Coolier - 新生・東方創想話

守矢神社愛玩動物騒動

2010/03/30 21:26:43
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*本当に唐突なわかりやすいこれまでのあらすじ*


「にゃーん♪」
 神奈子様が鳴いた!

「……早苗?」
「……諏訪子様?」

「……にゃ、にゃーん?」
 神奈子様がもう一度鳴いた!

 ――なんともいたたまれない気持ちになったところで、まことに申し訳ないが回想が始まる。
「え、ちょ、放置ですかコレ」
 うん。我慢して。
「コレ呼ばわり……巫女にコレ呼ばわり……」
 なんかうっとおしくなってるけど我慢して。

 というわけでスタートです。



 物語は麗らかな春の日差しのなかで、とある巫女が春らしく常識に囚われない発言をしたところから始まってしまう。

「ペット飼いたいです」
「放してあげなさい」
 どこで捕らえてきたのか、早苗は犬耳の女の子を連れて帰ってきた。というかウチの山の白狼天狗のコだ。
「な、なんですか?
 なんでボクここにいるんですか?
 これからどうなるんですか?」
 天狗――確か、椛と言ったか――は脅えている。
 恐らく無理矢理連れてこられたのだろう。何が起こったのか理解できていない。
 なお、首には首輪が付けられている。どこで買ってきたんだか。
「えー、なんでですか。可愛いじゃないですか」
 でたよ、年頃の娘がよく使う理性もなにもかもおっぽりだした最凶の概念「可愛い」。
 確かにこの犬娘(狼だけど)が可愛いというのはわからないでもないけども。
 とはいえ、こういう感情的な行為は長く続かないものなのだ。経験上。
「いや、あのね。可愛いからって、無理矢理生き物を捕らえてはいけないよ」
「ちゃんと世話します」
「そんなこと言って……三日坊主になるのがオチでしょうに」
「そんなことないです!」
「……じゃあ、どういう世話をするのか、言ってご覧なさい。具体的に、明日以降のスケジュールを打ち立ててみなさい」
 途端、早苗は口ごもった。
 ほうら、可愛いだけが先に立って、ほかの重要なことがすっかり抜けている。これでは子供だって説得できまいに。
「……え、えと」
「ああ、巫女としての業務を一秒たりとも削ったら不許可だからね」
 早苗が絶望的な顔をする。当然だろう、不可能だと言っているも同然なのだから。
「……こ、こういうのは、家族みんなで支え合って」
「ばかたれ。戦国時代の武士じゃないんだから、余所から連れてきた子を無理矢理家族に入れるんじゃないよ」
「う、うう……この子はウチの子です! 私が育てます!」
 早苗は自棄っぱちに叫んだ。
「そんな「未婚の母」みたいな宣言されても」
 やれやれ、と神奈子はため息を吐いた。こうなると一際頑固なのは誰に似たのだろうか。
 しかし、頑固であろうと、いや、このような態度を出してしまったからこそ、早苗にペットを飼うことは許されない。
 ……そもそも女の子をペットとか言ってはいけないのだけども、ともかく今の早苗は話を合わせないと会話にすらならないだろうし。
 とはいえ、どう説得したものか。と首を捻っているところに、誰かがやってきた。射命丸、とかいう鴉天狗だ。
「すみませーん、ウチの椛がこっち来てませんか?」
「ああ、あんたのところの子だったの。すぐ返すから、ちょっと待ってて」
 神奈子はこれ幸いと椛の首輪を切る。鋭い風が首輪「だけ」を切ったのだ。途端、椛は逃げ出した。早苗が追いかけようとするも、その前に神奈子が彼女を羽交い締めにする。しかし、まだ諦めずにじたばたと体を動かす。
「こら早苗、やめなさ、ぐえっ!」
 顔にいい拳を喰らうも、それくらいで怯む神奈子ではない。
「ええい、年頃の、女の子がっ、出していい力じゃないぞっ。とにかく落ち着きなさい!」
「は、離して! 離してください神奈子様! もふもふが! 私のもふもふなもふもふによるもふもふな新世界、その第一歩がーっ!」
「なにわけのわかんないこと言ってるんだい!
 ……ほら、早くその子連れてって!」
 神奈子は呆然としている天狗二人に首をしゃくった。
「そ、そうですね。お世話様でした」
「今度詫びに向かうよ」
「私はお米から作ったオトナの飲み物が大好きです、とだけ言っておきましょう。……さあ椛、帰るわよ」
「秘蔵の一本持っていくとするよ」
「うう、文さん、怖かったですよう……ぐすんぐすん」
「はいはい泣かない泣かない」
 風が舞った、――かと思えば、天狗たちの姿がかき消えていた。
「ああ、もふもふが、もふもふがぁ……」
「ほら早苗。いい加減諦めなさい」
「うぅー……」
 結局、早苗からは謝罪のひとつすら出なかった。



