Coolier - 新生・東方創想話

誰が誰のために

2010/04/14 00:54:18
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 紅魔館。
紅一色のそれは、見る者に美しさよりも、不気味さや、禍々しさを感じさせる。
その外観によるものか、それともそこに住まうモノを知ってのことか、妖怪にも紅魔館を毛嫌いし避けるモノはいる。しかし何がかの屋敷を恐れているかと言えば、それは人間だとパチュリー・ノーリッジは考えた。そして、都合のいいことだ、と感想づける。
彼女はこの紅魔館が気に入っていた。まずとにかく広くて、幾らでも本が置けるし、人間にしてみれば、息が詰まるような閉塞感や、常に館内に満ちる重厚な静寂にも、彼女は大いに満足していた。本当、以前の住居とは比べ物にならないのだ。
利便性や雰囲気もパチュリーには心地よいものだったが、なにより虫除けに最適なのだ。ここに移り住んでからというもの、頭足らずの人間どもが彼女の元に近づくことがなくなったのである。読書に邪魔な羽虫がいない。それがなによりパチュリーには嬉しかった。
 
彼女は、大の人間嫌いであったのだ。

と、しかしながらその充実した生活は、唐突な終りを告げることになる。
なんのことはない。彼女に充実を与えたそのヒトによって、それは奪われたのである。

とある日。
昼とも夜とも判別できない一時。パチュリーはひどく不機嫌だった。
一週間前か二週間前か、とある研究のせいもあって、ここ最近は特に不規則な生活を送っていたせいだろう。いまいち判然としないが、旧友のとんでもない裏切り行為を知ったのである。いや、正確に言えば、約束をした覚えもないし、第一ここは彼女の屋敷である。自由にして然るべきことなんだろうが、それでも納得のいかないところがあった。なんというか、わざわざ説明せずとも、日ごろの言動から察して、配慮すべきところなんじゃないだろうか。そこは。
パチュリーは、何冊もの分厚い書物が乱雑に積まれ開かれたテーブルを、適当に整理して小さな空間を作った。苛立たしい気分を紛らわせるために、お茶でも小悪魔に持ってこさせようとしたのである。しかし、いざ声をかけようと辺りを見回して、彼女はさらに機嫌を悪くすることとなった。小悪魔がいないことに気付いたのだ。
その理由はわかっている。彼女自身がさきほど、不機嫌に任せて無茶を言い、読書の邪魔だと小悪魔を図書館から追い払ったのである。
情けないことだ。動かない大図書館が物を忘れるか。どうやら自分は本当にペースを乱しているらしい。パチュリーは自覚した。そしてそれがより彼女の神経をささくれ立たせる。
冗談じゃないわ。人間なんかのせいで、どうして私が?
と、その時だ。
「パチュリー様、お茶をお持ちしました」
一瞬、声を上げそうになった自分を、パチュリーはなんとか抑えた。そして彼女はすました顔で、いつの間にか傍らに立っていた人間を見る。
またか。
パチュリーはため息を吐きたいのもぐっと堪えた。ここ最近、頻繁にあることである。頻繁に、羽虫が自分の研究を邪魔しに来るのだ。それも、ふざけるなと言いたくなるぐらいにつまらない理由で、である。
「覗きでもしてたの?趣味が悪いわね」
メイド長は動揺もしなければ、怒ることもなかった。凛とした雰囲気もそのままに、心の底から不思議そうに、目を丸くしている。演技でなく、パチュリーの言葉が理解できていないのだ。
「は、何のことでしょうか」
それでもメイド長、十六夜咲夜は慇懃な態度を崩さない。ぴんと背を伸ばして、足をそろえたその佇まいには、揺るぎない従者としての矜持すら感じた。
 つくづくいけすかない人間ね。
パチュリーは心の中で毒づいた。これほど人外を恐れない人間も珍しい。立ち振る舞いが自然に過ぎるのだ。おっかなびっくり応対されても腹が立つが、ここまで平然と接せられると、それはそれで癇に障る自分に、パチュリーは気づいていた。
彼女と相対していると、パチュリーは、自分が人間扱いされているように、あるいは咲夜が自身を妖怪だとでも勘違いしているかのように感じられるのである。

この得体の知れない人間は、一体どこから湧いてきたものか。パチュリーは思いを巡らせた。

つい最近のことだ。常は館に引きこもって何やら画策するばかりのレミリアが、突如として『旅行』を思い立ったのである。とはいえ、『旅行』という表現は彼女が使っただけのもので、実際のところは、一体どこに、何をしに行くのか知れたものではない。期間も不明だというのだ。どうせろくでもないことなんだろうが、嬉々として準備に取り掛かる彼女を見ていると、パチュリーも注意する気は起きなかった。

後に、当然のようにパチュリーも誘われたが、その時彼女はすげなく断った。レミリアとは古い仲で、お互いに信頼し合い認め合う関係だ。しかし、どちらかがどちらかに依存しているわけではない。無二の親友の頼みだろうが、嫌ならば嫌だと断る。
パチュリーはレミリアのお遊びに付き合う気はなかった。ごく個人的な研究に熱を上げていたので、他事にかまけている暇がなかったのである。レミリアのほうも一度断られればそれ以上頓着せず、誰を伴うこともなしに一人でパタパタと旅立っていった。


その結果がこの人間であった。
パチュリーはその光景にめまいを覚えたものだ。どうせろくでもないことだろうと思っていた。大した動機もないお遊びだろうと思っていた。多分その予想は外れていない。だが想定外だったのは、それが彼女に実害を及ぼすことだったのだ。

一週間ほど自らの館を留守にした彼女は、ある日の昼ごろ、見知らぬ人間が差した日傘の下に、堂々と帰還したのだった。
レミリア曰く、旅行先の『拾いもの』だとか。咲夜の腰のあたりをぽんぽんと叩いて言っていたのだから、まず間違いなく彼女を指した発言なのだろう。
腕や頬に幾つかの切り傷をつけた彼女は、心から愉快そうに笑っていた。
いいお土産だと思わない?パチェ。
上等な冗談でも言ったような風情だった。さすがの咲夜も、あの時ばかりは微妙な表情をしていた気がする。パチュリーは深い深いため息を吐く他なかった。
自分が人間嫌いであることなど、レミリアは百も承知のはずだ。なのに、どうして。
 喉元まで出かかった疑問は、とうとう口にすることはなかった。
パチュリーは、レミリアお得意の含み笑いを、ただ黙して恨めしげに睨むばかりだった。どうせ訊いたところでまともに答えたりはしないだろうと思ったのだ。

後からレミリアが言い出したことだが、彼女とは初対面から非常に過激なスキンシップをしあう仲だったらしい。なんでも、あまりにもひどい親密ぶりに、ナイフと光弾の行き交うお祭り騒ぎになったそうだ。
その話を聞いて、パチュリーはレミリアの生傷を思い出して考えたものだ。
あれは彼女がつけたものなのか。
『立場上の決闘』。その後の十六夜咲夜がパチュリーに語った言葉を借りれば、彼女たちの初対面はそう表現される。彼女は言葉少なで、詳細を語ろうとはしなかったが、義務というか釈明のように、パチュリーにそれだけは説明したのだ。  

