈夫?!」
「いや、大した傷じゃない、掠り傷だ。心配するな。」



…掠り傷?
さっきは、「掠っただけでもヤバイ」と思う程の威力だったはずだ。
それに、紫は三つ目の夢想封印を放つ前に結界を解除していた。
恐らく、スペル発動は同時三つまで。
それも、複数発動すると威力が落ちて行くのだろう。
これなら、もしかすると---!!


「レミリア、咲夜!暫く私は動けなくなる!
 悪いが、二人で持ち堪えてくれ!」

「…魔理沙の策に乗るしか無さそうね。
 幻符『インディスクリミネイト』っ!!」

「長くは、持たないわよ…?
 神罰『幼きデーモンロード』!」


二人とも広範囲に広がる符を発動する。
しかし、威力は少し下がっているとは言えあちらのスペルの威力は尋常では無い。
ナイフを砕き、魔弾を飲み込む。確かに、残りの符の数からして長くは持たないだろう。

早く決めなければならない。
まずは、アースライトレイやシュート・ザ・ムーンに使う触媒を弾に隠してばら撒く。
紫がこれに気が付かないとは思えないが、それで良い。

そして、恋符…ミニ八卦炉に、魔力を注入し始める。
本当なら数秒も経たずに放出するのだが…。ひたすら溜め続ける。




…まだだ。私の残りの力を全て込めろ。これに失敗すれば、もう私達には打つ手が無い。
焦って撃っても、何の意味も無い。

「魔理沙、こっちはもう…符が切れたわ!」

「私も、後一枚…。これは、完敗ね…。」

「…間に合った!」

紫が札を放ち終わり、次の札を放つまでの短い間を狙い、
一気に触媒からレーザーを放出させる。

これを放った後には、私はもう残った符を使う事すら出来ないかも知れない。

「…私がこれに気が付いて居ないとでも?
 それに、わざわざ動かなくても掠りもしないわ。」

「それが狙いだ!喰らえ、マスタースパークッ!!!」



一本に絞込み、最高まで圧縮して放ったマスタースパークは、
何とか紫の攻撃を飲み込みながら飛んで行く。
…何故、あいつの顔には余裕がある?
レーザーに囲まれて身動きが取れないはずだ。
まさか…。






「貴女達では…やはり、こんな所ね。境術『幻想鏡』」




私の放ったマスタースパークが、やや拡散しながら戻って来る。
何故だ。弾けるような威力じゃ無かったはずだ。
不味い、速く次のスペルを…。
駄目だ、間に合わな


視界が、白に染まった。




















-----------------------------



















…全身に、痛みを感じる。
痛み?
そうか…。死んではいないのか。
何とか、目を開く。
一体、今はどうなって…?






まずは、視界にレミリアと咲夜が入る。
私と同じく、どうやら生きてはいる。




そして…。











「う…うぁ…嫌だ…。
 来ないで…近寄らないで…!」

「何を言ってるの?
 私は貴女を殺すつもり。離れるはずが無いわ。」

「嫌だ!禁弾『過去を刻む時計』!!」

「いい加減に、終わらせる。」

紫の手から、巨大な弾が放出される。
フランドールの発動させたスペルが、一瞬にして掻き消える。

「止めて…殺さないで…嫌だ…嫌だよ…!」

フランドールがまたスペルカードを取り出す。
時間稼ぎをする為のカードを。

「秘弾、そして誰もいなくな」

バシュウッ。

「あ…。」

先程と同じ様に、紫の妖弾が一閃する。
フランドールのスペルカードは消滅した。
…フランドールの手と共に。

「あ…ぁ…。」

「もう、終わりにするって…言ってるでしょう?
 貴女の止めには…そうね、こんなのはどう?」


紫が手を高く掲げると、そこに「レーヴァテイン」が出現した。
色は青白いが、それ以外は寸分違わず同じ物が。
その熱波は凄まじく、周囲が揺らいでいるように見える。

…もう、自分の物にしてしまったのか。


「貴女、これで藍と橙を殺したそうね…。
 その事を話している時の貴女は、本当に楽しそうだった。
 壊す事が、楽しい?ふざけないで。
 私は、壊したくなんて無い物…
 友人や、優しくしてくれた人も…
 私の手で、全て壊してしまった。
 何かを壊す、それを貴女は笑って行ってしまえるのね。
 …ある意味…羨ましいわ。」

紫が言っている事は、何となく、分かる気がしないでも無い。
だが、その行動は…止めなければ。

「貴女は、許せない。
 まず、何所から失くしたい?
 足?それとも、やっぱり…残った手?」

「嫌…ぁ…。」

「それじゃ、まずは足ね。」

「止め…ろ…!」

紫が、青白い炎の剣を、フランドールに向けて振り下ろす。
止めようとしても、体が動かない。





「幽曲『リポジトリ・オブ・ヒロカワ』!!」
「夢符『二重結界』!!」


炎に無数の弾が炸裂し、弾けた力を二重結界が受け止める。


「あれは…幽々子と…霊夢、か…?」

「…何故、何で貴女達が邪魔をするの?」
(…やっと、来てくれた。)


