.
「あら?珍しいじゃない。今日は客人なのね」
「……なるほど。永遠亭からパチェにお使いと。ふうん、偶には役に立つのね、貴女」
「何時もいつも外から盗撮してたら、そりゃ邪険にもされるでしょうよ。ま、私の部屋に窓は無いから別に良いけど」
「私はね。って、言っとくけど、私のメイドについて変な記事書いたらグングニルがお前を貫く運命創るから」
「私の神槍とあの子のナイフ、どっちが早く貴女に着弾するかしらね」
「そう思うなら自重しなさい。流石に訳も無く投げないわよ、あの子も私も。多分」
「たまに機嫌が悪かったりすると、ね。その時は運がなかったと思って諦めなさいな」
「今?機嫌は良いわよ。まあ、もうこんな時間だから眠いけど」
「ん?ええ、ちょっとね」
「………」
「おい。一応言うけど、この先に進むなら切り刻むよ」
「分かって言っているだろう、貴様。ああそうさ、フランの部屋だよ。」
「入るのか?良いだろう。綺麗に鶏肉にしてやる。前も後ろも右も左も過去も未来も分からない様にしてやるさ」
「……ああもう、面倒くさいな。」
「天狗が嫌な種族なのは知っていたけどね。一瞬にして沸点を振り切らせてもらったのは久しぶりよ」
「天気屋、ね。結構色んなヤツに同じ台詞を吐かれたけど、パチェに言われた次くらいにはムカつくわよ、それ。というかアンタに言われたくない」
「まあ、パチェが言いたかったのは、『貴女って結構いじり易いのよね、天気と同じで』って意味なんでしょうけど。言われた文脈的にもね。あ、これ記事にしたらロイヤルフレアで焼かれること覚悟した方がいいわよ」
「ん?うん、アンタも私もに決まってるでしょう?私は焼かれた位で死にゃしないけど」
「やる時はやるのよ、なんだかんだ言って。私が丈夫じゃなきゃ、親友なんて間違っても言ってらんないわね」
「……それについては絶対に、何があっても貴女には教えないわよ。パチェと私の出会いなんて外部に漏れたら、私本当に死ぬかもしれないもの」
「うん?フラン?」
「………」
「なんでそうなるのよ、貴女は。私はあの妹を幽閉しているのよ、好んで話をする訳が無いでしょうが」
「ふん……さ、帰った帰った」
「………は?」
「え、いや、ちょっと待って?何で貴女がそんなこと……」
「あああああっ、ああ、分かった、分かったわよ。話せば良いんでしょう話せばっ」
「いやでも、ああ畜生、良いわよもうっ」
「全く、何でこんなことに……さあ、何から聞きたいのかしら?」
「………」
「フラン、ねえ」
「そうね、私からすれば、あの子は疎ましい存在、っていうのが一番正しいな」
「ええ、だってそうでしょう?あの子は危険すぎる。物質的な物に限らず、精神的、神秘的公式的絶対的なものさえも壊してしまえる。私が操る運命だって、あの子にしてみれば文字通り片手で潰せる存在なのよ。そんな危険な存在を、閉じ込めずにおくことなんて、私には出来なかったわ」
「幽閉、か。確かにそう言って良いわ。むしろ足りない。監禁、拘禁、拘束、それとも何かしら、『抹殺』と言っても過言じゃないわね。私が持っている手を全て使って作った部屋に、騙して殺して壊して放り込んだんだもの。あの部屋は最高傑作なのよ。パチェも驚愕する程度の強度を持たせてあるの。当然、あの子の「手」も、使えない」
「酷いと罵る?それも良いでしょう。外道と詰る?吸血鬼に何を。私は悪魔よ、その程度で表せるほど、小さく綺麗な存在じゃない。天上天下神様だろうと何だろうと歯牙にも掛けずに生まれ出て、東も西も北も南も人間共を喰い散らかして、夜に生きて朝に死んで夕に目が覚める我々に、道理も道義も必要ないわ。それとも何、貴女は私を凌駕できるの?」
「………」
「くははははっ!――成る程、此処は幻想郷だったわね。確かに、ここでそんなことを言っても空気が読めていないだけか」
「はは……優しいのね、貴女は、そして此処は。全く、反吐が出るわよ、この空気、綺麗過ぎて話にならない。ああ、嫌になるわ。どいつもこいつも心底壊れているくせに、どいつもこいつも死ぬほど正当化されてる此処は、もう地獄よりも深く狂っているんでしょうね」
