Coolier - 新生・東方創想話

観測者の遊び方

2010/03/16 00:20:34
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1. てゐが、額に汗を流し、彼女の体よりも大きい土鍋をよたよたと持ってきた。

2. 私の唯一のコマが、いま外道永琳によって駆逐されようとしてる。

3. こんな怪物みたいな鍋、何に使うのか? 私が聞いてみると。

4. 永琳が笑いを両手で押し殺しながら私を眺める。なるほど、そういう事か。
私の手下が全部いなくなるのを、こいつは待っていたんだ。なんという鬼畜。
もうやめてくれと頼んだが、彼女は無言で首を横に振った。いや、無言じゃないわね。くすくすと音が漏れてるし。

5. てゐが、この大きな鍋に入ると言う。食材になるつもりかと、冗談気味混じりに私が聞く。
すると、彼女は不思議そうに首を傾げて私を見つめた。

6. 「本当に、殺すの永琳?」

7. 「兎鍋ですよ。知らないんですか? これお金になるんですよ」
 
8. 私の問いに永琳は、すっと首を縦に振る。
その行為には、一切の情けも無い。あまりにも、冷徹無慈悲。

9. 彼女曰く、兎鍋と言う物が巷ではブームになっているとか。
私には何がいいのかは、まったくわからない。それでも、お金にはなるそうだ。

10.永琳の怖さを、改めて私は実感する。なんで、こうなったんだろ。
私の手元には、何も無い。いつから金が無くなったの……。

11.「貴方はお金が無いの?」と私が尋ねたら、彼女はチッチッチと指を振る。

12.「金なら私の手元にいっぱいあるわよ輝夜、あげないけどね」

13.稼げるときは、出来るだけ稼いだほうがいいらしい。それでなんで、てゐが鍋に入るのかは疑問になったけど。
手下の兎達だと、動物臭すぎて売り物にはならないとか。後、可愛いほうがマニアには高値で取引されるなどなど。

14.「外道! 永琳のオニ! マッドサイエンティスト!」

15.「みんなの幸せのためなら、なんでもやりますよ私は。有料でね」 

16.しかし、永琳は私の罵声には聞く耳持たず、むしろゲラゲラと腹を抱える。目尻も上がり、本当に楽しそう。
永琳は、自分の事を白衣の天使とかほざいていたが、今の歪んだ表情は悪魔その物だ。

17.そして、てゐが大きいお鍋に入り、上目遣いでこっちをうるうると見た。
精一杯の可愛さアピールのつもりなのだろうけど。貴方に、そんな目をされても、困る。
いつもと違うてゐを見てられなくて、私はすっと視線を逸らす。だいたい、私はあなたを買うつもりなんて無い。

18.「ねぇ、本当に許してくれないの永琳? 待ってくれてもいいじゃない?」

19.「この状況を、写真で取ってください。高く売れますよ!」

20.私の願いも虚しく、永琳はにやっと口をひん曲げた。鬼畜のような笑み、待ってくれる気なんて無い。
愛しい姫の頼みを、何だと思ってるんだこいつは。泣くぞ私。長年の付き合いをやめちゃうぞ。

21.「そういえば鈴仙はどうしたの? こういう時にいないなんて珍しい」

22.しかし、永琳の腐れ外道っぷりは止まらない。うるうると泣きそうなフリをする私に、さらに追い討ちをかける。
 
23.「もう、うどんげなら鍋にしちゃいましたよ」

24.残念でしたね輝夜、貴方にはもう勝ち目が無いんです。そう永琳はにっこりと私に囁く。こんちくしょう。そんなの、言われなくても見ればわかる……。
永琳の表情が、清清しいくらい朗らかなのがまたうっとおしい。

25.てゐ曰く、うどんげは麻酔で眠ってる間に、無理やり鍋に入れられたらしい。
吹き矢で仕留めたら、糸の切れた人形のようにガックリと地面に倒れたようだ。 
 
26.暗い未来が、私の背中に押し寄せてくる。負けたくない、永琳なんかに負けたくない。
なんとか、この状況を乗り越えようと考えを巡らせるが、何も案が浮かばない。
私の手元には、もう何も守るものがない。どうして、こうなったのよ。

27.でも、本当に売れるのだろうか? そう私が聞いたら、彼女がその時の写真を笑顔で見せてくれた。
鍋に入ったうどんげが、安らかに眠ってる写真を。それを見て私は全てを理解した。

28.バラバラにされた。永琳によって、私の手下はバラバラにされたんだ。
金も銀も、永琳の手の元にある。許せん。ここまで私を虐めて何が楽しいんだ! 

