Coolier - 新生・東方創想話

魔界の門番と旅好き少女の話

2010/03/01 08:26:34
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魔界の門。人間界と魔界を繋ぐこの門は、博麗神社の裏山にある洞窟に存在していた。
そして、この門の門番を務めているのは魔界の住人である一人の少女。
名前をサラといい、紫色で少しウェーブのかかった髪と、赤いローブのような服が特徴だ。
「ふあぁ~…暇だわ…」
欠伸をしながらそう呟いていると、門の方へと向かってくる足音が聞こえてきた。
そもそも魔界の住人はこの門をくぐらなくても、人間界と魔界を行き来出来る為に利用する者はいないに等しい。
だが一人だけ、酔狂な事にこの門を利用する者がいた。
「ん…帰ってきたみたいね」
足音の主は白い帽子と黄色の髪が特徴的な少女で、名前はルイズ。
サラの親友で、旅行と称して外の世界に行く事を趣味にしている。
「ただいま、サラ!」
挨拶と共に、ルイズがサラに抱きついてくる。
「おかえり、ルイ…うわっ!?」
不意に抱きつかれて少し倒れそうになりながらも、なんとか抱きとめると、呆れたように言った。
「あーもぅ、急に抱きついたら危ないでしょ…」
そう言いつつも、ルイズの気が済むまで抱きつかせておく事にした。
そしてそのままの姿勢で、サラがルイズに尋ねる。
「どうだった、今回の旅行は?楽しかった?」
「うん、楽しかったわ。久しぶりに人間界に行ったけど、結構変わっててね…」
少し浮かれながら、楽しそうにルイズが話し出す。
普段は門の前で過ごし、出かける事もあまり無いサラにとって、ルイズの土産話を聞く事は楽しみの一つだった。
「あぁほら、もうそろそろ交代の時間だし続きは家でね。紅茶でも飲みながら、やっくりと…ね?」
そう言ってルイズの言葉を遮ると、交代できた相手に挨拶をしつつ二人で家に向かった。

家に着くと、サラは紅茶を淹れに台所へ行く。
ルイズは椅子に座って、何から話すかを考えながらサラが戻ってくるのを待っていた。
「やっぱり、最近起こった聖輦船の話よねー…」
そうして暫く待っていると、紅茶とクッキーを持ってサラが戻ってくる。
「はーい、お待たせ。それで、人間界が結構変わってたって言ってたけど…」
紅茶とクッキーを机に置きながら、サラが言った。
人間界では二人が妹のように接していた少女が暮らしている事もあって、サラも特に気にかけているからだ。
その妹が暮らしている人間界に変化があったと聞かされたら、少し心配になってしまう。
「あー、アリスはちゃんと元気に暮らしてたよ。相変わらず心配性なんだから、もー」
そんなサラの心配をかき消すように、ルイズが言った。
「仕方ないじゃない、人間界で一人暮らししてたらさ…ま、元気に暮らしてるなら良いんだけど」
サラはまだ少し心配していたようだが、とりあえず元気だと聞いて安心したようだ。
そして紅茶を一口飲んでから、ルイズが話の続きを始める。
「アリスには特に変化なかったけど…別の場所ではかなり変わってたわ。ちょっと前、法界に聖輦船が現れたでしょ?」
そう言われて、サラが少し前に起こった出来事を思い出す。
聖輦船と共に、いつかの巫女や魔法使いが法界に現れ、封印されていた聖白蓮の封印を解いたという話だ。
法界は魔界の田舎にありほとんど情報は入ってこないが、かなりの大騒ぎになっていたのでサラも多少は知っていた。
「あぁ、あの…そう言えば、あれってもう解決したらしいけどどうなったかまでは知らないわね」
そう言いつつクッキーを口に運ぶ。
魔界が大騒ぎする事など滅多にない為、その話はサラにとってとても興味のある物のようだった。
「あの後、聖輦船は人間界でお寺になってたわ。宝船の遊覧船も出てた…ん、美味し」
言いながら、ルイズがクッキーを頬張る。
美味しいといわれて、サラは少し照れながら嬉しそうに微笑んだ。
「それは良かったわ…にしても、お寺と遊覧船?変な取り合わせねぇ…」
「結構人気あったみたいよ?私も乗ってみたけど、思いの外楽しかったし…」
それから、遊覧船での出来事やお寺の住人の話が続いたのだった。