不可解だとパチュリーは思った。吸血鬼たるレミリア・スカーレットが人間ごときに遅れを取るなど、考えたくもないことだが、あの人間の正体は今をもって不明である。どうやら尋常ならざる能力もあるようだし、可能性はあった。それはいいのだ。彼女と人間の決闘が勝負になったことを、パチュリーは訝しんでいるのではない。
全てが事実だとすれば、今その吸血鬼の誠実な従者と成り果てた彼女は、何なのか。
パチュリーにはそこがわからなかった。
命の取り合いであろうとなかろうと、とにかく彼女たちは戦い、傷つけあったのだろう。幻想入りしたのは責務か意地か誇りか、はたまたただの習慣か。とにかくお互いがお互いに相手を打ち負かしてやりたいという気慨があったのだろう。
ならば、なぜ今の彼女たちがあるのか。
子供の喧嘩のように、一戦交えて仲直りでもしたか。馬鹿らしい。
人間と分かり合うなんて。あんな死ぬためだけに生き続けているような連中に。
 
改めて、半ば八つ当たりのようにパチュリーは十六夜咲夜を、いけすかない人間だ、と結論付けた。
 

「何でもないわ。それで、何の用ですって?」
「ですから、お茶を………」
 咲夜はトレイの上の紅茶と洋菓子に視線を落とした。
「頼んだ覚えはないけど」
「レミリアお嬢様の命です。いい茶葉が入ったとかで、パチュリー様にぜひ、と」
「いらないわ。貴女の淹れたお茶なんて」
 きっぱりとパチュリーは言うも、咲夜は眉ひとつ動かさない。
「私は人間が嫌いなの。わかる?見ているだけで腹が立つのよ。用が済んだんだったら、出て行ってちょうだい」
 しばしの間があった。
 パチュリーは不意に訪れた沈黙の中、じわりじわりとさらに不快感を増幅させていく。
 彼女は人間が嫌いだ。しかし、そんな人間に感情的になる自分も、パチュリーは嫌いだったのだ。パチュリーは自分が晒している醜態に、我慢がならなかった。
 そして、彼女と咲夜が目を合わせた時だ。
 膝の上に固めた拳が、痛いぐらいにきつく引き締まった。
 パチュリーは百年余りを生きてきた魔女だ。人間の感情の機微などその気になれば簡単に推し量ることが出来る。

 彼女は見たのだ。
パチュリーの発言に、この人間は何を思ったのか。咲夜の瞳の奥に、ほんのわずかだが、彼女は自身に対する哀れみを見出したのだ。たかだか人間風情が、このパチュリー・ノーリッジを哀れんだのである。
 到底耐えられぬ屈辱であった。自覚した途端だ。全身が一気に、燃え上がりそうなほどに熱くなる。肩がわなわなと震え、息が荒くなる。
 人間が。胸の内で吠えたてた怒号は、ただ彼女の心に虚しく響いた。実際に怒鳴り散らしたり、行動に出ようとはしなかった。いかにこの身が高ぶろうとも、そんな真似は出来なかった。確かにパチュリーは人間が憎らしくてたまらない。しかし奴らに対する報復などはもってのほかだ。パチュリーは己の激情を抑えた。それこそ魔女としての品位を貶める行為だと、彼女は硬く戒めていたのだ。
人間など取るに足らないものだ。パチュリーは呪文のように声に出さず唱えた。
人間など取るに足らない。無思慮で無分別で、その上傲慢だ。自分たちがいかに至らない種族であるか。それをまるでわかっていない。
パチュリーは自らが見てきた、人間というものを思い出す。
個人が個人として生きていかれない種族。ものの正否、優劣を病的に気にするくせに、それを判断する冷静さを持ち合わせていない愚かな種族。
だから容易に間違える。一人の間違いがもう一人に、さらに一人に、次々と伝染して間違いはやがて一部の集団のルールと成り果て、認可されることすらある。
ところが違えば、同族でさえ正気を疑うような言動も、総意という言葉に逃げていとも簡単に横行されるのだ。それによって何が犠牲になろうと、誰も彼もが自分たちだけの正しさに酔いしれ暴挙を止められない。そんなことが、人間には起こり得るのだ。
 虫唾が走る。およそ条理とはかけ離れた下等生物め。
 そこまで考えて、パチュリーはしつこくまとわりつく自身の記憶に顔をしかめた。いけない。いつの間にか、怒りの矛先があらぬ方向に向かってしまっていた。パチュリーは気持ちを鎮めて、落ち着いた思考を展開する。
 何を私はムキになっていたのだろう。人間に取り合って何の益がある。不遜な人間に哀れまれたか。だからどうしたというのだろう。それこそ取るに足らないことではないか。くだらない。羽虫は手で払ってやり過ごせばいい。彼女は居住まいを正すと、努めて冷静に言葉を重ねた。
「何をぼやっとしているの?早く出てって」
「かしこまりました」
 咲夜は一礼すると、くるりと背を向けた。その背にパチュリーは声をかける。
「あと、私の図書館に入るときは、能力を使わないで。不快なの。ノックぐらいしなさい」
「申し訳ありませんでした」
 振り返ってもう一度一礼すると、咲夜は下がった。
 
 メイド長は出て行き、パチュリーはまた一人となった。静謐な空間だ。穏やかな時が流れ、この身にたかる虫もいない。大変結構だ。素晴らしいことだ。
 だがパチュリーの気分は不思議と晴れなかった。どうしてだろうと考えて、くるくると頭を回したものの、結局、人間が同じ館内にいるせいだ、という結論に達した。
どうにも自分でも腑に落ちないものがあったが、それぐらいしか今のパチュリーには思い当たらなかったのだから、仕様がない。


 何時間後かのことだ。
「パチュリーさん、ええと、レミリアお嬢様がお呼びですよ?」
 やや及び腰ながら、小悪魔はパチュリーに告げた。
「今忙しいんだけど」
 向こうはどんな顔で自分を連れてくるよう命じたのか、小悪魔はほとんど泣きそうな顔だった。とはいえ、すぐにパチュリーは調べ物に戻ったため、手元の本に視線を落としていて彼女の表情にはまともに目をくれていないのだが。
「そんなこと言わないでくださいよう………。何が何でもひっぱり出せってお嬢様には言われてるんですから」
「そこまで来てほしいんなら、あんたが直接顔を出しなさいとレミィに伝えて」
「来てあげたわ、感謝なさいパチェ」
ふと顔を上げると、そこにはがっくりと頭を垂れた小悪魔だ。それはいい。視線を巡らせて、開け放たれた扉の前に立つ、一人の少女をパチュリーは見た。
 薄明かりに、蝋のように白い肌が映える。口元のたおやかな笑みは妖しく美しく、老獪な大妖怪の貫禄が見て取れるが、きょろきょろと動く大きな目は、好奇心をむき出しにした、ただの子供のそれと同じだった。パチュリーは親友の来訪を今回ばかりは少し疎ましく思った。背に生える羽はまさしく蝙蝠そのもの。
 吸血鬼レミリア・スカーレットがそこには立っていた。
「来てるんなら、わざわざ使い魔に仕事を頼まなくてもよかったんじゃないの?」
「駄目よパチェ、最初から私が出向いたのでは、貴女の説得に時間がかかってしまうかもしれないもの」
ふん、とパチュリーは鼻で笑った。妙な言い草だ。何の説得よ?
「なによ、また得意の運命操作?」
「その真逆ね。既に見えてる運命に、私は粛々と従っただけよ」
 パチュリーは肩をすくめた。レミリアの説明はいつも言葉足らずだ。理解ができないわけではないが、完全に把握するには難しい。把握させる気もないのだろう。
「あ、そ。まあいいわ、そんなこと。それで何の用なの?私は今すごく機嫌が悪いんだけど。しかも妖精メイドの手でも借りたいぐらいに忙しいし」
「今夜はとても月が綺麗だから、一緒に散歩でもどう?って誘いに来たのよ」
 言うと、レミリアはいたずらっぽく笑った。反面、パチュリーはすっと目を細めて発する声のトーンを落とした。
「忙しいって、言ったでしょ。いい加減にして」
彼女の凍えるような冷たい声に、傍らの小悪魔のほうが身を震わせる。
「イソガシイ、イソガシイ。このところの貴女の口癖ね。そんなに大事な研究かしら?」
 レミリアは挑戦的な笑みを崩さない。両者はしばしの間じっと見つめ合ったままだったが、やがてパチュリーはふっと息を吐くと、視線を逸らした。
「いいわよ、レミィ」
本をテーブルに置いて、億劫そうに立ち上がる。
「私の負けにしといてあげる。付き合ってあげるわ。貴女とは一度ゆっくりとお話がしたかったしね」
「そうこなくてはね。良い心がけよ」
レミリアは満面の笑顔で言ってのけた。


