Coolier - 新生・東方創想話

我ら、紅魔館FC! 第六節

2010/04/07 18:57:30
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 ※ このお話は『我ら、紅魔館FC! 第一節』からの続き物になります
 
 
 





 
 
 




 ――博麗神社 境内前――
 




 「う~ん、神社の境内に人がたくさん……。夢にまで見た光景なんだけど理由が理由なだけに素直に喜べないわ」
 そう言って、この神社の管理者でもある博麗神社の巫女、博麗 霊夢は顎に手を当てて現在の光景を見ながら感想を漏らす。
 
 
 霊夢がそんな感想を漏らしたのには理由がある――。
 


 今現在、幻想郷の東の端にある博麗神社の境内は普段ではあり得ないほどに沢山の人妖達で埋め尽くされていた。
 




 「よぉ~ぅ、霊夢!! いやいや凄い人だかりじゃないか! 
 普段からお賽銭が無い、信仰が無いって嘆いていたけど、それも今日でお仕舞いになりそうだな。
 やっと地道な妖怪退治や異変解決の努力が報われたってか?」
 
 「今日ウチの神社が賑わっている理由を知ってるくせに良く言うわ。
 からかってんのなら遠慮なく退治するわよ? ……あんたは妖怪じゃないけどね、魔理沙」
 軽い口調で冗談を飛ばす魔理沙に、霊夢は若干不機嫌な面持ちで応える。
 

 「おぉ、恐い恐い。まぁ、そんなに顰めツラするなって! どんな理由があるにしろ、神社が賑わうのはいい事だろ? 
 少なくとも寂れて閑古鳥が鳴いてるよりはさ」
 「どうせこれも今日限りじゃない。明日にはいつもの神社の風景に戻ってるわ。
 ……ふむ、なら今日ここにいる連中全員からお賽銭を徴収してやろうかしら?」
 「うへぇ、薮蛇だったか」
 
 そんな物騒な事を言い始めた赤白の巫女の思考の的を逸らすように、魔理沙は続けて霊夢に話しかける。

 「しかし、改めて見てみると凄い光景だな、これ」
 「ん? まぁね、何も知らずにこの光景を見たら、ちょっとした異変か!?って思うかもしれないわね」
 
 魔理沙に思考を遮ぎられた霊夢は、そう言って境内にごった返している人妖の人集りを呆れた様子で見始めた――。
 



 
 さて、上記で霊夢と魔理沙の二人が散々と口に出して言っていたが、現在博麗神社はたくさんの人妖で賑わっている。
 これが妖怪達だけであれば、博麗神社で不定期に開らかれる宴会の集まりであると推測も出来るのであるが、
 今日は人里に住んでいる人間達も大勢そこに混じっていた。
 
 身の安全が保障されている人里と違って、幻想郷の東の果てにある寂れた神社に基本的に人を襲う存在である妖怪達と、
 襲われる存在である人間達が一つの場所に固まって存在しているというのは成る程、
 霊夢の言う通りちょっとした異変であるのかもしれない。
 


 ただ今日の博麗神社にはそんな幻想郷の摂理に反してでも集まってしまう様な出来事、つまりイベントがあるのである。
 

 ――そう、今日の博麗神社で開催されるイベント、それは今幻想郷で一番ホットな話題である『幻想郷サッカー大会』に関するイベント。
 『幻想郷サッカー大会』の第一関門であるリーグ戦のチーム組分け抽選会が行なわれるのである。
 



 
 「――紫、いる?」
 しばらくの間、呆れた様子で境内を見ていた霊夢はふと虚空に向かって話しかける。
 
 「なぁに? ここにいるわよ」
 すると、何もない空間が突然パクリと裂けて、――そこから上半身だけ身を乗り出したスキマ妖怪こと八雲 紫が返事を返す。
 

 「何でウチを『幻想郷サッカー大会』の抽選会場にしたのよ?」
 「何だ、そんな事? それは私達、妖怪が集まり易くて、人間もある程度安全が保障されている場所がここしかなかったからよ。」
 「そんなの人里でいいじゃないの」
 「私クラスの大妖怪になると、人里に長くいると何だか肩が凝っちゃうのよねぇ……。ここなら気が楽だし、いいじゃない」
 「あんた達妖怪はウチの神社を何だと思ってるのよ……」
 
 博麗神社が抽選会場に選ばれた理由が、おおいにスキマ妖怪の私的な理由に基づいて
 決められていた事に霊夢が緩やかな頭痛を覚えていると、
 

 「あら、もうそろそろ始まる時間ね。一体、どんなチーム分けになるのかしら? 
 うふふっ、ワクワクしてこない、霊夢?」
 霊夢の質問には答えず、紫は相変わらず胡散臭い笑みを浮かべながら視線を霊夢に流す。
 
 「ワクワクも何もあんた、この『幻想郷サッカー大会』の企画発案者でしょ? 
 今日のリーグ戦のチーム組分け抽選会、仕切んなくていいの?」
 紫の視線を受けた霊夢はそう訊ねる。
 

 「今日の仕切りは藍に全て任せてあるわ。今日の私は『幻想郷SG』の選手兼監督よ。
 ……その方がより楽しめるでしょう?」
 「あんたの従者も大概にして大変ね。まぁ、私はあんたが仕切ろうが、藍が仕切ろうがどっちでも構わないけど」
 「うふふ、さぁて始まるわよ。果たして、どうなるのかしらねぇ~」
 
 紫と霊夢はそんな会話をした後、揃ってリーグ戦のチーム組分け抽選会が始まるであろう
 博麗神社の賽銭箱が置いてある手前付近に視線を向けた――。
 



 
 「あ~、本日博麗神社までお集まりいただいた人妖の皆様、傾注、傾注してくださいませ」
 
 主人である紫から今回のイベントの仕切りを任されている従者の八雲 藍は、
 そう神社の境内に集まっている人妖達に声をかけ注目を促す。
 
 そうすると、今までワイワイと好き勝手に喋っていたり、
 交流を図っていた人妖達は波が引いたかの様に静かになり一斉に藍の方へと視線を向ける。
 


 「……コホン。え~、皆様本日は態々この博麗神社までご足労頂き有難う御座います。
 今日は主人である八雲 紫に代わりまして従者である私、八雲 藍がこの博麗神社で開催される
 『幻想郷サッカー大会』のリーグ戦チーム組分けを――」
 




 「堅苦しいわねぇ~。さっさと始めちゃえばいいのに」
 紫の代役を礼儀正しくこなしている藍のイベント開催の挨拶を、憮然とした態度で聞きながら霊夢は一人ごちる。
 
 「何事も様式というものがあるのよ。それに、この大会に参加するのはいつもこの博麗神社に集まっている面子だけじゃないのよ?」
 「はいはい、分かってるわよ。そんな事くらい」
 「霊夢の言う事も分からんではないぜ。私もこういうのは昔っから苦手だったからな」
 
 霊夢の態度をやや苦笑しながら嗜めている紫の言葉の後に、
 今まで二人の会話に入らずずっと黙っていた魔理沙はそう言って霊夢に同意する。
 
 「とにかく、あなた達二人はもう少し我慢して静かにしてなさい」
 「分かったわよ」
 「あ~、退屈だぜ」

 まるで手の掛かる娘二人を躾けている様な態度で紫はそう命じると、自身もまた視線を挨拶を続けている藍の方へ戻す。
 

 
 「――であります。……それでは、ただ今からリーグ戦チーム組分け抽選会を始めたいと思います。
 今大会の試合方式につきましては参加表明された皆様に文々。新聞にて事前に記載してあります通り、 参加表明されたチームをLunaticリーグ(Lリーグ)とPhantazumリーグ(Pリーグ)の2リーグに分け、
 両リーグの1、2位のチームが決勝トーナメントに駒を進める形となります。そのリーグ戦の組分け抽選方法ですが、」
 藍はそこまで言うと、隣で礼儀正しく待機している自身の式である橙をチラッと見る――。
 
 その藍の視線を確認した橙は、自身の後ろに置いてあった大きめの木箱をだどたどしい歩調で抱え上げながら木製のテーブルの上に載せる。
 
 「ありがとう、橙」
 そう言って藍は優しく橙の頭を一撫でしたあと、前に向き直り話を続ける。
 
 「今から私が今大会に参加表明されているチームの名前を呼びますので、
 チームの代表者一人は前に出てこの木箱の中のカプセルを一つお取り下さい。
 そのカプセルの中に入っている紙に貴チームが所属するリーグが記入してあります。
 それでは始めます、まずは――」
 
 そう言って藍は順番に『幻想郷サッカー大会』に参加表明しているチームを呼びはじめる。
 
 


 
 
 
 射命丸 文(以下 文) 『はい、文々。ラジヲを御清聴の皆様、こんにちは。
 今回、博麗神社で行われている『幻想郷サッカー大会』本番のリーグ戦組分け抽選会の模様を皆様にお届けする、司会の射命丸 文です。
 本日は解説にはサッカー情報誌『幻想郷サッカーマガジン』を執筆・発行していらっしゃる稗田 阿求さんにお越しいただきました。阿求さん、本日はよろしくお願いいたします』

