Coolier - 新生・東方創想話

魔法少女マジ狩るフランExtra

2010/03/11 23:09:44
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 みんなこんにちわ、フランドール・スカーレット495歳。いい歳こいて『魔法少女』なんてしている吸血鬼です。
 金紗の髪に赤い瞳、真っ白な肌。七色ダイヤが付いた枯れ木のような翼と、どれも人間味の薄い特徴ばかりが目立つ私なのだけれど。
 存外に楽しく魔法少女ライフを楽しんでいるわけです。最初の恥ずかしさが嘘のように今は結構ノリノリなの。他のみんなには内緒だけどね。
 魔法少女をはじめ、人助けを続けて幾星霜。私もずいぶん、丸くなったと言うかなんと言うか、最初に比べて力の加減というものがうまくなってる気がする。
 そんなわけで、いつの間にか人妖問わず有名人になってしまっていた私なんだけれど―――

 「助けてくれてありがとうお姉ちゃん!! これにサインしてよ!!」

 ―――事件で助けた男の子に、懐から取り出した私のフィギュアにサインを求められたときはどうしたらいいのでしょう?
 ……教えてえらい人!!

 「えっと、これ何処で手に入れたの?」
 「えー? 普通に売ってるよ、メイドイン紅魔館って箱にも書いてあるし。ほら、あそこのお店」

 少年が指差す先、そこには店先に大量に並んだ魔法少女達のフィギュアが山のように並んでいた。
 思わず、眩暈がして倒れ掛かった私は悪くないと断言したい。是非とも断言させていただきたいッ!!



 最近すっかり美鈴特性胃薬が手放せなくなりました、魔法少女マジ狩るフラン、始まります。
 じゃ、そういうわけでちょっと行ってくるわ。



 ▼



 「小悪魔ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 気合一発、一球入魂、私の繰り出した全身全霊の回し蹴りは、紅魔館地下に存在する大図書館の鋼鉄製の扉を真っ二つにへし折った。
 余りの衝撃にへし折れたドアは留め金が外れて宙を舞い、ぐるんぐるんと回転していたけれど、私はそれを無視してズカズカと足早に図書館に入り込む。
 背後から響く重々しい二つの音。それすらも無視して奥に歩みを進めれば、不思議そうな表情な小悪魔と、あいも変わらず本の虫な魔女の姿があった。

 「どうかしました妹様。魔法少女の衣装から着替えもしてないですし、なんだかイライラしてますし……あ、生理ですか?」
 「違うよ!! 何でそういう発想にいたったか理解に苦しむわ!! だからそのどや顔やめてよ腹立たしいな!!?」
 「落ち着いてください妹様。やっぱり月に一回の―――」
 「違うって言ってるでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 どうしてもそっちに持っていきたいの!? 何でそっちに持っていこうとするの!!? なんでそんなに不思議そうな顔をするのか是非とも問いただしたいッ!!
 あ、駄目だ。胃がキリキリしてきた。
 感情に任せて声を荒げる私と、それを柳のように受け流す小悪魔。そんなやり取りを続けている私達に辟易したか、魔女―――パチュリー・ノーレッジはこれみよがしにため息をつく。

 「騒がしいわね、妹様。どうしたの、月のアレ?」
 「ち・が・う!! なんで主従で同じ事言うかな!!? 私が言いたいのは、何で私のフィギュアなんかが人里で出回ってんのかってこと!!?」

 そう、私が怒ってる最大の理由はこれだ。
 このフィギュア、恐ろしいほどに出来が良く私そっくりだし、それなのに私はまったくその手の話を聞いたことが無い。
 しかも、作ってるのが紅魔館だって言うんだから、私の怒りも押して知るべし。
 ところが、私の言葉に二人は驚いたような表情を見せたのだ。少なくとも、私にとっては二人のその表情はまったくもって予想外だった。
 これまでの経験上、てっきり小悪魔が主犯だと思ってたのだ。
 だからこそ、小悪魔たちのその驚きの表情が予想外だったし、同時に私の心に彼女が犯人では無いのかという可能性をよぎらせた。
 じゃあ、あのフィギュアを作らせたのは、まさかお姉様が―――

 『今頃気づいたの?』
 「やっぱりお前かっ!? ていうかパチュリーもグルなの!!?」

 ……ごめんお姉様、一瞬でも疑った私を許してほしい。
 私が内心でお姉様に謝りながらツッコミを入れると、小悪魔は「こぁ~っこぁっこぁっこぁっこぁっこぁ!」と、パチュリーは「ぱーっちゅっちゅっちゅっちゅっちゅ!」と高笑い。
 う、うざい!? 果てしなくウザいんだけどこの二人の笑い方!!?