月光の下、魔女と吸血鬼は空の散歩に興じていた。
視界の端に、紅を基調とした立派な館が映る。荘厳で無骨な、何ものも寄せ付けない物々しい雰囲気がある建物だ。この館の主ともなれば、さぞかし威厳溢れる恐ろしげな大妖怪様なのだろう。嫌みのようにそうパチュリーは考えて、ちらと傍の親友を一瞥すれば、そこにいたのはあどけない笑みを浮かべた、儚げな印象すら与えかねない少女だった。
 すいすいと水中を泳ぐように、優雅に空を舞うレミリアに、彼女は言う。
「いい加減、白状してもらえるかしら」
「何のこと?」
「あの人間………咲夜のことよ。ただ単に貴女の世話係として住まわせるぐらいならまだ我慢できたわ。でも、なに?あれは。私には故意に彼女と私を接触させようとしてるとしか思えない」
「お茶、飲まなかったそうね。もったいない。『外』から取り寄せた珍品なのに」
意識して与太事に話を持っていこうとするレミリアに、パチュリーは歯がゆさを感じずにはいられない。
「レミィ、正直に答えて。貴女、私の人間嫌いを克服させようとでもしてるの?」
 パチュリーの周りをくるりと回ってから、レミリアは大仰なまでの動作で肩をすくめてみせた。口元にはいつもの、ヒトを見透かしたような生意気な笑み。
「何言ってるの、パチェ?そんなつもり、私には毛頭ないわ」
「信用ならないわね」
「なら、訊かないでくれる?」
パチュリーの言葉に、少しむっとした調子でレミリアが返す。
「貴女が人間嫌いなのは運命。定められたことよ。わざわざそこをいじくる気はないわ」
  ふわりふわりとパチュリーに近づいたレミリアは、とん、と彼女の胸をついた。
「もちろん、パチェが望むんなら、考えてあげないこともないけどね」
「冗談言わないで。あんなものに愛着を持つなんて、気味が悪いわ」
 レミリアは眉を吊り上げて、間抜け面だ。
「あら、ひどいじゃない。私の気味が悪いって?」
「とりあえず、貴女がひた隠しにしてるらしい、得体の知れない姦計は気味が悪いわね」
「だから、何も私は企んでないってば」
 レミリアは自身の顔の前で、手をひらひらと振った。限りなく白々しい動作であった。
「じゃあ、なんで咲夜を私に近づけようとするの?」
「それは、………それも運命よ」
 永遠に幼い吸血鬼は、それだけ言うと、うまくいたずらを成功させた悪ガキのように、にひひと笑った。
「あっそ………」
パチュリーもいい加減観念して、話題を打ち切った。すると代りに頭に浮かんだ、素朴な疑問が口を突いて出てきた。
「運命、ね。私にはよくわからないものね。レミィ、運命を操るってどういう感じなの?」
 何気ない一言だったのだが、どうしたことだろう。レミリアの表情が、すっと消えた。
「………ままならないものよ」
 一言で、レミリアは返答した。それ以上説明する気はないようだ。先ほどまでとは打って変わって、どうにもつまらなそうな顔をしている。
そう言えば、とパチュリーは考える。