「あら御免なさい、話が逸れたわ。フランの話だったわね。と言っても、もう言うべき事は無い、か……」
「さっき話したことが全てよ。私にとってあの子は邪魔な存在。心底壊れて地獄よりも狂っているあの子は、私にとって特大の爆弾。だから私はどうしたって、あの子の自由を認める訳にはいかないの。存在を肯定する訳にはいかないの。私は私を守るために、あの子を殺す。あの子を絶望に追いやって、二度と戻れない様にする。あの子は私を憎むでしょう、恨むでしょう。しかしそれさえも地面に押し込めて、力ずくで封じ込めて――それが私が生きる術。それが私の唯一の活路。そうして私は、こうして平穏に、どうにか無事に今を生きている訳よ。それを後悔したことは無いし、それを懺悔したことも無いわ。……まあ、でも、それでも――」
「………」
「ふあぁぁ……もう朝ね。今日はこれまでよ」
「……ん?もう眠いんだが。寝不足の私は何をするか分からないわよ?うっかり殺しちゃうかも」
「手短に端的に十文字以内で話して。でないと怒る」
「………」
「此処に来た理由?そこにあの妹が絡むかといったら、そうだな」
「私は寝るよ。またな、パパラッチ」
「あははっ。やっぱりまだ居たんだ?」
「うん、久しぶりっ。また変な記事書いてるの?」
「事実じゃない。こないだもアイツが怒ってたよ。根も葉も無いこと書かれたーって」
「根も葉も無ければ茎だけあってもしょうがないんだってば」
「ははっ!暴言だね。それとも妄言かな?」
「それを公言しちゃうのが貴女の面倒な所だよね。そんなんだから煙たがれるんだよ?こっちの機嫌も尊厳も無視して際限なく放言しちゃうんだもの。そのうち自分に還元されてきても知らないからね?」
「至言でしょ?言葉遊びは得意なんだよ。半世紀も一人で居ると、そんぐらいしかやることが無くてねー」
「んー?アイツのこと?」
「うん、恨んでるよ、勿論」
「そりゃ、あの地下室に無理矢理押し込められればね。多分誰だってそうだと思うよ?私は悪くないのに、あの空間はまるで私を悪いものであるかのように扱うの。私は何も思っていないのに、あの部屋はまるで何かを考えなくてはならないかのように押し付けるの。私は何もしていないのに、何か起きた時の為にあんな空間に放り込まれて、それを恨むなという方が惨たらしいよ?」
「あはははっ、素直なのは良いことでしょ?」
「試してみる?そうだね、大体二年位でも充分きついんじゃないかな、特に貴女みたいな羽から生まれたタイプは」
「私はどっちかって言うと眼から生まれたタイプかな?お姉様は手だね。パチュリーも眼、もしくは頭。咲夜は――なんだろう、時計かな。美鈴は足で、小悪魔は……、って何でこんな話になってるのさ」
「別にね、嫌いって訳じゃないんだよ。ただ憎んでいるだけ」
「あー。確かに逆を言う人は多いかもね。でも私の場合はこれで正解。お姉様のことは、今は全然嫌いじゃないの。ただ495年間かけて集めて潰した憎しみは、ちょっと私でも壊せないし壊したくないの。これは荷物だし傷跡だし証拠だし軌跡なの。私が今まで生きて感じて想って壊してきたものなの。だから、これはもう致死的かつ致命的で絶対的かつ普遍的な壁だと思って良いよ」
「ははっ。鴉って頭良いんでしょ?これくらいちゃんと理解してよねー」
「まあ、私としてはまだ、もう少しくらいその壁に寄りかかったままで居たいんだよね、要するに。うん、どうしようもない逃避だとは分かっているんだけどね」
「………?」
「え?ああ、アイツからみてどうかって?」
「そりゃあ、ねえ。姉からしてみれば、こんな厄介な妹は無いと思うよ。うっかりすると何でも壊しちゃうお茶目さんなんて、一緒に生活している側からすれば迷惑極まりないもんね。閉じ込めたくなる気持ちも分からなくは無いかな、納得しないけど」
「まあ、そこは寛大なる妹のココロイキ、ってヤツで乗り切るべきなんだろうねー。あんまり気持ちが乗らないけど、まあ仕方が無いかな」
「アイツは馬鹿だもん、割と」
「私の方が本を読んでるしね」