 「ふふ、小悪魔の主人は誰だと思ってるの? 他でもない私なのよ妹様」
 「うん、今それをものすごく実感してるところだからね。自信満々に言ってるところ悪いけど、私の中でパチュリーの株がストップ安だよ。
 ……で、なんで私のフィギュアとか作ったの? 理由によっちゃ私のチェーンソーが火を噴くよ。リアルに」

 チェーンソー肩に担ぎながらジト目でにらみつける。たかがチェーンソーと侮るなかれ、もはや第二のレーヴァテインと化した鉄のギミックは私の魔力に耐えられるように強化済み。
 脳裏に嬉々とした表情で「URYYYYYYYYYYYYYY!!」と絶叫しながら改造してた河童が脳裏をよぎったけれど、それは思考の隅に追いやっておく。
 ややあって、パチュリーは戸惑いがちに目を伏せて、神妙な表情でぽつぽつと語り始めた。

 「……これにはね、深いわけがあるのよ」
 「深い……わけ?」

 「えぇ」と、パチュリーは頷いて静かに目を閉じる。
 ここに至るまでの経緯を思い返しているのか、寡黙な魔女は少しの思考の後、あらためて私に視線を向けた。

 「財政難なの」
 「どの変が深いって言うのソレ!!?」

 恐ろしいほどに理由が浅かった。激昂する私をよそに、パチュリーは「まぁまぁ」と落ち着かせるように言葉をかけてくる。
 とっさに手が出そうになったけれど、何とか踏みとどまる。せっかく自由に外出できるようになったって言うのに、ここで手を出したら私は何も変わらないじゃないか。
 むーっと悔しい感情を隠さずに睨む私を見て、パチュリーはくすくすと苦笑した。

 「大人になったわね、妹様。昔なら『汚物は消毒だヒャッハー!!』と叫んでレーヴァテインでも振り下ろしていたでしょうに」
 「何処の世紀末の悪党だ私は!!? 叫ばないからねそんな台詞!!? レーヴァテインは振り下ろしてたかもしれないけど!!」
 「あ、そっちは否定しないんですね」

 しみじみと呟くな小悪魔!! 今自分で言ってて悲しくなってきたから!!
 はぁっと、盛大なため息をひとつこぼす。もうこれ以上怒ったってどうしようもないし、二人には口で勝てる気がしないから、ここら辺が引き際だろう。
 本当、この使い魔にしてこの主人ありだよ。まさかパチュリーがこれほどまでツッコミ所満載のおいしい人物だったなんて……。
 まぁ、今はソレはいいや。置いておこう。

 「大体さぁ、勝手にあんなの発売していいの? お姉様怒るんじゃない?」

 私がこういったのも理由がある。というのも、お姉様は根本的に貴族としての在り方って言うのをすごく重要視するのだ。
 強く、気高く、優雅になんて前時代在り方を信条としているような人なのだ。
 そのお姉様が、こんな商売人じみた行為は喜ばしく思わないんじゃないかと思っていたのだけれど、小悪魔は「はて?」と小首をかしげた。

 「妹様、お言葉ですが許可出したのお嬢様ですよ?」



 刹那、私は荒ぶる暴風となったことはいうまでも無い。



 ▼



 「お・ね・え・さ・まぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ドアノブに手をかける暇も惜しいと言わんばかりに、私はドロップキックでものの見事にお姉様の部屋のドアを粉砕した。
 グルグルと回転しながら華麗に着地し、ギンッとお姉さまがいるだろう方向を睨みつけ―――

 「ワン、ツー、ワン、ツー!! さぁ、腕を振り上げてください!! そんな事でサナーエブートキャンプを乗り越えられると思っているんですか!!?
 そんな調子で、フランさんと一緒に魔法少女が勤まると思っているんですかぁぁぁぁぁ!!?」
 「ふ、ふー、ひぃー、ふぅうぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 なんか奇妙な体操やってる風祝とお姉様の姿を見つけてそのままずっこけた。
 顔面からこけたもんだから顔がひりひりと痛むのだけれど、二人はそんな事にも気付かずに体操を続けていく。
 ……おかしい。なんで吸血鬼のお姉様がバテバテで、人間の東風谷早苗のほうが元気なの? なんかおかしくない!?