「あー、それで早苗機嫌悪いの」
「やれやれだ……」
 夕食を作りながら、ため息を一つ。何度、鍋の味噌汁にため息が混じったかわからない。
「まあ流石に近所の子をペットに、ってのはまずいよねえ色々と」
 流石にこちらにアグネスはいないとしても、やはり世間体がやばいのだ信仰的に考えて。
「そうなんだよねえ……。普通の犬とかならまだしもねえ」
「あんまり見かけないねそういうの」
「野良妖怪なら沢山いるけどね」
 本当に、たくさんいる。ずっとずっと昔に、いなくなったとばかり思っていた妖怪変化が、ここにも、そこにも。
 外の世界で、ヒトが生きているのと同じように、アヤカシが生きている。

 それをペットにする、とのたもうたのだあの娘は。
 ああ、またため息がこぼれ落ちる。きっと味噌汁は憂鬱な味になっていることだろう。

「んー、でもどうする? 収まったような気配じゃないよ?」
「んー……」
 神奈子は悩んだ。ただペットが欲しい、というだけなら蛇とか蛙とかを呼ぶことはできる。ある程度力を与え、式神のようにすることもできる。
 だが、先程の早苗の言葉……「もふもふ」。つまり、毛。残念ながら、普通の爬虫類や両生類には毛が生えていない。
「ヤドクガエルとか綺麗でオススメ」
「毒持ってるだろ文字通り」
 決して触れてはいけません。それはともかく。
「……いつからもふもふ系が好きになったんだろう、あの子」
「んー、この前の飲み会のときじゃない? 確か狐さんの尻尾に絡まってたよね」
「ああ、そういえば……」
 言われて、一週間ほど前の飲み会を思い出した。


一週間前 午後八時 博麗神社


「やれやれ、次から次へと果てしなく呑むんだから……」
 博麗神社での飲み会は大抵二つのグループに別れる。際限なく飲む方と、そんな主や友の姿に呆れて、自主的に片付けをするグループだ。
「ふふ、大変ですね」
 この二人、八雲藍と東風谷早苗は、後者に入る。
「そちらの上役もなかなかの蟒蛇のようで。……確か、新しくやってきた、山の巫女かな?」
「はい。東風谷早苗と申します。よろしくお願いしますね。えと……」
「八雲藍、だ。見ての通り、狐の妖怪だよ」
「……狐って、九本も尻尾ないですよ?」
「ああ、動物形の妖怪は、強くなると尻尾の量が増えるの」
「へえ……」
「触りたい?」
「え? いいんですか?」
「どういうわけだか初対面のコって触りたがるのよね、これに」
 藍が、尻尾を持ち上げて苦笑いする。しかし、好かれること自体はまんざらでもなさそうだ。
「じゃあ、せっかくだから……」