 稗田 阿求(以下 阿) 『よろしくお願いします~。私自身、今日という日を心待ちにしていましたので今からとっても楽しみです!』
 
 文 『そうですねぇ~、私もです。さて、阿求さん、本日はどういった所に注目していますか?』
 
 阿 『勿論、今大会最大の優勝候補筆頭である『幻想郷SG』が何処に入るのかが一番の注目所ではないでしょうか。
 幻想郷の各新聞のサッカー欄による『幻想郷サッカー大会』優勝オッズもほとんどが1~2倍台ですし。』
 
 文 『当局の独自調べによりますと、各チームの優勝オッズは『幻想郷SG』が1~2倍、続いて『永遠亭ムーンラビッツ』が5倍、
 『妖怪の山アライアンス』が7倍、となっていますね』
 
 阿 『優勝オッズの予想通りにはいかないとは思いますが、それでもやはり『幻想郷SG』が入ったリーグは厳しい戦いになると思いますよ』
 
 文 『成る程。それなら私個人が贔屓にしているチーム『妖怪の山アライアンス』は是非とも『幻想郷SG』とは違うリーグになってほしいですねぇ~』
 
 
 
 
 
 
 
 Ⅱ
 

 
 
 
 
 
 「う~、やっと長ったらしい挨拶は終わったのかしら?」
 従者が用意した簡易チェアに座りながら、う~っと欠伸を噛み殺したレミリアは隣にいるパチュリーに話しかける。
 
 「ええ、そうみたいね。……今から抽選の為にチーム名が呼ばれるみたいよ」
 レミリアと同じく簡易チェアに座りながら本を読んでいたパチュリーはそう応える。
 その返答を聞いたレミリアは、自分の後ろで日傘を差し主人を日の光から守っている瀟洒な従者にさらに訊ねる。
 
 「で、咲夜、抽選方式はどうなってるの? 途中から軽く寝てたから分からないわ」
 「チーム名を呼ばれたら代表者が前に出て、あの木箱からカプセルを取るそうですわ」
 
 レミリアの質問に咲夜は瀟洒に答えていると、その隣に立っていた小傘がソワソワと落ち着かない。
 
 
 「う~ん、人や妖怪がいっぱい。久々に本職の驚かせをやりたくなってきちゃったわさ」
 
 どうやら周りのたくさんの人妖達に妖怪魂がおおいに刺激されたのか、
 小傘はウズウズした心持ちでキョロキョロと辺りを見渡し始める――。
 
 
 「気持ちは分からないでもないけれど今は自重なさい。
 今、人間や妖怪に危害を加えたら、赤白の巫女やスキマ妖怪に退治されちゃうわよ?」
 「くぅ~、お預けはツライわさ~」
 
 小傘の心情を察したパチュリーは、本を読みながらそう釘を差す。
 
 
 「クククッ、まぁ我慢するんだな。お前はウチのチームの切り込み隊長なんだ、
 急にいなくなられては適わんのでな」
 そう愉快そうに笑いながらレミリアは咲夜とパチュリーに同意を求め、訊ねられた二人はうんうんと首を縦に振る。
 
 
 
 今日の博麗神社のリーグ戦チーム組分け抽選会に『紅魔館FC』は、チームリーダーであるレミリア、
 その従者である咲夜、正式に『紅魔館FC』の監督に就任したパチュリー、そして暇だったから付いてきた小傘の4人が参加していた。
 
 
 
 「チームの切り込み隊長……、なんか凄く格好イイ響き! イイ、その二つ名イイ!!」
 「ククク、ならばこの紅魔館の主であるレミリア スカーレット自らがお前に相応しい『紅魔館FC』での二つ名を付けてやろう。
 ……そうだな、紅く切り裂く者『スカーレット=スラッシャー=KoGaSa』なんてどうだろうか」
 「ス、スカーレット=スラッシャー=KoGaSa、――格好イイわさぁーーー!」
 
 レミリアと小傘が変なところで意気投合していると、
 
 
 
 
 
 
 
 「『妖怪の山アライアンス』、チームの代表者は前に出て木箱からカプセルを取ってほしい」
 
 ――ついにこのイベントを取り仕切っている藍の口から大物チームの名前が呼ばれる。
 
 
 
 ――『……』
 
 
 
 すると、このチームの名前が呼ばれるまでザワザワと騒がしかった博麗神社の境内辺り全体が水を打った様に静まりかえる。
 
 
 
 
 
 「『妖怪の山アライアンス』監督の八坂 神奈子だ。――カプセルを引いてもいいかい?」
 藍に呼ばれたチームの代表者を務める八坂 神奈子は、ずんずんと前に出て木箱の前に来るとそう言って藍の顔を見る。
 
 「えぇ、どうぞ」
 許可を求められた藍は自身の首を縦に振り、神奈子に抽選を促す。
 
 「それじゃあ、引かせてもらうかね」
 
 そう言って木箱に手を突っ込んでいる神奈子の様子を周りの人妖達は固唾を飲んで見守る――。
 
 
 
 「――これだ」
 神奈子は木箱の中から一つのカプセルを選ぶと、それを引き上げて藍に手渡す。
 
 カプセルを手渡たされた藍はゆっくりとカプセルを開け、
 その中にある紙に書かれている内容を確認し、周り全体に聞こえるように大きな声で発表する。
 
 
 
 「――『妖怪の山アライアンス』、所属はPhantazumリーグ!」
 
 
 
 ――『おぉ……!』
 
 
 
 藍の発表に周りは感慨の声を上げて、またガヤガヤと一斉に騒がしくなる。
 
 
 
 
 
 「次、『霧の湖フェアリーFC』のチーム代表者、前に出て抽選を」
 「はいはい、『霧の湖フェアリーFC』監督のレティ ホワイトロックよ。抽選を受けるわ」
 「――『霧の湖フェアリーFC』、所属はPhatazumリーグ!」
 
 
 
 
 
 ――『『妖怪の山アライアンス』に、今大会の大穴チーム『霧の湖フェアリーFC』がPリーグか』
   『まだリーグ組分け抽選は始まったばかりだが、どうなる事やら』
   『Lリーグの方はまだこれといった大物チームは所属してないのか……』
 
 
 
 
 
 淡々とリーグ戦組分け抽選が進んでいく中、周りからはそんな声が聞こえてくる。
 
 
 
 
 
 「次、『永遠亭ムーンラビッツ』、代表者は抽選を受けて下さい」
 「……『永遠亭ムーンラビッツ』の監督、蓬莱山 輝夜よ」
 「――『永遠亭ムーンラビッツ』、所属はLunaticリーグ!」
 
 
 
 「『人里SC』、代表者は抽選を」
 「『人里SC』、選手兼監督の上白沢 慧音だ。抽選を受けよう」
 「――『人里SC』、所属はLunaticリーグ!」
 
 
 
 「『命蓮寺ホワイトロータス』、代表者は抽選をどうぞ」
 「『命蓮寺ホワイトロータス』監督の寅丸 星です」
 「――『命蓮寺ホワイトロータス』、所属は……Lunaticリーグです」
 
 寅丸 星からカプセルを受け取って中身を確認した藍は結果に少し驚きながら周りに発表する。
 
 
 
 
 
 ――『おおっ、まさかの本番で『人里ダービー』が見られるのかよ!?』
   『ふむ、『永遠亭ムーンラビッツ』の監督である蓬莱山 輝夜氏と、『人里SC』所属の藤原 妹紅選手には何やら因縁もあるらしいし、
    こりゃLリーグの方も俄然熱くなってきたな!』
 
 
 
 
 
 
 
 文 『さて、どんどんとリーグ戦組分け抽選が進んでいますが、ここまでをご覧になって阿求さんはどう思われますか?』
 
 阿 『非常に興味深いリーグ戦組分けになっていると思います~。今の所は両リーグともに戦力的なバランスは取れていると思いますし、
 Lリーグの方は『人里ダービー』が決定しましたからね。今から両チームの試合が楽しみです~!』
 
 文 『そうですねぇ~、先程の藍さんの発表で会場である博麗神社も益々騒がしくなってきましたし、この後もさらに注目ですね!』
 
 
 
 
 
 
 
 
 「『地霊殿ヘル・シティ』、代表者は前に」
 「『地霊殿ヘル・シティ』の選手兼監督の古明地 さとりです。抽選を受けます」
 「――『地霊殿ヘル・シティ』、所属はPhantazumリーグ!」
 
 
 
 「……次、『幻想郷SG』の代表者の方、前へお願いいたします」
 
 
 
 
 
 ――ザワッ!!
 