「あ、そういう問題じゃない?でもねえ、結局、思考も嗜好もそこにどれだけ知識が入っているかにかかっているからね。そういう点では、私は幻想郷でも相当上位の知識人なんだと思うよ、館外の人は良く知らないから自信ないけど。忘却を壊せるっていうのはやっぱり妖怪としては強みなんじゃないかな。あ、でもやっぱりパチュリーには負けるけど」
「あははっ!そりゃ暇の片手間で読んでるのと人生の目的で読んでるのとじゃ、精神の入り方が違うもん。それに読むスピードも違うしね。パチュリーってば、殴ったら殺せそうな魔道書を三十分くらいで読んじゃうんだよ。こないだ私が部屋から出て戻るまでの間に、脇に寄せてある本が半分になってたもん。」
「………」
「……え、って今更?だって私今、フツーに外に居るじゃん」
「そりゃ、出れなきゃどうして此処に居るのよ、私。幻影飛ばすのって結構難しいんだよ?出来なくはないけどさ」
「端的に言えば抜け穴があるのよね、あの部屋。最近になって分かったんだけど」
「ある、と言うか、出来た、と言うか。前の異変が終った後で何とは無しに見てたら、いつの間にかあったの。まあ、アイツは面倒くさい性格してるからね、馬鹿な癖に変なプライド持ってるもんで」
「前はメイドに頼んで持ってきてもらってたんだけどね。今はパチュリーにばれない程度に図書館歩き回れるから、読みたい本を好きに読めるのよ。その点は感謝してるの」
「一応私の名誉の為に言っておくけど、あの扉、別にぶち壊せない訳じゃないんだよ?多少偽装されてるけどちゃんと『目』はあるし。実際最初の五十年くらいの時に一回破壊したし」
「そん時はお姉さまに殺され解され並べられ揃えられ晒されずに地下室に放り込まれたけどね。今だから言うけどアイツってかなり強いよ、特にブチ切れた時は」
「あー、いや、アレは私が悪かったの。お姉さまの大切にしていたメイドを壊しちゃったのよ。あの頃は狂いが極まってたからね、何で壊しちゃいけないの?、みたいな事を平気で言ってたっけなぁ」
「あははは……今は、流石に反省しています、うん。というか、最近の周りにいる人って素直に壊されてくれないんだけどね、ぶっちゃけ。お姉さまは二、三回壊れても平気な顔してるし、パチュリーや魔理沙は防壁張ってくるし、咲夜は時止めて見えない所に逃げるし、霊夢はなんでか知らないけど普通に避けるし。美鈴や小悪魔はちょっと危ないから注意してるけど」
「貴女は――どうだろう、試してみようか?」
「あはははっ、冗談だよ。貴女が居なくなると困る人が結構居るらしいからね。私としても、咲夜が秋頃に作る焼き芋の包み紙が無くなるのはちょっと不便だし」
「いや、美味しいんだよ?秋になったら来てみなよ、一個くらい分けてあげる」
「まあ、まだあと一年くらいあるけどね、妖怪にしてみちゃそんなの一瞬でしょ……さて、そろそろお開きにしようよ。うっかりするとパチュリーに発見されちゃうかもしれないし。もう聞きたい事は無いでしょう?」
「え……まだそれ聞くの?面倒くさいなぁ」
「お姉さまとの関係、ね。んー、分かったよ。適当に手短に言うと、私の部屋、あの地下室、あの牢獄のことなんだけどね」
「あの部屋はね。内側からはともかく、外側からは私でも壊せないんだよ」
「つまり、そういうこと」
「つまり、姉妹そろってツンデレってことで良いのかな?」
「椛に言わせると、情緒も何もありませんね」
まあ同意見ですが。
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「あら?珍しいじゃない。今日は客人なのね」
「……なるほど。永遠亭からパチェにお使いと。ふうん、偶には役に立つのね、貴女」
「何時もいつも外から盗撮してたら、そりゃ邪険にもされるでしょうよ。ま、私の部屋に窓は無いから別に良いけど」
「私はね。って、言っとくけど、私のメイドについて変な記事書いたらグングニルがお前を貫く運命創るから」
「私の神槍とあの子のナイフ、どっちが早く貴女に着弾するかしらね」
「そう思うなら自重しなさい。流石に訳も無く投げないわよ、あの子も私も。多分」
「たまに機嫌が悪かったりすると、ね。その時は運がなかったと思って諦めなさいな」