一時間後

「……何やってるのよ藍」
「絡まりました……ほどいてもほどいても勝手に絡まっていって……」
「ありゃま……済まないね、狐さん。家の子が」
「ああ……ふかふか……もふもふ……うふ、うふふ……」
 ヘブン状態の早苗を救出するのに、小説本まるまる一冊書ける程度の出来事があったのだが、省略させていただく。


「……救出したあとも、なんか物欲しそうな目で狐を見ていたねえ」
「ま、ありゃあしょうがないよ。天然の狐毛皮が九本でしょ。気持ち良さそうだもん」
「今度触ってみたいわね」
「やめときなよ。取り込まれて、帰ってこれないよ」
「確かに」
 あのときの早苗のしまらない顔を思い出し、苦笑を浮かべる。――とはいえ、今日の出来事に苦笑を浮かべるには、まだ問題が残っている。
「……しかしそう聞くと早苗を元に戻すには、どうすればいいんだろうなあ」
「んー、ペット与えるってのはいいとは思うんだけど……。あのままじゃ、禁断症状起こしてなにやらかすかわからないよ?」
「とはいえなあ……」
 じゃあ、なにか毛の生えた哺乳類でも持ってくればいいのか、と考えて、はあ、とため息ひとつ。
「世話……すると思う? そもそもできると思う?」
「……難しい質問だね」
 先程早苗に言った通り、巫女として働いているのだ。ただの学生のように、時間がくれば解放される――とは限らない。むしろ信仰稼ぎや妖怪退治に右往左往である。
「一番暇そうなアンタは相性悪そうだしねえ」
「勘弁してよ。ピッチピチの柔肌に咬み傷ついたらどうするのよ」
 何言ってんだか同期の桜め。
「煮てよし、焼いてよし、でも躍り食いはノーよ! せめてベッドの上で!」
「よしわかった。今度貴様を路上で猫まみれにしてやろう」
「ギャー勘弁勘弁」
 二人は笑いあう。神奈子は、ほんの少し気分が楽になった、ような気がした。
「……うーん。ヌイグルミじゃだめかなあ」
 少しだけ、思考も回る。――が、これは自分で言ったそばから駄目だな、と結論が出た。
「だめでしょ。小学生ならともかく、いい年した女の子なんだし」
「そうねえ……」
 むしろ諏訪子の方が似合いそうだ。

 一瞬、蛙の縫いぐるみを抱き締める諏訪子が思い浮かんだ。

「ぶはははは」
 つい吹き出した。まずい、一見似合いすぎて吹く。諏訪子の中身を理解している分とても笑えてしまう。
「ふんだ、どうせ神奈子にゃ似合わないだろー」
 諏訪子がむくれだす。
「はいはい似合わない似合わない」
「……わかっているならタンスの奥にヒラヒラ系の服隠すのやめなよ」

 時が凍りついた。

「……に、にしても、本当に早苗降りてこないね」
「答えろよ質問に。逃げるなよ現実から」
 質問から逃げた。しかし現実は変わらなかった。
「……ちょっと様子見てくるね」
 いたたまれなくなったのか、神奈子は鍋の火を落として、早苗の部屋に向かった。
「そんじゃ私も」
 なぜか、後ろから諏訪子も着いてきた。
「なんか、不安になってきた」
 珍しく、諏訪子の顔が真面目である。――こんな顔をするときは、大抵嫌なことになるのだ。
 胸に重いものを感じつつ、二柱は、巫女の部屋に向かった。



「早苗ー、……入るよー?」
 申し訳程度にノックをして、神奈子は早苗の部屋に入る。
 ――返事はない。もう、寝てしまったのだろうか。という願望は、しかしドアから漏れる怪しい紫の光とBGMに吹き飛んだ。

