Coolier - 新生・東方創想話

交換条件の目印

2010/03/10 23:20:50
最終更新
サイズ
12.42KB
ページ数
1
閲覧数
2158
評価数
9/71
POINT
3400
Rate
9.51

分類タグ

金色で、ふわふわで、柔らかい。
ストレートという訳ではなく少しウエーブがかかっていてふわふわした感じを引き立たせている。
風に靡けばふわりと飛んでいってしまいそうな程軽い。

そんな髪を前に嬉々とした表情で魔理沙の髪を弄る咲夜。

「意外と枝毛はないのね」
「乙女だからな。髪の手入れは怠らないぜ」

いつものように館に忍び込んでいた魔理沙を誘って、もとい誘導して別室へと連れ込んだ。
連れ込んだといっても、ただ魔理沙を自分の休憩時間に付き合わせてお茶をしているだけなのだが。
お茶を飲んで一息ついていた時に咲夜が「髪を触ってもいい?」と聞いてきたのが事の始まりだった。

「本当に触るだけか?」
「そうね。触って、弄りたいわ。髪型を変えてみたりね」

特に断る理由もないし「変な髪型にしたりしないのなら別に良いぜ」と条件をつけた上で了承した途端、一瞬にして準備が整えられた。
わざわざ能力を使って、だ。
櫛やブラシやら髪留めやら椿油などといった髪弄りに必要な道具がいつの間にかテーブルの上に並べられているのを見て、魔理沙が呆れの混じった口調で言った。

「これはまた、随分と本格的にやる気なんだな」
「本人の許可も得たからにはトコトンやらないと損でしょう?この部屋にいる間、あなたの時間は私のものよ」
「私の時間を対価にするんだ、可愛くなければ追加料金を頂くぜ」
「それは勿論。とびきり可愛くして差し上げますわ」

まずは様子見、とブラシで髪を梳かしていく。
毛の柔らかいブラシは髪を梳かすだけではなく同時にマッサージも兼ねている。
ブラシで髪を梳くという行為がここまで気持ちが良いものだとは知らなかった。
身構えて硬くなっていた身体も、警戒していた心も少しずつ解れていく。

「おお…」
「どう?こうしてブラシをかけるだけでも結構気持ちいいでしょ」
「んん…、これは意外と癖になりそうだ」

魔理沙から好評価を得られ咲夜の気分もよくなる。
いつもひねくれた返事しか寄越さない魔法使いがお気に召したのだ、気分が悪いわけがない。
ブラシをかける度に魔理沙は気持ちよさそうに声を漏らす。
それならばと優しく、入念に髪を梳かしてやると返事の様に返ってくる気持ちよさそうな声。

「あー、こいつはいいな。髪を梳かしてるだけなのに」
「頭皮マッサージも兼ねてるからね。気に入ってもらえたようでなによりよ」
「おお、大いに気に入ったぜ。自分でやるよりもやってもらう方が楽だしな」
「もう、調子に乗らないの」

そう言いながらも、咲夜は髪を優しく撫でる。
ふわふわで柔らかい髪はどれほど触っても飽きることはなさそうだ。

「私の髪は癖っ毛だろ。扱いにくいと思うんだが」
「そう?弄りがいがあって楽しいわ。手のかかる子程可愛いというしね」
「そんなものなのか。私は毎朝コイツを手懐けるのに苦労してるぜ」
「なら、一つに纏めるなり結うなりすればいいでしょ」
「一つに纏めるなり結うなりはしてるじゃないか」
「一ヶ所だけじゃ意味がないって言ってるの」

ああ言えばこう言う。
魔理沙には何を言っても屁理屈しか返ってこない。
こうなればとことんやってやろうじゃないか。
どうせ、本人からは許可も得ている事だし、遠慮も気兼ねもなく髪弄りをしてあげましょう。

そう心の中で決心すると早速実行に移すことにした。

「ほら、じっとして。ちゃんと整えてあげるから」
「やるなら可愛くしてくれよ」
「それは勿論。可愛らしく結いあげて差し上げますわ」

咲夜の目が光る。
手には見慣れない形の櫛や髪留めを持っている。
他にもよく分からない道具や小物がずらりと並んでいる。
香霖堂で購入した外の世界の道具を使える時がやってきた。
用途は店主から聞いていたがなかなか使う機会がなく、ずっと部屋の引き出しにしまったままだった。
そこへ魔理沙からの髪弄りの了承を得たとあれば使わない手はない。

