頬に凍える風を受けている。髪の房がでたらめに舞う。歩いてはいない。走ってもいない。地面から足が離れている。全身、内臓ごと浮揚するくすぐったさ。眼下が遠い。
飛んでいる。
人間に、空を翔ける力なんてないはずなのに。あの巫女ならともかく。
きっと夢だ。夢の中でもそう認識できる。
夢は願いや記憶のパッチワークだという。飛行の願望も、経験もないのだけれど。
じゃあこれは、何時の誰のゆめ?
宙を掻いたところで、覚醒した。現在は如月の暮れ。寒気は長々居座って去らない。布団の中で身震いをした。また微熱があるのかもしれない。
「書かなくちゃ」
起き上がって、中庭の小鳥のさえずりを聴いた。
季節気温に関係なく、幻想郷の閻魔様、四季映姫・ヤマザナドゥ様は我が家を訪ねてくる。用件はほぼいつもお説教だ。私――九代目阿礼乙女、稗田阿求の罪過を詳細に戒める。一度聞けば忘れないのに、幾度も繰り返す。説諭を心身に刻み付けることも善行なのだ。
「御阿礼の子は、罪深い存在なのです」
私は応接間で閻魔様と向き合い、始まりの文句を聞いた。
命ある者は没後、等しく閻魔の裁きを受けなければならない。生前の行いに応じた場に、赴かねばならない。過去の記憶を失い、罪に応じた姿に変わらねばならない。御阿礼の子は転生の術で、稗田家の人間への生まれ変わりを約束されている。『幻想郷縁起』の記憶を有した状態で。正式な裁判の在り方を、根底から覆す。ゆえに罪深い。百年余りの閻魔への奉仕を差し引いても、その咎は重い。
閻魔様は里長の演説のように、張りのある声で私を責めた。死後の裁き同様、一切の反論は許されない。善の教えで罪悪をすすぎ、転生の許可を確実にしなければならない。
「彼岸に渡る日までは勿論、渡ってからも苦しみ励みなさい。親しい人々との別れや、奉仕期間中幻想郷を見られないことを嘆いてはなりません」
悔悟の棒の切っ先が突きつけられた。私は深く頷き、閻魔様の有難いお言葉への感謝を示した。
転生と『幻想郷縁起』編纂は、私の長年の義務である。心が拒んだとしても、魂が私を突き動かす。使命を果たすために、何事も受け入れて耐えなければ。
閻魔様は冷めたお茶に口をつけた。
「物分かりが良いですね。以前の代の貴方達は、死別に葛藤を見せたものですが」
「何時だって悩んでいますよ。まあ、今代は知人が増えたので」
新たな肉体で生まれる毎に、私の人間関係は清算される。人の寿命は短い。私が閻魔様の下で働いている間に、皆いなくなる。殆ど人間との縁しかなかったこれまでの私は、別れを恐れていたようだ。今の世に生まれて、事情は変わった。現代の幻想郷では、人と妖の距離が縮まっている。形ばかりの人攫いと妖怪退治を行い、共生している。私も妖怪の知り合いを多数得た。彼らは長生きだ。次代の私とも、変わらぬ友好関係を築けるだろう。転生で今代の記憶を失うのは、非常に惜しいけれども。求聞持として無類の記憶力を誇ったところで、最期には忘れてしまう。仕方がない。全て持っていきたいと求めるのは、我儘だ。
閻魔様を見送って自室に戻り、『幻想郷縁起』編纂の作業を再開した。
数季前に一応の完成を見た縁起だが、その後も加筆修正は続けられている。
外界からの風神来訪、博麗神社の地震倒壊、間欠泉と怨霊騒動、謎の宝船。異変の度に未見の幻想郷住民が確認されていった。今は宝船こと命蓮寺の関係者のプロフィールを再確認しているところだ。寺の者は私の仕事に協力的で、能力やスペルカードを次々披露してくれた。イラストを描きたいと頼めばポーズを取ってくれた。人間友好度・極高。誰も彼もこうならやり易いのに。
丁度筆を落ち着かせたところで、老女中が夕餉に呼びに来た。熱気味の私を気遣ってか、掻き卵のおじやに胡瓜漬けという質素な献立だった。紅茶には解熱作用のある薄荷の葉が入っていた。女中は私に聞かず、カップに黒砂糖を一匙加えた。皺くちゃの顔に笑みの溝が出来る。十数年の付き合いで、私の好みを手が憶えているのだ。