ふんぐるい むなぐるう ふたぐん いあいあ

 早苗さんがなんかやってた。なんかって「アレ」だ。名状し難きアレ。
 賢明なる読者諸君は、ここでSAN値チェックを怠らないように。
「なにやってんの早苗ー!」
「召喚です! サモンもふもふです!」
 目がやばかった。3D6振っても回避できそうにない狂気ぷりである。
「違うから! それどっちかって言えばサモンぬるぬるだから!
 絵柄的にはすげー見たいけどさすがに対処できるかどうかわかんないから止まって!」
「大丈夫です! これでも英語は5だったんです!」
 なお十段階評価で、の話である。
「その本どう見ても英語じゃないんですけど!」
 諏訪子が青ざめた顔で指摘する。――と、早苗が首をかしげた。
「……え、違うんですか?」
 気づいてなかったらしい。
「これラテン語。……それも古代ラテン語かな、これ」
 諏訪子が首をかしげる。この蛙は暇さえあればなにか変なのと遊んでいたりするので、そのとき覚えたのだろう。
「え、でもアルファベット使ってるじゃないですか」
 二柱は揃って頭を抱えた。
「ヨーロッパ系列の言語は大体アルファベットだよ」
「ええと、じゃ、この呪文……」
 さーっと、血の引くような音がした。ようやく、気づいてくれたようだ。
「……まずくね?」
 みんなを代表して諏訪子がぽつりと不安をこぼす。
 そしてその不安を裏付けるかのようにけたたましい警報が鳴り、ACCIDENT!と書かれた赤いランプが点滅する。
「なにこの警報!」
「あと赤ランプなんていつつけたんだ!」
「香霖堂で「簡単召喚セット」を買ったらついて来ました」
「何売ってるんだあそこは!」
「結構なんでも売ってるよ。型は古いけど」


――CM

          -==-、
              , ─ ´ ゝ、
         , - '  ̄       `ヽ,
        , '             i
       ,'             r  i
      /         r i  /リレ´ | ./ /
      i        / ル|/_i-イ,  .|//  「MOTTAINAI」
      i      イノ i`,| i. ::ヽノ   `── この一言だけで、ここまでやってきました。
      ノ,         ヽi .i u::::i    、 
     ´ |,イ入     ./イ'、| ::::,'   |ヽ\ 
       レル Yリノヽイ  _ヽ| _:/   | `ヽ\ 資源に、もう一度を与えよう。
          / \`-=-/ヽ
      _ , --´\   \-/  ト-
            \   y  |<

 香霖堂グループ

CM終了――


「ええと、これは……」
 早苗はマニュアルを開く。
「……ええと、召喚失敗のときですね。
 何が出てくるかわからない、って書いてあります」
「なぁんだ」
「そっかー」
 あっはっは、と三人が仲のいいおや、もとい姉妹のように笑い合った。無意識のうちに現実から逃避したようだ。
「「一大事だー!」」
 が、流石にそういうわけにはいかず、とはいえどうしたらいいのかわからず、神様二人はとりあえず叫んだ。
 そしてそうこうアホやっている内に、召喚陣から、何かが現れる――!


「てけり・り」

【外法属 ショゴス 一体出た!】


「……」
「……えっと」
「……ぷにぷに?」
 ぷるんぷるんの不定形ボディに、つぶらな一つ目。狂気山脈なショゴスさんが現れてしまった……!
「てけり・り?」
 ショゴスさんは辺りをきょろきょろと見回す。あ、なんか可愛い。
 と、その瞳が早苗を捉えた。どうやら、誰が召喚したのか、理解しているようだ。
「これじゃない……」
 ぽつり、と早苗が呟く。
「てけ!?」
 びくり、とショゴスさんが震える。
「これじゃないのに……私が欲しかったのはふっさふさなの……。ぷにぷにのつるつるはお呼びじゃないのに……」
「て……け……」
 ――まずい、と神奈子と諏訪子が理解したのは、すでに早苗さんがぶっちゃけ始めた後だった。
「さ、早苗! そこまでにしてあげて! ショゴスさん泣いてるから! つぶらな一つ目に涙貯めてるから!」
「ごめんね、ごめんね、せっかく出て来てくれたのにごめんね!」
 二柱はショゴスさんが暴れないように尽力した。
 本気を出せば勝てなくもないのだが、こっちが勝手に呼び出した上にこの言いよう、どう考えても非はこちらにある。
「これじゃないのに……」
「「いいから黙れ!」」
 二柱は強制的に早苗を黙らせた。



