Coolier - 新生・東方創想話

ちるのさんLv.99 おしまい!

2010/02/27 17:56:17
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 香霖堂に呼び出されたチルノとパルスィ。
 地底を後にしてとりあえず氷結城に向かうも、いつもより濃い霧が二人を分かつ。
 なんとかチルノの場所までたどり着いたパルスィが見たのは、吸血鬼や地獄烏with八咫烏と同等の力を持つ今のチルノを一蹴する大妖精というトンデモ光景だった――


「妖精の分をわきまえなさい。氷精」
「くっ……」
 傷だらけで木にたたきつけられているチルノに、大妖精は緑色のサイドテールを指先で弄りながら、冷ややかに言葉を投げつける。
「な、なんなのよ……」
 チルノを抱き起こしたパルスィが、呆然と呟いた。
 このチルノの怪我は、この緑髪の妖精がやったとしか思えない。だが、妖精にそんな力があるものなのか?
 チルノも元々妖精としては真実、最強の部類だったはずなのに。
「……おや、妖怪の方ですか?」
 大妖精は、今パルスィの存在を認識したかのように首をかしげた。
「このようなところに巻き込んでしまい、申し訳ありません。これは妖精のつまらぬ小競り合いでありますゆえ、どうかお気になさらず」
 そうして、ぺこりと頭を下げる。
(なんだ? こいつ……)
 パルスィは眉をひそめた。
 妖精としては異質すぎるこの雰囲気、これが大妖精というものなのか?
「……!」
「あっ、チルノっ!?」
 大妖精が頭を下げた隙を狙ったのか、チルノがパルスィの腕から飛び出す。
 そして瞬時に氷の剣を作りつつ大妖精までの距離をつめ、そして迷いなく振り下ろす。
「てぇい!」
 だが、大妖精は、それを難なく右手で受け止めた。
 そして大妖精の姿が揺らめいたかと思うと、次の瞬間には、チルノの背後に立っている。
「自然の具現でしかないあなたが、私にダメージを与えられるものですか」
「……!」
「あなたの力は私のもの。私の力は私のものです」
 大妖精の右手に冷気が集まって、氷塊を形成。そしてそれを強烈な拳撃と成し、チルノの背中に叩き込む。
「あぐぅっ……!」
 痛みにチルノが顔をしかめた瞬間に、大妖精の左手が伸びてチルノの首筋を、獲物を捕らえる猛禽のごとき勢いで掴みあげる。
 身長差をものともせぬ威圧感、だった。
「先ずはへし折ってあげましょうか……?」
「あ、がっ……!」
 苦痛に歪むチルノの顔を見て、パルスィの手が反射的に動いた。
「やめなさいっ!」
 チルノを掴んでいる大妖精の手首に緑色の弾が撃ち込まれる。
「ほえっ!?」
 衝撃に手が開き、チルノへの拘束が解かれた瞬間、次は大妖精の肩口にパルスィの弾が着弾した。
「わひゃっ!」
 半身に衝撃を与えられ、大妖精はすごい錐揉みしながら、吹っ飛ばされた。
「許さない! チルノをこんな目にあわせるなんて、絶対に許さない!」
 がたがたと肩を震わせながら、パルスィは啖呵をきる。
 今だ把握しきれていない状況の中、パルスィ自身にも、自分が何をやっているかよくわかっていないのかもしれない。だが、そうしなければならないという、強い思いがあった。
「……解せませんね」
 パルスィに吹っ飛ばされ、上下逆転の状態で木に寄りかかる格好になっている大妖精が、くるりとでんぐり返って立ち上がりながら、首をひねる。
「なぜその氷精をかばうのです? あなたは妖精など気にもかけず、悠々と飛んでいれば……」
 そうして、得心したように手を打った。
「そうか、既に大妖怪に匹敵する、この力に目をつけて……」
「違うっ! そんなのじゃない!」
 パルスィは全力で首を振って、否定する。
「チルノは私の友達よ! 当たり前じゃない! 友達を助けるのはっ!」
「ぱるすぃ……」
 チルノが瞳をうるませる。
「確かに、当たり前ですね。妖精と妖怪が友達で在れるという不自然をすっ飛ばせば」
 大妖精は、懊悩するように首を振った。
「うるさい! これ以上チルノに手を出すなら、私は容赦しないわよ! あんた、妖精には勝てても、それ以外には勝てないんでしょう!?」
 チルノが手も足も出ないような奴に、不意をついたとはいえあれほどのダメージを与えられるとは思えない。パルスィは確信する。大妖精は、妖精に対して強いだけだ。
「お察しのとおり、私は妖精に対しては無敵ですが、それ以外に対しては別にそうでもありません。ですが、私も大妖精と呼ばれる者……」
 それを肯定し、しかしゆっくりと、大妖精は構えを取る。
「自然に抗う方に、負けるわけにはいきませんね」
「くっ……」
 とても妖精とは思えぬ貫禄に、パルスィは気おされそうになる。
 だが、こんなところで怯んでなるものか。
「はっ!」
 威圧感を押し退けるように、弾を数発、大妖精に向けて放つ。
 ――だが。
「っ!?」
 その弾が大妖精を捉えることはなかった。
 大妖精の姿が歪み、忽然と消え去る。まるで霧に溶けてしまったかのように。
「……幻惑は妖精の十八番ですよ?」
 そして、声は背後から聞こえた。
 振り返る暇さえ与えられず、背後からクナイ弾が襲い掛かる。
「そーれクナイ弾クナイ弾!」
「どっかで聞いた台詞だー!」
 たまらずごろごろとパルスィは地を転がる。転がっていくと、地に伏したままのチルノと目が合った。
「ぱるすぃ、ムリしないでっ……」
 チルノが心配そうな顔をする。だが、パルスィは安心させるように、微笑みかけた。
「チルノの方がよっぽど無理してるじゃない。似合わない顔しないの。大丈夫、私だって妖怪なんだからね!」
 そう言って、身を翻しながら、パルスィは立ち上がる。
 長らく驚き役とサポート役をやっていたせいで忘れていた、自分ひとりでの戦いの感覚。
 やっと、思い出してきた。
「花咲爺『シロの灰』!」
 スペルカードを宣言し、単発弾をばら撒く。
「……? どこを狙っているのです?」
 大妖精が首を傾げる。それは回避が容易であるという意思表示ではなく、実際に大妖精を狙っていない故の疑問だろう。
 大妖精は、自力がそこまでない代わりに、幻惑の力を知略でもって運用し、優位に立つタイプと見た。が、基本に妖精や人間を相手取ってきたからだろう。そこまで弾幕慣れしてはいない。
 次の攻撃のために最初に狙いを外した弾をばら撒くなど、常套手段だというのに。
「それは灰よ。欲張者の届かなかった、満開の栄光を咲かせる、ね」
 瞬間、最初の弾が通った場所に、弾幕の花が咲き乱れた。
「!」
 大妖精が目を見張る。
「いくら幻惑が得意でも、行動を制限されてちゃ思うようにはいかないでしょ?」
「くっ!」
「さあ、食らいなさい!」
 今度こそ、満を持して弾幕を撃ち込む。
 大妖精は再びその姿を揺らめかせたが、すぐに近くの弾幕花に引っかかり、逃走は阻止された。
「わひゃ!? あいたっ! いたたた!」
 消していた姿が現れ、大妖精はなすすべなく頭を抱えてうずくまる。
「どうしたの? 余裕が剥がれてきてるわよ?」
 攻勢を終え、今度はパルスィが余裕たっぷりに大妖精を威圧する。
「……常に余裕を持っている者など、いはしませんよ」
 パルスィの攻撃をやりすごし、ところどころコゲた大妖精が、ゆらりと立ち上がる。
(動揺するどころか認める……? やりにくい奴ね)
 パルスィはそう思い、眉をひそめた。
「さすがに妖怪殿が相手となると、かなうものではありませんね」
 自分のことなどわかっているという風に、パルスィの挑発を受け流し、すぐに姿勢を立て直す。
「では……これならどうでしょう?」