29.「売れましたよ、うどんげ鍋。大好評でした」

30.返せ! 私のコマを返せ! と永琳に叫んだが。もう、どうしようもなかった。
往生際が悪いですよと、溜息を付かれる。

31.「まぁ、そりゃそうよね」 

32.「こんなになるまで放っておいた姫が悪いんです」

33.てゐ、貴方には悪いけど。これだと勝ち目は無いわよ。 

34.いっその事、こいつを殴って記憶を飛ばすか。
そう思って永琳の顔面目掛けてコブシを突いたが、あっさりと腕を捕まれてしまった。
しかも、予想以上に永琳の握力が強く、握られた腕の血流が止まりだし、拳が青白くなってきた。

35.やっぱり戦闘力、つまり胸の大きさが違いすぎる。勝つのは無理よ。

36.まるで、ゴリラと戦ってるようだ。

37.「次は私の番ですよ。鈴仙よりも……売れるといいなぁ。こっちにもプライドがあるし」

38.「つまらないプライドなんて投げ捨てなさい」

39.私、可愛いですよね? と、今度は直接てゐが尋ねてきた。
そんな事を、そんな貧相な胸で言われてもどう答えればいいか迷う。

40.永琳はやれやれと私の腕から手を離した。永琳の手形が、呪いの如く私の腕に張り付いている。
可愛い姫になにするんだこの従者は。永遠の傷になったらどうする。

41.そして、てゐは準備はもう出来たと言いたげに、鍋の中に縮こまる。
こっちに瞳を向け、てへっとスマイルをしたけど、私に可愛さアピールされても非常に困る。引き攣った笑いも出てこないわ。

42.「いい加減にこれで終わりです」

43.本当にいいの? と私は聞いたが、本当にこれで終わりらしい。

44.そして、永琳は私の一番大切なコマを殺した。私の目からポロポロと涙が滴り落ちる。
悲しいからでは無い、腕が物凄い痛くなってきたからだ。どんだけ強く握ったのよあいつ。

45.「はい、これでてゐ鍋の完成ですよ」

46.残念でしたね輝夜、と永琳は私から奪った物を目の前に掲げて見せてきた。鬼かお前は。

47.その鍋は、身内の私にとっては凄い痛々しいものに見える。

48.腹が立った私は永琳にビンタを食らわす。パチンッと言う心地よい音がした。お返しにアイアンナックルをされる。メギメギと、私の骨がボロボロになる音がした。

49.本当に痛くて目が飛び出そうだ。

50.やめてください! と私がお願いしたら、意外とあっさり永琳は離してくれた。しかし、後遺症のようにズキズキと目が痛む。私は悔しくて「永琳ゴリラ!」 と叫んだ。

51.「これでも、世間では可愛い兎ちゃんで通ってるんですよ私?」

52.永琳の背後にドス黒いオーラが見えたので、すぐに謝ることにする。これ以上やられたら骨が陥没しちゃう。  

53.冗談でも笑えないわ。しかし、本当にこれで終わりなのかな? 何か忘れてる気がする。そうだ、肝心な事を忘れていたわ。 

54.そういえば、負けたら罰があるって永琳は言ったけど、もう十分だよね? もう、これ以上はひどい事はしないよね?
しかし、彼女の悪行は留まるところを知らなかった。

55.「貴方は、服を脱がなくていいの?」

56.永琳は悪魔のような、やっぱり悪魔の笑みで私を指差し、裸で晩飯を作れと命令して来た。

57.「服を脱ぐのは、うどんげだけで十分」

58.「やっぱり、外道ね貴方は」

59.「やっぱり、外道ね貴方は」
輝夜『今日は楽しかった? 偶数歴史の私』

輝夜『将棋で永琳が手加減してくれなかった。最終的に私の手元に玉しか残ってなかったし。どうすりゃ勝てるのよあれ。奇数歴史の私はどうだった?』

輝夜『てゐが鍋に入ってる写真撮っただけよ。あれ猫鍋の真似でしょ。しかもてゐが媚びモードに入ってて気味が悪かったわ』

輝夜『いいじゃない。私なんて罰ゲームに裸で料理作らされたのよ』

輝夜『うどんげよりはマシよ。あの胸で全裸で鍋に入ってたんだから。そりゃ写真も売れるわよ』

輝夜『どっちの輝夜も平和そうねぇ』

輝夜『貴方は、大変そうに見えたけど』

輝夜『いつか永琳にギャフンと言わせたいわ』

輝夜『永琳に勝った歴史の輝夜でも探してくれば。無限に歴史を繰り返せば一人は見つかるでしょ』

輝夜『暇が合ったらね』

輝夜『いつも暇じゃない私』

輝夜『あら、毎日一生懸命生きるのに忙しいわよ私』

輝夜『そうね私。毎日が楽しいわ』

輝夜『最後、シンクロしたね』

輝夜『外道なシンクロね』

輝夜『それじゃあ、またね偶数歴史の私』

輝夜『さようなら奇数歴史の私。また別の歴史で』
ムラサキ
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コメント