フランドール・スカーレット。彼女を幽閉したのも、レミリアの決断だと聞く。それはあまりにも突然のことで、パチュリーもあの時は驚いたものだ。なにせフランドールはたまにやんちゃをしでかすことや、常識というか、倫理観に疎いにもほどがあるところがあったが、それでも更生の余地はあった。あそこまでする必要はなかったように思えたのだ。従者たちの中にも少なからず抗議するモノがいて、特に門番の美鈴の激昂ぶりには目を見張るものがあった。主人に真っ向から楯つくなんて、普段の彼女からは想像もできなかったのだ。しかし、美鈴の奮闘も虚しく、結果としては今もフランドールは地下に一人幽閉されている。さて、あの時のレミリアはどのような表情だったか。
あれも彼女の能力故の出来事なのだろうか。訊いてみようと口を開いたが、パチュリーは、結局思い直した。なんとなく、自分が立ち入る領域ではないと感じたのだ。
ただ、パチュリーは思った。レミリアはフランドールを大切に思っている。パチュリーは彼女の親友だ。そんなことは、黙っていてもわかった。地下幽閉の際、一番心を痛めていたのもレミリアだろう。大切なヒトを苦しめなければならなくなった時、苦しめてしまった時、彼女は何を思ったのだろう。
………思って、それも訊くことはしなかった。訊いても、仕様のないことだ。
「綺麗でしょ、月。あんなにも輝いて。それが湖の水面にも映って」
 話を変えたかったのかもしれない。レミリアが手を大きく広げて、声を弾ませた。パチュリーは月を見上げる。金色に輝くそれは、なるほど、確かに美しかった。
「そうね」
ぽつんと言ってから、パチュリーは視線を移し、また紅魔館を見やる。
すると一時は、困ったお嬢様のいたずらに構っていて頭の隅に追いやられていたことが、また心の全てを満たすようになった。
残念だ。確かに月は綺麗だし、その下で夜風に吹かれながら親友と語らうのも楽しいだろう。しかし、それは平時のことである。今のパチュリーは、研究に取り憑かれていた。    
すぐに研究のことしか、考えられなくなる。
「レミィ、私そろそろ研究に戻らなきゃ」
 せわしないことだが、完成も間近なのだ。今は一刻も早く研究に戻りたい。
「さっきも言ったけど、パチェそれって本当に必要な研究なのかしら」
 呆れたような、レミリアの声。その表情は、すでに彼女から背を向けたパチュリーには、窺い知れない。
「貴女、私の研究が何なのか知ってるの?必要よ!」
 パチュリーは徐々に降下しながら、紅魔館に近づいていく。
「記憶の抹消、改竄」
パチュリーがすぐさま振り返ると、友達に置いてけぼりを喰らった子供のような、ただ純粋に寂しそうな顔をしたレミリアが空に在った。風が吹き付け、パチュリーの髪が乱れ、レミリアの衣装がはためいた。
「知ってたのね、レミィ」
パチュリーは力なく呟いた。
「どうかしらね」
 運命を操る程度の能力。パチュリーは心中に反芻した。彼女はその目で事実を知ったのか。それとも、能力故に察してしまったのか。何の前触れもなく、地下室に幽閉されてしまったフランドールの姿が脳裏によぎる。自分の研究の正体を知って、それを自分自身に話して、レミリアは何をしようというのか。
 言い寄れない焦燥感が、パチュリーに走った。
「文句でもあるの?『記憶を操る程度の魔法』の開発が、そんなに問題ある?」
「ないわ。ないけど、そうね」
レミリアはもはや、無表情に近い。
「つまらないことを考えるものね、と思ってるわ」
パチュリーは押し黙った。
「ここ幻想郷に、一緒に越してきた時から、貴女ずっと様子がおかしかったものね。そこまで消したい過去があるの?ねえ、貴女は………」
「黙って!」
 パチュリーから甲高い悲鳴のような声が出た。
「黙ってよ、レミィ。そこまでにして。運命が見えるんなら、わかるんじゃないの?私の研究に干渉するようなら、邪魔をするようなら、貴女に実験体になってもらうわよ。もう、本当に完成間近なの」
 パチュリーは顔をひくつかせて、笑みのようなものを作る。
「一時間二時間の記憶の抹消、ちょっとした意識の刷り込みぐらいなら、今の私は可能よ」
 レミリアは静かにパチュリーを見据えていた。そして、目を閉じた。ほんの一時である。ほんの一時の沈黙の後、やがてまた目を開けた彼女には、寂しさや哀れみはない。余裕に満ち足りた、妖艶な笑みを浮かべて、レミリアは言う。
「穏やかじゃないのね、パチェ。いいわ。そこまで言うんだったら、私はもう何も言わない。勝手にしなさい。人間嫌いの、誉れ高い魔女さん」
 親友の軽蔑したような物言いに、パチュリーは怒りも悲しみも湧かなかった。ただ力が抜けた。虚しい、とだけ感じた。嫌だなあ。弱音を吐きたくなる。脳が沸騰するような怒りよりも、身を引き裂かれるような悲しみよりも、この心ががらんどうになるような感覚が、パチュリーには最大の苦痛だった。思わず、立ち止ってしまいそうになるのだ。
「賢明な判断よ。それじゃ、さよなら、レミィ」
 さよなら。これは意図して放った言葉だった。パチュリーが完成を目論む魔法は、本来ならば発動までに、魔女としての視点からでも多大なる時間と手間がかかるような強大なものだ。それがほんの少しの手順と準備で実現できるよう、彼女は今まで研究に研究を重ね努力してきた。しかしそれでも安定していると言えるのは現段階の効果までのもの。きっとこの『記憶を操る程度の魔法』が本来あるべき能力を持ったものにまで進化すれば、それは相当術者にとってリスキーな代物になるはずだ。
 これだけ苦労しても出来るのは、欠陥品なのである。これ以上魔法の質を上げる方法は、今のパチュリーには思い当たらない。だが彼女はそれに気づいてもなお、研究を止める気にはならなかった。魔法の暴走など知ったことか。例え全てが終わった後に、自分が自分でなくなっていようとパチュリーはどうでもよかったのだ。
 そこまで消したい過去があるのか。親友に訊かれた。
あるのよ。心中でパチュリーは答える。全てを掻き捨ててでも消さなければならない、そうでないと『魔女として』生きていけないような過去が、ある。
「賢明?当然ね。私はたくさんの妖精といくらかの妖怪、一人の人間を従える主だもの。保身には気を配らなければいけないわ。でもね、パチェ」
 レミリアの最後の言葉は、急ぐパチュリーには届かなかった。
「私は博打も好きよ」

 