「今?機嫌は良いわよ。まあ、もうこんな時間だから眠いけど」
「ん?ええ、ちょっとね」
「………」
「おい。一応言うけど、この先に進むなら切り刻むよ」
「分かって言っているだろう、貴様。ああそうさ、フランの部屋だよ。」
「入るのか?良いだろう。綺麗に鶏肉にしてやる。前も後ろも右も左も過去も未来も分からない様にしてやるさ」
「……ああもう、面倒くさいな。」
「天狗が嫌な種族なのは知っていたけどね。一瞬にして沸点を振り切らせてもらったのは久しぶりよ」
「天気屋、ね。結構色んなヤツに同じ台詞を吐かれたけど、パチェに言われた次くらいにはムカつくわよ、それ。というかアンタに言われたくない」
「まあ、パチェが言いたかったのは、『貴女って結構いじり易いのよね、天気と同じで』って意味なんでしょうけど。言われた文脈的にもね。あ、これ記事にしたらロイヤルフレアで焼かれること覚悟した方がいいわよ」
「ん?うん、アンタも私もに決まってるでしょう?私は焼かれた位で死にゃしないけど」
「やる時はやるのよ、なんだかんだ言って。私が丈夫じゃなきゃ、親友なんて間違っても言ってらんないわね」
「……それについては絶対に、何があっても貴女には教えないわよ。パチェと私の出会いなんて外部に漏れたら、私本当に死ぬかもしれないもの」
「うん?フラン?」
「………」
「なんでそうなるのよ、貴女は。私はあの妹を幽閉しているのよ、好んで話をする訳が無いでしょうが」
「ふん……さ、帰った帰った」
「………は?」
「え、いや、ちょっと待って?何で貴女がそんなこと……」
「あああああっ、ああ、分かった、分かったわよ。話せば良いんでしょう話せばっ」
「いやでも、ああ畜生、良いわよもうっ」
「全く、何でこんなことに……さあ、何から聞きたいのかしら?」
「………」
「フラン、ねえ」
「そうね、私からすれば、あの子は疎ましい存在、っていうのが一番正しいな」
「ええ、だってそうでしょう?あの子は危険すぎる。物質的な物に限らず、精神的、神秘的公式的絶対的なものさえも壊してしまえる。私が操る運命だって、あの子にしてみれば文字通り片手で潰せる存在なのよ。そんな危険な存在を、閉じ込めずにおくことなんて、私には出来なかったわ」
「幽閉、か。確かにそう言って良いわ。むしろ足りない。監禁、拘禁、拘束、それとも何かしら、『抹殺』と言っても過言じゃないわね。私が持っている手を全て使って作った部屋に、騙して殺して壊して放り込んだんだもの。あの部屋は最高傑作なのよ。パチェも驚愕する程度の強度を持たせてあるの。当然、あの子の「手」も、使えない」
「酷いと罵る?それも良いでしょう。外道と詰る?吸血鬼に何を。私は悪魔よ、その程度で表せるほど、小さく綺麗な存在じゃない。天上天下神様だろうと何だろうと歯牙にも掛けずに生まれ出て、東も西も北も南も人間共を喰い散らかして、夜に生きて朝に死んで夕に目が覚める我々に、道理も道義も必要ないわ。それとも何、貴女は私を凌駕できるの?」
「………」
「くははははっ!――成る程、此処は幻想郷だったわね。確かに、ここでそんなことを言っても空気が読めていないだけか」
「はは……優しいのね、貴女は、そして此処は。全く、反吐が出るわよ、この空気、綺麗過ぎて話にならない。ああ、嫌になるわ。どいつもこいつも心底壊れているくせに、どいつもこいつも死ぬほど正当化されてる此処は、もう地獄よりも深く狂っているんでしょうね」
「あら御免なさい、話が逸れたわ。フランの話だったわね。と言っても、もう言うべき事は無い、か……」
「さっき話したことが全てよ。私にとってあの子は邪魔な存在。心底壊れて地獄よりも狂っているあの子は、私にとって特大の爆弾。だから私はどうしたって、あの子の自由を認める訳にはいかないの。存在を肯定する訳にはいかないの。私は私を守るために、あの子を殺す。あの子を絶望に追いやって、二度と戻れない様にする。あの子は私を憎むでしょう、恨むでしょう。しかしそれさえも地面に押し込めて、力ずくで封じ込めて――それが私が生きる術。それが私の唯一の活路。そうして私は、こうして平穏に、どうにか無事に今を生きている訳よ。それを後悔したことは無いし、それを懺悔したことも無いわ。……まあ、でも、それでも――」