食後、土蔵に寄って先代の御阿礼の子、阿弥の日記を数冊持ってきた。
私の読書の優先順位は、まず先代までの『幻想郷縁起』、次に参考文献と未解決資料、最期に古い日記や手紙となっている。縁起編纂の記憶を継承しているとはいえ、先祖の阿礼乙女・阿礼男は他人のようなものだ。彼らの感じたものや想いは、憶えていない。私であって、私ではない。それゆえに、日記を読むのは少しはばかられた。他者のプライベートを盗み見ているようで。中に妖怪の記録があるかもしれないから、目を通す必要はあるのだが。
部屋の蓄音機に幺樂団の演奏盤を乗せ、欅の文机に帳面を置いた。横笛ともバイオリンともオルゴールとも異なる、宇宙的で未来的な楽曲に身を委ね、四つ目綴じのページを捲った。
稗田阿弥、博麗大結界誕生前最後の御阿礼の子。今夜の日記の中の彼女は、死期を迎えようとしていた。既に転生の準備を終え、生命の灯の消えるまでの儚い日々を送っていた。
彼女は苦悩していた。外の人間の勢力に圧倒され、幻想郷の妖怪が滅びつつあることに。縁者との別れに、自らの存在意義に。体調の変化の覚書や吐血痕の合間に、心痛が滲んでいた。小難しい文体で。
私は現代の幻想郷に生を受けたことを喜びつつ、書を読み進めた。同情や憐れみの心は生じたけれど、涙を流すほどではなかった。彼女は別人だ。心情は完全には重ならない。細々とした筆致で、記憶が蘇ることはない。百年以上の奉仕を経て、私に贈られるのは三十年未満の時間と使命のみ。縁起以外の思い出が復活するのは、奇跡だ。
最終巻は前巻と比べて半分ほどの薄さだった。阿弥が没したから。一日毎に文章は短くなっていった。四肢が剥ぎ取られるように痛い、肺が答えない、冬の死神は去れ。いずれ私も彼女のようになるのだろうか。恐れながら一枚送ると、
『忘れないでいて 夜の底に響く声』
「ポエム?」
真面目な彼女には似つかわしくない、ロマンチックな四行詩が現れた。太筆で、紙を抉るように書かれている。詩の注釈はなかった。何度も撫で擦ったのか、字の周囲が毛羽立っていた。先代は死に瀕して、空想詩に目覚めたのか。人間何が起こるかわからない。私も筆文字の上に手を置いてみた。
「私は暗がりの王 人を喰らえ闇ごと喰らえ」
身体が前にのめった。浪漫の欠片もない激しい歌声が、満月手前の空から降り注いだ。幺樂団のメロディが掻き消される。台無しだ。
こんな歌を歌う妖怪は一人しかいない、夜雀ミスティア・ローレライだ。飛び跳ねるような曲調と声で、人間を嘲い狂わせる。
「私は夜の歌 明けは永劫訪れず」
私は両耳を手で塞いだ。屋敷の者にも対策は伝えてある。固まって行動し、耳に栓をする。万一歌に惑わされたら、正気の者が叩いて治す。
待っていれば呑気な巫女が来てくれるだろう。さもなくば、夜雀が飽きて帰っていく。
肘で紙を繰りながら、時を過ごした。貴重な時間が勿体無い。
阿弥のポエムは一作きりだった。ただ、詩作は彼女に何らかの変化をもたらしたらしい。四行詩の後に泣き言は見られなかった。最後の一言は、幻想郷の未来を信じるという、希望溢れるものだった。
ややあって、博麗の巫女の怒鳴り声が微かに届いた。
両手を外して、机の正面の雪見障子を開けた。雀の大群の羽ばたきが、薄墨の空を埋め尽くしていた。ミスティアの一声で一斉に巫女に襲い掛かる。巫女は雀模様の隙間を舞うように縫い、親玉に接近する。長方形の札の結界が、二重にミスティアと手下共を取り囲んだ。鳥篭のように。輝く符に捕縛され、小鳥の編隊が落ちていった。決まりだ、これは詰んだだろう。後は見なくても良い。膝掛けと火鉢で暖を取った。レコードの演奏が終わっていた。