 ――氷符『アイシクルマシンガン』

「なっ!?」
 大妖精の手に冷気が凝縮し、弾けるように氷の弾を乱射してくる。
 これは、チルノのスペルのはず……! 確かにスペルを真似ることは不可能ではないが、先ほどの攻撃とは比べ物にならない勢いが、それがチルノの攻撃そのものだということを如実に物語る。
「わっ、わわっ! どういうことなの……!?」
 今度は自分が驚き戸惑いながら、パルスィは必死に弾幕を回避する。
「だ、大妖精! あんた、あたいの技で!」
 叫ぶチルノに、大妖精はにこりと笑いかける。
「さすが、強力ですね。いかに桁はずれていようが……自然の力であるなら、それは妖精を統べるべき、この私の力です。近くにいる妖精の力なら、容易に私のものに出来る」
 それが、大妖精の力なのか。
 パルスィは歯噛みした。まさか、チルノの力と戦うことになるなんて。
(いや……戦いにすらならない、か)
 パワーアップしたチルノの力を、誰よりも傍で見続けてきたのは、他でもない水橋パルスィだ。誰よりも、その力を理解している。
 まともにやって、自分の太刀打ちできる領域では、ない。
「パルスィ! あたいはいいから逃げて! あたいの力でパルスィが攻撃されてるところなんて見たくないよ!」
「チルノ……」
 パルスィはその言葉をうれしく思ったが、同時に意外にも思った。チルノが心を砕いてくれていることに。
 天衣無縫で掴みどころのない妖精。そういうイメージがパルスィの中にはあった。だが、今の彼女は確かにパルスィの存在に縛られている。
「だ、大丈夫よ! あんなのチルノの力じゃない、チルノが使うチルノの力じゃないから!」
 なんだかその様を見ているのが不安で、ついパルスィは虚勢を張ってしまった。
(チルノの使う、チルノの力……?)
 だが、口をついて出た自分の言葉に、パルスィはハッとなる。
 その力を使うのは、力慣れも弾幕慣れもしていない大妖精。そこに付け入る隙があるかもしれない。タイプ一致でないと威力も低いし。
 しかし、戦略の組み立て自体は、大妖精が強い。
(吉と出るか、凶と出るか……)
 どちらにせよ、退くという選択肢はなかった。
「――嫉妬『緑色の目をした見えない怪物』!」
 まっすぐに打ち出した緑色の弾幕が、海蛇のごとく相手に喰らいつく。あわよくば相手に行動させずに終わってほしい……。
「凍符『パーフェクトフリーズ』」
 だが、嫉妬の怪物は、相手に喰らいつかんとしたその姿勢のまま、その動きを停止した。
「へえ、結構、爽快なものですね」
「……!」
 その様を見ながら、パルスィはなんとなく、チルノと初めて会ったときの事を思い出した。
 嫉妬を煽ろうとして、結局何も出来なかったあの時を風景にあらわすならば、きっとこんな感じだったのだろう、と。
(だけど!)
 感傷に浸っている場合ではない。
 今戦っている相手はチルノではなく大妖精。相手が力に慣れる前に、勝負をつけなければいけない。
 パルスィはパンと頬を叩いて気合を入れると、凍らされて暴発を始める海蛇の弾幕の嵐の中に身を投じた。
 この弾幕に紛れて、一直線に大妖精を討つ。それよりほかは、ない。
「はぁっ!」
 必死に掻き分け、ついに大妖精の姿を捉えた。向こうもこちらが一直線に突っ切ってくるとは思ってはいるまい。一瞬おくれて、こちらに気づき驚きの表情を浮かべる。
 だが遅い!
「恨符『丑の刻参り』っ……!」
 放つ、その一撃は――
 大妖精の体を、素通りした。
「かかりましたね。それは幻です」
「!」
 再び、背後より大妖精が声を投げかける。
「終わりです。――雹符『ヘイルストーム』!」
 容赦なく、大妖精はパルスィの背に向けて攻撃を放つ。だが、背中に突き刺さる弾が散らしたのは、血ではなく、打ち返し弾。
「は!」
「かかったわね! それは分身よ!」
 ――舌切雀『大きな葛籠と小さな葛籠』
 パルスィは分身を囮にし、自分が逆に、大妖精の背後をとる。
「背後を取るのがお好きなようだったから、簡単に読めたわ」
 大妖精は攻撃を受けると必ず、幻で惑わし、相手の背後を取っていた。
 パルスィはそれを見逃さない。チルノと一緒に戦ってきて培われた、状況把握能力。
 ――だが。
「それはまぁ、格上に勝とうというのなら、死角に立つのは当然のこと」
「えっ!?」
 更に後ろから声が聞こえた。
 同時に、目の前の大妖精が打ち返し弾に当たり、姿が砕けていく。まるで氷の彫像が壊れるように。
「これはっ、コールドディヴィニティー!? まさか、こんな短時間で!?」
 パルスィは驚愕する。
 こんなに早くチルノの技に順応しているなんて。
「あなたはどうやらあの氷精の相方であると自負しているようですが……私の方が、もっとずっと昔から彼女を見ているのですよ?」
「えっ?」
 それは、単に昔から問題児で目が離せなかったという事なのか。いや、どうにも、それ以上の意味が感じられた。
「それは……」
 確かに、嫉妬の気が。
「さて、これで仕舞いです」
 だが、大妖精は取り合わずに、大きな氷塊を作り上げる。
「氷塊『グレートクラッ……」
「やめてーーーっ!」
 響いたのは、チルノの声。
「チルノ!?」
 パルスィが慌てて振り向くと、そこには大妖精に掴みかかり、押し合いをしているチルノの姿があった。
「チルノ! あなた、大妖精には!」
「知らないっ! あたいは最強だもん! あたいは最強なんだからっ!!」
 涙すら滲ませるチルノの剣幕に、大妖精は少し目を丸くする。が、すぐに我に帰って、チルノと押し合いをする両腕に力を込める。
「ふ、ふん、肉弾戦なら、能力など関係ないと思いました……かっ……?」
 大妖精の目が、再び信じられないものを見たかのように、丸く見開かれる。
 押されている。確実に。妖精に対しては無敵であるはずの自分が。氷精に力及ばずに。
「なっ、なっ……」
「パルスィを、いじめるなーーーー!」
 一閃が如く。
 大妖精は豪快に投げ飛ばされ、最初のチルノのように、木に叩きつけられた。