図書館に戻ると、まずパチュリーは違和感に気付いた。
「虫の羽音が聞こえるわね」
 わざと室内に響くように、大きな声で、彼女は言う。辺りを警戒しながら、一歩一歩と奥へ進んでいく。さきほどまで使っていたテーブルに目が止まった。無造作に積まれた書物の背表紙に指を這わせながら、パチュリーは声を発した。
「上から三冊目。植物学の本が見当たらないわ」
 並ぶ背の高い本棚の間をゆっくりと練り歩きながら、パチュリーは侵入者の痕跡を明確に感じ取る。そこら中に張り巡らされた魔法の仕掛けが、どれも解かれるか発動しているのだ。
「魔道に精通しているのかしら。でもまだまだホンモノから見れば大したことはないわね。本棚から抜き取られたものを見てもそう。適当に興味を引かれたものを読めばいいってものじゃないわ」
 足音。すぐさまそれが聞こえた方向を見ると、黒いスカートの裾が、本棚の後ろに隠れるのを認めた。一番奥の本棚か。パチュリーはポケットからメモ帳を取りだすと、何事かを囁いた。するとだ。物凄い轟音とともに、今まさに何者かが隠れた本棚が倒れ、壁にぶつかって動きを止めたかと思えば、一瞬の間を置いて、それは粉々に砕け散った。
 あれは魔法をかけたのではなく、解いたのだ。廃材の山から本棚でも作れないかと思い立って出来上がった成功例だが、一度術が解ければこの様か。やはり少し実用化は危険かな。パチュリーはやたらに冷静に考えた。今の彼女の心は、穏やかというよりは、しんと静まり返っていた。
 廃材と本の山の前に立ち、パチュリーはのたもうた。
「誰かいる?例えば頭の悪い泥棒とか。もしいるんならけし炭になる前に出てきたほうがいいわよ」
 十秒待だけ待ってあげる。パチュリーは声に出してカウントを始めた。じゅう………きゅう………はち………。
「誰もいないぜ」
 ぼそっと何か聞こえた気がしたが、パチュリーは構わずカウントを続けた。なな………ろく………ご………。
「わかった、わかったよ。出るって!」
 廃材と本を突き飛ばし散らして這い出てきたのは、人間の少女だ。いかにも魔法使い然とした古風な格好が、逆に彼女らしさというものを感じさせる、快活そうな娘だった。手には箒と、なにやら物がたくさん詰まって風船のように膨れた大袋が一つ。
「悪かったよ、勝手に漁ったりして。でも聞いてくれよ。盗むつもりはなかったんだ。借りるだけのつもりだったんだぜ」
 へらへらと笑う少女に、パチュリーは憮然とした調子で問う。
「ここに来るまでに門番と妖精たちと小悪魔がいたはずだけど」
「門?空飛んできたから意味なかったぜ?あと妖精なんか一匹も見かけなかったし、悪魔みたいなのならそこだ」
 少女が指差した先には、部屋の角で伸びきっている使えない使い魔がいた。
「あれは私がやったんだ」
 人間は吸血鬼よろしく、胸を反らして偉そうな態度だ。
「お前も、やっつけられちまう前にどこかに避難したほうがいいかもしれないぜ?」
 冗談のように、というか、この人間は本当に冗談を言っているようだった。
「魔女の私に、勝てると思う?」
「お前みたいな、紫色したもやしなら勝てそうな気がするぜ」
「………外に出ないから、そういう見た目なだけよ。外に出ても嫌な気持ちになるだけだからね。髪痛むし。ていうか、魔女に肉体的な強さはいらないでしょ」
「ここは広いなあ。こんな広いとこに本溜め込んで、どうするつもりだ?せっかく知識を頭に詰め込んでも、それを誰にも披露しないんじゃ意味ないぜ。試しに私に披露してみることを勧めるぜ」
「貴女、私の話聞いてる?」 
 少女はうろちょろと館内を徘徊し出して、パチュリーには目もくれていない。 
「聞きなさい、人間」
 しびれを切らしたパチュリーが、鋭く声を発する。ただの叱咤ではない。魔法の力を練り込んだ、聞く者を芯から震えあがらせるような独特の声音だ。近くの本棚に手を伸ばそうとしていた少女が、ぴたりと動きを止めた。
「ふざけた態度を取って、油断させようとしても無駄よ。私は本物の魔女。多少でも魔法をかじっているのならわかるでしょう。人間の貴女は、私には敵わない」
 パチュリーは手招きをして、少女を引き寄せようとする。
「盗んだ物を返して、ここから大人しく出る。そうすれば見逃してあげるから、そうしなさい。一応言っておくと人間さん、これは私のお情けなのよ。わかるでしょ?従うべきか否か、ちゃんと判断できるわね」 
少女は至ってマイペースだ。パチュリーが話す間も、ちらちらと辺りの様子を観察している。しかし警戒していると表現するには、少し堂々としすぎていた。
「人間じゃなくて、名前で呼んでくれよ。私にだって立派な名前があるんだぜ」
 この状況で、そんなことが言えるか。パチュリーはひそかに絶句した。
「………お名前は、なんていうの?」
「人に名前を訪ねる時は、まず自分から名乗るもんだぜ」
 パチュリーは眉間に手を当てて、渋面で一考してから、言う通りにすることにした。いいからさっさと帰ってもらおう。
「パチュリー・ノーリッジ。人間嫌いの気性の荒い魔女よ」
「霧雨魔理沙。別に人間は好きでも嫌いでもない人間だぜ」
 ………。自己紹介は終わった。パチュリーはつかつかと魔理沙に近寄ると、彼女が後ろ手に持っていた白地の大袋をひったくった。
「返してもらうわよ」
大袋を逆さにして、何度か振って盗品を回収すると、あーあ、と魔理沙が口をとがらせて不満げに言う。
「なんだよ、つまらん。病弱そうな面して、意外と気強いのな」
「持ってかないでー、とでも嘆いてるだけだと思った?おあいにく様。今私は忙しいの。そういうのはまた今度ね」
 病弱なのは事実だが、今日はまだ調子がいいほうだ。人間の小娘のご期待に添える気はしなかった。魔理沙は首をすくめて、納得がいってないようだ。
「それで、なんで人間嫌いなんだ?パチュリーは」
 突然で不躾な質問だった。
「………なんで、あんたにそんなこと話さなきゃならないのよ?」
はあ?となぜか魔理沙のほうが首を傾げた。
「なんでって、お前………、私に話を聞いてほしいから、わざわざ自己紹介に人間嫌いって付け足したんじゃないのか?」
ん、とパチュリーは一応考えて、その上で首を振った。
「違うわ。あれは牽制よ。貴女が随分と私を舐めた態度取ってるもんだから、別に貴女は無事が保障されているわけじゃない。私は人間を殺すことなんて厭わないわ、という意思表示をしていたの」
 なんで私は自分の発言の解説なんかしてるのよ。
「ああ、そうなのか。まあいいじゃん。話せよ。なんか、面白そうだ」
魔理沙は悪意の欠片もなく、にっこりと笑う。こいつは………。
「あまり調子に乗らないことね、人間。貴女は自分の脆さというものを自覚したほうがいい。ふざけた態度ばかりとってると、本当に殺すわよ」
パチュリーは、今度は真剣な脅しを口にする。対する魔理沙は表情こそ変わらないが、彼女にもそれなりの気構えがあることを、パチュリーは察した。瞬時のうちに、退路を確認した視線。無造作なようでいて、その実どこからの奇襲にも対応可能な油断のない佇まい。逃げの一手は彼女の定石か。素っ頓狂な言動のわりに、意外と抜け目ないじゃない。嫌いじゃないわ、そういうの。パチュリーはくすりと笑った。
「あんたはやたらと人間って言葉を使いたがるな。種族の違いがそんなに気になるか?差別なんて今時流行らないぜ、パチュリー」
「事実として、人間と魔女には厳然とした決定的な差異がある。それを頭足らずの人間どもが忘れたりしないよう、明確に掲示しているだけのことよ」
魔理沙は口をへの字に曲げて、とにかく不服そうだ。
「私は、人間と人外の違いなんて気にならないがな」
 ろくな知識も持たない人間の小娘が生意気を言う。口ぶりからして、妖怪に知り合いでもいるのかも知れない。ならば、とパチュリーは言う。
「生きている時間が違うわ。貴女だって人間と人外の寿命差ぐらい、感じたことがあるんじゃない?私たち魔女からすれば、あっという間に人間なんてものは枯れて死ぬ。何も成さぬままに、何も語らぬままに、死にたくて生きたみたいに死ぬ」
「私の一族はみんな長生きだぜ。健康に気を使ってるからな」
 こいつは、強い人間なのね。まるで怯まない魔理沙に、内心で呆れとも賞賛ともつかない気持ちを、パチュリーは抱いた。しかしからかうような声音で、彼女は続けた。
「貴女もそうなんでしょうね。せかせか動いて、きらきら笑って、まるで流れ星みたい」
 魔女は笑った。
「今にも燃え尽きそうよ」
しかし魔理沙も笑い返した。
「そりゃいいぜ。まああんたの言う通り、人間の一生は限られてる。魂燃やして派手に生きなきゃつまらない。もったいないからな。人生はパワーだぜ」
 ………どこまでもひたむきな奴。面白くないわ。ふと零れた感想は、果たして言葉となったかどうか。パチュリーはここにきて疲れが出たようで、本棚にぐったりと寄りかかった。
 意味のないやり取りに辟易したのもあるかもしれない。この強引なお客さんは、どうやたら帰ってくれるのか、パチュリーは考える気も起きなかった。
 本当にけし炭にする?嫌よ、そんなのは。
「あん?どした?体調悪いのか?」
魔理沙は屈んで、パチュリーと目を合わせた。
「ま………、貴女は元気すぎるわね。ここには似合わないぐらい」
 どこもかしこも薄暗く、時が死んだように濃密な沈黙が充満する紅魔館には、彼女の存在がひどく浮いていた。魔理沙は意味がわからないようで、きょとんとしている。
「どうしてここに来たの?」
  かねてからの疑問を、パチュリーは言葉にした。
最初はレミリアの回し者かと思ったが、どうやら違うようなのである。この館の悪名もそれなりに轟いているはずなのに、彼女が単身ここまで侵入してきた意味が、パチュリーにはわからなかった。
 むむむ、と魔理沙は唸った。答えあぐねているというわけではなくて、どう説明したものか困っているようだ。と、思いついたらしい。目をぱちくりさせてから、自信満々に魔理沙は言った。
「面白そうだったからだぜ!」
「………はあ?」 
「だから………面白そうだったからだぜ?」
「面白そうだったから、来たの?」
「ああ、そんな匂いがぷんぷんしたからな」
「へええ、そうなんだ………」
パチュリーは呆気にとられた。説明が言葉足らずな友達ならパチュリーにはいる。それなら別段驚くことはなかった。しかしそうではなかったのだ。言葉が足らないのではなくて、彼女がたったの一言で回答を完結させてしまったことにある。
 好奇心。それだけが、彼女の原動力だというのか。それだけのために、人間や、妖怪までもが忌避した吸血鬼の館に出向いて、物を盗んで、それが露呈してもなお平然と会話に興じているというわけか。
 信じられないことだ。信じられないことだが、彼女の長年生きた魔女としての観察眼が、目の前の少女の言葉を肯定していた。いやにまっすぐな目が、パチュリーを射抜いていた。
 人間と人外の差異など気にならない。ああそうだろう。パチュリーはようやく合点した。耳にしたときはただのやせ我慢にしか聞こえなかったその言葉は、今や十二分の説得力を持ち合わせていた。単純明快な思考回路を持つ彼女からしてみれば、確かに生きる時間や肉体の違いなど、瑣末なことだ。
 自分がいて、相手がいて、その時間をその時間のままに感じられるのが、きっと霧雨魔理沙なのだろう。
 パチュリーは笑ってしまった。思考をそっちのけにして、身体が愉快そうに震えた。
「おっ、元気でたか?」
「脱力したわよ、単純バカ。確かに貴女の前じゃ、種族云々の話は大した意味をなさないのかもしれないわね」
「ほめ言葉として受け取らせてもらうぜ、それ」
「勝手にすればいいわ」
 パチュリーは身体を起き上がらせると、空の大袋を魔理沙に返して、ゆっくりと歩を進めた。当たり前のように、その隣を魔理沙が歩く。
「貴女みたいなのに会ったことがあるわね。昔、貴女からしたら大昔なのかもしれないけど、人間の知り合いがいたわ。幻想卿に来る前の話よ」
 一泊遅れて、魔理沙は訊いてくる。
「昔話な。話す気になったのか、人間嫌いの訳?」
 ぶっきらぼうな問いかけだ。パチュリーはしかし、もう怒ろうとはしなかった。
「そうね。貴女の言う面白さはないだろうけど、気が向いたの。話してあげてもいいわよ。どう?」
「聞かせてもらうぜ。面白いかどうかは、私が判断することだからな」
 魔理沙は笑いかけてくる。お前も笑えとでも言いたげな表情だ。