そして一通り話し終えると、紅茶を飲み干して一息ついた。
「ふー…そんな感じで、白蓮さん達も無事に暮らしてるみたいよ…あ、おかわり」
ルイズがティーカップを差し出してきたので、ティーカップに紅茶を淹れてあげた。
注がれた紅茶はほのかに湯気を立てている。
「それにしても、何だかんだで、丸く収まったって事かな。良かったわ」
「うん、みんな楽しそうにしてたよ。落ち着いたら、また神綺様に挨拶しに行くってさ」
話しながら、ルイズが持っていたカバンの中を探し始める。
どうやら、外から何か持って帰ってきたようだ。
「また何か、変わったものでも見つけたの?それとも普通のお土産?」
少し期待しながら、サラが訪ねる。
しかしルイズが取り出したのは、予想に反した文字の書かれた紙切れだった。
「ごめんね、残念ながらお土産じゃないんだけど…これの内容の事でね…」
取り出した紙切れを渡され、サラが内容を確認する。
お土産じゃない事を少し残念に思いながら。
「…文々。新聞…あぁ、これ新聞だったのね…で、何々…山空大将棋第四十七日目…?」
どうやら新聞らしいその紙切れに書かれている事を、読み上げて行く。
しかし、内容はどれもよく分からない物ばかりで何を伝えたいのかも分からなかった。
「いや、そこじゃないのよ。ほら、ここよ、ここ」
身を乗り出して、ルイズが書かれている記事を指差す。
指差された箇所の内容を読んでみると、少し興味を惹かれる事が書かれていた。
「未来水妖…バザー…?ふむふむ…非想天則…?」
しばし記事の内容に集中する。
そして一通り読み終わったところで、ルイズが話しかけてきた。
「今度、人間界でやるんだって。それでね、サラ…良かったら、なんだけど」
「うん?」
「一緒に見に行かない?ほら、最近あまり外とか行ってないでしょ」
確かに、門番という仕事柄から外に出かける様な事は滅多にない。
それに、ルイズが誘ってくれたのだ。断る理由がなかった。
「もちろん、ぜひご一緒させてもらうわ。休みは取らせてもらえるでしょうし」
と、笑顔で頷いたのだった。

そして、旅行の当日。
「ねぇサラ、準備できたー?」
「うん、今行くから少し待っててー」
そうしてルイズが暫く待っていると、奥からルイズがやって来た。
普段の門番をしている時の服ではなく、外行き用の服に着替えていた。
「その服見るのも久しぶりだわ」
「せっかく出かけるんだから、ね。さ、行きましょ」
サラがルイズの手を引いて、人間界へと向かったのだった。

目的地である妖怪の山には、非想天則という目印もあって迷うことなく行く事が出来た。
遠くからでもあれだけ目立っていたのだ、近くで見るとその大きさに圧倒されてしまう。
「うわぁ、本っ当に大きいわねー…どうやって動いてるのかしら」
「やけに動きがリアルよね…あ、ここに説明書いてあるわ」
見上げてばかりいて二人は気付かなかったが、確かに看板が立っていた。
それによると、中身は空洞で蒸気の力のみで動いているという。
「へー…これを見れただけでも、来た価値は十分あるね」
そう言いながら、ルイズとサラは非想天則を見上げていた。
そんな状態が暫く続いたとき、ふと声をかけられた。
「おや、君はこの間の…」
その声に二人が振り向くと、銀髪の少女の姿があった。
「あ、貴女は確かナズーリン…だっけ。来てたのね」
ルイズがナズーリンと呼んだその妖怪は、妖怪のようだった。
頭の丸い耳や尻尾から、サラはネズミの妖怪と推測する。
「ルイズ、この人は?」
サラがルイズに尋ねると、ナズーリンの方から答えが返ってきた。
「あぁ、初めまして。私はナズーリン、見ての通りネズミの妖怪さ」
そう言って、恭しく頭を下げる。
サラも慌てて頭を下げながら、
「あ、こちらこそ初めまして。私はサラ、魔界人です」
と自己紹介をした。
「それにしても、こんな所で会うとはね。これを見に来たのかい?」
非想天則を指差しながらナズーリンが尋ねる。
「えぇ、サラと二人でね。ナズーリンも…って訳じゃないみたいね」
ナズーリンが手に持っている荷物に気付き、訂正する。
「あぁ。見ての通り、掘り出し物でもないかと探しに来たんだよ。ま、確かにこれも興味はあるがね」
ナズーリンが非想天則を見上げると、それに合わせて二人も再び見上げる。
「これだけ大きいと、気になるのも仕方ないわよね。動きもリアルだし」
「そうだね、中々に悪くない。……おっと、あまりデートの邪魔をするのも悪いかな」
「な、何言ってるのよ、照れるじゃない、もー…」
ナズーリンに言われて、ルイズが顔を赤くする。
「色々な物があるから、二人で仲良く見てまわるといい。それでは、失礼」
「あ、う、うん、ありがとー。また、今度お寺の方に遊びに行くわねー」
それを聞いて軽く片手を上げながら、ナズーリンは帰路についていった。
「そういえば、お寺って事は…命蓮寺の?」
ナズーリンが去った後に、サラが尋ねる。
「えぇ、こないだ遊びに行った時に知り合ったの。他にも色んな妖怪がいたわ」
「確かにネズミの妖怪もいた、って言ってたね…あの人だとは思わなかったけど」
ルイズが話した土産話の内容を思い出しながら、サラが言った。
「ま、色んな妖怪がいるものね。それより、バザーの方も見に行きましょ。せっかく来たんだし、ね」
そういうと、サラの手を引いて歩き出す。
先程ナズーリンに言われた事を意識してるのか、ルイズは少し頬を赤く染めていた。