 その表情は、痛みというよりもやはり驚きを色濃く映している。
「そんな……馬鹿な!? 火事場の馬鹿力ってレベルじゃないですよ!?」
「バカバカゆーな!」
「と、とりあえずそういう意味じゃないと思うよ!」
 パルスィがチルノをなだめる中、大妖精はゆらりと立ち上がる。
「氷精……あなたはついに、この私の力の及ばぬ場所へ行こうというのですか?」
 それは、底冷えのするような……しかし、何かにおびえているような、声。
「ダメです、ダメですダメですよそれだけは! せめてあなたは、この私の目の届くところにいなきゃ、いけないんです!」
 吐き出すように大妖精は叫んで、一枚のカードを取り出した。
 瞬間、周囲に散在する、『自然の力』とも言うべき力の奔流が、大妖精に、そのカードに収束していく。
「っ……!」
「チルノ!」
 チルノの強大な力も、またその奔流に乗っていた。
「氷精、私は私の手で、あなたを止める!」
 そして、そのカードを高々と掲げる。
「大妖精奥義――」
「そこまでよ」
 瞬間、大妖精の手からカードが消えた。
「なっ……!?」
 大妖精が、わけもわからず、カードを持っていたはずの、自分の手を凝視する。だが、パルスィたちには見えていた。
 そのカードは背後の木に――紅い槍で突き刺されていた。
「あれは……スピア・ザ・グングニル!?」
 その槍――正確には槍状のエネルギー体――には見覚えがあった。
 それは、チルノが湖岸に氷結城を建設したことがきっかけで抗争することになった、対岸に住む吸血鬼の技。
「レ、レミリア!?」
 大妖精の上方から、日傘を差した紅き吸血鬼が、ふわりと舞い降りてくる。
「しばらくぶりね。チルノ、パルスィ」
 その姿を認めて、大妖精が目を剥く。
「こ、紅魔のお嬢様!? な、なぜ……」
「あら湖の大妖精。何故も何も、この橋姫と氷精は私の友人よ? 目と鼻の先で大立ち回りしていたら、飛んでくるのが自然というものでしょ」
 再び聞く友人という言葉に、大妖精は狼狽する。
「そんな、紅魔のお嬢様ともあろう方まで……」
「へえ? あなたは私を一体なんだと思っているのかしら?」
 そう言って振り向いたレミリアの微笑みの放つ威圧に、大妖精は身じろいだ。
「私はレミリア・スカーレット。運命というものの数奇さを、この世で誰よりも理解している者よ。あなたとて、自然というものの気まぐれさをこの世で誰よりも理解しているのではなくて?」
「……理解しているからこそっ」
「御しておきたかったわけね。つまり、変容を拒み、一番自然に逆らっていたのは、誰あろうあなただわ」
 大妖精の、返す言葉がなくくずおれる様を一瞥し、レミリアはチルノとパルスィに向き直る。
「無事だったかしら?」
「う、うん……」
「あ、ありがとう……」
 パルスィは力を行使せずとも圧倒的な吸血鬼の手腕に、ただ気圧される。
 さしものチルノも、同じ気持ちのようだった。
 しかし、パルスィには何より、レミリア・スカーレットがこの場に現れて自分たちに加勢してきたという事実を、意外に思った。
 それほど親しい関係を、築いていたのだろうか。
「何か――腑に落ちないような顔ね」
「あ、いや……」
 パルスィたちの表情を汲み取り、レミリアはクスリと笑む。
「先も言ったけれど、運命の不思議さを誰よりも知っていて、そして、それを愛してる。――私が愛した運命を、否定されるのが気に食わなかっただけよ」
 そして、後ろを指差す。
「牙は私が折り取った。その上で何か気になることがあるのなら、決着をつけておいたほうがいいわ」
 何もかも見通しているかのような物言いで、レミリアはパルスィらに道を開ける。
「……ていうか、どこから見てたのよ」
「紅魔イヤーは地獄耳なの」
「何それ」
 気になることを指摘したら、本気だか冗談だかわからない反応をされた。
 レミリア・スカーレット。やはり読めない幻想郷の大妖怪である。
「パルスィ、もう……」
「……いえ、確かに、レミリアの言うとおりだわ」
「え……」
 これは、レミリアの乱入によって終わらせていいことではない。
 あくまで、自分が、チルノが決着をつけなければいけない。
 レミリアは、道を開けてくれただけだ。相手の正当性を折り取り、対等に話し合える土台を提供してくれただけ。
 大妖精に近寄ると、投げやりに呟いてきた。
「……なんですか。私はもはやあなた方を糾弾する術を持ちません。どこへなりと行けば良いでしょう」
「いえ。私たちは、あなたが襲ってきた本当の理由を聞かせてもらってないわ」
「……なんのことでしょう」
 最初、大妖精は自然の均衡が云々を理由とし、襲撃をかけてきた。だが、それはレミリアに論破され、言い返せなかったことを見るに、絶対の理由ではなかったはず。
 そして、最後の方には、自然の意志ではなく大妖精という個の存在の意思として、チルノを手元に留めておきたがっていたように思えた。
 そして、自分の方がチルノを昔から見ていたと言った時に見せた嫉妬の気。
「あんた、実はチルノのこと好きなんじゃないの?」
 ぽかん、という表現の似合う空気が、一拍を支配した後。
「な、ななな何を言い出すんですかぁっ!」
 大妖精はすげえ取り乱した。
「だ、大妖精? あんた……」
「違いますからそんな微妙な顔しないでくださいよこのお馬鹿!」
 微妙に引き気味なチルノに、大妖精が慌てて手を振りながら否定する。
「チルノが自分から離れていくのが嫌だったから、無理やりにでも止めに来たんじゃないの?」
「違いますっ! 妖精としての領分を越えてほしくなかっただけです! 大妖精として!」
 ふんっ、と、子供のように胸を張る。
 超然とした空気を作ってはいたが、やはり根は妖精なのだな、と何か納得した。
「昔っからちょっと力が強いからって出すぎた真似はするなって言ってるのに全然聞きやしないんですから! 強い妖怪にも平気で喧嘩を売るし! 閻魔様にまで怒られたときにはさすがに懲りるかと期待したのにすぐ忘れますし!」