「私は、かつて小さな、人間たちの田舎町に住んでいたわ。ううん、潜んでいたと言ったほうがいいかしらね。なにせろくに家を出ることがなかったもの」
 ぽつぽつと、パチュリーは語りだした。
「私がその町に住んでいたのは、まあ大した意図はなかったわね。人が少なくて、静かそうだったから。後は親友の狩場だったから、とかそんなものだったわ」
 そういえば、あの頃のレミリアが一番、吸血鬼らしさというものを持っていた。闇夜にまぎれ、人を喰らい、空を優雅に駆って人間たちを存分に恐怖に陥れていた彼女には、その偉業のすべてがカガクテキにカイメイされてしまった今にはない、真性の魔物としての存在感があったものだ。
と、魔理沙は聞いているのかいないのかわからない顔だ。ふらりふらりと周りに視線をさまよわせている。
「まあ、私も隠し立てする気はなかったからね。私が、向こうにしてみれば化け物、魔女だってことはすぐに町中に知れ渡ったわ。当然、外に出れば連中には白い目で見られたし、頭の悪い言葉をかけられたこともあったけど、面白かったのは、誰もその邪悪な魔女を討ってやろうとはしなかったことね」
 やっぱり、まだ身体がだるかった。近くの椅子を引くと、パチュリーは座る。魔理沙は当たり前のようにテーブルに座った。がさがさと、本が何冊か地面に落ちた。
「そんな生温い迫害の中で、私は黙々と研究に勤しんでいた。その頃は、なんについてだったかしらね………防火防水の魔法だったかしら。とにかく、平和に日々を過ごしていたのよ。そんな時だった。厄介ごとが私の元に舞い込んできたのは」
 パチュリーは、自分を見下ろす少女を見た。
「突然、人間の女の子が家に上がりこんできたのよ。そして、驚くべきことに、弟子入りしたいだなんて言ってきたわ。正直、私には幾千幾万の罵詈雑言より堪えたわね。だって彼女の言動は、今まで私が研究して結論付けた人間の典型とは、明らかに違っていた」
「やってるのは私と同じことだな」
 へへ、と魔理沙は笑った。あの子はあんたほど失礼じゃなかったけどね。
「最初こそ相手にしなかった私だけど、来る日も来る日も頼み込まれて、いい加減疲れてきちゃってね。根負けした私は、毎日幾つかの質問ぐらいになら答えてあげるようになった」
へええ、と魔理沙は感心したようだ。
「そこまでして、パチュリーに弟子入りした理由ってなんだったんだ?」
 パチュリーはぴんと指を立てて、魔理沙の鼻先に突きつけた。
「好奇心、だそうよ。魔法の力を『不思議なこと』で済ませる気になれなかったみたいね」
 ただし、とパチュリーは付け足した。
「あくまで動機だけどね。状況が変われば、目的も変わることはある」
 魔理沙は頬杖をついて、明後日のほうを向いた。何事かを考えているようであった。
「私も、彼女も、日が過ぎていくうちに活動を共にすることが多くなかった。彼女は魔女のように知識を蓄え、力を蓄えるようになった。私は人間のように、笑い怒り悲しみ、とにかく感情の発露が目立つようになったわ」
 その弊害は今もなお残っている。
「私たちはどちらも盲目だった。ただ一途に知を探求していた。その頃から、たまに彼女がかすり傷や、青あざをつけてやってくることがあったけど、彼女がなんでもないと突っぱねるものだから、気に止めてはいたけど、私がそれ以上その件に干渉することはなかった」
 乾いた唇をなめる。そこで、パチュリーはいつの間にか自身の声が、小さく弱々しくなっていたことに気づいた。
「ごめん、私の声、聞こえていたかしら」
「聞こえてるから、大丈夫だぜ」
 気遣うような、魔理沙の言葉。パチュリーは一つ息を吐いて、また話し出した。
「ある日だったわ。彼女は私に、出会った頃みたいな必死さで、頼みがあると言ってきたの。なんのことはない、人間じみたシンプルな要求よ」
 魔理沙に言葉が伝わるように、パチュリーははっきりと語調を強めて言った。
「もっと生きたい、と彼女は言ったの。不老の力がほしいと。貴女と共にあるにはこの身は脆すぎると。私がその術を知らないと答えたら、今度は一緒に探してくれと頼んできたわ。………私はもう、あの頃は『魔女』なんかではなかったもの。私はただ彼女を抱きしめて、それに応えてしまった」
 魔理沙は眉を八の字にしたが、口出しはしなかった。
「といっても、その決断は無駄に終わったわけだけどね」
パチュリーは小さく笑った。おかしなことだ。今その光景を思い返してみても、パチュリーはうらみつらみが再燃することはなかった。その場に呆然と突っ立っていた自分を、ぼんやりと情けなく思うぐらいのものだった。
「約束した日から、彼女はぱたりと私の元に来ることがなくなった。三日と待たず、私は彼女を探しに出たわ。住み慣れた町だったからね。いろいろと細工をしておいたものだから、居場所はとうに特定出来ていた」
 少々、咳がでた。しかし構わず、パチュリーは言葉を紡いだ。
「今でもたまに思い出すわね。あれは夏の日だった。本当に蒸し暑かったの。汗で衣服が背中に張り付いて、髪が頬にまとわりついて、とにかく嫌な気持ちだった。彼女を見つけたのはちょうど正午ぐらいだったわ。日の当たらないゴミ溜めみたいなところに、無造作に転がっていた。遺体に、羽虫がたかっててね………嫌な気持ちだった。本当に」
 見れば、魔理沙が難しい顔をしていた。似合わないわよ、そんな顔。言ってやる元気は、パチュリーにはさすがになかった。
「言うまでもないことでしょうけど、彼女は殺されたの。複数犯なのはわかったけど、誰がやったかまでは調べようがなかったわ。でも、あの頃の彼女が抵抗したら、それなりの惨事になるはずだから、油断を誘えるような間柄の人たちだってことは確かなんでしょうね」
 魔理沙の顔が、さらに曇った。
「予測のできない結末ではなかったのかもしれないわね。もともと連中は私を危険視していたし、あの子もそんな私と人目を憚らずつるんでたんだもの。私が恐ろしくて手が出せないなら、弟子の彼女を。誰かがいつかは考えても、おかしくはなかったかもしれない」
 さて、面白くない思い出話もそろそろお開きにしようか。パチュリーは思った。
「これぐらいが理由ってことになるかしら。私はね、人間も、外も、あれからより一層嫌いになった。だって日の光は髪や本が傷むし、奴らに根付く意識、思想なんてものはもっと身体に悪いってわかったから」
 じっとパチュリーの様子を窺っている魔理沙に、小首を傾げて彼女は訊いた。
「以上よ。満足してもらえた?霧雨魔理沙さん」
うう、と魔理沙が唸った。頭を抱えて、首を振って、帽子を取った。がしがしと頭を掻いて、長くて艶やかで金細工みたいに綺麗な髪を乱しに乱した。
「なんつーかな」
 魔理沙は腕を組んで、見るからに考え込んでから、言った。
「………悔しい」
 一瞬、誰が言ったかわからなかった。しかし、落ち着いて考えれば、それは魔理沙の声に他ならなかった。ただその声音が不自然に女性じみた、聞く者に一種の危うさを感じさせるものに変わっていただけだ。
「お前がそんな『人間らしさ』しか見られなかったことが、私は悔しいぜ」
 どうにもならないことを、魔理沙は言った。慰めにしたって、気の利かない一言だった。
 単純で愉快できらきらと輝く世界に生きる小娘の、これが唯一口に出せた言葉なのだろう。やはり人間は取るに足らない。パチュリーは笑いたかった。
 笑いたいのに、笑えない。激しい痛みに耐えるように、顔をしかめる魔理沙を見て、自分の今のあり様を眺めて、溢れそうな気持ちを、必死に抑えるのに精一杯だった。
 


