Coolier - 新生・東方創想話

子犬も狐も犬の内

2010/04/05 04:25:35
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※ナンセンスです、ヤマもオチもイミもありません





 食うのか、と八雲藍が聞き、食べませんよと橙が答えた。
「大体、何で食事に繋がるんですか……」
 はぁ、と橙は吐息して胸元に抱えている小さな生き物を見た。
 子犬である。
 先日、猫の集会を行ったときに猫の群れに紛れて一匹だけ居たのだ。最初は目の錯覚か
と思って見たが、どこからどう見ても犬だ。弱っていたのでつい本能的に拾い世話をして、
気付けば手放せなくなっていた。
 それに放しても、歩けば後を着いてくる。止まれば足下に擦り寄ってくる、しゃがめば
潤んだ瞳で顔を見上げてくる。化け猫になる程の年月を重ねた橙ではあるが、未だ子供を
産んだ経験のない身にとって、その子犬は自分のように思えたものだ。
 しかしなぁ、と藍は首を傾げて橙と子犬の顔を交互に見る。
「犬と猫だぞ?」
「猿じゃないので大丈夫ですよ」
 そういう話じゃない、と藍は眉間を指で押さえた。
 年寄り臭いと紫によく言われる癖ではあるが、どうにも治せないものだ。
 それに、と橙は子犬を抱き締め、
「名前も付けたんですよ。ねー、タマちゃん」
「せめてポチにしないか?」
 うるさいです、と藍を睨み、橙は駆け出していった。
 ある晴れた日の、おやつ時に起きた話だ。

× × ×

「という話なんだが、どうにかならないものだろうか」
「その前に、何故その話をここに持ってくるのよ?」
 チルノの家の客間で、麻雀をしながらの話である。
 四つの牌の内、三つを氷で作った透過雀牌によって行われるもので、博麗脱衣ルールが
適用されたそれは人間の里でPTAから絶大な敵対心を持たれている。氷のせいで指先が
冷えるのが不味いからだろうと慧音が言っていたので、それを何とかするのが今の課題だ。
 チルノは面倒臭そうに藍へ半目を向け、
「あたいは橙の友達だけど、今の話は身内の問題でしょ? だったら紫と相談して……あ、
大ちゃんそれロン。親マンで12000ね」
 いやん、と残った下着を脱いで靴下のみのスタイルになった大妖精は世界を狙える器だ。
氷で出来た家は気温が低い。唇を紫にして奥歯を噛み鳴らしているが、顔が上気している
姿を見てチルノは心配そうな目をしているが、大丈夫と元気に答える大妖精の姿は恐らく
風邪を引かない類のものなので藍は放置する。そう言えば美鈴とパチュリーも似たような
関係だったな、と思うだけだ。
 どうしてダメなの、と牌を混ぜていたミスティアが訪ねてくるが、
「いや、だって猫と犬だぞ?」
「藍さんと橙だって狐と猫じゃないですか。それに狐も犬の仲間だし」
 ぬぅ、と藍は眉を八の字にした。
 ここは正直に言ってしまうが吉かと悩み、次に地和が来たら正直に言おうと結論する。
 これは逃げではない、来るか来ないか二択での判断だ。チルノが親なのでチルノの天和
も考慮すれば少しは確率が落ちるかもしれないが、と思ったところで牌が配られた。
「あ、藍ったら凄い。地和なんて初めて見た」
「私だって初めて見たよ、ははは」
 何だよ畜生、何でこんなときに限って何兆分の一の確率が来るんだ。これは竜神様から
のメッセージか、と空を見上げると、指先をバチバチとさせているリュウグウノツカイと
バッチリ目が合った。河童が全自動卓を製造した際に手を貸すんじゃなかったと後悔する。
自動で牌が積めるから何だ、機械のせいで悲劇が一つ生まれた。
 はぁ、と溜息を吐き、
「橙もその内八雲になるんだろうし、そうしたらマヨヒガに来るだろう? でも、ウチは
ペット禁止というか、動物を持ち込むと食材扱いになるんだ」
 えー、と全員が藍に半目を向けた。
「特に酒が入ると不味い、足があれば完全に食材扱い。酒とのコンボが死を招く」
「何それ、大陸の風習?」
「いや、ハウスルールだ」
 藍は約三百年前のことを思い出す。
『紫様、見て下さい。卵から頑張って育てたんですよ!! なー、エリザベス』
『あらー、可愛い鶏ちゃんねー。うぃー、ヒック』
 その日の夕食はフライドチキンであった。
 それ以外にも、歴代のエリザベスが犠牲になった。牛のエリザベスも豚のエリザベスも
羊のエリザベスもだ。魚類なら大丈夫かと思い試しに鯉を飼ってみたが、
「アライにされてしまったよ」
 とても美味しいものだった、と藍は思い出す。
 肉か、とチルノが尋ねると、肉だ、と藍は返答する。
「お酒って怖いですよね」
「ん、怖いよー。後半戦に入ると美少女もナイアガラの滝みたいになっちゃうしね」
 ミスティアが遠い目をして語るが、藍は聞かなかったことにした。
 でもさー、とチルノは頬杖を突き、
「橙が八雲になる頃って、犬も大きくなって妖怪になってるんじゃないの?」
 そしたら食材にはならないじゃん、と真顔で言うが、藍も真顔になり、
「酒の力を甘く見てはいけない。私も昔、食われそうになった。食材的な意味で」
 ひでぇ、とチルノは藍の脇腹を見た。
「待て、何故脇腹を見る」
「ボリューム感が」
 人間相手でないならばスペルカードルールは適用されない。
 スペルカードを使わない四面楚歌チャーミングは、氷で出来た家を容易く吹き飛ばした。
 後に八雲藍は語る。
 冬だからと油断をしていた訳ではない、と。

× × ×

 八雲紫は基本的に日光の出ていない時間帯に起きている。
 種族的な意味ではなく、寝過ぎた結果、単純に昼夜が逆転した生活を送っているのだ。
藍も夜型の生活を格好良いと思っている時期があったが、今では悩みの対象である。
「ただいま帰りました」
 酒の匂いがする、と思い慌てて居間に行くと、橙と紫がナベをつついていた。
「すまない、橙」
 タマを救うことは出来なかった。
 そのことを後悔しながら肉を食べると、牛肉の味がした。
「本当よ、何を考えて隠していたのかしら」
 牛鍋である。
「タマが見つけてくれたのよ。うぃー、ヒック」
 いつの間にか自分に擦り寄ってきたタマを見て、藍は一言だけ呟いた。
「だめだこりゃ」

 今日も幻想郷は平和である。
数時間後、そこには滝を作る紫の姿が……!!

三題噺『子犬』『酒』『肉』
ナンセンスというのは狙って書いてみると難しかったという話です
こんなオチで申し訳ありません
□ボ
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コメント



0.620簡易評価
9.90名前が無い程度の能力削除
貴方らしい下方向にパンチの入ったいい三題話で面白かったです。
11.90名前が無い程度の能力削除
なんかいい
12.100名前が無い程度の能力削除
難しいネタですよね、やっぱ
15.100名前が無い程度の能力削除
貴方の紡ぐ幻想はいつだって素晴らしい。
とりあえず大ちゃんとは良いサケが呑めそうだ。
17.80賢者になる程度の能力削除
>>15氏
大ちゃんで、の間違いだろうか


なんかキレが弱い感じがするかも
18.70ずわいがに削除
八雲家の食卓ショッキングww
20.80名前が無い程度の能力削除
とても和やかなSSで。