 「さぁ、そこでマジ狩るフランの主題歌を歌いながら腕を振り回す運動っ!!」
 「ふぁ、ふぁいっ!!」
 「ランラン フラン ランラン フランラン ランランフラン フーランフラン! ハイッ!!」
 『ランラン フラン ランラン フランラン ランランフラン フーランフラン!』

 やだ、何これ怖い。ていうか勝手に主題歌とか作るなコラ。なんだその恋のダ○ヤル的なノリの歌。
 それにしても、ものの見事に気が付かないねこの二人。最近、早苗が一緒に来ること無いから変だとは思ってたけど、こんなことしてたんだ。
 ……ていうかさ、二人ともそろそろ気付こうよ。私あんなに派手な登場したんだよ?
 そろそろ悲しくなってきたんだけど。泣くよ、泣いちゃうよ?

 あらためて辺りを見回してみると、まぁあるわあるわ。マジ狩るフラングッズが山の如し。
 フィギュア、等身大人形、ブロマイド、ポスター、ぬいぐるみからはては抱き枕まで。
 なんということでしょう(某リフォーム番組風に)。先日まで威厳あふれる気品あった部屋は、知らぬ間に立派なオタクの部屋へと変貌を遂げていたのです。
 ……笑えねぇ。別の意味で泣けてきたよコレ。

 「……ねぇ、二人とも」
 「ランラン フラン ランラン フランラン ランランフラン フーランフラン! ハイッ!!」
 『ランラン フラン ランラン フランラン ランランフラン フーランフラン!』
 「ねぇ」
 「ランラン フラン ランラン フランラン ランランフラン フーランフラン! ハイッ!!」
 『ランラン フラン ランラン フランラン ランランフラン フーランフラン!』
 「ねぇってば!」
 「ランラン フラン ランラン フランラン ランランフラン フーランフラン! ハイッ!!」
 『ランラン フラン ランラン フランラン ランランフラン フーランフラン!』

 ブチッ

 「ねぇって言ってんでしょうが無視すんなやゴラァァァァァァァァァァァァ!!!」
 「ラボォッ!!?」

 頭からタックルしてツッコミを入れるとあら不思議、私の頭が綺麗にお姉様の鳩尾にクリーンヒットしたようで、その場に仰向けに倒れてびくんびくんっと痙攣し始めた。
 無論、タックルした私は自然とお姉様に馬乗りになるような形になったんだけど……、うん、ごめんお姉様やりすぎたかも。
 お姉様泡吹いてるし。

 「フ、フラン。帰ってたのね」
 「……お姉様、頑丈だね」

 普通に返事してきたお姉さまに、安心しつつも呆れてしまった。
 いや、だって自分でもやりすぎたと思ったツッコミなのだ。
 正直、今先ほどの怒り任せの突進をした自分を戒めたいぐらいに。
 そんな私の表情が見えているんだかいないんだか、お姉さまはニヒルにフッと笑う。

 「こ、これが……タックルデレというやつ、なのね。早苗」
 「どんなデレ!!?」

 息も絶え絶えになって納得したように呟かないでくれるかな!?
 そんなデレあるわけ無いじゃん!! あったとしてもはた迷惑すぎるよそのデレ方!!?