「あー、また始まったー」
 大妖精のお説教に、チルノが耳をふさぐ。
「私はあなたなんかだいっ嫌いですよ! 他の妖精より強い力を持ってるくせに、他の妖精以上にお気楽に、その力を振り回して生きているような奴!」
 そこで、改めて感じる、嫉妬の気。
 パルスィは気づいた。
 その嫉妬の向く方向に。
「そっか。好きだの云々は、確かに私の見当違いだったわ」
「わ、わかってくれたならばそれでいいのです」
「あんたは、もっと単純に、チルノに嫉妬していたのね」
「なっ!?」
 パルスィの言葉に、大妖精が驚く。
「また何を言い出すのです!? あんな身の程知らずの氷精風情に、なぜ私が嫉妬しなければ――」
「あなたが身の程を知りすぎているから、かしらね?」
「――っ」
 押し黙った大妖精の反応に手ごたえを感じたパルスィは、今までのことから類推できた全てを話し出す。
「チルノが力の才を持った妖精なら、あなたは知の才を持った妖精。同じ、頭一つ飛び出た妖精同士だった。でも、あなたはその知能ゆえ、そして大妖精という立場ゆえに、自由奔放な妖精の中にあって、いわゆる、身の程だとか、自重とかいうことを知っていた。というより、意識しすぎていた」
 今までの言動でそれは十二分に推測できる。
 妖精らしさなどと言い出す時点で、妖精とは何かを自分なりに理解していると同時に、その定義に囚われているのだ。
「そんな生き方をしている中で、同じく非凡な力を持っていたチルノのことは嫌でも目に入ってきたでしょうね」
 大妖精が、昔を思い出すように、目を閉じる。
「……そうですね。本当に、嫌でも目に入ってきました」
「チルノはあなたと真逆に、誰よりも奔放に生きていた。……きっと、色々と複雑な感情を抱いたことでしょうね。そして、色々な行動をとることで、その感情を解決しようとしてきた。さっきお説教したみたいに、まるで口うるさい母親のように振舞ってみたり、自分の定義を説いて自分の側に引き入れようとしてみたり、ね」
 大妖精は俯いて何も言わない。
 この賢い妖精は、きっと自分のことも、心のどこかでわかっていたはず。だけれども、それを認めるわけにもいかなかった。
 何より、彼女には対等に話が出来る者が、きっといなかったのだろう。
 肯定も否定もされず、ただ自分で答えを出すしかなかったのだ。
「チルノに抱いていた感情、その大元は全て『嫉妬』だと私は想像するわ!」
 嫉妬マイスター、パルスィは断言する。
「自分もああして何に思い悩むこともなく、奔放に生きていきたいと思う。だけれども、そうすることができない。うらやましい、妬ましい。奔放に生きている彼女が」
 パルスィは、言葉を続けた。
「……でも、チルノはそれどころか、Lv.99の力を身につけ、以前変わりない奔放さで自分なんて及びもつかない、神や大妖怪と渡り合うようになっていった。あなたは、チルノがそんな遠くに行ってしまうのが許せなかった。動けない自分を置いて、自分の手の届かない世界に行ってしまうのが。だから思った。今度の今度こそその身に身の程を刻み込んでやろうと、あなたも私と同じになってしまえ、と」
 大妖精を真っ直ぐ見据えて、パルスィは結ぶ。
「これが、あなたがチルノを襲撃した理由。――違うかしら?」
 ふぅ、と、大妖精は長い息を吐く。
「こうもはっきりと言葉にされてしまうと、ああ、そうだったんだなぁ、と納得してしまえますね。――ええ、そうだったのかもしれません」
 言って、くるりと大妖精が背を向ける。
「言われてしまえば、すごく愚かで、子供じみた理由ですよ。まったく、恥ずかしくなる。……もはや、邪魔は致しません。二度と会うことも……」
「……別れの言葉には、まだ早いわ」
「え?」
 思わぬパルスィの言葉に、大妖精は歩き出そうとしていた歩を止める。
「あなたは、物事をすぐに定義づけてしまうクセがあるわね。……私もそうだったわ。だから聞く。……あなた、チルノをなんだと思ってる?」
 大妖精はどうすればよいかわからないという顔をして、振り向く。
 さっきもレミリアにも聞かれた。『私を何だと思っているの?』と。
「あなたにだって考えを放棄してしまう子供っぽいところがあるように、チルノだってちゃんと物事を考えているのよ」
 パルスィ自身も、さっき、チルノが自分の心配をしてくれるまで、チルノを自分の常識では測れない何かのように考えていた。
 でも、それはきっと違う。
「あなたは、チルノときちんと話をしたことがある? なんでチルノが背伸びしようとするのか、ちゃんと聞いたことがある?」
 予想通り、大妖精は驚いた反応を返す。
「……ありません。自分の力に酔い、子供らしく振り回しているだけかと」
 大妖精はチルノに向き直る。
「氷精よ、あなたは何故、最強を自称し、強さを目指すのです?」
 チルノは今までの会話の流れを掴みきれていなかったようで、首をかしげていたが、大妖精の質問を聞くと、すぐにぴくりと反応し、少し恥ずかしそうにはにかむ。
「えー……聞きたい?」
「聞きたいから聞いているのです」
「どうしても?」
「……どうしてもです」
 大妖精の返答を聞き、チルノはもったいぶりながらも、答えた。
「うん……じゃあ教えたげる。……えとね、大妖精に勝ちたかったから、だよ」
「――――!」
 大妖精の足元がぐらついた。
 パルスィは何となく、大妖精との戦いの中で、チルノが最強に拘る理由を察していた。
 妖精の身では絶対に超えられぬ壁である、大妖精。
 小さな子供が親に抱くような絶対感を、彼女に感じていた。
 チルノはチルノなりに、大妖精に憧れていたのだ。
「原因は、他ならぬあなただったようね、大妖精」
「は――はは、なんということでしょう。何も言葉が出てきません」
 大妖精は笑った。
 もう笑うしかなかったのか、普通に嬉しかったのか、それとも、単なる照れ隠しか。
「笑わないでよー」
「はは、はっ……すみません……ふふ」