 一時間後。
 憔悴した様子の諏訪子が、ようやく帰ってきた。
「ぢかれたー」
「お疲れさん」
 まるまる一時間、あのショゴスさんと応対していたのだ。
 属性的に近いとはいえ、かたや国津神、かたや狂気山脈、そもそも、意志の疎通すら相当な困難を極めていたのだ。
「ショゴスさんは?」
「帰ってくれたよ。ああ、秘蔵の濁正宗だったのになあ……」
「酒ビン一本で帰ってくれただけマシじゃないの。ヘタすりゃガチで争いになってたかもしれないんだから」
「そうだねえ。まあ、結構紳士だったけど」
 ふぅん、と生返事を返す。神奈子にとって、もはや、ショゴスさんはどうでもいいことだった。
「んで、早苗は?」
「説教を終えたよ。……でも、あれは隙あらばまたやりかねないね」
 それ以上の問題が、未だに解決していないのだ。
「うーん、まさかここまでとはなあ」
「まずいねえ……。明日以降、どうなることやら」
 このままでは、明日もこっそりとなにかをやりかねない。
 今日はこちらだけでどうにかできた。
 では明日は?
 明後日は?
 ――そんな先のことすらわからない。
 神奈子と諏訪子は、残念ながら、目の前の現実しか、見えないのだ。

 ――その頃、早苗さんが

「ゾイワコ・ノイワコ・マカイヤ・ゾイワコ・ハズラム・サライヤー!
 ……うーん、やっぱりこの呪文も駄目かあ」

 子供の頃に見たアニメの呪文を延々と唱えていることすら、見えない――
(世のお父様お母様へ。
 年頃の娘さんが中二的な呪文を唱えていてもそっとしておいてあげましょう。
 はしかのようなものです。大抵はすぐ醒めます。
 なお、まれにこじれますがそのときは諦めてください。)

 それはともかく。
「うーん、あの隙間妖怪に、適当な式の打ち方でも教えて貰う?」
「……やめとけ。十中八九、余計なスパイウェア組み込んでいるのがオチだろ」
「そう? あの狐さんみる限りそういうのは無さそうだけど?」
「……いや、アレの相手をする場合、常に最悪の事態は想定した方が良い。多分、その斜め上をいくぞ」
「ふーん、そういうもんなのかな」
 ウチのぐうたらと似たようなものだしな、とは言わなかった。
「じゃあどうしようか」
「適当なふさふさしている野良妖怪でもいないもんかねえ」
「いないよー。ああいうのは大抵どこかの家にいるもんだよ。もしくは一家構えているとか」
 冬場の暖房器具としてあれ程便利なモノは無いしねえ、と諏訪子はアホなことを言う。……とはいえ、あの狐に包まれたら。
 いや、いかんいかん。神奈子は首を振って誘惑を振り払った。
「下手に拉致ってパワーバランス崩すのもあれだしねえ」
「それこそ信仰が無くなるよ」
 こちらに来て信仰を取り戻した、とはいえ、一個風評被害が出ればそれこそ吹き飛ぶ程度である。
 こういうのは慎重に行きたい。
「あとはもう、神奈子がネコになるぐらいじゃない? なんてね」
 諏訪子が、茶化すように笑う。