「…何でってあんた、邪魔をして貰いたいんでしょうが?
 わざわざあんなに時間を掛けて。
 最初は何であんなに時間を掛けるのか理解出来なかったけど、
 今なら何となく分かるわ。
 今のあんたを見てると、私が止めなきゃ行けない気がする。
 絶対に。」

「紫、貴女は本当はあの子が憎いんじゃないでしょう?
 いや、憎い事は憎くても、一番貴女が今憎んでいるのは…。」


「貴女の式が危険な時に、側に居てやる事が出来なかった貴女自身でしょう?」


「幽々子…。」


「私が何時から紫を見てると思ってるの?
 貴女が本当に憎い相手ぐらい、私にだって分かるわ。
 だから、止める。貴女は、止めて欲しがっているから。」


「私が、本当に憎いのは…私自身?
 …そうかも知れないわね…。」

「私は、何時も、誰も守れなかった!
 親も、藍も、橙も、そして幽々子、貴女も!
 私の力が、何の為にあるのか、分からない…。」



「私を、守れなかった?
 …紫、もう、良いでしょう?どうにもならない事ぐらい、貴女にも分かって居るんでしょう?
 貴女が、傷つくだけよ…。」

「…でも!私には…割り切る事なんて出来ない!!」

「…やっぱり、駄目なのね?」

「ええ。
 …私のする事を止めさせたいなら、力ずくで私を止めて!」

「…何だ、やっぱりあんた、止めて欲しがってるんじゃない…。」



三人とも宙に浮き、距離を取る。
下を巻き込むつもりは無いらしい。

紫が私の上空を通過した時、何かが私の側に降って来た。


…水滴?
これは…。






「洗礼『夢想封印 神』!!!」

紫のスペルカード宣言。
それと同時に、凄まじい速度で二人の周りを飛び回りながら、
弾の「壁」を設置して行く。
そして、二人に殺到する。

「くっ…これは…!」
「速い…!」

弾塊を避けた後、体勢を立て直す暇も無く次の塊が飛んでくる。
それに、相手の位置を全く捉えられない。
…しかし、あの回避は私には真似が出来ないな…。

「ホーミング、マインド、博霊アミュレット!行けっ!!」
「死霊達よ…紫を止めて!」

二人とも、直線攻撃では分が悪いと踏んで誘導攻撃に切り替える。
完璧に振り切られているが、相手を攻撃に集中させない点では有効だ。

しかし…幾らなんでもあの符が強力過ぎる。

「冗談じゃないわね、あれ…!」
「いい加減に、こっちが持たないわ…。」

疲労が濃くなってゆくのが良く分かる。
このまま行くと、私達の二の舞は明らかだ。

…二人とも完璧に弾で出来た球体に包まれてしまい、外からは見えなくなる。




そこで、紫と弾の動きが止まった。


「…分かったでしょう?
 今の貴女達では、私を止められない。
 もう、退いて…!」

「…あんたにフランドールを殺させる訳には、行かないわ…!私は…」
「私は、絶対に、貴女を止める…!だから、私は…」



「「退きはしない!!!」」



「霊夢…幽々子…」

私の手元からは、全てが失われて行く。
今の私に残っている物は…。
幽々子や、霊夢達。
でも、それも何時か失ってしまう?
嫌だ。一人になるのは、嫌だ。
けど、どうすれば良い?
失くすぐらいなら、最初から無ければ良い。
私は、守れないのだから。




…違う。全ては、私が。私が原因だった。




なら…私が…私が最初から居なければ良い!


もう…良いよね…。

「う…あ…あぁ、あ…あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」




紫が絶叫する。
まさか、あの球体を…



…違う。
どう言う事だ?
球体を構成する弾から、それぞれ少しずつ妖力が抜ける。
その妖力が塊となり、巨大な弾を形作る。

恐ろしいサイズだ。
あんな物に当たったら、恐らく体が残らない。
山ぐらいなら軽く吹き飛ばす威力だろう。

そして、紫はそれを自分自身に向けて加速させる。





…あいつ、まさか…まさか、自分を!
止めろ!お前は、自分が幽々子を失った時に感じた悲しみを、
今度は幽々子に味わわせるつもりか?!
あの符さえ壊せば…!
予備の恋符を何とか取り出し、残った魔力を掻き集める。
頼む、出てくれ!こんな時に使えなくて…
何が魔法だ!!

