Coolier - 新生・東方創想話

フォーオブアカインド

2010/04/18 20:57:07
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暗い闇の中、光が閉ざされた場所。
四方が囲まれ静まり返った冷たい場所。
湿り、周りを血の匂いで包まれた場所。

その場所が、私の世界だった。
視界に入る場所のみが、私の世界だった。


「……」


吸血鬼レミリア・スカーレットの妹
私、フランドール・スカーレットの世界は、そこだけだった。







フォーオブアカインド








「……フラン?なにをしているの?」

 姉であるレミリアは、フランドールに問いかける。フランドールは、レミリアのほうに振り返る。彼女は、その服を真っ赤な血にまみれさせながら、手や足にもべったりとつけ、匂いを漂わせながら、レミリアを見ると微笑んだ。

「みんなで鬼ごっこしてたの。私が鬼でみんなを捕まえる遊び」

 彼女は楽しそうに言葉を続ける。

「私、全員捕まえた。だから、今度は私が逃げる番なのに……。みんな動かなくなっちゃった。どうしてなの?お姉様」

 レミリアは、フランドールを見つめる。フランの目には、一切の曇りもない。月を隠していた、雲が晴れる。そこに照らし映し出されたのは、人間と、妖怪の無数の屍。いや、屍が残っているのなら、まだましだろう。彼女の能力『破壊』においては、肉片も残らず木っ端微塵となったものも数多い。その数ははっきりと定かにはならない。フランドールは善悪の区別がいまだにつかない。彼女にとっては遊びだからこそ、悪意がないからこそ、残酷になれる。いつだって子供は残酷だ。遊びといって興味があるといって、それらを破壊する。




レミリアたちがこの世界に訪れて最初の事件であった。
以後、これは八雲紫との和睦を元にして終息する。





「御姉様?どうして、こんな狭い部屋に私を連れて行くの?」
「今日から、此処が貴方の部屋よ」
「え~?いやイヤだよ、ジメジメして暗いし……私も広い部屋で」

 レミリアは、フランドールを部屋に押し込むと、鍵を閉める。彼女の力で破壊が出来ないよう、八雲紫に頼み作り出した特殊なものである。彼女の力を持ってしても破壊は出来ないだろう。八雲紫は言った。

『幻想郷の秩序を破壊するような妖怪は実力を持ってこれを排除する。破壊するもの、庇うもの、守るもの、例外なく……』

 八雲紫の実力は知っている。決して奴に従順になる気はない。だが、自分は良くてもフランドールでは、太刀打ちできない。彼女は強い自分に匹敵するほど。それは彼女の悪意のなさからくるもの。それらさえ常人と狂人の『境界』あるからである。境界を操る彼女と戦って勝つことは難しい。勝ったとしてもダメージを瀕死のダメージを受けるだろう。だから、こうするしかない。

「いいもーん、こんなところすぐ壊してやるんだから」
「……」
「あれ?壊れない。お姉様?こわれないよ。おかしいなぁ?」
「……」
「お姉様、どうして私にこんなことをするの?」
「……」
「お姉様ってば、いかないで!こんなところで一人にしないで」
「……」
「お姉様!お姉様!!」
「……」

 レミリアは、彼女の目を見つめながら、哀れみを込めて、振り返り歩き出す。この日、フランドールは長きに渡る幽閉が始まる。幽閉期間の彼女の公式的な記録は存在しない。



「……お姉様」


 暫く彼女は姉の名前を呼んでいた。来る日も来る日も愛する姉が自分を助けに来てくれると、そう信じて疑わなかったフランドールだった。膝を抱えながら、湿り、暗い、その場所で……。

「レミリア様、誕生日おめでとうございます」

 屋敷の上でそんな声が聞こえてきた。フランドールは時間の感覚がないその場所で、姉が誕生日であることを知った。建物の上では、レミリアがメイドや彼女の友人達に囲まれている。フランドールは膝から顔をあげて、地下牢から誕生日を祝った。

『お姉様、お誕生日おめでとう』





 それから暫くがたった。
 壁に染まるカビが増殖し、牢の血の匂いも濃くなった。


「レミリア様、お誕生日おめでとうございます」


 再度、その声が聞こえる。

 フランドールは、もう一年たったのだと、彼女は姉に誕生日を祝おうした。だが、そこでふと気がつく。自分の誕生日は?と……。時間感覚がない、この場所で、再び姉のレミリアの誕生日祝いの声が聞こえるということは、一年が経過したということだ。その合間に自分の誕生日があったはずだ。それは誰にも祝われることはなかった。何もなかったのである。何も……。

「お姉様は、レミリアは、あいつは、私のことなどどうでもいいと思っているんだ。私が、私だけが知らなかった。みんなあいつのことばかり愛して、私はここで孤独を過ごすんだ。助けてくれるなんて、バカみたい。ありえないじゃない……」

 フランは顔をあげると立ち上がり、牢に触れる。

「壊れろ!壊れてしまえ!こんなところ!こんな場所!こんな世界!壊れろ!壊れろぉおお!!壊れて!!壊れるんだ!!みんな消えろ!みんな壊れてしまえ!!壊れるんだ!!壊れろおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 反響する部屋の中で、彼女は悲鳴のような声をあげた。