 「フランさん、帰ってきてたんですね。どうです? フランさんもやります?」
 「いえ、全力で拒絶させてください」

 早苗の言葉にも即答である。こんな運動、たとえ健康に良かったとしても絶対にやりたくない。
 だって、傍目から見て不気味すぎるってかなり致命的だと思う。
 ま、ソレはさておき。今はお姉様に問いたださなきゃいけない事があるわけで。

 「お姉様、コレはどういうこと?」
 「こ、これって?」
 「決まってるじゃない、人里に私のグッズが出回っている事についてよ」

 ギロリと眼光を鋭くして睨みつける。
 何しろマウントをとっているのは私なのだ。こちらのほうが圧倒的に有利であり、そして絶対に逃がさない自信もあった。
 すると、お姉様は冷や汗を流して明後日の方向に視線を向ける。

 「さ、さぁ? 知らないわよー」
 「……お姉様、棒読みになってるから。あと目が泳いでるからね? 目がびっちびっちバタフライしてるからね?」
 「ふふ、さすがわが妹ね。鋭いツッコミだわ」
 「話しそらさなくていいからとっとと言おうか。ねぇお姉様、OHANASHIしよう?」

 にっこりと、ソレはもう素敵なほどの死なす笑みを浮かべてやる。
 すると、お姉様は顔を青ざめさせて、コクンコクンと必死の様子で頷いてくれた。
 うん、よろしい。爆破する手間が省けて助かるわ。

 「まぁまぁ、落ち着いてくださいフランさん。この件については、私たちも一枚かんでまして」
 「達って、ことは……」
 「はい、神奈子様達もですよ。今グッズ販売を期に信仰も増やしちゃおうという心算でして」

 ……グッズ販売で信仰って増えるものなの? なんかソレ、違うような気がするんだけど。

 「ちなみに、そっちからは何を?」
 「ハイ! 仮面オンバシラーと魔法少女たたらん小傘、魔法少女マジカル神奈子を販売予定です!!」

 みなぎってまいりました!! と意気込む早苗を見つめながら、ぼんやりと思ってしまう。
 ……神様、信仰の集め方ってこんなんでいいの?
 ふと、最近すっかり飲み仲間になってしまった神様約一名が、部屋の隅で号泣している姿が脳裏をよぎった。
 うん、今度また飲みに誘おう。愚痴ぐらい聞いてあげないとやってられなさそうだし。

 「まぁ、いいや。この際早苗でも」
 「駄目です」
 「せめて人の話ぐらい聞こうよ!!? まだ何も言ってないよ!!?」
 「グッズ販売を中止しろと言うのでしょう? 駄目ですよフランさん。第一、許可を出したのはレミリアさんですけど、グッズを取り仕切ってるのは小悪魔さんですよ?」
 「結局小悪魔なの!!?」

 早苗の言葉を聞いて、その場でへなへなと突っ伏す私。
 あー駄目、アレが相手だとグッズ販売を打ち切らせるのは不可能に近い。
 何てことだろう。まさか、口で絶対に勝てそうに無いやつがグッズ販売の総責任者だなんて。
 ていうか、ここまで遠回りした私って一体なんだったんだろうか? うまいこと小悪魔の策略に乗せられた気がして、なんか悔しい。
 そこでふと、私の頭を撫でてくれてる人物がいる事に気が付いた。
 不器用で、壊れ物を扱うような手つきは、多分お姉様のもの。

 「ねぇ、フラン。私ね、あなたと一緒に魔法少女を始めようかと思うの」
 「へ!!?」

 彼女の一言に、私は思わず素っ頓狂な言葉をこぼしてしまった。
 だって、あのお姉様が、我侭の頂点に君臨しているあのお姉様が、魔法少女をやるといってきたのだ。
 断言しよう。絶対に向いてない。間違いなく向いてない!
 けれど、お姉様の表情は真剣そのもので、私は、その表情を見て何もいえなくなってしまう

 「初めは、あなたが私に黙って魔法少女を始めたことに怒りを覚えたし、同時に不安だったわ」

 その心境を語るお姉様は、今一体何を思い浮かべているのだろう。
 私を見上げ、優しく微笑んでくれるお姉様。最近は良く見るようになったけれど、昔はそもそも私たち姉妹は疎遠だった。
 そう……小悪魔が、魔法少女をやろうなんて言い出すまでは。

 「けれど、噂で聞くあなたの活躍はどれも私の知らないあなたの姿ばかり。
 時々失敗はしているようだったけれど、力を使いこなし、外に羽ばたくあなたの姿はとてもまぶしかった。
 それでね、思ったのよ。私も魔法少女になってあなたと共にいれば、もっと姉妹らしくあれるんじゃないかって」
 「お姉様……」