「それだ」
 ――が、神奈子は、閃いてしまった。

「……か、かなこさん? なに、その「その手があったか」って目は」
「ちょっと行ってくる!」
「どこに!?」
 その質問に答えず、神奈子はオンバシラをパージして風の如き速度で走り出した!
「……どないせえってのよ」
 その言葉に答えられるのは、誰もいない。
「……あの、諏訪子様?」
「あれ、早苗?」
 そのまま呆然としていると、早苗が降りてきた。とても困惑した顔をしている。
「あの、神奈子はどちらに向かわれたのですか? 私のタンスから服を漁ったかと思うとすぐに出ていったのですが……」
「……さあ?」
 諏訪子は頭を抱えた。



 神奈子は風になっていた。
 風になって、一直線に走っていた。

 ただただ一直線に、目標目指してどこまでも。

 ここまで異様な行為を、暇を持て余した幻想郷の人妖が見逃す訳がない。
 それは神奈子も理解している。

 故に――セーラー服(早苗臭)を着ている!

 これならば誰にもばれない!
 万一写真撮られても自分だとは気づかれまい! セーラー服だし! 多分。
 念のためグラサンもタンスの奥底にあったから付けたし!
 ……なんで持ってるんだろう? でもその疑問は後にしよう!

 うん、誰も不幸になってない。
 なら、なんにも問題ない。
 これでいいじゃない!

 心で自身の行為を自己完結した神奈子は、さらに速度を上げた。

 ――目指すは、香霖堂!



 香霖堂店主、後に語る――。

「はい。あのときは突然でした。
 夕食を終えて、就寝しようとしたところ、いきなりセーラー服を着てグラサン付けた年増が現れたのです」

 ――いきなり年増が、ですか。

「はい、いきなりです。肌年齢が読めない程度の厚化粧をしていましたから、ほぼ年増で間違いありません。
 何事か、と剣を取ったら弾かれて、組み伏せられました」
 
 ――それはまた唐突ですね。

「何が目的なのか、さっぱりだったので、はじめはかなり困惑しました。
 ただのしがない道具屋に、ここまでする価値があるのか、と考えていたら、いきなりネコミミと尻尾を持って来い、と脅されました」

 ――というと、強盗ですか?

「いえ、お金は払っていきましたね。結構な額でした」

 ――なるほど。で、売ったのですか?

「ええ。丁度在庫がありまして。
 魔術的な要素のないただの飾りなので、悪用されることもない……そう思っていました」

 ――思って、いた?

「はい。年増がそのネコミミを付けて、いきなりにゃーんと鳴いたのです。
 ……気が付けば、朝日が昇っていました。恐らく、気絶していたものかと」

 ――御愁傷様です。

「ええまあ、代金は棚に置かれてましたし、扉の修理代も込みで。
 なので実質的な被害は無い……無いの、です……くっ……ううっ」

 ――店主。辛ければ、泣いてもいいのですよ?

「……いえ、泣くわけにはいかないのです。
 買われていったものに対して、笑顔で見送らねばならないのです。
 それが、店主としての……意地、とでも言うのですかね」

 ――そんなゲッソリした顔で言われても。いいから病院いきなさい。

「……いえ結構です」

 ――知ってるんですよいい歳して注射が嫌いだって。

「だってあの薬師さん痛くするんですよ!
 ごめんなさいねえ、とすこぶるにっこり笑いながら!
 あれ絶対わざとだ! わざと痛くしてる!
 なんだって歳を重ねまくった女性って無駄に陰険になるの? ねえ! ねえどうして!?」

 ――というわけでスペシャルゲストのご登場です。

「……へ?」
「あらー、陰険だなんてひどいわねぇ。えーりん傷ついちゃう♪」

【忌人属 ヤゴコロエイリンエイエンノジュウナナサイ 一体出た!】

「ちょ、なんでこのヒトいるの!?」

 ――最悪の状況に備えて呼んでおいたたけですよウフフ。

「うわあん命が危険なお心遣いよくもありがとう!
 ツラとセリフが合ってないんですけどわざとだろうアンタ!」
「うふふふふ。さあこっちでおねんねしましょうねー。
 今たぁっぷり、痛くしてげますからねー」

Set spel card!