 
 
 
 
 司会である藍の発言により会場のざわめきは人一倍大きくなり、
 会場にいる全員の視線は『幻想郷SG』の代表者であるスキマ妖怪、八雲 紫に向けられる――。
 
 
 
 「『幻想郷SG』選手兼監督の八雲 紫ですわ」
 そんな会場の雰囲気など意に介していないのか、はたまた分かっていてこの雰囲気を楽しんでいるのか 超然とした態度で八雲 紫は木箱の前まで進んでゆく。
 
 
 「抽選を受けてもよくて?」
 「あ、えぇ、どうぞ……」
 
 紫は自身の従者である藍に確認を取ると、妖艶な笑みを浮かべながら木箱の中に手を入れる――。
 
 
 
 「そうねぇ~、これにしましょう」
 そう言って紫はカプセルを取り出し、藍に預ける。
 
 
 
 「え~、『幻想郷SG』の所属リーグは――」
 
 会場にいる全員が藍の次に発する言葉に注目する――。
 
 
 
 
 
 「――Phantazum。『幻想郷SG』の所属リーグはPhantazumリーグです!」
 
 
 
 
 
 ――『マジかよ!? って事はPリーグ所属の俺達のチームは実質一つの枠を賭けてリーグ戦を
    戦わなきゃならんのか』
   『取り合えずは助かったのか? しかし、Pリーグは『妖怪の山アライアンス』に『地霊殿ヘル・シティ』、
    そして『幻想郷SG』と強豪揃いになったな。まさに死のリーグってやつだ』
   『おいおいおい、まだ組分け抽選は終わってないんだぞ? 一部のチームはもうすでにお通夜ムードじゃねーか!』
 
 
 
 
 
 『幻想郷SG』の所属リーグがPhantazumリーグに決定し、会場である博麗神社ではその結果に対してあちらこちらで悲喜交々の喚声が飛びかう――。
 
 
 
 
 
 
 
 「決まったわね……。レミィ、抽選では是が非でもLリーグのカプセルを取って頂戴。
 ――さすがに今のウチのチーム力じゃ、Pリーグに入って2位以内を確保するのはかなり骨だわ」
 パタンと読んでいた本を閉じて、レミリアの方を見ながら『紅魔館FC』の監督であるパチュリーは希望を出す。
 
 「何だ、随分と弱気じゃない? ウチのチームはそこまで弱くはないだろうに」
 パチュリーのリーグ希望を聞いて、レミリアはフンと鼻を鳴らす。
 
 「えぇ、そうね。ウチのチームは弱くはないわ。ただ、ウチのチームはまだ色々と問題点がある……。 それを解消していかないと他の大物チームには中々勝てないわ」
 「発展途上、おおいに結構! そっちの方が夢があるな、そう思わない咲夜?」
 「完成した時、どんなチームになるのか楽しみですわ。お嬢様」
 「チームが完成する前に終わりたくないでしょう? だから、少しでも決勝トーナメントに進める可能性のあるLリーグのカプセルを取って頂戴」
 「やれやれ、魔理沙といいパチェといい屁理屈では魔法使いには勝てないな。――分かったよ、Lunaticと書いてあるカプセルを引いてくるさ」
 
 どんどんと決まってゆくリーグ戦のチーム組分けを聞きながらレミリア達がそんな談笑をしていると、
 
 
 
 
 
 「『紅魔館FC』、代表者は前に出て抽選を受けて下さい」
 
 
 
 「――おっと、ようやく呼ばれたみたい。じゃあ、行ってくるよ」
 藍にチームの名前を呼ばれ、レミリアは悠然と前を歩いてゆく。
 
 
 
 「クククッ、『紅魔館FC』チームリーダーのレミリア スカーレットよ」
 「抽選をどうぞ」
 
 
 「ふふ、――これよ!」
 レミリアは己の勘を信じ、一番最初に手に触れたカプセルを藍に手渡す。
 
 
 
 「どうも。『紅魔館FC』の所属リーグは――、Lunaticリーグだ」
 
 「クククッ、『運命』通り!」
 藍の発言の後、レミリアはそう言ってパチュリー達に向かって小さくウインクをした。
 
 
 
 
 
 
 
 文 『あややや、『紅魔館FC』のチーム組分け抽選も終わり、粗方のチームのリーグ振り分けは終わってしまったわけですが阿求さんはこの結果をどう見ますか?』
 
 阿 『そうですねぇ~、両リーグともにとても見所のたくさんあるチーム組分けになったと思います~。
 具体的に言いますと、Lunaticリーグの方は『人里ダービー』がありますし、『紅魔館FC』にはデビュー戦で鮮烈なプレーをした多々良 小傘選手がいます。
 それに『永遠亭ムーンラビッツ』には何やら凄い選手がいるという噂も聞きます。もう一つのリーグであるPhantazumリーグの方は、
 何と言っても『妖怪の山アライアンス』、『地霊殿ヘル・シティ』、『幻想郷SG』の上位3チームによるデットヒートでしょう! 
 ――勿論、『霧の湖フェアリーFC』を始めとした他チームの大判狂わせもあるかもしれません』
 
 文 『私の贔屓チームの『妖怪の山アライアンス』は厳しいリーグに入ってしまいましたが、リーグ突破は出来るのでしょうか?』
 
 阿 『十分に可能性はあると思いますよ~。私の両リーグの印象は『話題のLリーグ』、『激戦のPリーグ』といった感じです』
 
 文 『分かりました~。私も阿求さんの言葉を信じて精一杯『妖怪の山アライアンス』の応援をする事にします! 
 ――っと、もうそろそろお別れのお時間になりますね、阿求さん、本日はありがとうございました!』
 
 阿 『はい、ありがとうございました~』
 
 
 
 
 
 
 
 「ねぇ、もうイベントは終わったの?」
 撤収ムードになっている博麗神社の雰囲気を感じて小傘は咲夜に話しかける。
 
 「ええ、終わったわよ。後は私達は紅魔館に帰るだけよ」
 「ふ~ん、イベントはもう終わったのね。そっか、そっか」
 「……? 何、お前この後に何かするのか?」
 
 咲夜の返事を聞いて一人納得している小傘を不思議に思ったレミリアが訊ねる。
 
 
 「うん? ――あぁ、いやぁさ久しぶりにわちきのライフワークを再開しようかと思って」
 「ライフワーク? ライフワークって一体何よ?」
 「勿論、誰かを驚かせる事だわさっ! 最近、サッカーばかりに感けてて本職が疎かだったから」
 「ふぅ~ん、誰かを驚かせる……ねぇ」
 
 小傘の答えを聞いて、レミリアは自身の指を顎に当てて何やら黙考する。
 
 
 
 「――決めたわ! どうせ館に帰っても暇だし、私もお前のそのライフワークとやらに付き合ってやろう」
 
 暫しの間黙考していたレミリアだったが、考えが纏まったのか顔を上げて小傘にそう宣言する――。
 
 
 
 「うぇ? あちきは別に構わないけど、『人を驚かせ道』は厳しいわよぅ~」
 「フン、そんなものはこの私に掛かれば誰だって一発さ! 誇り貴き吸血鬼を舐めるなよ?」
 
 小傘の諭しに対し、レミリアはそんな事は簡単だと一蹴に賦す。
 
 
 「と、いうわけだから、私は今からこいつと一緒にライフワークをエンジョイしてくるわ! 
 咲夜達は先に館に戻っていていいわよ」
 「はぁ……。畏まりましたわ」
 
 そう生返事を返す咲夜から日傘を受け取り、レミリアはフワッと飛翔を始める――。
 
 「じゃあ、行ってくるわ! ――ほら、グズグズしてないで行くわよ!」
 「あっ、待って~! ってか、『人を驚かせ道』においてはあちきが先輩なんだから、
 あちきの言う事を聞きなさいよぅ~!!」
 「何だ、この私に『小傘先輩!』とでも言って貰いたいのか?」
 「いや、それも有り……っじゃなくて、ちょっと待つわさ~!」
 
 お互いにそんな言葉を掛け合いながらレミリアと小傘は人里の方角へ飛んで行くのだった――。
 
 
 
 
 
 
 
 ※『幻想郷サッカー大会』 リーグ戦組分け抽選結果
 
 
 ・Lunaticリーグ(Lリーグ)
 
 『紅魔館FC』
 『人里SC』
 『永遠亭ムーンラビッツ』
 『命蓮寺ホワイトロータス』
 その他十数チーム
 
 
 
 ・Phantazumリーグ(Pリーグ)
 
 『幻想郷SG』
 『妖怪の山アライアンス』
 『地霊殿ヘル・シティ』
 『霧の湖フェアリーFC』
 その他十数チーム
 
 
 
 
 
 
 Ⅲ
 
 
  
 
 
 
 
 ――人里 商店大通り前 ――
 
 
 
 
 
 「――よっと、」
 「――ほいさ」
 
 レミリアと小傘はそんな掛け声と共にストンと地面に着地する。
 

 「で、これからどうするの? 取り合えず人里の賑わってる所に来てみたけど」
 「それはこっちの台詞よ! 勝手に1人でビュンビュン飛んでっちゃうから、追いかけるのに精一杯だったわさ」
 
 レミリアのいつもの勢い任せの行動に小傘は肩で大きな息を吐く。
 

 
 「ククク、まぁ細かい事は気にするな。それで、この後どうするんだ? 
 適当な奴を驚かせればいいのか?」
 「う~ん、本当は驚かせるなら賑やかな所より寂れた静かな所とかの方がいいんだけど……。
 来ちゃったものは仕方ないし、ここら辺でやってみますか!」
 「さすがは『驚かせ道』の第一人者だ。まずはお手並み拝見といこうじゃないか」
 