魔理沙は背を向けているせいで咲夜が何をしているかは一切見えない。
髪を弄られている感触と機嫌の良さそうな咲夜の声のみしか感じることができなかったが、特に気にすることもなかった。
しかし、頭を固定された状態で何もせずにいるのは如何せん退屈だ。
本を読むにしても頭は下を向いてしまうし、居眠りをしようにも船を漕いでしまうので却下。
少しでも頭を動かそうものなら咲夜から「動くな」と言われ、強制的に前を向かされてしまう。

「まだ終わらないのか。いい加減首が疲れてきたぜ」
「もう少しだから辛抱しなさい」
「頭を固定されて何も出来ない辛さを知らないだろ。結構しんどいんだからな」
「そこまで言うなら全身を固定してあげてもいいのよ?」
「むしろそっちの方が楽な気がするぜ」

いっそのこと時を止めてやればよかったじゃないか、と文句を垂れるが「それじゃつまらないでしょ」と楽しげに答えるのみ。
一体何が楽しいのか。
こっちは何も出来なくてつまらんだけだと言ったところで髪弄りをOKしたのは魔理沙自身な訳で、あまり強くも言えない。
今となっては許可しなければ良かったと軽く後悔をした。
後悔はしたが、咲夜がどんな髪型にしてくれるのかは楽しみにしている自分もいて。
髪を触られるのも撫でられるのも決して嫌だとは思わなかった。

「よし、出来たわ」
「終わったのか」
「ええ、我ながら上手く出来たわ。ほら」
「おお」

咲夜が鏡を取り出して魔理沙に向けた。

「これが、私…か?」
「そうよ。どうかしら、お気に召しまして?」

魔理沙の髪型は編んだ三つ編みを輪っか状にしてピンで留めたもの。
いつも髪を下ろした状態の魔理沙には珍しい髪型だ。
聞いたところによると「マガレイト」もしくは「マーガレット」と言う名の髪型らしい。
輪っかになった三つ編みが花のマーガレットに似ていることからそう名づけられた髪型だと聞いてもいないことまで咲夜が説明してくれた。

「なんというか、まぁ、正直驚いた。鏡に映ってるのは自分なのに自分じゃないみたいだ」
「香霖堂で手に入れた本にこの髪型が載っていてね、ちょっとやってみたかったの」
「ふむ、私が可愛いのは元々だが更に魅力が増したな」
「ホント、私もここまで魔理沙が可愛らしくなるとは思わなかったわ。記念に写真でも撮ってもらおうかしら」
「おいおい勘弁してくれ。ブン屋に知られたらいいネタにされるだろ」

万が一この姿をブン屋こと射命丸文に知られたりしたら格好の餌食になるだろう。
バレたら最後、記事にされて幻想郷中に知れ渡ってしまう。
下手をしたら宴会の席で隠し芸扱いされて茶化されるかもしれないのだ。

そもそも髪型弄りを承諾したのだって誰かに見せることを前提として咲夜に許可したわけじゃない。

「あら、魔理沙はこんなに可愛らしいって皆に教えてあげたらいいじゃない。そうしたら魔理沙を見る目が変わるわよ」
「そんな事できるか。見られるのは咲夜だけで十分だぜ」
「あら残念。じゃあこんな可愛らしい魔理沙を見られるのは私だけなのね」
「別に他の奴らに見せたいとも思わん。それ以上の観客はお断りするぜ」

魔理沙の髪型を変えて満足したのか、咲夜は正面の椅子に座って魔理沙を眺め始めた。
何を言うわけでもなく、微笑んで見ているだけ。
見られている側の魔理沙としては落ち着かない訳で。

「あんまりじろじろ見るなよ。ただでさえ髪型が変わって変な感じなんだ」
「見られるのは私だけで十分って言ったじゃない。それはつまり私になら見られてもいいってことでしょ?」
「随分と都合のいい解釈だな。そこまでは言ってない」
「それに、髪を触らせるという行為は余程親しくない間柄じゃないと許さないって知ってた?」
「初耳だな。お前の作り話じゃないのか」
「なら試してみましょうか?」

咲夜は手を伸ばして魔理沙の髪に触れた。
結われた髪型を崩さないように軽く撫でる程度ではあったが優しく触れていく。

「どう?嫌?」
「別に、これくらいは今更だろ。さっきまで散々弄ってたんだから」
「じゃあ、これは?」

今度は項の辺りを軽く触る。
いつもの髪型ではあまり見ることのできない、魔理沙の項。
普段は帽子を被って隠れている其処は日に焼けたりしておらず、白くてシミ一つ見当たらない。

「ん…」
「魔理沙の項、初めて見たわ。白くて、綺麗」
「…そんなに珍しいもんかね」
「いつもの髪型だったら項なんて見れないでしょ。なんだか新鮮だし」
「おい、あまり触るなって。くすぐったくて敵わん」