「持って無いよ!
 どうすんのこれ僕素手で戦えと!
 せめて天叢雲使わせて!」

BGM:悲しみの向こうへ

「やめてそのBGMやめて!
 掻っ捌かれること確定だよね!」

――Ready?

「やめろぉー! やめてー!
 というかそのメスはなんですかダクタァヤゴコォロ!
 なんでそのメスで五芒星書いてるのー!」

【OFFENCE_ATTACK】
 [Kery keion]

 ――現場の射命丸でした。


「いやあそこで切り上げないで!
 お願い! 誰かこの放送を見ていたら僕を助けて!

 あっ、メスが、メスが僕の頭に――んがぐっくっく」


 ――霖之助 再起不能


 それはともかく、渦中の守矢神社。

 あれえおかしい。
 八坂神奈子は、自身の目論みが外れたことに首をかしげた。
 ついさっきも、あの店主にポーズ実験して感動のあまり気絶させたというのに。
 本当ならば、猫になった自分に、早苗が感動にむせび泣く筈なのに。
 本当ならば、今頃ぎゅっと早苗に抱き締められてさらなる信仰を手にいれていた筈だったのに。
 本当ならば、――こんな、孤独感は。
 そう、ひとりぼっちになったような気分には、ならない筈なのに。
 だが、どうだろうか。
「ふぅん……猫、ですか……うふふ……」
 今、早苗さんは、嗤っていた。それはもう、すこぶるにっこりと。
「うふ、うふふふ、ふ、フフフフフ……」

 あ、死んだ。

 神様は一発で理解した。
 なんかもう目覚めさせてはいけない早苗さんを呼び出してしまったのだ、と理解した。
 具体的には――
「じゃあいりませんよね?」
「え、なに」
「いらないんです。ただの猫に、服や、言葉なんていう文明的なものは、ね?」
 ――常識的に、非常識を押し通す早苗さんを!
「あ、あの……」
「あれぇ、おかしいですねえ。
 私の知っている猫ちゃんはぁ、にゃあぁん、って鳴くんですよ?
 ヒトの言葉なんて、しゃべ
           ル筈な
             イん
         DEATHけ

          怒

       ねェ?」
 くすくす、と童のように可愛く笑う。
 ただ、その目はとてもとても冷たくて。おしっこチビりそうな程度には。
 そして、その言葉はとてもとても鋭くて。ボロ泣きしそうな程度には。
「さ、早苗さん。お、落ち着いて。お願い落ち着いて。あれはかな」
「私の知っている神奈子様はヒトのセーラー服を勝手に借りてムッチムチボディでベロンベロンに伸ばしてさらにはネコミミ着けてにゃーんとか言いません」
「……ごめん何も言い返せない。これ普通ならキレてもいいや」
 諏訪子はあっさりと諦めた。
「ちょっと諏訪子ぉ! せめて止めてよ!」
「うん無理。これ無理」
 諏訪子は、こちらを見なかった。まるで、こちらの存在を、拒否するかのように。
「すわ」「話しかけないで」
 明確な拒否。
「え」
 それは、あまりにも、冷たすぎて。このまま、思考が冬眠しそうで。
 それはあまりにも、致命的なほどに明確な隙を作りあげて――