 レミリアの言葉に、本来驚かせるのに不利な場所で自分のライフワークを決行しようと小傘は
 人里の大通りを見渡しながら、レミリアにアドバイスを送る。
 
 
 
 「いい? 『驚かせ道』の最初のポイントはターゲット選びよ。驚かせる獲物は集団より一人、
 性別は女性より男性の方がいいわさ。何故なら女性はキャーキャー言いながらも実はその展開を楽しんでる事が多いんだわさ。
 ……まぁ、これはこの前、人里でお化け屋敷の手伝いを募集しててお化け役をやってて分かった事なんだけどね」
 
 「ガチの妖怪のあんたにお化け役をやらせるその店も、その募集に応じたあんたも何してんのよってツッコミを入れたら負けなのかしら、その話。
 てゆうか、そこら辺に普通に妖怪が闊歩してる幻想郷でお化け屋敷って需要あるのかしらね?」
 
 小傘の妖怪としてビックリ!な発言にレミリアは結局ツッコミを入れながらも、大人しく話の続きを聞くことにする。
 
 
 
 「でね、そのお化け屋敷のお化け役を演じてて感じた事は、女性は驚かせに強いって事なのよ! 
 現に男の人は何人かガチでビビってた人もいたし!」
 「クククッ、それは男のくせにだらしない奴がいたものだな。幻想郷には腑抜けた男が多いのか」
 「さらに驚かせる獲物の年齢は、子供か信心深いお年寄りの方がいいわさ! 
 ……ただ、お年寄りはあんまり気合を入れすぎて驚かせると、そのまま現世に帰ってこない場合があるから、わちきは苦手なのよ」
 「ふ~ん、ただ驚かせるのも結構面倒くさいのね」
 「わちきのライフワークだからねぇ、詳しく細かくにもなるわさ~」
 
 小傘の細かい条件のレクチャーにレミリアは思わず少しだけ感心する。 
 
 
 
 「……それでは、『驚かせ道』の一番最初の講釈も終わった事だし、実際にわちきが実戦して見せてあげるわ!」
 小傘はそう言うと、獲物の選定を終えたのかニヤリと得意気に笑う。
 そして、気配を消しながら大通りを歩いている一人の男性の背後にピタリとくっ付く。
 
 
 
 
 
 「――やっぱり驚かせの基本手段は古典的だけど、背後強襲(バックアタック)よねぇ~。てなわけで、」
 小声で1人呟きながら小傘は前を歩いている男性の肩をちょんちょんと突付く。
 
 「――ん?」
 肩を突付かれた男性は何事かと後ろを振り返えったその時、
 
 
 
 「う~ら~め~し~やぁ~! 驚けーーー!!」
 手を下にだらけさせた典型的な幽霊のポーズ(?)で小傘は男性を驚かせにかかる――!
 
 
 
 「……」
 
 「……」
 
 
 
 お互い無言で暫くの間、見つめ合う二人――。
 
 
 
 
 
 「……なぁ、お嬢ちゃんよ。ワシに何か用かいのぅ~?」
 黙っている事に飽きたのか、男性の方が小傘に話かけ始める。
 
 
 
 「……えっ!? い、いや何でもないです! はい!」
 男性に話かけられた小傘は若干どもりながらも返事を返す。
 ――が、何故だか小傘の足がカタカタと小刻みに震えていた。
 
 それは何故か、驚かせようとした男性の顔がメチャクチャ恐かったからである。
 ――弱小妖怪なら裸足で逃げ出すくらいに。
 
 
 
 (ぎゃーーーっ!!! 久しぶりにエライ獲物に喰いついてしまっただわさーーー! どないしよう~! これはアレですか、詫びに小指一本とかそういう流れですか? それは嫌ぁあーーー!!!)
 
 
 
 小傘が心の中でもの凄い勢いでテンパっていると、
 
 
 
 「ならもう行っていいかのう? ワシも暇ではないんでなぁ」
 男性は俯いた小傘の顔を覗き込むようにして小傘に訊ねる。
 
 
 
 「へぁ!? あっ、どうぞどうぞ! スイマセン、何か人違い的な感じなアレでして~」
 
 「いや、別にええんよ。じゃあの」
 
 男性の訊ねに瞬速で反応し、お帰りはこちらと手を差し示す小傘だったが、男性はたいして気にする事もなく悠然と去ってゆく――。
 
 
 
 
 
 「――危なかったぁ~。まさに『小傘ちゃん危機一髪!』だったわさぁ~」
 「何が『小傘ちゃん危機一髪!』だ。驚かせる側が驚く側になってどうすんのよ、まったく……」
 
 大難が去ってホッと胸を撫で下ろす小傘をレミリアは呆れ顔で眺める。
 そしてレミリア自身も辺りをキョロキョロと窺い、適当な獲物を発見しニヤリと笑うと、
 
 「やっぱり弱小妖怪は駄目ね。――その目で見てなさい、誇り貴き吸血鬼の華麗なる『驚かせ』を!」
 
 レミリアはそう言って、自身が獲物と定めた店の長椅子に座って甘味を楽しんでいる一人の男性の方へ向かう。
 
 
 「う~ん、今は何も言い返せないわさ……」
 先程酷い醜態をレミリアに晒してしまった小傘は、黙ってレミリアの動向を後ろから見守る事にする。
 
 
 
 
 
 「――御機嫌よう、今日は素晴らしく忌々しい天気ね。あなたはそう思わなくて?」
 誇り貴き吸血鬼らしく、圧倒的な風格を醸し出しながらレミリアは華麗に男性に近づき、そう話かける。
 
 
 「うん? あぁ、今日はお日様が出ていて素晴らしい天気だね。……あれ、でも忌々しいって……?」
 レミリアに話しかけられた男性は、レミリアが仕掛けた小洒落た台詞廻しに気が付くが意味が分からず首を傾げてしまう。
 
 
 
 それも当然である。誰がこんな太陽の日が燦々と降り注ぐ日中に吸血鬼が現れると思うだろうか? 
 しかもその吸血鬼はたくさんいる人間の中で自分を驚かせようと日傘を差して話かけてきているのだ。 そんなの予想する方が無理である。
 
 
 
 「私にとっては十分過ぎる程に忌々しいわ。――あぁ、どうせならこの世の全ての事象が宵闇の如く暗闇に染まってしまえば良かったのに……」
 レミリアは日傘を差しながら大仰に両手を広げる。
 
 
 「はは、君はお日様が嫌いなのかい?」
 「ええ、だって日の光を浴びてしまったら私の身体は焼かれて灰になってしまうもの……。
 ねぇ、そんな事より私はお腹が減っているのだけれど?」
 
 男性の問い掛けに答えると、レミリアは片手で口元を隠しながらジッと男性を見る――。
 

 「お腹が減っているのか、これで良ければ……食べるかい?」
 そう言って、男性は自身が食べていた残りのお団子を差し出す。
 

 「いいえ、そんなものはいらないわ。だって私が欲しいのは――」
 「……。君が欲しいのは、まさか……」
 
 差し出されたお団子を首を振って断り、なおも自分を注視するレミリアを見て男性は何かに気づきゴクリと息を呑む――。
 
 
 
 男性の雰囲気の変化を感じ取ったレミリアはここが仕掛け所と判断し、ゆっくりと男性に告げる。
 
 
 
 「だって私が欲しいのは――、あなただもの!」
  
 
 
 
 
 
 
 ――ブッ!!!
  
 
 
 
  
  
 
 その時、華麗に決まったと会心の笑みを零すレミリアの前に一条の紅い飛沫が飛び散る。
 
 
 
 「――っ、すまない。いかん、いかん、いかんぞぉ~!」
 
 自身の鼻から出た液体をハンカチで処理し、そのハンカチで鼻を押さえながら男性は念仏を唱えるように独り言を言い始める。
 
 
 
 「???」
 「あぁ、何でもない。何でもないんだ。気にしないでくれると助かるよ」
 
 目の前で起きた異常な出来事に思わず困惑するレミリアを、男性はそう言って嗜める。
 
 
 
 何故この男性が鼻血を出したかは賢明な読者諸兄には分かっていると思うが、一応説明しておくと
レミリアという人物は外見上はとても美しい女性である。そして、実年齢は500歳という人間にとってはもの凄い高齢なのだが、やはり外見上はどう贔屓目に見ても幼女にしか見えない。
 そんな見目麗しい幼女が『あなたを食べたい!』などとのたまったら、こういう反応をしてしまう男性もいる――それだけである。
 
 
 
 「っと、そうだ! 君はお腹が減ってるんだったね、おばちゃ~ん! この娘に何か甘い物を――、
 あぁその棒付きの飴でいいや、それあげて。あと、俺はお勘定ね! ……それと君はそうゆう事をあんまり軽々と口に出してはいけないよ? 
 どこに変な奴がいるか分からないからね! それじゃ、僕はここで」
 