夕暮れ。空が赤く染まり始めた頃に、二人は帰路についた。
バザーでは生活に役立つ道具から、子供向けの玩具まで様々な物があった。
「いやー、面白かったね。珍しい物もたくさんあったし、来て良かったわ」
「ふふ、そうね。母さんへのお土産も出来たし」
そう言いながら、ルイズは手に持っている箱を眺める。
丁寧に包装されていて、いかにもプレゼント用、と言った感じだった。
「うん。母さんの喜ぶ顔、楽しみだね」
それから、二人は今日の出来事などを話しながら歩き続ける。
そのうち門に繋がる洞窟に到着し、話も尽きたのか二人とも静かに歩いていた。
そうして暫く歩き、門の近くに来たときに不意にサラが口を開いた。
「そういえば、ルイズ…前から気になってたんだけどね」
「ん、何?気になってた事って」
不思議そうに、ルイズが聞き返す。
「あーいや、大した事じゃないんだけど…ルイズって、出かける時はいつもこの門通るでしょ?
どこからでも外に行けるのに、どうしてわざわざ通るのかなー、って…」
それは以前から疑問に思っていた事で、気になってはいたが中々聞く機会がなかったのだ。
実際、魔界の住人は全く門を利用しない。ここにいる、約一名を除いては。
「え?門を通る理由って…そんなの、決まってるじゃない」
何を今更、という顔をしてルイズが言った。
しかし、サラにはいまいちピンと来ていないようだった。
その様子を見て少し残念そうにしながらも、ルイズが答える。
「大好きなサラに逢う為よ」
そう答えたルイズは、とても嬉しそうに微笑んでいた。
サラは少し見とれてしまいながらも、言われた事の意味に気付いて顔を赤くする。
「そ、そう、なんだ…え、えと、その…あ、ありがとう…わ、私もルイズの事、好きよ…」
予想外の答えだったらしく、かなり戸惑っているようだった。
しかしそれでも、ルイズの告白にはしっかりと答えてくれていた。
そんなサラを見て、嬉しそうにルイズが抱きつく。
「もー、てっきり気付いてると思ったのに…」
そう言って、上目遣いでサラを見つめながら少し拗ねてみせる。
「ご、ごめんね、ルイズ…」
本当に申し訳無さそうに、サラが謝罪する。
「いいよ、気にしなくて。でも、その代わり…」
何かを思いついたらしく、サラをじっと見つめながら言葉を発する。
「そ、その代わり…?」
ルイズから目線を逸らせず、見つめられて赤くなりながら尋ねる。
しかし、答えは言葉では返ってこなかった。
「……ちゅっ…」
「んっ……」
不意にルイズが口付けをする。
サラは一瞬何をされたのか分からなかったが、すぐに気付いてさらに頬を赤く染めていた。
「ふふ、これで許してあげるわ。これからもよろしくね、サラ」
そう言って微笑むルイズは、とても幸せそうで嬉しそうだった。
「うん…よろしくね、ルイズ…」
そして、この日から二人は恋人同士となったのだった。

~完~
初めまして、秋朱音です。
今回初めて投稿させていただきました。
書くのはあまり慣れていないので、未熟な点は多々あると思いますが少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
秋朱音
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コメント



0.610簡易評価
10.80名前が無い程度の能力削除
この二人、何気に好きです。
門を守る少女と、その門から外の世界へ旅行に行く少女。
接点もあるだろうし、仲が良いかもしれませんね。
11.100名前が無い程度の能力削除
ありだな。実にありだ