レミリアと咲夜のことを考えた。 
 お互いに傷だらけになって、それでも今は、良き従者と主の関係に落ち着く二人。
 『立場上の決闘』を終えた彼女らが、どうして意気投合したのかパチュリーにはわからなかった。でも今なら、少しだけ理解できる。
 魔理沙なら。この目の前の愚かな少女が相手なら。喧嘩一つでいろんなしがらみを掻き捨てることができたのかもしれない。例えば、そう。くだらない動機の喧嘩だ。
 さきほどのように、盗品でも巡って対峙するのだ。普通に戦っては勝負にならない。最近適用されたスペルカードルールなどに則ってみるか。お遊戯には慣れていないが、ようは喧嘩であろう。なんとかなるのではないか。そして、いずれは。
 勝って負けて何度も戦って、いつしか『人間』などどうでもよくなる。そう思えるような日が、来るのでは。 
 

そんな妄想を、ふとパチュリーは抱いた。そして今度は、ちゃんと笑えた。
 なんて、ね。全ては手遅れだ。パチュリーは自身の心が鉄のように冷たく硬くなっていくのを感じた。彼女はもう決断している。今さら自分の意思を曲げようとはしなかった。
 それこそ、運命にでも定められなければ。

「さて、用件はもう済んだわね、人間さん。十分でしょ?もう出て行って」
 座ったまま、パチュリーは出口を指差した。
「パチュリー………」
 魔理沙は悔しそうだった。彼女の目に映る感情は攻撃的だ。同情などという、消極的なものはなにもない。アンフェアな試合に負けて、抗議しようとする選手の心境に近かかった。しかし、彼女は言う。
「うん。わかった。今日のところは帰らせてもらうぜ」
 今日のところは、とは。パチュリーはおかしく思った。わかってないのね、貴女。
 どうしてパチュリーが、自分に全てを語ったか。その意味をまるで理解していないのだ。
「じゃあな」
 手をひらひらと振って、図書館を後にしようとする魔理沙。しかし、彼女は足を止めた。身体に、ずしりと重みが加わったのだ。魔理沙は身を硬くして動けなかった。
「魔理沙………」
 パチュリーは魔理沙を、しがみつくように、後ろから抱きしめていた。
「なんだよ、愛の告白か?」
 魔理沙は軽口を叩くも、明らかに動揺していた。目には警戒の色が浮かび、手に力がこもるのをパチュリーは見た。
「盗んだものは全部返してって言ったわよね」
「全部、返したぜ?」
「返してないわ」
 パチュリーは魔理沙を、本当に愛おしそうに抱きしめた。子を想う母のように、ぎゅっと包み込んだ。目を瞑って、ささやくように、彼女は語りかける。
「私の心を盗み見たでしょう。私のとても大切な思い出を、奪っていったでしょう」
 魔理沙の力が抜けた。パチュリーが首に回した腕に、彼女は手を添えた。
 彼女は何を言うつもりだったのだろうか。パチュリーは考えて、
 きっと取るに足らないことだ、と決め付けた。
「返してもらうわ、貴女の記憶、私の決意」



ほぼ紅一色を色調とした紅魔館。
その窓なき廊下を、館の主たるレミリア・スカーレットは悠々と歩いていた。その隣を、いつの間にか自らの従者が歩いていたとしても、その傲慢なまでの余裕は揺らがない。
「さっき、そこで変な人間に会ったわ、咲夜」
 自身が与えた名前を、舌で転がして弄ぶように、レミリアは口にする。
「見かけましたね。うわ言のように、ここには面白いものなんて何もないんだぜ、などと何度もぶつぶつ呟いていました」
 咲夜は毅然とした態度で報告した。
「まるで洗脳でもされたようでしたね」
「きっとどこぞの魔女につまらない魔法をかけられたのね。可哀想に。まあ、寝たらちょっとは落ち着くんじゃないかしら。わかんないけど」
 魔法は専門外なのよ、と吸血鬼はなぜか胸を張って言った。
「さすがはお嬢様、どこの馬の骨とも知れぬ侵入者の身を案じるとは、そのご慈愛のほどにはほとほと敬服いたしました」
 言う咲夜には、常にはない年相応の無邪気さがあった。頬を指でつつくような声の調子に、しかしレミリアも気を悪くした風はなかった。
「至らないわね、咲夜。私は昔からそうよ。下々の者を畏怖させるだけではない、それ以上の畏愛の念をごく当たり前のように抱かせる振る舞い。それが支配者たるモノの、まあ必要条件といったところかしらね」
 両者共に思うところを含んだ笑みを浮かべて、会話は続いた。
「それより聞いてくれるかしら。あの頑固な魔女のこと」
「拝聴しましょう」
長い長い廊下はずっと延びている。
「散歩から時間を置いてね。そろそろ頭を冷やしたかな、と思ってこの私がわざわざまた説得にいってあげたのよ。そしたら、なにあれ?ずっとぐすぐす言っていて話にならないんだもの」
 レミリアの表情が、わずかだが物憂げに変化した。
「喧嘩をする相手がいないって、どういうことよ」
「どういうこと、でしょうか」
 沈黙。しばらくは、どちらもが口を開かないままに歩みを進めた。