 不意に、泣き出してしまいそうになった。
 胸から瞳にかけてこみ上げてくる何かを、私は必死に押しとどめて目をこする。
 そんな姿の私を見て、お姉様は優しく微笑んでくれた。
 以前には、一度も見た事がなかった優しい笑顔。それが、こんなにも―――胸を暖かくしてくれる。

 地下に閉じこもっていたときの私は、心の中をなくしたガランドウだった。
 何も無い。壊す事しか出来ない。力の制御も出来ない、自由を求めて喚くだけの人形。
 あの日から、何もかもが変わったのだ。私は、自由になれた。お姉様とも、こうして親しくなれた。
 こうなれたのも、あのお調子者の小悪魔や、みんながいて私を助けてくれたから。

 私は、みんなに助けられて、こうして―――自由を謳歌している。
 ソレのなんと、幸せな事か。
 こんなにも幸せになれる。こんなにも胸があったかくて、ぽわぽわと夢のよう。

 だって言うのに。

 「それにね、魔法少女姿のあなたと一緒の写真に写ってハァハァしたいじゃない!!」

 その言葉で今までの感動を粉微塵に粉砕してくれやがりました、この姉。

 「何よ黒基調のゴスロリファッションって!! 私の趣味ど真ん中じゃない!! 可愛くて可愛くて何度鼻血を噴出した事か!!
 この胸の高鳴りが、この胸の鼓動が!! あなたと一緒の写真に魔法少女として写ってるところを想像するだけで何倍にも跳ね上が―――って、あれ? フラン?」

 ムクッと、無言のまま立ち上がり、倒れていたお姉様を無理やり立たせる。
 そのまま後ろに回り込み力一杯に羽交い絞めにすると、お姉様のほうから「ぐぇ!?」と蛙をつぶしたような声が耳に届く。
 ジタバタともがくお姉様を見やり、私はにっこりと、これでもかというほどの綺麗な笑顔を浮かべたまま。

 「お姉様のバカァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 東風谷早苗直伝のドラゴンスープレックスを決め、羽交い絞めにしたままお姉様を脳天から叩き落したのであった。



 ―――私のさっきまでの感動返せコンチクショウ!!



 ▼



 早朝、人里の雑貨店に二つの人影があった。
 ひとつは店主のおばさんの姿、もうひとつは紅魔館の司書を勤める小悪魔だった。

 「はい、搬入終わりましたよ。いつもいつもありがとうございます」
 「いやいや、いいんだよ。そっちから提供されるグッズは好評だからねぇ」
 「ふふふ、それは重畳。紅魔館一同、がんばって作った甲斐があると言うものです」

 店主の言葉に、小悪魔はくすくすと笑って実に満足そうだ。
 朝も早いと言うのに、彼女にはまったくと言っていいほど疲れの色は見えていない。
 そんな彼女に感心しながら、店主は言葉を続ける。

 「にしても、あんたもニクイことするねぇ。このグッズ、あの子のイメージアップのためなんだろ?」
 「あはは、実はそのとおりでして。妹様って誤解されやすいですし、噂はろくなもんじゃありません。
 でも、本当の彼女を見てほしかったんですよ。悪魔の妹だとか破壊の権化だとか、そんな恐ろしい肩書きを持った吸血鬼としてじゃなくて。
 自由を手に入れて楽しそうな妹様を……、フランドール・スカーレットを」

 パッチリとウインクをして「他の人には内緒ですよ?」と言葉にして、小悪魔はくすくすと笑う。
 そんな様子を見て、店主はやれやれとため息をつくが、それでもどこか嬉しそうだった。

 「ったく、それなら素直に本人にも言ってやりゃいいのに。怒られたんだろ、昨日」
 「あはは、何をおっしゃいます店主さん。それじゃちっとも面白くないじゃないですか」

 店主の言葉に、小悪魔は愉快そうにケタケタと笑う。
 そして彼女はウインクをして、愉快気に言葉をつむぎだす。
 どこか楽しそうに、嬉しそうに、ともすれば満足そうなそんな声で。

 「私は、ひねくれものの小悪魔ですからね」

 そんな言葉を、満面の笑顔で言い切ったのだ。
久しぶりに魔法少女シリーズを書いてみました。
いや、恐ろしいほどに早く筆が進んで本人がびっくりしてます。
今回はちょっといい話風味に。こんな話でしたが、皆さんはいかがだったでしょうか?