夜雀の怪の抵抗は、すっかり聴こえなくなった。
老女中が布団を敷きに来た。自分で出来ると言っても、やらせてくれない。身体をお大事に、ご自愛くださいと諭される。嬉しいような、恥ずかしいような。甘やかされて何処かの天人のようになったら、どうしよう。
たっぷり羽毛の詰まった防寒布団を用意され、文机の油灯皿を消し、おやすみなさいませ阿求様と挨拶をされ、
夏祭りの花火のような轟音が、稗田家を揺らした。
ひぃ、と老女中が私に縋り付く。私は彼女よりは冷静で、音の出所を探り当てていた。
寝所を抜け出て、先刻開けていた障子を引く。油皿の灯芯に火を点した。
雪白の中庭の池に、ミスティア・ローレライが浮かんでいた。張った氷が割れている。轟きは落下時のものだろう。
紫紺と薄桜の羽は濡れて飛翔の力を奪われ、ぴくりともしない。目は閉じたまま動きがない。手や羽根帽子、喉に破魔札を貼り付けられている。
音を聴き付けて、門番の男達が駆けてきた。
「如何なさいますか、阿求様」
博麗の巫女に連絡すれば追い払ってくれるはずだが、
「私の部屋に上げてください。安全に観察する良い機会です」
より有益な道を選んだ。
ミスティアのような居場所の掴み難い妖怪の知識は、なかなか得られない。動かない今は、記録を取る絶好のチャンスだ。
危険は恐らくない。現『幻想郷縁起』ではミスティアの人間友好度は悪となっているが、偶然彼女の屋台に行った人間は、ほぼ全員無事だったという。被害は精々歌に酔って転んだ程度だ。その上、今夜の彼女は巫女に懲らしめられて気絶している。
私は番に彼女を引き上げさせ、老女中に衣類と布団一式を持ってこさせた。
彼女の身長は私よりやや高いくらいで、私の山茶花色の古寝衣にすんなり収まった(老女中を説得して、両翼を通す切れ目を作った)。彩度の低い桃髪を、布巾で挟んで乾かした。
手の甲の札を剥がしたら、赤い痣になっていた。前に巫女が時間経過で消えると言っていた。
寝床は私の布団の隣に作らせた。翼を潰さぬよう、横向きに寝かせた。老女中は眉間に四重に皺を寄せたが、平気だからと言い聞かせた。
「何かあったらすぐにお呼びくださいませ。夜更かしが過ぎぬよう」
前掛けで水濡れの手を拭い、彼女は襖を強く閉めた。今度好物のお団子でも奢ろう。
ミスティアの姿形を、画用紙に鉛筆でスケッチした。
羽の骨組みは直線と円に近い曲線から成っている。縁側に来る雀達の翼とは似ても似つかない。良く飛べるなと感心する。
爪は鋭く光沢があり、よもぎのような色をしていた。引っ掻かれたら痕になりそうだ。
帽子に仕掛けはないか、裏返して調べた。獣皮の匂いの、何の変哲もない丸帽に見えた。頂上の広がった羽翼の飾りに、鳥を従わせる効果でもあるのだろうか。会話可能なら訊いてみよう。
どれも大切な知識だ。八代目の『幻想郷縁起』には、ミスティア・ローレライの名はなかった。私が隈なく調査して、十代目に繋げなければならない。
行灯を顔の近くに置くと、彼女が眼を開いた。目映さに瞳を凝らし瞬く。
明かりを遠ざけてやった。透明な視線が、私や室内を行き来していた。
奇怪な翼が微動した。微動しか出来なかった。そよ風も起こらない。胴体や手、脚も大きな動きを取れないらしい。長い爪は上下左右に振れた。
自己の状況を知ったミスティアは、私を睨み付けた。猟師と勘違いされてやいないか。傷付いた小鳥を拾ってきた気分だ。
「此処は人里の稗田の家です。貴方は人間をからかいに来て、巫女に倒され墜落したのですよ。嘘ではありません」
経緯を説明すると、悪鬼羅刹を見るかのような目を緩めた。瞳が合った。焚火の煙のような、冬の色だ。
鋭利な爪が私を指差した。胸に手を当て、
「私は稗田阿求、人間です。貴方を食べる気はありませんよ」
自己紹介をし、食べられる気もありませんよと釘を刺した。