 男性はレミリアに棒付き飴(通称 ペロペロキャンディー)を渡し、軽くレミリアの言動に注意を与えて甘味屋を出てゆく――。
 
 
 
 (この私の計画では、あそこであの男が私の正体に気付いて驚き腰を抜かす予定だったのに……。どうしてこうなった)
  
 
 
 手渡されたペロペロキャンディーと去ってゆく男性を交互に見ながらレミリアが途方に暮れていると、
 
 
 
 「あ~っ、飴貰ってる!? いいなぁ」
 後方でレミリアを見守っていた小傘がやって来て、まったくの見当違いな感想を漏らしたのであった――。
 
 

 
 
 
 
 その後の2人の誰かを驚かせる旅路も、小さい子供をターゲットにすれば成功はしたものの泣かれて親を呼ばれてしまい慌てて退散したり、
 その逆の老人をターゲットにすると驚かせた瞬間に食べていた物を喉に詰まらせてしまい、これも慌てて2人で救助活動をする羽目になったりと、
 結果は散々な有様であった。
 
 
 
 
 
 
 
 「う~ん、『驚かせ道』中々に奥が深いわ……」
 今までの散々な結果にレミリアは片手を顎に当てかなり真剣な様子で考え込む。
 
 「まぁ、今日は調子が悪かった。『驚かせ道』は一日にして成らず! だわさ」
 普段から能天気な小傘は今日の散々な結果にもたいしてへこむ事無く、飄々とした態度でレミリアを励ます。その時、
 
 
 
 
 
 『危ないっ!!!』
 
 
 ――ギュウゥゥウウウン!!!!!
 
 
 
 
 
 何人かの掛け声と、何かが空気を切り裂くような音が聞こえてくる。
 
 
 「うー、何、何の音よ?」
 深く考え事をしていたレミリアは、その声や音に対して反応が遅れてしまう――。
 
 
 
 
 
 ――バッコォォオオオン!!!!!
 
 
 
 
 
 そして、音のする方角に顔を向けたレミリアの顔面に、飛んで来たサッカーボールがクリーンヒットする――!
 

 
 「っ痛いわねぇ~、一体何なのよ!」
 ボールが顔面を直撃し、倒れた身体を起こしながらレミリアはボールが飛んで来た方向を睨む。すると、
 
 
 「あ~、ボール当たっちゃいました? ごめんなさい! ――ほら、あんたが蹴ったんだからあんたも謝りなさいよ!」
 
 暫くしてその方向から三人組がやってきて、その内の一人であるお寺の尼さんのような格好をした少女が仲間である黒髪のミニスカートの少女にそう指示する。
 


 「へいへい、分かってるわよ。えっと、ボールぶつけちゃってゴメンなさいって……あれ? 
 フランのお姉さんじゃん、こんな所で何してるんですか?」
 謝る為にレミリアの顔を見て、黒髪のミニスカートを穿いている少女はそう驚きの声をあげる。
 
 
 「う~、確かあんたは……、そう、封獣 ぬえだったかしら? フランと遊びに来た時に館で何回か会ってるわね」
 「そうです。フランと遊んでる時はいつもお世話になってます」
 「別に構わないわ。フランも喜んでいるしね」
 
 レミリアはそう言って、問題無いと顔を横に振る。
 
 
 
 ただ、つい最近まで紅魔館の外に出た事が無かったフランドールが古明地 こいしといい、この封獣 ぬえといい一体どうやって知り合いを増やしているのか
 常々不思議に思っていたレミリアであったが、自分の妹が楽しそうにしているのでまぁいいかと深く考えないことにした。
 
 
 
 「それでフランのお姉さんは態々こんな人里の外れまで来て、何か用事でもあったんですか?」
 「えっ、人里の外れって……?」
 
 ぬえの質問にレミリアは思わず辺りを見渡すと、確かにいつの間にか人里は遥か遠くになっていた。
 どうやら、小傘と二人で場所を変えながら『驚かせ道』を探求している内に、こんな所までやって来てしまったらしい。
 
 
 
 「あれ? 特に用事とか無かったんですか? こんな所に来るくらいだから、
 てっきりウチのお寺に用事でもあるのかと思ったんですけど」
 「お寺? この辺にお寺なんてあったの?」
 「命蓮寺っていう最近建立したお寺だわさ。わちきも何回かお世話になった事があるわさ」
 
 レミリアの疑問に小傘が答えると、レミリアもそう言えば最近開らかれた宴会で、
 新しく人里の外れにお寺が立ったという話を聞いたのを思い出す。
 
 たしか、その宴会にそのお寺の尼さん達も参加していたような気もした。
 
 
 
 「命蓮寺……、命蓮寺ね。そう言えば聞いた事があったわ。そう、この付近に立っているのね、――ん? 命蓮寺?」
 
 レミリアはふと、ごく最近にその『命蓮寺』というキーワードを聞いたような気がして、
 はて一体何処だったろう?と記憶の海を探り始める。
 そして何気なく彷徨わせていた視線を下方向に向けた時に、偶々先程に自分の顔面を直撃したサッカーボールが目に留まる。
 『命蓮寺』、そしてサッカーボール――。
 
 「……、あーーーっ! 命蓮寺って、『命蓮寺ホワイトロータス』っていうサッカーチームの母体じゃないの!?」
 「うわっ!? 急に大声を出さないで欲しいわさ~。……で、それがどうかしたの?」
 「どうかしたのじゃないわよ! 『命蓮寺ホワイトロータス』って、私達のチームと同じリーグになってたじゃないの!」
 「あ~、そういえばそうだったかも」
 「……あなた達、サッカーボールで遊んでいたという事は『命蓮寺ホワイトロータス』の選手達なのねっ!?」
 
 レミリアは小傘にそう説明した後、くるりとぬえ達の方に振り返り訊ねる。
 
 「はい、そうですけど……」
 ぬえはいきなりテンションが変わったレミリアに若干戸惑いながらそう応えると、
 
 
 
 「……クククッ、我が『紅魔館FC』と同じリーグに入った事が決定したその日にチームリーダーである私にボールをぶつける。
 ――これは『命蓮寺ホワイトロータス』の『紅魔館FC』に対する宣戦布告と受け取ったわっ! ならば、正々堂々とサッカーで勝負よ!」
 
 レミリアはそう言って、自身の人指し指をビシィ!とぬえ達に突きつける――。
 そしてレミリアに指を突きつけられたぬえ達は一斉に、
 
 
 
 「「「えー!? はぁ!? 何でよ!?」」」
 
 
 
 各々の感想を漏らしたのであった――。
 
 
 
 
 
 
 
 Ⅳ
 
 
 
 
 
 
 
 ――命蓮寺 中庭――
 
 
 
 
 
 「え~、フランのお姉さんのたっての希望により、
 ただ今から『第一回チキチキ『命蓮寺ホワイトロータス』VS『紅魔館FC』サッカー三本勝負対決!』を始めたいと思います~」
 
 
 
 『わ~、パチパチ!』
 
 
 
 命蓮寺の中庭でそう発言したぬえに、レミリア達は疎らな歓声と拍手を送る。
 

 「そういえば今からサッカー対決をするわけですけど、レミリアさんはこの天気どうするんですか?」
 レミリアにボールをぶつけた三人組の最後の一人、黒髪でセーラー服を着た少女、村紗 水蜜がレミリアに話しかける。
 
 「う~、そういえばそうね……。どうしようかしら……」
 レミリアはそう言って忌々しそうに晴天の空を見上げていると、
 
 「レミリアさんはお日様の光が駄目なんですか? なら、私に良い考えがあるわ! ――雲山!」
 村紗とレミリアのやり取りを聞いていたお寺の尼さんの格好をした少女、雲居 一輪が相方である入道雲の雲山を呼ぶ。
 
 
 
 「雲山! 暫くの間、この命蓮寺一帯を分厚い雲で覆い隠して頂戴!」
 一輪がそう雲山に指示すると、瞬く間に命蓮寺一帯は分厚い雲に日の光は遮られて曇り空になってしまう。
 
 
 「これでどうですか?」
 「おぉ~、凄いわさ!」
 「へぇ、あなた、パチェと同じ様な魔法を使えるのね。何にしても助かったわ、ありがとう」
 
 一輪の芸当にレミリアと小傘は思い思いの感想を漏らす。
 
 
 
 「問題は解決したみたいですね。――それでは、『第一回チキチキ『命蓮寺ホワイトロータス』VS『紅魔館FC』サッカー三本勝負対決!』の
 第一本目を始めたいと思います! 第一本目は――、『全員抜けるかな? ドリブル対決!』ぅ~!!!」
 
 司会進行役のぬえが早速サッカー対決の第一本目の種目を発表する。
 
 
 
 「『全員抜けるかな? ドリブル対決!』ってどういう勝負なんだわさ?」
 「さぁ? そのままの意味でドリブルで全員を抜けばいいんじゃないの? だとしたら、あんた向きの種目ね」
 
 小傘の質問にレミリアは肩をすくませながらそう応える。
 
 
 