 膨れるチルノに、大妖精は笑いを抑える格好を取る。
「まったく、いい関係よね。妬ましいわ。――だから、あなたはチルノの目の前から消えてしまうべきではない。羨む、妬むという事は、その存在を認めてしまっていることなんだから」
 パルスィは、嫉妬を司る妖怪として、言う。
 こんなに甘いことを言ってしまうのは、きっと相手が嫉妬に囚われているからであり、そして自分と同じく、チルノを羨んだ存在だからだろう。
 まぁ、これでべったりし始めたらし始めたで、容赦なく嫉妬はするが。
「……ありがとうございます。ですが、私が氷精から――チルノの前から去れないというならば、やはり私には決着を付けておかなければならないことがある」
 笑顔から一点、唇を引き結んで、大妖精は言う。
 それは、きっとパルスィとしても決着をつけておかなければならないこと。
「……どうやら、本題の周りは全て片付いたようね。流石だわ、パルスィ」
「レミリア」
 パンパンと手を叩きながら、レミリアが歩み寄ってくる。
「そして、その本題に決着をつけるべき立会人は、じきに向こうからやってくる。運命の岐路が見えるもの」
 そうしてレミリアが指を指した先に。
「んげっ!」
 空から、香霖堂店主が降ってきた。
「なんだいきなり!?」
「親方! 空からメガネ男子が!」
「だれが親方ですか」
 チルノと大妖精がなんだか絶妙なボケとツッコミをかわしていい感じな中、誰にも受け止められることのなかった店主がふらふらと立ち上がる。
「や、やぁ……久しぶりだね。改めて自己紹介すると、僕は香霖堂店主の森近霖之助だ。通称、森近霖之助。親愛を込めて森近霖之助と呼んでくれ」
「相変わらずだなあんたは!」
「で、その森近霖之助が、なんで空から降ってくるわけなの?」
 チルノの疑問に、霖之助は渋い顔をする。
「いや、これは彼女の罠なんだ。僕の通り道だけあんな上空に空けるなんて……しかし、結局僕は不思議な飴の謎を解くことができなかった。全てを知っているのは、彼女だけだったんだ」
 霖之助の言葉に皆が疑問符を浮かべる中、霖之助の横にくぱぁと奇妙な音を立てて、それっぽく空間が断裂する。
 そして、その中から長い金髪を靡かせた、紫色の法衣を髣髴とさせる衣装をまとった女性が、姿を現した。
「はろう☆ 幻想騒動収拾屋さんこと、紫さんじゅうななさいよぉ」
「うわぁ、なんかでた」
「なんかでましたね」
「なんかでたね」
 パルスィたちは素直に感想を述べた。
 それ以外に言葉が思いつかなかった。
「ひどい言われようね。せっかくの初対面――まぁ陰陽玉越しには会ったことあるけど――なんだから、少しツカミに気を使ってみましたのに」
「香霖堂店主といいあなたといい、ちょっとツカミに気を使いすぎない方がいい」
「それが、あなたに積める善行です」
「ゼンコー!」
 閻魔様のモノマネしてまで総ダメ出しされて、さすがの紫も少しへこんだ。
「ひどいですわ。せっかく不思議な飴の真実を持ってきましたのに」
 くすんと泣きまねをする。
「不思議な飴の真実?」
 不思議な飴――。
 それは、チルノがLv.99になった原因物質。森近霖之助にその解決策の調査を依頼していたが――結局、この紫という妖怪がそれを知っていたということだろうか。
「いいから早く言いなさい。こちらとて暇じゃないのよ」
 レミリアの催促に、紫は膨れる。
「まともな自己紹介くらいさせて頂戴。私は八雲紫。幻想郷の結界を管理する者よ」
「っ、地上の大賢者!?」
 パルスィは驚く。主にギャップに。
「まぁ、あそこの吸血鬼が睨んでいるので、脱線はこのくらいに。さて、あの不思議な飴というアイテムですけれど、あれは、ちょっとした不具合のような存在だったのよ」
「不具合?」
 大妖精が首をかしげる。
「そう、本来、外界にすら存在しない、それこそ最初から幻想であった存在。その概念を内包するモノが幻想入りした際に、中身の概念だけが実体化してしまった。……別に、一個や二個なら見過ごしていてもよかったんですけど、個数バグまで実体化してたので、ちょっとまずいなぁって」
「実はまだ残りがあったんだけど、何度数えても『お7』とかよくわからん数字にしかならなかったんだ」
 霖之助がその当時のことを説明する。そんな数字は知らないし、なるはずもないのに、そうなっていた、と。
「つまり、あるはずのないもの、あってはいけないもの、だったのですわ。そして、湖の大妖精よ、あなたの懸念もまた、的は射ていた」
 大妖精が息を呑む。
「そんなバランスブレイカーが自然の具現たる妖精に多量投入されることは、もちろん危険なことですわ。事実、今の氷精さんは、結構不安定な状況にある。……今の現実に適した形に落ち着けなければ、そのうち存在が崩壊してしまうでしょう。周りの自然も巻き込んで」
 そうして、八雲紫はチルノにビシっと指をさす。
「私は、幻想郷を管理するものとして、あなたに二択を突きつけなければならない」
「うい?」
「一つは、その力を全て取っ払い、元通りの氷精として暮らす道。でももう一つ、提案できる道がある。それは、今の力に相応しい存在――氷の大妖怪チルノとなり、幻想郷のパワーバランスの一角を担って生きていく道。私が用意できるこの二つのうち、あなたはどちらを選ぶ?」
「……!」
 後者の圧倒的な存在感。
 大妖精が息を呑む。きっとそちらを選ぶだろうと、そして、それこそ自分がついていけない領域に、チルノが行ってしまうと確信して。
 そしてそれはパルスィも同じ。きっと、今までどおりでいられないことを、確信する。
 だがパルスィは、地底でさとりに諭されたときに思ったことを、思い出す。
 チルノの気持ちを確かめなければならないと。
 自分はチルノの意向を確かめることを恐れているだけだ。天真爛漫ゆえに底の見えないチルノの領域に、入っていくことを恐れているだけだ。
 だが、もはや自分の勝手で恐れている場合ではない。覚悟を、決める必要がある、と。