夜雀は喉笛に空気を通した。細い風音が寝所に響く。夜気が震える。けれども、幾ら待てども風は声にならなかった。初めて横笛を手にした童が、音を出せないように。
ミスティアは目を見開き、息を吸っては吐いた。爪で喉を掻いた。
「声が出ないのですか」
ひう、ひうと物悲しい呼気が伸びた。
「文字は読めますよね」
私は新しい画用紙に、『あいうえお』から『わゐうゑをん』までの五十一音と、数字を表にして書いた。上方に余白があったので、『はい』『いいえ』も書き加えた。
あいうえお表を支え持ち、爪で示すよう促した。物を言えないミスティアが真っ先に伝えたのは、『ころしてやる』でも『ゆるさない』でもなく、
『うたいたい』
純粋な望みだった。
今日は無理でしょうと告げると、振れるだけ首を振った。諦められないのか、呼吸を積み重ねている。頬が紅くなってきた。
目元から水滴が伝い落ち、枕を円く塗り潰した。染みは徐々に広がった。
喉を掠らせ、『うたいたい』『うたいたい』と一つ言葉を指した。
見ていて痛々しかった。私も書く腕を壊されたら、彼女のように暴れるかもしれない。出来ないことのもどかしさは、良く解る。
『うたう』。爪の先が画用紙に小さく穴を開けた。
「何か持ってきましょう。人の食べ物ですが」
逃げるように厨房に走って、喉に良さそうなものを探した。土鍋の卵おじやがまだ温かかったので、小鉢に盛った。薄荷の紅茶も悪くない。戸棚から蜂蜜の容器を出して、注ぎ入れた。砂糖より優しいはずだ。固めた水飴も盆に載せた。
食事を運んでくると、ミスティアは眠っていた。戦い疲れ、泣き疲れたのだろう。涙の筋が肌に残っていた。五十音表の、『う』と『た』に無数の突き穴があった。
明日には元通りだと良い。
私は哀れな小鳥の隣で、毛布と布団を被った。
誰かが悲嘆に暮れていた。なくなってはいけないものが、なくなってしまう。なくしてはいけないものを、なくしてしまう。
枯れ木が揺れ、さざめいていた。人は鳴り物ではしゃぎ、沸いていた。月は満ちかけ。華やかに滅びようとしていた。
見たことがない光景なのに、憶えている。
――おいで。身体を温めましょう。
手を差し伸べた。己を重ねて。
また、空を飛んだ。おしまいの夜の国を見下ろした。
――特別に、貴方のために歌うわ。
誰かが誰かのためだけに、歌ってくれた。ミスティア? 彼女は存在していないはずなのに。歌えないはずなのに。
気が付けば、稗田の屋敷の部屋にいた。夢だ。冬はいけない、寒さで眠りが浅くなる。
体内時計は、一晩の遅寝くらいでは狂わない。朝餉の支度が出来ましたと、老女中が知らせに来た。
ミスティアは起きる様子がなかった。横臥姿勢で寝続けていた。彼女を眠らせたまま、布団を抜けた。
流石夜行性妖怪、昼は睡眠に費やしっ放しだ。筆の穂先で羽房状の耳をくすぐっても、額を突いても反応がない。
巫女の札を剥いだ痕は、平常の肌に治っていた。妖怪の回復力は素晴らしい。
洗濯女中にミスティアの着ていた服を渡された。鳥獣ではなく石鹸の清潔な香りがする。彼女は違和感を抱くだろうか。真白いブラウスと雀頭色のジャンパースカートを、絵に描いてから枕元に寄せた。どちらも背中に翼を通す穴があった。難しそうなので、着替えさせるのはやめておいた。
足の短い机を彼女の傍らに設置して、白紙の巻物を広げた。『幻想郷縁起』、ミスティア・ローレライ補足。話を出来なくても、観察でデータは蓄えられる。生きた相手は知識の宝庫だ。幻想郷に暮らす者のために、少しでも多くの記録を残したい。
南向きの部屋の障子を擦るように太陽は歩み、西に傾いだ。沈んでいく。
此処数日雪は降っていない。やがて来る春の暖気を想像すると、胸が弾んだ。短い余生、あらゆる季節を大事にするべきなのだろうが、冬はあまり好きになれない。指が凍えて字が歪むし、しょっちゅう体調をおかしくする。先代の日記の『冬の死神は去れ』という一文には賛成だ。