「………」
「ふあぁぁ……もう朝ね。今日はこれまでよ」
「……ん?もう眠いんだが。寝不足の私は何をするか分からないわよ?うっかり殺しちゃうかも」
「手短に端的に十文字以内で話して。でないと怒る」
「………」
「此処に来た理由?そこにあの妹が絡むかといったら、そうだな」
「私は寝るよ。またな、パパラッチ」
「あははっ。やっぱりまだ居たんだ?」
「うん、久しぶりっ。また変な記事書いてるの?」
「事実じゃない。こないだもアイツが怒ってたよ。根も葉も無いこと書かれたーって」
「根も葉も無ければ茎だけあってもしょうがないんだってば」
「ははっ!暴言だね。それとも妄言かな?」
「それを公言しちゃうのが貴女の面倒な所だよね。そんなんだから煙たがれるんだよ?こっちの機嫌も尊厳も無視して際限なく放言しちゃうんだもの。そのうち自分に還元されてきても知らないからね?」
「至言でしょ?言葉遊びは得意なんだよ。半世紀も一人で居ると、そんぐらいしかやることが無くてねー」
「んー?アイツのこと?」
「うん、恨んでるよ、勿論」
「そりゃ、あの地下室に無理矢理押し込められればね。多分誰だってそうだと思うよ?私は悪くないのに、あの空間はまるで私を悪いものであるかのように扱うの。私は何も思っていないのに、あの部屋はまるで何かを考えなくてはならないかのように押し付けるの。私は何もしていないのに、何か起きた時の為にあんな空間に放り込まれて、それを恨むなという方が惨たらしいよ?」
「あはははっ、素直なのは良いことでしょ?」
「試してみる?そうだね、大体二年位でも充分きついんじゃないかな、特に貴女みたいな羽から生まれたタイプは」
「私はどっちかって言うと眼から生まれたタイプかな?お姉様は手だね。パチュリーも眼、もしくは頭。咲夜は――なんだろう、時計かな。美鈴は足で、小悪魔は……、って何でこんな話になってるのさ」
「別にね、嫌いって訳じゃないんだよ。ただ憎んでいるだけ」
「あー。確かに逆を言う人は多いかもね。でも私の場合はこれで正解。お姉様のことは、今は全然嫌いじゃないの。ただ495年間かけて集めて潰した憎しみは、ちょっと私でも壊せないし壊したくないの。これは荷物だし傷跡だし証拠だし軌跡なの。私が今まで生きて感じて想って壊してきたものなの。だから、これはもう致死的かつ致命的で絶対的かつ普遍的な壁だと思って良いよ」
「ははっ。鴉って頭良いんでしょ?これくらいちゃんと理解してよねー」
「まあ、私としてはまだ、もう少しくらいその壁に寄りかかったままで居たいんだよね、要するに。うん、どうしようもない逃避だとは分かっているんだけどね」
「………?」
「え?ああ、アイツからみてどうかって?」
「そりゃあ、ねえ。姉からしてみれば、こんな厄介な妹は無いと思うよ。うっかりすると何でも壊しちゃうお茶目さんなんて、一緒に生活している側からすれば迷惑極まりないもんね。閉じ込めたくなる気持ちも分からなくは無いかな、納得しないけど」
「まあ、そこは寛大なる妹のココロイキ、ってヤツで乗り切るべきなんだろうねー。あんまり気持ちが乗らないけど、まあ仕方が無いかな」
「アイツは馬鹿だもん、割と」
「私の方が本を読んでるしね」
「あ、そういう問題じゃない?でもねえ、結局、思考も嗜好もそこにどれだけ知識が入っているかにかかっているからね。そういう点では、私は幻想郷でも相当上位の知識人なんだと思うよ、館外の人は良く知らないから自信ないけど。忘却を壊せるっていうのはやっぱり妖怪としては強みなんじゃないかな。あ、でもやっぱりパチュリーには負けるけど」
「あははっ!そりゃ暇の片手間で読んでるのと人生の目的で読んでるのとじゃ、精神の入り方が違うもん。それに読むスピードも違うしね。パチュリーってば、殴ったら殺せそうな魔道書を三十分くらいで読んじゃうんだよ。こないだ私が部屋から出て戻るまでの間に、脇に寄せてある本が半分になってたもん。」