ふと気付くと魔理沙の項を含めた首全体を撫でていた。
きめ細かい肌はすべすべして触り心地がよく、自分でも無意識のうちに首全体にまで撫でる範囲を広げていた。
なんというか、魔理沙の項には無意識の内に惹きつけてしまう魔力を秘めているようだ。

「ああ、ごめんなさい。魔理沙が大人しいからつい、ね」
「だから、謝る前に首から手を離せって」
「あら」

自分の中では手を離したつもりだったが、実際にはまだ撫でっぱなしだったようだ。
魔理沙がくすぐったそうに身をよじる。
抵抗らしい抵抗はそのくらいで、特に嫌がる様子は無い。

「嫌だった?」
「嫌とかじゃない。触られるとくすぐったいんだ」
「そういえば、髪が長い人って首が弱いらしいわね」

つぅ、と魔理沙の首に人差し指を這わせると魔理沙の身体が面白いくらいにビクリと跳ねた。

「…っ!?んなっ、何すんだ!」
「あら、ホントに弱いのね。そうそう、髪形が崩れるからあまり動かないでよ」
「お前…、確信犯か」
「何のことかしらね?」

惚けた振りをしながらも人差し指を動かす手は緩めない。
指の腹を使ってなぞるように動かしたり、爪先で引っ掻くようにくすぐったり。
首はほんのりと紅色に染まっていて、扇情的にも見えた。
指を動かす度に律儀に反応する魔理沙を見るともっと弄りたいという欲望が沸きあがってくる。

「ん…っ、くぅ…!」
「抵抗しないのね。嫌なら振り払えばいいのに」
「動くなと言ったのは、お前だろ」
「アンタって人の言った事に律儀に従う様な奴だったかしら。もっと暴若無人に振舞ってたと思うんだけど」
「失礼だな。問答無用で妖怪を倒すような巫女と一緒にするんじゃない」

人の事を言えるような立場じゃないだろうに。
何処かの神社で巫女がくしゃみをした気がした。

「どこまでなら嫌がらないのかしら」
「乙女の純潔を奪おうとするんなら流石に抵抗するぜ」
「それは敷居が高いのか低いのか分からないわね」

揚げ足を取るような解釈をすれば、純潔さえ奪わなければ何をしてもいいという風にも取れる。

「じゃあ、これくらいなら平気よね」

まずは小手調べ。
魔理沙の背後に立ち、首の付け根部分に手を添える。
相変わらず不思議な魔力を放っている魔理沙の項にゆっくりと顔を近付けた。
ちゅ、と軽い口付けを一つ落とす。

「…うぁっ!?咲、夜っ!?」
「ん…。いい匂いがするわね。味の方はどうかしら」

相変わらず良い反応をしてくれる。
それに気を良くした咲夜は項を軽く一舐めした。
塩っ気があるかと思っていたのに全くそんなことはなく、むしろ

「甘いわ」

魔理沙の項はほんのりとした甘みを含んでいた。
最も、咲夜がそう感じているだけであって実際は違うかもしれない。
魔理沙の項が持つ魔力が甘いと錯覚させたともいえなくもない。

「そんな訳、あるか…っ」
「じゃあ、もう一度味見ね」
「ふ…、っくぅ…!」

魔理沙の返事を聞かないうちにもう一度舐めてみるが、やはり甘い。
白かった項は既に真っ赤。
魔理沙の顔はここからでは見えないが、きっと赤くなっているんだろう。
そんな彼女がいじらしくて、可愛らしくて。
思わず背中を抱きしめた。

「…う、ぁっ?」
「いい匂いで、甘くて、おまけに柔らかいのね」
「そりゃあ、私は乙女、だからな」

ここまでされても意地を張るとは大したものだと咲夜は思った。
止めてくれと言われたら素直に開放するつもりだったのに。
まぁ、珍しいものが見れたしこの位にしておくことにした。

「アンタも強情よね」
「褒め言葉として受け取っておくぜ」
「その強情っぷりに敬意を表して―」
「……っ!」

もう一度、項に口付け。
そして今度は、強く吸った。

「これで、終わりにしてあげる」

その言葉と共に魔理沙から軽く距離をとる。
魔理沙は首を押えて咲夜を睨みつけた。

「お前…。痕、付けただろ」
「ええ、一輪の紅い花を咲かせてもらいましたわ」
「よりにもよって目立つ所につけたのか」
「あら?消えない痕を指に付けられるのはいいのね」
「指は、目立たないからいいんだよ。それにあれは事故だ」