「ぁ、う」
硯の墨を磨り足しているとき、不器用な声を聴いた。ミスティアが森の木の実のような瞳で、見える範囲を確かめていた。掌でシーツの繊維を擦っている。雀らしくない雀の翼が、掛け布団を払い除けた。肘で身を起こそうとして、崩れ落ちた。声も身体も快方に向かっている。明日にはもう飛べるかもしれない。羽の邪魔にならぬよう、布団を腰の辺りまで掛けてやった。
「う?」
歌にならない声が、訝しげに持ち上がった。爪のナイフで私を指して、首を傾げている。聞きしに勝る鳥頭、昨日の一件を端から忘却しているのかもしれない。私は現在地や昨夜の出来事を、なるべく噛み砕いて解説した。歌えなくても耐えるように頼んだ。
ミスティアはうあう、うあうと連呼した。
「あと一日か少しの辛抱です。無茶をすると回復が遠のきますよ。会話にはこれを使ってください」
厚紙に筆書きしたあいうえお表を差し出した。緑爪で突かれても破れないだろう。
散々喚きシーツを一枚駄目にした後、ミスティアは涙を拭った。固形の水飴を口に含ませると、大人しく舐めてくれた。
半べその顔で、文字盤を摘み上げた。私は紙の端を支え持ち、彼女のメッセージを読み取った。
『なにかいてたの』
「幻想郷の方々の記録を。今は貴方のことを書いています」
書きかけの巻物を眼前にやった。
私は読み易さを重視して、個々の文字を独立させて書いている。崩さず略さず、流さず。先代までの草書は些か目に厳しく、読解に時間がかかったから。誤読の危険性を回避する上でも、楷書は良い。
私の心配りはミスティアにはわからなかったらしく、
『これつまんない』
単純な酷評が返ってきた。活字嫌いもあるのだろう。天狗の射命丸文が、私の魂の籠もった新聞を屋台の備品にされましたと激昂していた。
それでも、
「憶え記すのが私の務めです」
『かかないとしんじゃうの』
「似たようなものです」
私の命の使い道は、書くことだと定められている。千二百年以上前から、多分未来永劫。『幻想郷縁起』を綴るよう、生まれたときから決められている。人並みの生活を捨て、閻魔様の許しを乞い。読んでもらえなくても、幻想郷のために書き続ける。色々不満もあるが、人生に役割を持てるのは幸せなことだと思う。
『うたいたい』
ミスティアの命の使い道は、歌。自分で選び取った役割なのだろう。
『うたえないとしんじゃう』
「音楽で良かったら」
彼女を慰めるべく、蓄音機に幺樂団の演奏盤の一枚をセットした。針を楽曲の溝に設置して、回転させる。ミスティアの好みそうな、速さのある曲を選んだ。
ラッパの先を向けて、見えない音符を浴びせる。
明滅する銀河の音色は私のお気に入りだ。メロディが迫っては追い越していく。畳の縁を指で打ってリズムを取った。
ミスティアはと言うと、
『わたしのうたのほうがいい』
膨れ面であいうえお表を素早く指し示した。ら、ら。楽曲を覆い隠すように、自慢の喉を強引に震わせる。
「貴方の歌は騒々しいだけです。胸に響かない」
私もまだまだ子供だ。惚れ込んだ楽団を貶されて、少々頭に来た。思わず早口に言ってしまった。
彼女は妖の怒気に燃えた表情で、
「ひ とを なかせ たこと ある!」
無理矢理に声の弾を発した。
目を見張った。場の空気が一瞬で塗り替えられたかのようだった。人を魅入らせる、高らかなソプラノ。歌手の華と誇りに煌めいていた。雪見障子の硝子が震えた。
求聞持の私が、聴き込んだ幺樂団の演奏をひととき忘れた。
頭が唸った。消え去ったはずの心情が、手招きしている。
完全には重ならない。百年以上の奉仕を経て、私に贈られるのは三十年未満の時間と使命のみ。
『幻想郷縁起』以外の思い出は、持ち越せない。
なのに、何故?