それでは、今回はこの辺で。
前回の話にコメントを下さった皆さん、評価してくださった皆さん、本当にありがとうございました。

※おかしいとこ見つけたのでちょっと修正。ご迷惑おかけしました。
白々燈
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コメント



0.3480簡易評価
1.90コメントする程度の能力(ぇ削除
まさかの続編
相変わらず腹筋崩壊しましたwww
4.100名前が無い程度の能力削除
ひっそりと待っておりました!!!!!
私好みのレミリア嬢に感激です!!

次回はレミリアも魔法少女ですね!?
6.100名前が無い程度の能力削除
まさかの続編キターーーーーッ!!w
更にレベルが上がった彼女らのボケとツッコミ、正にExtraでした…色々な意味でッ!w
7.100名前が無い程度の能力削除
そのうち……そう、そのうちで結構です。神様と妹様の屋台の会話が欲しいです。
なんだかとっても切ないことになりそうだけど。
8.100ぺ・四潤削除
魔法の吸血鬼ヴァンパイアレミちゃんが思い起こされた。
魔法少女たたらん小傘はマジ欲しいぞ。こあが相変わらずで何よりです。
9.100名前がない程度の能力削除
最後の最後に小悪魔が全部持ってったwww
こういうやつだからここの小悪魔は憎めない。
11.100薬漬削除
そのうち……そう、そのうちで結構です。
是非、マジ狩るフランを魔法少女のレミィがストー(ゲフンゲフン)援護する話を書いてください。
12.100名前が無い程度の能力削除
これはたまらん。
15.100名前が無い程度の能力削除
神奈子様が一人二役やってる件について。
諏訪子様のストレスは間違いなくマッハでしょう。
早苗と神奈子様のせいで。
20.100名前が無い程度の能力削除
マジ狩るフランのフィギュアはどこで買えますか?
あと、魔法少女たたらん小傘のフィギュアも併せて欲しいのですが……
22.100名前が無い程度の能力削除
畜生、最後の小悪魔のせいでいい話になっちまったじゃないか
31.100名前が無い程度の能力削除
ちょっとフィギュア買ってくる。
36.100賢者になる程度の能力削除
そういえば咲夜さん空気。

パチュリー様自重無さって下されww

ところでマジカルゆうかりんはまだで(ピチューン
37.100名前が無い程度の能力削除
続編を楽しみに待ってました!
そして、早苗さんを誰か何とかしろw
吸血鬼より体力があるとか、人間を止めとるとしか思えなうわなにするやめr(ぴちゅーん
39.100名前が無い程度の能力削除
次は魔法戦記マジ狩るフランForceが始まるんですね。わかります。
43.100名前が無い程度の能力削除
ちくしょうw、綺麗にまとめやがってww
もっとやれwww
46.80名前が無い程度の能力削除
ちょっとフィギア買いに幻想郷行ってくる
相変わらずフランのツッコミがいい。そのうち某メガネにも勝てると思います
47.100名前が無い程度の能力削除
小悪魔の本心がよく分からなくなってきたw

ところで、おぜうさまとフランで、プリキュアならぬドラキュアというのもアリかも知れんね
48.100名前が無い程度の能力削除
ふたりはドラキュラか・・・アニメ化はいつかね?
51.100名前が無い程度の能力削除
そーいやfateって単語の意味は「運命」か…そういうのもあるのか。

んで、劇場版はまだですか?
56.100名前が無い程度の能力削除
これアニメ化したら勝つるな
65.100名前が無い程度の能力削除
吸血鬼の体力でドラゴンスープレックスはヤバイwwwww
66.100名前が無い程度の能力削除
ちょっと劇場版見てくる
73.100名前が無い程度の能力削除
つ、続きをぉぉ……。

っつーかマンガ化、いやむしろニコニコとかでアニメ化してほしい。
84.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいテンポの良さ、そしてオチのほのぼのさに
癒されました。
98.100名前が無い程度の能力削除
間違いなく小悪魔やね