しかし、何の反応もしない。
さっきの放出で魔力を使い過ぎた。



「…誰か、誰かあいつを、止めてくれ!!」




パキィン…





紫の符が、粉々に砕けた。
それと同時に、弾も消える。


「え…?」
「何で…。」

紫の後ろには、金色の影。




「生きて、いたの、藍…?」

「…はい。さっきまで、吹っ飛ばされて気絶してましたが…。
 話は、途中から聞いていました。
 この、リボンが鍵…でしょう?
 再封印…させて貰いました。
 これ以上…私や、橙の為に傷付けないで下さい…。
 大事な、人や…。紫様、自身を…!」

「ら……、ん……。」

藍の腕の中に崩れ落ちる紫。

「紫?!」

「…大丈夫、眠りに入っただけのようです。
 さっきの符を維持するための力が、封印後では足りなかったんでしょう。
 多分、その反動です…。」

「…そう…。」

「ったく、こいつは妙な所で不器用なんだから…。」











---------------------














数日後、私は何とか元のように飛べる程度には回復していた。
療養中に一度紫本人が謝りに来たのには吃驚した。
…しかし、あいつにあんな態度は似合わないな。

結局、フランドールが「壊した」と思っていた者は全員助かっていたようだ。
勘違いから始まった最悪の出来事、と言う訳だ。



「…お?珍しい所で会ったな。
 咲夜、お前も香霖のとこ行きか?」

「まぁそうね。魔理沙、貴女は何を目当てで行くの?」

「いや、特に何が目当てって訳でも無いんだが…。そっちは?」

「精神安定剤が無いか、ちょっとね…。」

「何だそりゃ?
 あぁ、そう言えばあの時、紅魔館もメイドは全員逃げて、
 パチュリーも壊されたのは雨の結界、門番は死んだふりで何とかしてたんだろ?
 結局、紅魔館も人的被害は無かった訳だ。」

「それが、そうとも言えないのよ…。」

「…どう言う事だ?」

「妹様が…。」






























「フラン、私よ、レミリアよ!だから…このドアを開けて!」




「嫌だ 怖い 死にたくない 嫌だ
 もう外に出たくない
 もう誰にも会いたくない
 もう来ないで
 これ以上近寄らないで
 殺さないで
 誰か助けて
 嫌だ…いやだ!!!」



………「あのよ」の出来事は、お嬢ちゃんのトラウマになるよ………。








------------------------------------------

Another

------------------------------------------



…あいつ、まさか…まさか、自分を!
止めろ!お前は、自分が幽々子を失った時に感じた悲しみを、
今度は幽々子に味わわせるつもりか?!
あの符さえ壊せば…!
予備の恋符を何とか取り出し、残った魔力を掻き集める。
頼む、出てくれ!こんな時に使えなくて…
何が魔法だ!!

しかし、何の反応もしない。
さっきの放出で魔力を使い過ぎた。



「…誰か、誰かあいつを、止めてくれ!!」




…紫の、光。
轟音。
…静寂。

後には、何も…何も、残りはしなかった。

「…そん、な…。」

霊夢と幽々子を囲んでいた弾が消える。

「え…?」
「何で…。」

二人は、状況がさっぱり分かっていない。
それはそうだ。弾に包まれていたのだから。

「紫は…?」
「妖力まで、消えた…?」

私は見ていた。
何が起こったのか、理解している。
だが、説明したくない。
認めたくない。こんな…こんな事を…。

その時、フランドールが虚ろに口を開いた。

「あの人…消えちゃった…壊れちゃった…。綺麗に、無くなっちゃった…。
 あはは…あ、はは…。」

…言って、しまった。
霊夢も、信じられないと言った表情で完全に固まっている。
それは、私も一緒だよ…。


幽々子の方を見る。

本当は、見たくなかった。

幽々子の前に、紫の服の切れ端と、赤いリボンが風に吹かれて舞い落ちて来た。

「紫…冗談でしょう?また、隙間に隠れて、私たちを見て…楽しんでるんでしょう?
 早く、そこから出てきなさい。ねぇ…お願い、出てきてよ。
 嘘よ…そんなの…こんな…こんなのって…。
 い…い、い」

私は目を逸らし、耳を強く塞いだ。
もう、聞きたくない。



空気が、激しく震えた。





























私達は、多くの物を失った。
何も、帰っては来なかった。

そう、アリスも…。


霊夢は、あの後も相変わらずそうに見えるが、明らかに落ち込んでいる節がある。
無理も無い。


紅魔館には、もう、行っていない。
フランドールの精神が壊れてしまったと咲夜から一度聞いたが、最早そんな事はどうでも良い。
…そもそも、館には…もう、三人しか居ないのだ。


白玉楼は…。
幽々子が、未だに立ち直れない。
妖夢の話だと、未だに幻覚を見て、うわ言を言っているらしい。
やはり、あの二人は互いに大事な存在だったのだ。


…私は、無力だった。
何も、出来なかった。知っていたと言うのに。
あいつの気持ちが、今は分かる。
今となっては、遅過ぎるが。





私は、私が…憎い。

大幅に修正とか付け足してみたり。
…色々とやり過ぎた気分です。
NBD
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1110簡易評価
30.無評価名前が無い程度の能力削除
o

o

o

o

o

o

o