 がちゃり、と首になにかが嵌まることに、しばらく気づかない程度に。
「……あ、れ?」
 ――首輪だ。
 畜生の首輪が、自分の首に嵌まっている。
 首輪からはリードが伸びていて、そのリードの先を恐る恐る見れば、
「ふふふ……ヒトの服をベロンベロンに伸ばすいけないペットには、おしおきがいりますよね?」
 早苗の、手が、あった。顔が、あった。怒りが、あった。死が、あった。――信仰が、今、死に絶えた。
「え、えと、早苗、怒って」「違うでしょう」
「ひっ……、に、にゃ……あ……」
 脅えている。神奈子は、早苗の眼光に脅えている。
 もはや、神奈子という神は存在せず、カナコという一匹のふとましい猫がいるだけだった。
「よろしい」
「……じゃあ私もう寝るから」
 諏訪子は、なにもかも諦めた顔で、二人から顔を背けた。最早、この二人――いや、一人と一匹に、近づきたくないようだ。
「はい、おやすみなさいませ諏訪子様。
 ……ああ、それにしても神奈子様はどちらにいってしまわれたのでしょう?
 私、心配で心配で胸が張り裂けてしまいそう!」
 ぐるん、と芝居掛かった動きで、後ろを向ける。言葉の一つ一つがわざとらしく、その一つ一つが、神奈子の心に突き刺さる。
「――この憂さ晴らしは、ペットで解決するのが普通ですよね?
 そう、そこの猫のカナちゃんに、ね?」
 そして、ゆっくりとこちらに振り向く――その顔は般若!
「動物愛護団体に怒られない程度にしておきなよー」
「バレなければいいんですよ♪」
「さいで」
 ばたん。と乾いた音が一つ。
 それは、救いの手が、閉ざされた音。

「さあ、カナちゃぁん……」
 あとは、もう、
「おしおきの」
 惨劇だけが、
「時間ですよ?」
 残っている――。



ぎにゃーーーーーーーーーーーーー



 その日、さるまたを引き裂くような年増の悲鳴が上がったとかなんとか。


どっとはらい


―RESULT―

神奈子

 信仰が落ちた。
 再起不可能一歩手前。

諏訪子

 無気力状態。
 再起不可能一歩手前。

早苗

 レベルアップ!
 スキル「S」取得!
 変な信仰が上がった!

 きょうも元気(と書いて非常識と読む)
再びオナゴの涙を見るために!
幻想郷カリスマブレイク成就のために!

そそわよ! 私は帰ってきた!

……というわけでここにぶっ込むのは久しぶりなワタクシでございます。
なんか知らない間に色々と形変わってておいちゃんちょっと混乱しちゃったけど多分これであってるよね?(ぇー

今年はもうちょっとこういう場にも色々出していきたいところです。
それではまたー。

Q.ところで最近の早苗さんのアレっぷりが止まらないんだけどどうしたらいいんでしょうか。
かさぎ修羅
k0253@hotmail.com
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/6827/
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コメント



0.940簡易評価
3.70名前が無い程度の能力削除
恐ろしきは藍様、その自慢の尻尾で落とした女は星の数!!ついに早苗さんまでモフモフジャンキーに(泣)
6.80ずわいがに削除
オイ、俺の心拍数がマッハなんだが
神奈子様のとんでもなくお可愛らしい姿への興奮と、それを年増扱いする愚者への怒りでだよ

>年頃の娘さんが中二的な呪文を唱えていてもそっとしておいて
『NARUTO』の印を覚えて「~~の術」とか叫んでいたあの頃を思い出した
9.90名前が無い程度の能力削除
いあ、よぐそとおす!

召喚されたのがショゴスで本当によかったですw
18.80名前が無い程度の能力削除
早苗の唱えた呪文が自分の今やってるゲームに出てたwww

早苗さん、それで呼び出せるのは魔界獣であってもふもふじゃありませんよwww
22.80名前が無い程度の能力削除
最近そそわにカオス成分が多くて嬉しいですw
これからも頑張ってください。
25.100名前が無い程度の能力削除
ほんと霖之助さんは男やで
27.100名前が無い程度の能力削除
相変わらずなカオスっぷりがとても素敵ですw
30.100名前が無い程度の能力削除
変わんないっすねかさぎさん。

安心感がぱねぇぜアンタ。

取り敢えずネコ神奈さまが可愛かったから(もうどうでも)良いや。
35.100名前が無い程度の能力削除
なんてもの召喚しやがるwww