「………」
「……え、って今更?だって私今、フツーに外に居るじゃん」
「そりゃ、出れなきゃどうして此処に居るのよ、私。幻影飛ばすのって結構難しいんだよ?出来なくはないけどさ」
「端的に言えば抜け穴があるのよね、あの部屋。最近になって分かったんだけど」
「ある、と言うか、出来た、と言うか。前の異変が終った後で何とは無しに見てたら、いつの間にかあったの。まあ、アイツは面倒くさい性格してるからね、馬鹿な癖に変なプライド持ってるもんで」
「前はメイドに頼んで持ってきてもらってたんだけどね。今はパチュリーにばれない程度に図書館歩き回れるから、読みたい本を好きに読めるのよ。その点は感謝してるの」
「一応私の名誉の為に言っておくけど、あの扉、別にぶち壊せない訳じゃないんだよ?多少偽装されてるけどちゃんと『目』はあるし。実際最初の五十年くらいの時に一回破壊したし」
「そん時はお姉さまに殺され解され並べられ揃えられ晒されずに地下室に放り込まれたけどね。今だから言うけどアイツってかなり強いよ、特にブチ切れた時は」
「あー、いや、アレは私が悪かったの。お姉さまの大切にしていたメイドを壊しちゃったのよ。あの頃は狂いが極まってたからね、何で壊しちゃいけないの?、みたいな事を平気で言ってたっけなぁ」
「あははは……今は、流石に反省しています、うん。というか、最近の周りにいる人って素直に壊されてくれないんだけどね、ぶっちゃけ。お姉さまは二、三回壊れても平気な顔してるし、パチュリーや魔理沙は防壁張ってくるし、咲夜は時止めて見えない所に逃げるし、霊夢はなんでか知らないけど普通に避けるし。美鈴や小悪魔はちょっと危ないから注意してるけど」
「貴女は――どうだろう、試してみようか?」
「あはははっ、冗談だよ。貴女が居なくなると困る人が結構居るらしいからね。私としても、咲夜が秋頃に作る焼き芋の包み紙が無くなるのはちょっと不便だし」
「いや、美味しいんだよ?秋になったら来てみなよ、一個くらい分けてあげる」
「まあ、まだあと一年くらいあるけどね、妖怪にしてみちゃそんなの一瞬でしょ……さて、そろそろお開きにしようよ。うっかりするとパチュリーに発見されちゃうかもしれないし。もう聞きたい事は無いでしょう?」
「え……まだそれ聞くの?面倒くさいなぁ」
「お姉さまとの関係、ね。んー、分かったよ。適当に手短に言うと、私の部屋、あの地下室、あの牢獄のことなんだけどね」
「あの部屋はね。内側からはともかく、外側からは私でも壊せないんだよ」
「つまり、そういうこと」
「つまり、姉妹そろってツンデレってことで良いのかな?」
「椛に言わせると、情緒も何もありませんね」
まあ同意見ですが。
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情景描写とか一度に済ませられるから、書くぶんには楽なんでしょうけど。
なら記者を地の文にして質疑応答を分かりやすくしないと、見難い部分がいくつか
内容も設定もまぁ普通
上記のあたりは何度か書くと分かってくるし、好きに書けてる印象を受けたので次回以降に期待という意味での10点を
良かった
また仕掛けとして、文中では明示されないインタビュアー(文)の質問や台詞を想像するという楽しみの形も評価したい。
また、レミリアが咲夜を大切にする気遣い、パチェリーに置いた一目、フランの正気の度合い、館の住人達を壊すまいとしている行動等々、行間の隙間から見えてくる世界観の広がりを感じさせてもくれる。
あえて難点を挙げるとすれば、二人称形式という形である以上、どうしても分かり辛く読み辛い部分が出てしまう事か。
まぁ、何はともあれ「閉じ込める為だと思っていたら、守る為の物でした」というオチは秀逸でした。
よかったです!
あえて質疑の部分を書かないところに味があると思いました。
全部書いちゃったらそれこそありきたりで陳腐でしょう。
あくまで、あくまで私個人の感想ですが、文の心情も含めて質疑のみの方も別に書いてくれると面白いかも。
なんか、お互いに意識し過ぎて空回りしちゃってるんですねぇ