 ――あぁ、私は一体、チルノをなんだと思っていたんだ?

 大妖精に言った言葉が、そのまま自分に返ってくる。
 恐れている場合ではない? 覚悟を決める? 何を言っているんだ。
 チルノを絶対不可侵な何かだと勘違いしていたのは、他でもないこの私じゃあないか。
 チルノは、それだけで完結している何かじゃない。
 甘えかかってくれたり、心配してくれたり……チルノの中にだって、ちゃんと私はいるのに!
 最強として憧れた、大妖精。自分たちの運命を認めてくれたレミリア。正面からぶつかりあったレイ……えーっと、おくうさん。アドバイスをくれたさとりさん。
 そこに勇儀やパチュリー、あ大神つながりのお燐を含めたっていい。
 誰が欠けたって、チルノも私も、この場所にいなかった。
 ずぅっと隣にいたのに、チルノと自分がおんなじだってことに、気づかなかった。
 恐れだの覚悟だの、そんなことを思うのがどうかしてた。
「チルノ」
 ――だから私は、チルノに向かってわがままを言う。
「行かないで」
 そう、ただ、それだけのこと。
「私の手の届かないところに、行かないで」
 隣にいる友人や恋人に、ただ自然に、自分のわがままを言う。
 そんな、実に他愛のないこと。
「ずっと、私の隣にいて」
 それだけを言うために、ずっと遠回りをしていた。