0.550簡易評価
2.90名前が無い程度の能力削除
どこでも永琳にはかなわないのかww
3.90名前が無い程度の能力削除
永琳最強伝説
4.80名前が無い程度の能力削除
玉のみって…w
永琳先生鬼畜すぎますw
6.無評価ムラサキ削除
>ぺ・四潤さん
さすがに説明不足過ぎましたか……
試しに番号振ってみました
「わからん上に、見難い!」
って事でしたら消します
8.100名前が無い程度の能力削除
ほう、1個飛ばしで読んでも順番に読んでもしっくりくるな

いずれにせよ永琳最強だwww
9.100名前が無い程度の能力削除
これは凄い。三回も往復してしまった。面白かったです。
10.100名前が無い程度の能力削除
ああそういう事か
偶数行列と奇数行列が別々の世界なのね
12.40名前が無い程度の能力削除
こころみはおもしろいのですが、二つのお話の内容をなんとかできなかったのかなと……
こういう形式なら狂気つかえる鈴仙を上手く使うほうがいいんじゃ?
とか思ってしまった
15.80名前が無い程度の能力削除
面白い試みだと思います
輝夜の能力って東方の中でも一等意味不明だしなあ
16.100名前が無い程度の能力削除
ところで鈴仙鍋の写真はどこで買えますか
21.100名前が無い程度の能力削除
よくやったなぁ。すげぇ。
ウドン鍋一枚下さいw
22.60名前が無い程度の能力削除
う~~ん、斬新なんだけど2つのストーリーが、どういった経緯でこうなっているのかイマイチよく分からないなー。
23.60ぺ・四潤削除
読み直したうえで再コメントします。
他の人のコメントを見てから読み直したらようやく意味が理解できました。
でも別々と通して4,5回読みましたが、それぞれの話は分かりますが通してだと何か支離滅裂な感じでやっぱりよくわかりませんでした。
別世界の二人が出会ってる意味もやっぱりわかりませんでしたし。
私の読解力がないだけかな? 申し訳ないです。
24.90名前が無い程度の能力削除
56,19,14,16,18,22,38,20,26,42,46,15,53,55と受けた印象を念レス
24.表所 44.来からだ
25.100名前が無い程度の能力削除
お見事です。こういう作品大好きです!
実際の長さの3倍楽しませていただきました。
2週目以降は、金という単語の意味の重ねがけなど、様々な工夫も見えて面白かったです。

あと、一応誤字報告を。

永琳の表所が、清清しいくらい朗らかなのがまたうっとおしい。
→表情?
違ってたらごめんなさい。
26.無評価ムラサキ削除
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
>2さん
永琳先生は本当に強いお方です。
>3さん
本当にあの人は伝説になってそうで怖い
>4さん
しかし、実際玉のみってありえるんでしょうかw
>8さん
内容がちゃんと伝える事が出来てよかったです。
>9さん
三回も往復してもらって感謝です
>10さん
そういう事です
なので輝夜が別々に居る事になりますね
>12さん
うどんげ使うとまた面白く出来そうですね、
参考にさせて貰います。
>15さん
永遠とか須臾とか面白そうな能力なんですけどねぇ
いかんせんわかりずらいですよね(特に須臾
>16さん
てゐに頼めばおkです!
>21さん
てゐの写真はいらない(ry
>22さん
今回は特に経緯はないです。
漫才的なノリでした
>ぺ・四潤さん
再読ありがとうございます。
ちと話が強引でしたか、次回ネタが思いついたときにはもう少しストーリーの意味に重点を置いてみます。
>24さん
誤字報告ありがとうございます。
修正させていただきました
>25さん
同じく、誤字報告ありがとうございます。
三倍も楽しんでいただけてなによりです。
28.80ずわいがに削除
いやぁ、面白いアイディアでした。こういう試みは好きです輝夜鍋売ってくれ。
……いかん、本音が混じった。
30.100名前が無い程度の能力削除
AV(アニマルビデオ)ですね、わかります。
さて、輝夜鍋のリリースまで全裸待機かな

あと、誤字かは分かりませんがアイアンクローではないですか?
ナックルだと姫様のご尊顔が陥没どころか粉☆砕されちゃうw
31.無評価ムラサキ削除
>>30さん
ギャー、アイアンクローでしたね
でもナックルの方が豪快なのでそのままにしときますw