 「フランのお姉さんの言った通り、今からドリブルをして私達三人の守備を掻い潜って全員抜けばそっちの勝ちよ。出来なければこっちの勝ち、簡単でしょ?」
 「ふむ、確かに簡単なルールね」
 「そっちはフランのお姉さんと、小傘ちゃんの二人いるから一人ずつチャンスをあげるわ。オーケィ?」
 
 ぬえはそう言って足元のボールを掬い上げると、ノートラップでレミリアの方へボールを送る――。
 
 
 
 
 
 ――トンッ。
 
 
 
 
 
 ぬえからのボールをレミリアは自身の胸でトラップし、ボールを足でガシッと地面にキープするとレミリアは小傘に話しかける。
 
 「ぬえからルールは聞いたわね? 実に分かり易いルールだわ、で、どちらが先に行くかだけれど――」
 そう言って、レミリアはこちらのドリブル開始を待っている三人組を見ながら話を続ける。
 
 「取り合えず、私が行って様子を見るわ。――まぁ、私でクリアしちゃったらすまないわね、ククク……」
 レミリアはそう低く笑うと、守備の準備をして待機している三人組に向かって声を上げる。
 
 「こっちは私から行くわ! そっちも準備はいいかしら?」
 
 
 
 
 
 
 
 ――第一本目 『全員抜けるかな? ドリブル対決!』   挑戦者 レミリア スカーレット
 
 
 
 
 
 「さぁ、行くわよっ!」
 
 レミリアはそう自分に喝を入れ、ゆっくりとドリブルを開始する。
 
 
 
 
 
 「来たわね。村紗、行くわよ!」
 「オッケー、ぬえ!」
 
 ドリブルを開始し、どんどんとこちらにやって来るレミリアを前にして、ぬえは村紗に掛け声の合図を送る。
 そしてその掛け声に村紗が反応し、ぬえと村紗は二人がかりでレミリアのドリブルに対しプレスをかけにゆく――。
 
 
 
 
 
 ――ガシッ! ジリジリ、ギシッ!
 
 
 
 
 
 「――ちっ! さすがに二人がかりだと、そう簡単に抜かせてはくれないわねっ!」
 レミリアはボールを奪おうと身体を寄せてくる二人を、自身の腕や身体全体を使ってブロックしながら必死にボールをキープする。
 
 
 「ぬえ! 前から二人じゃ中々ラチが明かないわ! 横か後ろに廻り込みなさい!」
 
 
 
 「ククク、その隙、もらったっ!」
 「――えっ!? ちょ、なんて強引な……」
 
 
 
 
 
 
 
 ――ドン! バシィイイ!!!
 
 
 
 
 
 
 
 村紗がぬえに指示を出し、ぬえがレミリアの側面に廻り込もうとした瞬間に出来た二人の僅かな隙間を、
 レミリアは自身のフィジカルを前面に押し出して強引にドリブル突破する――。
 
 
 
 「すまないな、『強引なドリブル突破』は私の十八番なんだ!」
 ぬえと村紗を強引に抜き去ったレミリアはそう言って、最後の一人である一輪にドリブルで突っかかる。
 
 
 
 「……」
 
 しかし一輪はレミリアに飛びかからず、ジリジリと後ろに下がりながらレミリアと一定の距離を保ってディフェンスする。
 
 
 「ほらほら、どうしたんだ? 早くボールを奪わないと抜いてしまうぞ?」
 レミリアはそんな一輪を挑発し、跨ぎフェイントを仕掛けながら一輪を抜くタイミングを計る――。その時、
 
 
 
 
 
 
 
 「――その言葉、そっくりそのままお返しするわ!」
 
 
 
 
 
 ――ズシャァァアアア!!!!!
 
 
 
 
 
 「――!?」
 
 その言葉と共にレミリアの目の前でボールをかっ攫おうとぬえがスライディングを仕掛ける――!
 
 「一輪! ナイスディフェンス(時間稼ぎ)!!!」
 
 さらにレミリアの後ろから村紗の声が響く――。
 
 
 「まさか、この娘の対応は私に抜かれた二人の復帰の時間稼ぎ!?」
 「Yes, exactly! ――まだまだだね、フランのお姉さん!」
 
 レミリアの驚愕の言葉に、守備に復帰したぬえが返事を返す。
 
 さすがに三人に同時に囲まれては万事休す、レミリアはボールを奪われてしまいレミリアの挑戦は失敗してしまう。
 
 
 
 「う~、一杯喰わされたわね……」
 
 
 
 
 
 ―― 挑戦者 レミリア スカーレット 失敗
 
 
 
 
 
 「駄目だったわ……。あとはあんただけが頼りよ、『紅魔館FC』の誇りをあいつらに見せつけてやれ!
 頼むぞ『紅魔館FC』の切り込み隊長、スカーレット=スラッシャー=KoGaSa!」
 
 「ス、スカーレット=スラッシャー=KoGaSa……。
 ――ふっ、その名前で呼ばれちゃ頑張らないわけにはいかないわさ! よ~し、やるぞぉーーー!」
 
 戻って来たレミリアの鼓舞にやる気満々になった小傘は元気一杯にボールをドリブルのスタートラインまで運んでゆく。
 
 
 
 
 
 
 
 ――第一本目 『全員抜けるかな? ドリブル対決!』   挑戦者 多々良 小傘
 
 
 
 
 
 「いくわさ~!」
 小傘はそう守備についている三人組に宣言すると、ドリブルを開始する。
 
 そうすると、ぬえと村紗が小傘にプレスをかけに前に出てくる。先程のレミリアの時とまったく同じ展開である。
 
 
 
 「――ほいさっ」
 
 
 
 しかし、小傘はここから跨ぎフェイントを一回入れると、その場にいた全員の想像外のプレーを選択する――。
 
 
 
 
 
 
 
 ――バシュゥウウ!!!
 
 
 
 
 
 
 
 なんと小傘は自身の利き足でボールを蹴り飛ばしたのである、それも在らぬ方向に――。
 
 
 
 
 
 「「えっ!? ボールのコントロールミス?」」
 
 
 小傘のプレスに来たぬえと村紗は唖然としてボールの行方を目で追ってしまう。
 
 
 
 
 
 ――トンッ!
 
 
 
 
 
 小傘が放ったボールは弧を描いて命蓮寺の内壁に当たり、自然の法則に従ってまたこちら側に跳ね返ってくる。
 ――だが、小傘がボールを蹴り飛ばした時にカーブを掛けていたのか、そのまま跳ね返ってはこず、前方の方向に――、
 
 
 
 「――、小傘ちゃんは!?」
 「――、あっ!?」
 
 
 
 ぬえと村紗が我に返って慌てて前を見ると、すでに小傘は前方に走り出していた――。
 
 
 
 「やられたっ! まさか、あんな抜き方があるなんて……」
 
 ぬえは小傘のトリックプレーを理解し、思わず下唇を噛みしめる。
 
 
 ――そう、小傘は何も血迷ってボールを蹴り飛ばしたのではなかった。
 小傘の狙いは壁にぶつかり跳ね返ってくるボールであり、その選択でほぼノーリスクでぬえと村紗を抜いたのである。
 決して試合では出来ないプレー、ストリートサッカーだからこそ出来るトリックプレーであった。
 
 
 
 「一輪! 前!」
 「えっ? あ、しまった!」
 
 村紗の声で我に返った一輪だったが、時すでに遅し、小傘は跳ね返ってきたボールを綺麗にトラップし一輪の目の前まで迫っていた。
 
 
 「くっ!」
 一輪はそれでも必死にディフェンスを試みるが、
 
 
 「そこだわさ!」
 小傘に華麗に股下を抜かれ勝負は決してしまう。
 
 
 「う~ん、無念……」
 一輪は尻餅をついてそう言葉を漏らすのだった。
 
 
 
 
 
 ―― 挑戦者 多々良 小傘 成功!   『紅魔館FC』一本目先取!
 