「……」
 気づけば、周りの方々がおおむねぽかんと口を開けていた。
「……それなんて愛の告白?」
「ちょっ!」
 レミリアに指摘されて、パルスィの顔が一気に赤くなる。
「だだだだって、私嫉妬深いんだもの! 友達も恋人も一緒よ!」
「その理屈はどうよ」
 レミリアは呆れながら、「まぁ、あなたらしいかもね」と苦笑した。
 そして、当のチルノはというと。
「ありがとーパルスィーっ!」
「ムギュー!」
 久々の全力抱擁で潰しに来た。
 胸で潰れる。
「なんかすっごいうれしかったよっ!」
「そ、それはよかったわ……」
 酸素不足になりそうだった。色々と。
 あと冷える。
「元々断るつもりだったわよ、こんな力なくたってあたいは最強だし! 結局大妖精にも勝てなかったし!」
 なんだか矛盾するようなことを言う。
「ま、待ってください、最後にあなたは私を凌駕したではありませんか」
 疑問を呈する大妖精に、本質を見る氷精は迷いなく答えた。
「あれはこの力じゃなくて、パルスィのおかげだよ!」
「……そんな、ことが」
「間違いないって。パルスィがいたら、きっともっとずっと強くなれるんだ!」
 自信たっぷりにそう言った。きっと、そうなんだろう。
 パルスィとしても、そう、信じたい。
「それにあたいも、この力を持ってると、パルスィがなにか遠くなる感じがして、ヤだったの」
「チルノ……」
 きゅん、と。
 心が温かくなっていく。
 でも心があったかくなりすぎると反比例して体の耐久力がストレスでマッハなので自重しなければならない。つらいところである。
「……ふふ、ふふふ……」
 紫がその様を見て、微笑んだ。
「天才と紙一重なところにいるのが馬鹿というけれど……素晴らしいわ。打算なんて一切ないのに、誰もが幸せになれる答えよ」
「……ふっ、何せ、チルノですからね」
 紫の賛辞に、大妖精が吹っ切れたように合わせる。
「それでは、そのLv.99状態を解きますわよ」
「そういえば、どうやって解くんだい?」
 霖之助が尋ねる。
「妖怪になる道を選ぶのでしたら、今の氷精さんは限りなく妖怪との境界が曖昧ですから、私の能力でチョチョイと弄れば一発なのですが……元に戻るのならば、スキマでその道の専門家を召喚せざるを得ない」
「その道の専門家……一体何者なんだ」
 霖之助が戦慄する中、紫はスキマを開けた。
 そして、そこから出てきたのは――

「ヒッポロ系ニャポーンさ!」
「なんだこいつー!?」
 なんか猫口の奇妙な男が出てきた。
「呪いや麻痺を解く専門家ですわ」
「いや、この人こそこんなとこに存在しちゃいけない人なんじゃ……」
 パルスィのツッコミに、紫はチッチッと指を振る。
「何をおっしゃいます。最初の方に『ヒッポロ系ニャポーンな物語』って銘打ってたじゃありませんの」
「別に回収しなくていい伏線拾っちゃったよこの人!」
「な、なんかこわいよう」
 おびえるチルノに、紫が諭す。
「心配することはありませんわ。すぐ終わります……」
 そうしてにじり寄ってくるヒッポロ系。
「う、うひゃー!」

 ニャポットナ~

 ……………………
 ……………
 ……



 ……パルスィです。
 色々あったけど、私は元気です。
 と、そう表現するほかなかったように思う。
 ……チルノが力を失ってからも、なんだか世界は相変わらずだった。
 あ、氷結城はさすがに溶けちゃったけど。
 「あたいの城がー!」ってちょっと残念そうだった。

 大妖精は、私たちの友達になった。
 チルノとじっくり話すことが出来るようになって、やっぱり変わってきたみたい。……ちょっと妬けちゃうけど。
 なんだか自分がチルノにわがままをぶつけたことに感銘を受けたらしく、「私はあなたを目指します!」とか言って、少し懐かれてもいるんだけど。わがまま言って感銘ってどうよと思うけれど、結局自分もこの期に及ばないと、そういう結論にたどり着けなかった。
 大妖精と自分は、似たもの同士だったんだろうな、と思う。

 吸血鬼たちは、チルノが力を失った今も、仲良くしてくれている。
 騒動が絶えないお屋敷だけど、チルノと一緒に尋ねるととても楽しい。
 「むっきゅっきゅー」
 ……あの魔法使いだけは、いまだによくわからないんだけれど。

 地底のみんなも、相変わらずだ。
 今もちょくちょくと宴会のお呼ばれを受ける。
 あの件があってから、勇儀も地霊殿の連中と打ち解けたらしく、よく一緒に飲んでいる。
 「あんたらのおかげで飲み友達が増えたよ」
 なんて笑っていた。
 おくうさんは……まぁやっぱり温度的に近寄りがたくはなっちゃったそうだけど。それでも、チルノは以前より平気そうだった。
 飴とかの補正抜きで、やっぱりあの事件で成長しているんだと思う。

 ……私?
 私もまぁ、相変わらず。
 以前と変わりない日常を送っているわ。

「やっほー、パルスィ! 遊びに行こう!」

 ――毎日毎日代わり映えのしない、波乱万丈な日常をね。




「ずぅっと、一緒だよっ!」




『ちるのさんLv.99』
おしまい!