魔理沙は手をエプロンのポケットに突っ込んで見えないように隠した。
右手の人差指には歪な傷跡。
傷は完全に塞がって完治しているが痕がくっきりと残っている。

「ふぅん。なら、そういう事にしておきましょうか」
「なんか引っかかる言い方だな。それよりもこの痕、すぐ消えるんだろうな?」
「さぁ、人によりけりでしょ。早くて一週間、肌が弱い人は一ヶ月以上残るらしいもの」
「結構かかるんだな」
「折角付けたのに」
「誰も付けて欲しいなんて言ってない。もう咲夜に髪弄りはさせないからな」
「あら、それは困るわ。じゃあさっき付けた痕を消したら、髪弄りをさせてくれる?」
「今すぐに消せるならな。だがそれだけじゃ明らかに私が得をしないからそれだけじゃ駄目だ」
「なら、紅魔館への顔パスと魔理沙が静かに読書出来る環境、それに美味しい紅茶とお茶菓子を付けるわ。ただし本は貸出厳禁。読みたい本は私が持ってきてあげる。一ヶ月の間、この特別待遇で持て成すわ。どうかしら?」
「ふむ、そこまでしてもらえるんなら…」
「なら交渉成立ね」
「待て待て、あくまでお前が痕を消したらの話だ」
「ええ、分かってるわ」

白い肌に紅い痕はよく映える。
魔理沙の肌がもう少し焼けていたのなら目立たなかったかもしれない。
咲夜は先程つけたばかりの痕に軽く指を這わし、そして―

「っぅ…!?」
「ちゅ…、ん…」

痕の上から上書きするかのようにさっきよりも強く吸い上げた。
思いがけない項への刺激に魔理沙は大きく跳ねる。

「なっ、お前、何して…!」
「これで、さっき付けた痕は上書きされて消えたわ」
「んな…、そんなの無効に決まってるだろ!」
「それに、今なら痕が付いてるなんて分からないわよ」

―魔理沙の首、真っ赤だもの。

「もう、お前の言う事なんか信じない」
「酷いわね。アンタと違って嘘なんてついてないのに」

新たに付けた痕は先程まで付いていた痕に比べて紅みが強かった。
けれど、魔理沙の首元はそれ以上に真っ赤に染まっていて。
どこに痕が付いているのか分からない位だった。

「この痕が消えるまで大体一ヵ月ってところかしら。特別待遇の期間も一ヵ月だし、良い目印になるわね」
「お前、覚えてろよ…」
「忘れたりする訳ないじゃない。痕を見るたびに思い出してあげるわ」
「ああ、もう。好きにしろ」
「今のが消えたら、また付けてあげるわ」
「うるさい。やっぱりお前は黙れ」

色々と諦めて魔理沙はテーブルに突っ伏した。
咲夜は魔理沙に近付き、その耳元でそっと囁く。

―消えない痕より消える痕の方が、付ける楽しみがあっていいでしょう?

魔理沙の耳が更に紅くなった気がした。
名付けて魔理沙ちゅっちゅシリーズ。
個人的に魔理沙は髪が長いので首とか耳とか弱そうだなと思ってます。

前回投稿したSSと繋がっているようないないような、そんなお話。
咲マリ分が足りないので自家発電する日々。もっとはやればいいのに。
でもレイマリもマリアリも好きです。そして魔理沙が愛されてれば幸せです。

今度はどこをちゅっちゅさせようかしら。
あえて唇を避けているのは個人的にそっちの方がえろくみえるからです。
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.2550簡易評価
14.90名前が無い程度の能力削除
魔理沙かわいいよ魔理沙

アリス(魔理沙の額に)か
フラン(魔理沙の頬に)を希望します
17.90名前が無い程度の能力削除
やっぱり咲マリって少ないよなぁ
いいものなのに
貴重な咲マリ分をありがとう
19.70名前が無い程度の能力削除
咲マリいいよ咲マリ

地の文での視点が咲夜と魔理沙ごっちゃでわかりづらかったかも
31.100名前が無い程度の能力削除
咲マリはもっと増えるべき
38.100名前が無い程度の能力削除
もっと咲マリするべき
40.100名前が無い程度の能力削除
後書きに同意
42.100名前が無い程度の能力削除
ドライなような甘ったるいようなそんな咲マリが大好きです
そして
>そして魔理沙が愛されてれば幸せです。
に全面的に同意せざるをえない
61.100名前が無い程度の能力削除
ひとつだけ。
あなたの咲マリに惚れました。結婚しtうわらば
魔理沙が愛でられる作品はもっと増えるべき!
63.100名前が無い程度の能力削除
やはり咲マリは良いな。