 
 
 
 
 
 
 ――命蓮寺 仮設サッカー練習場――
 
 
 
 
 
 「はい、『第一回チキチキ『命蓮寺ホワイトロータス』VS『紅魔館FC』サッカー三本勝負対決!』の
 第二本目の種目は、先程と場所を変えましてここ、命蓮寺仮設サッカー練習場で行います~!」
 
 
 
 『わ~、パチパチ!』
 
 
 
 司会進行役のぬえの言葉に、またもレミリア達は疎らな歓声と拍手をあげる。
 
 
 「で、今度は何をやるの?」
 「第二本目の種目は、『フリーキック対決!』よ! お互い交互にフリーキックをしていって、
 どちらかが入ってどちらかが入いらなければ勝負が決まる。これも分かり易くて簡単でしょ?」
 
 小傘の質問にぬえがそう答え、あなたもそれでいい?とレミリアの方を見る。
 
 
 「私の方も了解した。それでいこう」
 レミリアもそう言って、ぬえに頷き返す。
 
 
 
 「それじゃあ、先行はそちらでどうぞ。あ、ウチのGKは本職の一輪にやってもらうけど、それでもいい?」
 「ああ、別に構わないわ」
 
 ぬえの言葉にレミリアは余裕の表情でそう返す。
 
 
 
 「オッケー、じゃあ始めましょう!」
 そう言って、ぬえは第二本目の種目『フリーキック対決!』の開始を宣言する。
 
 
 
 
 
 
 
 ――第二本目 『フリーキック対決!』   挑戦者 レミリア スカーレット
 
 
 
 
 
 「ふぅ……」
 
 ボールを決められた位置に置いてレミリアは一つ大きな息を吐く。
 
 先程はぬえに対し余裕の表情をしてはいたが、実のところレミリアはプレイスキックはあまり得意ではなかった。
 今日の相方である小傘もプレイスキックは得意ではないので自分がキッカー役を買って出たが、正直自信は無い。
 
 
 
 (よく考えてみたら、ウチの『紅魔館FC』って優秀なキッカーがいないのね。前の練習試合の時は咲夜とか小悪魔が蹴ってたけど、あくまで蹴れるレベルだし……。
 この前の会義でパチェと話をした選手の移籍の件、優秀なキッカーっていう条件で検討してみるべきかしら……)
 
 
 
 レミリアがそんな事を考えていると、
 
 「フランのお姉さん、準備はいい?」
 ぬえがレミリアの準備の是非を聞いてくる。
 
 「えぇ、準備オッケーよ!」
 レミリアはそう応えて、改めてゴールマウスまでの状況を確認する。
 
 
 
 (ゴールを守っているのが『命蓮寺ホワイトロータス』の正GK、雲居 一輪。さらに、村紗とぬえの壁が二枚ね……)
 
 
 
 レミリアは状況を確認し終えると、2、3歩後ろに助走を取る。そして、
 
 「行くわよっ! ――喰らいなさいっ!!!」
 渾身の気合と共にレミリアはボールをシュートする――!
 
 
 
 
 
 
 ――バシュゥゥウウウ!!!
 
 
 
 
 
 
 ――ボールは高く山なりに上がり、村紗とぬえの頭上を越えて一輪が守るゴールマウスに襲いかかる――!
 
 
 
 (……若干高いっ! このまま落ちきるか……?)
 
 
 
 レミリアはシュートを放った後のボールの弾道を見て、一人眉を顰める。
 
 
 
 
 
 
 
 ――ビュウゥウウン!!!
 
 
 
 
 
 
 
 ボールはレミリアの予想通り、若干高すぎたのか落ちきる前にゴールマウスの上を通過していってしまう。
 
 
 「あ~、惜しかったわさぁ~」
 ギャラリーとなっていた小傘はレミリアのフリーキックを見て、とても悔しそうな声を上げる。
 
 「ま、こんなもんね」
 そしてシュートを打ったレミリアはそう言って苦い顔をしたのだった。
 
 
 
 
 
 ―― 挑戦者 レミリア スカーレット 失敗
 
 
 
 
 
 
 
 ――第二本目 『フリーキック対決!』   挑戦者 封獣 ぬえ
 
 
 
 
 
 「よっと……」
 
 『命蓮寺ホワイトロータス』側のキッカーであるぬえは、ボールを地面にセットするとリラックスしながら前方を見やる。
 
 
 
 「よっしゃあ、ばっちこ~い!」
 ゴールマウスを守っている『紅魔館FC』側の臨時GKの小傘は、そう言って両手を広げてアピールしている。
 
 ゴールマウスまでの道のりを邪魔する壁は村紗と一輪。
 
 
 
 (体調は問題無し、気持ちも落ち着いてる、さらに風は無風、完璧ね――)
 
 
 
 ぬえはそう思いながら、利き足のサッカーシューズの靴紐を結び直す。
 
 
 
 
 
 
 「ねぇねぇ、小傘ちゃんはぬえのボールを取れると思う?」
 「まず無理でしょ……。あいつのボールはGKやってる私でも手を焼くもの。――本当に厄介よ、あいつの『ボール』はね」
 
 ぬえがサッカーシューズの靴紐を結び直している間、壁役である村紗は何気なく隣で同じく壁役を務めている一輪に話しかける。
 
 「私はGKやった事ないから、ぬえのボールのヤバさがイマイチ分からないんだよねぇ~。どういう風に厄介なの?」
 村紗は軽い気持ちで一輪に話かけたつもりだったのだが、思ったより一輪が険しい顔で反応するので興味を引かれ、さらに訊ねる。
 
 「一言でいえば……、ぬえのボールはGK泣かせだって事ね。あとは近くで見ていれば分かるんじゃない?」
 村紗の問いに一輪は変わらず険しい顔でそう答える。
 
 
 「ふぅ~ん……」
 そこまで一輪が言うなら真面目に見てみようかと村紗は気合を入れ直して壁役を務め始める――。
 
 
 
 
 
 「それじゃあ、いくよ~?」
 ぬえはそう宣言してボールをシュートする――。
 
 
 
 
 
 
 
 ――シュウィィイイイン!!!
 
 
 
 
 
 
 
 ぬえが放ったボールは弾道の高さは程々に、ややライナーぎみに小傘が守るゴールマウスに向かってゆく――。
 
 
 
 
 
 「よしっ! ボールの真正面に捉えたわさ!」
 小傘がしてやったり顔で言葉を発すると、
 
 
 
 
 
 
 
 
 ――ブゥン!!!
 
 
 
 
 
 
 
 ボールは小傘から2メートルくらい離れた所で急にブレた不規則な軌道をし始める。
 
 
 
 「えっ!? う、うわわっ!!!」
 
 ボールの真正面に付けた事ですっかり安心しきっていた小傘は、ボールの急激な不規則変動な動きに大慌てになってしまう。
 
 
 
 
 
 
 
 ――ファサッ!
 
 
 
 
 
 
 
 そしてぬえが放ったボールは無情にも小傘の腕をすり抜けてゴールネットを揺らす――。
 
 
 
 
 
 「……何、あのシュート!?」
 ぬえの放ったシュートを食い入るように見ていた村紗は驚愕の声を上げる。
 
 「見たでしょ? あれがぬえの必殺シュート『無回転シュート』、通称ブレ球シュートよ。
 ……その名の通り、GKの手前で急にブレて不規則な軌道を描くからもの凄く取りづらいのよ」
 一輪は村紗に解説を加えながら、ゴールを決めて喜びながらこちらに来たぬえにハイタッチを交わすのだった。
 
 
 
 
 
 ―― 挑戦者 封獣 ぬえ 成功!   『命蓮寺ホワイトロータス』二本目獲得!
 
 
 
 
 
 
 
 「さぁ、いよいよ『第一回チキチキ『命蓮寺ホワイトロータス』VS『紅魔館FC』サッカー三本勝負対決!』も最後の三本目を残すのみとなってしまいました~!」
 
 
 「何だかんだ言ってこれまでで1対1の同点か。案外、いい勝負してるわね……」
 「ここまで来たら絶対に勝ちたいわさ!」
 
 ぬえの言葉にレミリアは冷静に、小傘は気合十分に応える。
 
 
 
 「最初はこんな事になってどうなる事かと思ったけど、いい暇潰しになったわ」
 「ちょっと、まだ終わりじゃないわよ! 曲りなりにも『命蓮寺ホワイトロータス』の看板背負って戦ってるんだから、
 姐さんに恥をかかせないような結果にしないと!」
 
 対する村紗と一輪も態度の差こそあれ、最終戦に賭ける意欲は万全である。
 
 
 
 「さて、最後の三本目の種目は、――『2on2 サッカー対決!』だぁー!!!」
 自分自身も司会進行役が楽しくなってきたのか、テンションを上げてぬえが最終種目を発表する。
 
 
 
 『おぉ~、パチパチ!!!』
 
 
 
 レミリア達も最終戦を盛り上げ為に、一、二回目よりも大きな歓声と拍手を挙げる――。
 
 
 
 「これもルールは簡単です。今からフランのお姉さんと小傘ちゃんの『紅魔館FC』と、
 私と村紗の『命蓮寺ホワイトロータス』で2on2のハーフコートサッカーを行います。GKは一輪ね。
 それで、『紅魔館FC』がゴールを挙げれば『紅魔館FC』の勝ち! 私達にボールを奪われたら、私達の勝ち! 
 勝負は一本勝負! どう、簡単でしょ?」
 ぬえがレミリア達に最終種目のルールを説明すると、
 
 
 
 「クククッ、まさに最終戦らしい勝負じゃないか! いいだろう、その勝負乗った!」
 「わちきもオッケーだわさ!」
 「ゴールを奪うか、ボールを奪えば勝ちか。いずれにしても早い決着になりそうね」
 「絶対にゴールマウスは死守してみせるわ!」
 
 ルールを聞いていた全員もその勝負に乗る事を了承する。
 
 
 
 「よし! それじゃあ最終戦、開始するよ~!」
 皆の了承の声を聞いてぬえは最終戦の開始の合図を高らかに宣言した――。
 
 
 
 
 
 
 
 ――第三本目 『2on2 サッカー対決!』 『紅魔館FC』VS『命蓮寺ホワイトロータス』
 
 
 
 
 
 ――トンッ!!!
 