 結果、壊れた。
 ええ、だって私の能力は『破壊』の能力だから。


 


 レミリアと八雲紫の結界は、破壊を反響させ

 私の『心』を壊した。



 血まみれの場所で、私は、人形を引き裂きながら遊んでいた。びりびりという音供に、方あったものが崩れていく、端正な顔が、醜くゆがみながら手足がもげ、バランスを失い、崩れ落ちる。鈍い音供に、私はそれを押しつぶす。綿が溢れ、綿を覆っていた布地は、綿に覆われる。どこにそんな綿が入っていたのかもわからないが、私は綿を毟りとって、バラバラにする。すると人形は皮だけになってしまう。これでは遊べないから、捨てる。




 相変わらず、建物の上では、楽しそうな声が聞こえてくる。私はこの孤独の世界から逃げられない。誰も私を見てくれない。誰も私に興味を示してくれない。

「貴方は、私と話しをしてくれない?」

 まず最初に私の友達となったのは、血肉を食べに来た、私の食べ仲間であるネズミである。私はネズミと一緒に食事をして、ネズミと一緒に、眠ったりした。私はもっとネズミと仲良くなろうと、追いかけっこをした。私が鬼で、彼が逃げる。私は彼を捕まえた。


 ぷちっていう音ともに、友達はつぶれてしまった。


 次に友達にしたのは蟲だ。蟲はたくさんいるから、友達にはもってこいだ。幾ら潰しても幾ら、壊れてしまっても大丈夫。私はいっぱい彼らと遊んだ。いっぱい壊した。あるとき、誰もいなくなった。

 彼らの好きな食べ物の血肉があるのに、ネズミも蟲も近寄らなくなってしまった。私は、また1人になってしまった。私には友達が出来ないのか。私の能力では、誰も近寄ってはこれない。お姉様も、きっと私をそれで拒むんだ。

「こんな能力要らない!いらない!!」

 悲鳴をあげながら私は自分の頭を壁に叩きつける。こんな孤独しかないのなら、私は死ぬ。死んでやる。私の能力で私を殺せばいい。私は自分を憎んだ。こんな能力を持っている自分自身を憎んだ。壊してやりたいと、ネズミや蟲や、たくさんの人形のように。私が、初めて、誰を壊したいと願った瞬間だった。


 憎しみ続けて、十数年がたった。


 眠りからいつものように覚める、寝ているときも闇であれば、起きても闇、夢と現実の区別もつかないその空間の中で、誰かがいる気配を感じた。私は、突然のことに驚きながら、周りを見渡す。

「!?」

 長らく生きてきて驚いたことは今までなかった。だが、そのときだけは本当に驚いた。なぜなら、目の前には、自分そっくりの女が、目を擦りながら自分のほうを見ているのだから。この狭き、孤独しかなかった空間に現れた初めての妖怪。だが、それは……。

「あ、貴方は……誰?」
「貴方こそ……誰?」
「「私は、フランドール・スカーレット」」


 私は壊した。

 自分自身を、こういう壊れ方をするものなのかと思ったが、私は2人になっていた。私が一番壊したくて仕方がないと願っていた自分がそこにはいた。私は、相手の身体に触れてみる。同じように向こうも自分にと触れた。

「「……」」

 壊れない。
 一番壊したくて仕方がないと願ったそれは、私が一番求めていた、壊れない存在であった。私は友達になった。私自身と。

「捕まえた~~!!」

 背後から抱きついて、自分を押し倒す私。

「あ~~次、私が鬼?」

 そんなやりとりをしている私たちの真上。

『レミリア様、お誕生日おめでとうございます』

 大勢の拍手が聞こえてきた。私達は顔を見合わせる。私達は2人だ。2人ではあいつには勝てない。あいつと同じようにして、私達は私たちを祝いたい。他の奴らは、誰も私のことなど興味持っていない、蟲や鼠でさえ、誰も、誰も……、だから、私の事は私自身で補うこととする。私は私を壊さないし、私は私を裏切らない。


「「「「お誕生日おめでと~~フランドール」」」」


 声が響く。

 4人となった私達は、血に濡れた肉の塊の上に、4本の蝋燭を立てて、互いに血にまみれながら、四方に並んで、互いを祝う。こうして私のために生まれてくれた私に感謝をして、私と遊んでもらう。遊んであげる。

「アハハハハ」
「フフフフフ」
「キャハハハ」
「ヒヒヒヒヒ」

 お姉様にはこんなことはできない。

 私は、ようやく壊れない友達を作ることができた。

 貴方は、壊れない?
フランドールの狂人設定。
彼女はいつからそう呼ばれているのか、なぜそう呼ばれているのかがふと気になったもので。
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コメント



0.420簡易評価
8.70名前が無い程度の能力削除
ありうるかも。前、ドラマで長期間閉じ込められてた人が、多重人格になったって
話しあったし。(結局そのドラマは、多重人格のふりってやつだったけど)
10.60ずわいがに削除
俺の記憶違いでなければ、レミさんたちが幻想郷に来たのも、吸血鬼異変を起こしたのも最近です
その後何十年も閉じ込められたというのは、ちょっとスルー出来ない矛盾と申しましょうか;

フランの味方はフランだけ…寂しいわ
14.70ミスターX削除
そもそも、「自分自身には効かない」能力でしたっけ?