「運命なんて、たかが知れているというのに」
 吐き捨てるような吸血鬼の言葉。ちらと咲夜が様子を伺うと、レミリアもまた咲夜の様子を伺っていた。
「運命なんてものはね。不変じゃないわ。むしろ呆れるほど簡単に流転する。私は知っているからね。ちょっとした一言が、行動が、めまぐるしく運命を変化させてゆくことを。能力があったって、いえ能力があるからこそコントロールできないぐらい、ころころと移り変わっていくことをね」
 レミリアはなにかを鬱陶しがるように、手で払った。
「つまり、何事も心がけ次第だってことよ」
 言葉にしてから、しまった、という風にレミリアが顔をしかめた。
「つまらないことを言ったわ。許して」
 咲夜はただ首を振った。
「ところでお嬢様は、なにか私に仰りたいことがあったのではないですか?」
 レミリアは、言葉を返さなかった。逡巡とも取れるような一瞬が、あった。
しかしそれはやはり一瞬だった。
レミリアは目を瞑った。彼女が気持ちを整えるのに時間はかからない。束の間の静寂を残して、レミリアはまた目を見開いた。その口元には、薄っすらと笑みが広がっている。咲夜もまた、それに応えて微笑んだ。
「あるのでしょう?素晴らしい面白おかしい企みが」
 当然よ、とレミリアは自信満々だ。
「常々思っていたことだけどね、咲夜。今日散歩をしていて実感したわ。………私が夜しか何の気兼ねもなく散歩できないのって、おかしくない?」
 咲夜は顔を綻ばせたままだ。
「なるほど、言われてみれば、ごもっともです」
「そうでしょう。自分でもよく今まで我慢したと思ったわ。だから、頑張るのを止めるわ」
「なるほど、なるほど」
「考えてみれば簡単なことよ。日の光が嫌だから、私は満足に散歩もできなかったの。ならば、取るべき行動は一つだと思わない?」
 レミリアは目を爛々と輝かせて、言葉を続けた。
「日光が邪魔なら、遮ってしまえばいいじゃない!」
 薄暗い廊下に、はしゃぐ子供のような声が響いた。
「赤い霧を、それはもうこの幻想卿中に充満させるぐらいに出してやるの。そしたら、ほら、万事解決よ。そうでしょ?」
「全くもってその通りです。さすがはお嬢様、針一本の穴の抜かりもない、完璧な計画でしょう。しかしながらお嬢様。その素晴らしい計画を敢行なさると、お楽しみがもう一つ二つ増えることにはお気づきでしょうか?」
 咲夜の確認に、くすくすとレミリアは笑った。
「愚問ね、咲夜。そんなこと最初から折り込み済みよ。でも貴女がそれに気づけたのは、偉いわ。怒らないから、話してごらんなさい」
 はい、と迷いなく咲夜は返事をした。
「赤い霧が幻想卿中を満たすのであれば、当然、人里にもその影響は出ます。作物にはまず害があるでしょうし、人間たち自身も平然とはしていられないでしょう。きっとこの件は大きな問題として幻想卿を騒がせ、そしてそれを収拾する役目を負った者が現れるのではないでしょうか」
「続けなさい。それだけじゃないでしょう」
 レミリアは心底楽しそうな顔を作っていた。
「役目をもった者だけではなく、他の、暇を持て余したような者も惹きつけられてしまうかもしれませんね。面白そうな雰囲気に魅せられて、光にたかる羽虫のようにやってくるかもしれません」
「そしたら、みんなで盛大に歓迎してあげなくてはいけないわね。華麗な弾幕で、一機残らず叩き落してあげなきゃ」
 レミリアはそう言って、ひとしきり高らかに笑うと、やがて感情のスイッチでも切れたかのように、素の表情を覗かせる。
「………ね、咲夜」
「はい、なんでしょう」
 レミリアは迷うような素振りを見せながらも、言葉を続ける。
「私は不安よ。私は運命を操れてしまう。だから、とても不安」
 咲夜は無反応のままに、耳を傾けている。
「大切なものを守ろうと手を伸ばしたばっかりに、全てがめちゃくちゃになってしまう。そんなことが起こったらって思うと、恐ろしくてたまらないわ。運命を知った私が放った言葉が、起こした行動が、私が生きる世界を瓦解させる。それを想像すると、本当に怖くて、いや」
 レミリアは、わずかに声を震わせていた。
「でも、止められないわ。だって、私は我儘だもの。欲しいものはなんでも手に入れるし、得たものは何ものも手離したりなんかしたくない」
 言い切ってから、レミリアは自らの従者を仰ぎ見た。
「申し訳ありません、お嬢様」
咲夜はいきなり謝った。
「仰っている意味が、よくわかりませんでした」
 主人の顔を見ることもなく、従者が言ってのける。レミリアは笑った。どことなくひきつった、不器用で精いっぱいの笑顔だった。
「至らないわね、咲夜。勉強なさい」

  
 
「あら、どうしたの、咲夜?」
 彼女の問いに、咲夜は一礼で返した。
「申し訳ありませんが、ここに用がありまして」
 咲夜が手にしたトレイ、その上の紅茶と洋菓子をレミリアは眺めた。扉を傍らに立つ彼女は、心なしか誇らしげだ。
「………ま、いいわ。話は済んだもの。でも咲夜、それと同じものを後で私にも持ってきなさい。早急によ」
 かしこまりました。従者の言葉を背に、レミリアはまた悠々と歩く。
 コンコン、と、ノックの音が廊下に響いた。


 
 
設定の改変とかいろいろアレですが………。
初心者です。ご指摘、ご感想などよろしくお願いします。
のしのし
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コメント



0.790簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
若干魔理沙の口調が気になりましたが、全体的にはすごく良かったです。
これからの期待も込めて。
10.100名前が無い程度の能力削除
この雰囲気は好き
このパチュリーとお嬢様もかなり好き
16.100名前が無い程度の能力削除
うお・・・なんだこれ文章そのもののクオリティが高く感じました
パチュリーと咲夜の絡みって人それぞれ多様な解釈がありますが、この話のそれは良かった。なるほどと思いましたね
21.100ずわいがに削除
紅魔郷前の険悪ムードな紅魔館、わぉ。パッチェさんのギスギスした雰囲気や、他の面々の複雑な経緯も面白かったです。
個人的にはフランの幽閉と美鈴の激昂について特によく読んでみたかったですなぁ。
23.100名前が無い程度の能力削除
遅れ馳せながら。

この話、感じ入るものがありました。

『それはそれは恐ろしい儀式』、今から読みにいきます。