えー……どうも、ナルスフです。
とりあえず、やはり連載を締めるって難しいですね、と。
はい、なんかこっぱずかしい気持ちでいっぱいです。真面目にしか締められなくてすみません。
というかちるのさんLv.99のラストのくせにパルスィVS大妖精になるとは。そんな今まで書いた人がいるかどうかすら怪しい対戦カード……。だがそれがいい。
パルスィが大妖精の内面を類推するパートは、なんか書いてて文学少女思い出しました。
パルスィ「妖怪じゃありません! ただの文学少女です!」
レミリア「いや妖怪だろ」

思えばちょうどひとつめから半年ほどでしょうか。長かったような、短かったような不思議な感じがします。『いかに嫉妬も~』から考えると余計に不思議です。なんで連載になっちゃったのか。
当初としては紅魔館に行くことも予定外でしたし、こんな展開になろうとは思ってなかったです。いや、EX大妖精だけは最初の方から案にあったりしたんですが、ね。
終わるだけなら紅魔編で終わっていたほうがずっとキレイだとは思ったのですが、Lv.99に関しては決着付けておかなければならんだろうとここまで続けさせていただきました。なんとか書ききれて、よかったです。
連載し始めた動機は単に椛の『犬走家には伝統的な戦いの発想法が(ry』とさとり戦の『帰ったらおはぎ食べよう』がやりたかっただけだったっていうのはここだけの秘密ですよ?

さて、他の人が書いたパルチル読んでみたいなーとか星に願いをかけつつ、そろそろ失礼致します。普通の短編書きに戻ります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
みんなみんな、ごめんなさい。そして、ありがとう。
ナルスフ
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コメント



0.2170簡易評価
6.100名前が無い程度の能力削除
お疲れさまです
8.100名前が無い程度の能力削除
完結お疲れ様でした!
この話でパルチルに目覚めました。それだけに終わってしまうのは残念ですが、綺麗な終わり方で何より。
素晴らしい作品、ありがとうございました!
10.100名前が無い程度の能力削除
「シリアスだな~、オチはなんだろ?」とか、思っていたら…
まさか、本家の方が出てくるなんて、予想だにしなかったですよwwwwww

ナルスフさんの功績によって、パルチルが広まりつつあるように感じます。
「ちるのさん」は終わってしまいましたが、今から次回作が楽しみで仕方ありません。
つきましては、次は星蓮船組とかどうでしょうかww?
11.100名前が無い程度の能力削除
飴を増殖させたりしてすんませんでした! あの頃は俺も若かったんです!
それは置いといて、シリーズ通して、所々に仕込まれた小ネタ、何よりも
パルチル二人の掛け合い、関係にずっと楽しませてもらいました。連載お疲れ様でした。
12.100名前が無い程度の能力削除
嫉妬少女www
ぱるちるはもっと流行るべき
14.100名前が無い程度の能力削除
飴に頼ってちゃ努力値は上がらないんだぜ。
楽しませてもらいました。完結おめです。
15.100B.H削除
お疲れさまでした&ありがとうございました。
パルパルのいいツッコミやこーりん、クナイ弾は何度見てもおもしろいです!
次回作にwktkしてます!
18.100七人目の名無し削除
お疲れ様でした~。
前回のラストでラスボスがEX大ちゃんで、Lv.99チルノがぼろ負けしてたのは予想外でしたが『妖精に対して無敵』と言う能力を持ってるなら確かにおかしくはないですね。
大妖精の名に恥じない能力だとおもいます。と言うかもう、大ちゃんの能力はこれ公式で良くね?とか思ってしまいました。
21.100名前が無い程度の能力削除
残念、氷属性の攻撃は大抵不一致から飛んでくるものなのさ
このシリーズの大ファンでした。次回作も期待しております
26.100名前が無い程度の能力削除
長編お疲れさまでした。作者様、チルノ、そしてばらスィー、ありがとう。

パルチルのシリーズは東方知りたての頃に読んだからばらスィーのイメージがまるっきりこのツッコミ役なんだよな。
パルチル続き期待しています。
27.100名前が無い程度の能力削除
次はレイマリさん主役ですねわかります
いいパルチル……チルパル?でした
うんそうだな。リバ可だ
36.100ずわいがに削除
シリアスになり切れないところがまたwwていうかそう言えばそうでしたね、不思議な飴……完全に忘れてたwww
しかし大妖精がラスボスとかもうね、ビックリでしたょ。でも⑨おさまって良かったです、大団円!
シリーズ、お疲れ様でした。その気持ちも込めてこの点数をば。
37.100名前が無い程度の能力削除
気楽に楽しく読める連載物は貴重ですね
とても面白かったです
45.10018782削除
悪い、紫さんじゅうななさいが紫37歳に見えた
51.100謳魚削除
素晴らしいパルチルを有り難う御座いました。
しかしてヒッポロさんの伏線は意外すぎてびっくりでした。
56.100アルニレ削除
素晴らしい以外に言うことナシです
ゆかりさんじゅうななさいもしっかり美味しいとこで出てきましたし
一番空気だっためいどちょうもきっと草葉の影で喜んでいるでしょう。
あとヒッポロ系ニャポーンの万能さは異常
60.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいパルチルだ素晴らしい。
最初は文字通り最強なチルノを探してたのですが、バランスブレイカーと呼ばれながらもある程度のパワーバランスを保つことの大事さが今回のことで良く分かりました。
思わず100点をおごってしまいましたよ。
休止されているようですが、また再開できることを願っております。
62.100名前が無い程度の能力削除
面白かった
65.10名前が無い程度の能力削除
大妖精が蛇足だなあ。最後の最後にいらん展開作っちゃったか。
あと題名の割にチルノの見せ場や出番が少ない。
てか内容が「ちるのさんLv.99」という題名に名前負けしてる