 
 
 
 
 センターサークルで小傘がレミリアにボールをパスした所で最終戦のゴングが鳴らされる――。
 
 
 
 
 
 「速攻で決めるわっ!」
 ボールを持ったレミリアは怒涛の如くゴールマウスに向かってドリブルを開始する。
 
 
 「おっと、悪いけどそうはさせないわよ?」
 すると、そのレミリアの行き先をブロックするかのように村紗がレミリアに対してプレスをかける――。
 
 「私の相手はあんたなの? クククッ……、――悪いけど今宵はあんた悔しくて夜は眠れないかもね!」
 
 「何をいきなり訳の分からない事を言ってんの? そうなるのはあなたかもよ!!」
 
 レミリアの発言を村紗は鼻で笑いながらチェックを強める。
 しかしレミリアはボールをキープしながらも不敵な笑みを絶やさない。
 
 
 
 「ククク、ならば見せてやろう! 私のとっておきをなっ!」
 
 レミリアはそう言って、ボールを両足で挟み込むと、自身の踵でボールを空高く前方に打ち上げる。
 
 
 
 「――なっ!?」
 
 自分の頭越しにボールを通されて呆然とボールウォッチャーになってしまう村紗を尻目に、
 レミリアは悠然と村紗を抜き去ってゆく――!
 
 
 
 
 
 「クククッ、『レッド・マジック』実戦で初成功ね! ――さぁ、ゴールを頂くわよ」
 村紗を自身が開発したドリブルテクニック『レッド・マジック』で華麗に抜き去り、
 がら空きになったスペースをレミリアはゴールマウスに向かってドリブルで爆走する。
 
 
 
 
 
 「村紗っ!? ――ちっ!」
 
 小傘のマークに付いていたぬえは仲間の村紗がレミリアに抜かれた所を見ると一瞬だけ逡巡するが、
 結局小傘のマークを放棄し、フリーでドリブルを続けるレミリアのチェックに向かう――。
 
 
 
 (ナズーリンの報告レポートでは、フランのお姉さんはボールを持ったらほぼ100%の確率でフィニッシュまで持ち込むはず!
 小傘ちゃんにパスは……ないっ!)
 
 
 
 ぬえは心の中でそう判断し、すでにゴール前まで来ているレミリアのシュートコースのブロックに専念する。
 
 
 
 
 
 「もらったわっ!」
 「まだ間に合うっ! 一輪、パスの選択肢は捨ててもいいからフランのお姉さんのシュートコースだけ消してっ!!」
 「了解っ! ――絶対にゴールは割らせないわ!」
 
 
 
 
 
 この一瞬に、レミリア、ぬえ、一輪の思惑が交差する――。
 
 
 
 
 
 
 
 ――トンッ。
 
 
 
 
 
 
 
 「――ナイス、パスだわさっ! いっけぇーーー!!!」
 
 「えっ、パス……?」
 
 
 
 
 
 
 
 ――バシュゥゥウウウ!!!
 
 
 
 
 
 
 
 最後の瞬間、レミリアからのラストパスを受け取った小傘の声と、まさかの予想の裏をかかれたぬえの声が重なり、ボールはゴールネットを揺らす――!
 
 
 
 
 
 
 
 「クククッ、アシストというものも中々良いものね。――まぁ、一番はゴールだけれど」
 ラストパスを小傘に送ったレミリアは、ボールがゴールネットを揺らしたのを見届けるとそう嘯く。
 
 
 
 「やったーーー!!! 勝った、勝った!!! 最後はナイスパスだったわさ!!!」
 
 「げふぅ!? ちょっと、嬉しいのは分かったから抱きつくのはやめて頂戴!」
 
 決勝ゴールを挙げた小傘は嬉しさのあまりにレミリアに飛びついてはしゃぎ回る。
 
 
 
 
 
 
 
 「……」
 その様子をやや呆然とした様子で見ていたぬえだったが、不意に肩をポンと叩かれる。
 
 「いやぁ、ゴメンゴメン! 抜かされちゃった」
 ぬえの肩を叩いた村紗はそう言って自身の頭を掻く。
 
 「負けちゃったわね……。私もゴメンなさい、ゴールマウスを守れなかったわ」
 ゴールマウスから歩いてやって来た一輪もそう言ってぬえに謝罪する。
 
 「村紗、一輪……」
 「あはは……。ゲームには負けちゃったけど、今日は面白かったね」
 「……うん、そうだね!」
 
 気落ちしていたぬえは、その村紗の言葉にいつもの笑みを取り戻すのであった――。
 
 
 
 
 
 ――第三本目 『紅魔館FC』獲得!   結果 2対1で『紅魔館FC』の勝利!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「今日は色々と楽しかったわ! 今度は試合会場で会いましょう」
 「こちらこそ、フランのお姉さん。でも、試合じゃ負けないですよ?」
 
 レミリアとぬえはそう言って握手を交わす。
 
 
 
 「クククッ、試合でもウチが勝たせてもらおう。――さて、そろそろ良い時間だな。お~い、紅魔館に帰るぞ!」
 レミリアはそう言って、村紗達と談笑している小傘に声をかけると、フワッと飛翔を始める。
 
 「――あっ!? ちょ、ちょっと待つわさ! 一輪、村紗、ぬえ、またねぇ~!」
 小傘は三人にお別れの挨拶をして急いでレミリアの後を追う――。
 
 そうして、レミリアと小傘は茜色の空へ豆粒のように消えてゆくのだった――。
 
 
 
 
 
 
 
 ――紅魔館 大図書館 (レミリアと小傘の命蓮寺での勝負から数日後) ――
 
 
 
 
 
 「パチュリー様ぁ~!」
 
 
 
 パチュリーがいつものように大図書館で読書に勤しんでいると、使い魔である小悪魔が騒がしくパチュリーの書斎に入ってくる。
 
 
 「一体どうしたの、騒々しいわね。図書館で騒ぐのは厳禁だとあれほど言いつけてあるでしょうに……」
 パチュリーはそう言って、掛けていた眼鏡を外し小悪魔を軽く睨む――。
 
 「あ~、スイマセン。でも、これを見て下さい! ついに『幻想郷サッカー大会』の試合日程と開幕カードが発表されたんですけど……」
 小悪魔はパチュリーに謝罪をし、それから今日発行された文々。新聞をパチュリーに手渡す。
 
 
 
 「――成る程。これは開幕戦から頭が痛くなりそうね……」
 
 文々。新聞のサッカー欄を見たパチュリーはそう言うと、静かに瞳を閉じて開幕戦の試合構想を練るのであった――。
 
 
 
 
 
 ※文々。新聞 サッカー欄
  
  『幻想郷サッカー大会』 開幕戦 試合カード一覧
  
  『紅魔館FC』VS『永遠亭ムーンラビッツ』 (人里第一球技場)
 
 
 
 
 
 
 
 
皆様、こんにちは。こんばんは。 ビバです。
 
今回のお話は『幻想郷サッカー大会』のリーグ戦のチーム組分けと、命蓮寺チームとのミニサッカーゲームのお話になります。

さて、『幻想郷サッカー大会』のリーグ戦もLリーグ、Pリーグ共にチーム構成が決まりいよいよ次回から本格的にリーグ戦がスタートします。
はたして『紅魔館FC』はLリーグを突破出来るのでしょうか!? なんてありふれた次回予告を残しつつ、
今回はこれで失礼いたします。
 
 
毎回の皆様の暖かいコメント、本当にありがとうございます。励みになります。
長い物語になっていますが、もし皆様がよろしければお付き合い頂けると幸いです。
ビバ
vibaviba0902@yahoo.co.jp
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コメント



0.580簡易評価
6.100名前が無い程度の能力削除
おもしろかったぞ!なんてありふれた感想を残しつつ、次に期待しています
7.50名前が無い程度の能力削除
面白いんだけど、今回はあまり話にまとまりが無かった気がする
前作までは、場面の切り替えや、シリアスからギャグパートに移行するのに不自然さを感じさせなかったのですが、今回は驚かせ道のところへと移行するのが強引で、しかも、あまりに本筋から離れた内容なので話の勢いが削がれて、中だるみ感が凄かった。

それと、タグでリーグ戦開始! と書かれていたので期待したのですが、どうも話を先延ばしにしていると言うか、単に水増ししただけと言うか、肩透かしな印象でした。
10.90ずわいがに削除
ぬえは能力を使ってくるかと思いきや正攻法で逆に驚いた。ブレ球蹴れたらカッコいいよね。
レミさんは頼もしいやら可愛らしいやらww

ストリートはねぇ、車にぶつけちゃって怒られたのがトラウマでねぇ……
11.80名前が無い程度の能力削除
はー、とうとうチーム分けが決まりましたか。
これからどうなっていくのか楽しみだなぁw
相手は強豪と言われる永遠亭ですが、どんな試合展開となるのか……。
次も楽しみにしています!
14.100ピエロ削除
これは初戦から厳しそうですね。紅魔館。
お嬢様のチームプレイ、新鮮です。
永遠亭の秘密兵器が気になる所です。