喉を酷使したミスティアは咳込み、羽を萎れさせた。私は謝り肩をさすり、何時のことなのか訊いてみた。
『いつだっけ』
忘れっぽい小鳥は、爪で唇を押し上げた。ついさっきの怒りすら忘れているかもしれない。お腹が鳴った。
「今夜は兎汁ですよ」
稗田家と懇意にしている猟師が、食べ頃の兎肉をくれたのだ。鶏や家鴨や雀の肉じゃなくて良かった。ミスティアは手を叩いて喜んだ。
台所を見に行こうと、立ち上がった。一歩進み出ようとした途端、眩暈がした。空間が回る。椿色の着物の裾を踏ん付けて、倒れ込んだ。良くあることだ。ミスティアが心配そうに、額に手を載せた。仄かに冷たかった。
「先祖代々身体が弱いのです、お気になさらず」
『あわれね』
「慣れています」
自室でミスティアと二人、兎汁の碗を啜った。
ミスティアは腹這いで肉だけ食べていた。長葱や人参が投げ込まれた。兎の骨も飛んできた。あの長い爪で箸を持てるのが不思議だった。
妖怪と一対一で晩餐、かつての幻想郷では考えられない平和だ。
軽い湯浴みをして部屋に帰った。ミスティアは起きる練習をしていた。腕に気合を込め、半身を持ち上げては力尽きる。翼は元気に風を呼んだ。明日には空の上だろう。私に介抱されたことも、すぐに忘れ去る。
布団に入って向き合い、文字盤と声でコミュニケーションを取った。屋台の経営努力や人攫いの苦労をあいうえおで辿った。『幻想郷縁起』のミスティア・ローレライの項目は、相当に充実することだろう。
知的探究心を眠気が上回ってきた。悲しいかな身体は虚弱な少女、二晩続けて長起きは厳しい。
夜の鳥ミスティアは活発になる一方で、両翼を打ち鳴らした。『あそぼう』『さらうよ』、文字盤を尖った爪が駆ける。
字を追う瞳が重たくなった。瞼が落ちる。ごめんなさい、また明日。
「ら ら らら ら」
歌詞のない歌が、眠りに溶け込んだ。力を取り戻しつつある。決して騒々しいばかりではない。良く聴けば、柔らかい精気を帯びていた。
人の命を支える、伸びやかな歌の花。
私の、わたしの子守唄。
――御阿礼の子は、罪深い存在なのです。
隙間風が渦を巻く、病の床。吸い込めば肺が凍り付く。吐息と一緒に紅い痰が湧いて出た。伝染する死病だ。侍女達には、可能な限り近付かぬよう指示した。
闘病の日々は、直に幕を下ろすだろう。肉体と感覚は痩せて衰えた。筆を持てるのは極僅かな時間しかない。手が言うことを聞かなくなる。目も霞む。
病魔を恐れず門戸を叩くのは、幻想郷の閻魔様。わたしの罪を咎め、次の生を約束してくれた。たまの客人で嬉しかった。床に伏したまま罪過を静聴し、抱えた不安をぶつけた。
――閻魔様。わたしが転生を続ける意味は、あるのでしょうか。
歴代の御阿礼の子に倣い、転生の秘術を成したものの、内心は恐怖で膨らんでいた。
遠い沖に黒い船が出現して、何年経ったか。
国は開かれ、西方の文明の波が海岸から都へ伝播した。暦が合理的なものに変わり、江戸、東京では陸蒸気が走り出した。行灯の数倍明るい照明もついたという。科学と接した外の人間達は、妖怪への畏怖の念を失っていった。
妖の者は人の恐れなしには生きられない。外の人間の心境の変化は、幻想郷の妖怪に打撃を与えた。飢え、衰弱し、退治が容易になった。河童は川を流れ、天狗は地に伏し、神々は大気に蝕まれた。
妖怪の弱体化は喜ばしいことではない。人妖の力の均衡が崩れれば、幻想郷そのものが消滅してしまう。
このままでは、幻想郷に未来はない。御阿礼の子にも。
妖怪が完全にいなくなれば、わたしの仕事は意味を持たなくなる。妖怪の対策を練る必要がなくなる。『幻想郷縁起』は空想の紙切れになる。既に此処数年、縁起を読みに訪れる者はいない。
病魔に敗れ、里の人々と別れ、閻魔様の下で勤めて、再び現世に生まれたとき。其処が荒廃し、妖怪など影も形もなくなっていたら? 幻想郷が何処にもなくなっていたら? 知己も縁者もなく、果たせぬ使命を抱えて、無縁の地に独りきり。
――私の目に映るは罪のみ。未来は視えません。
楽園の閻魔様は翡翠の髪を払い、俄雪の道を帰っていった。
昨今、幻想郷の者は夜に強くなった。広場に薪を組み上げて、派手に焚火をしている。笛や鼓や合唱が、焔を盛り上げる。酒が足りない取ってこい、あの怪物から取り上げろ。
次代の御阿礼の子を思うと、心が軋んだ。わたしの力では、流れは曲げられない。
縁側に佇んで、十三夜の月を見上げていた。満ちれば欠ける、当然なのに受け入れ難い。
庭の桜がさんざめいて、枝の雪塊を散らした。来訪者を迎えるかのように。
ら ら らら ら。細い歌が、月夜に闇を編んだ。
鈍色の空を人型の影が飛んでいた。よろめいて、今にも地に落下しそうだった。此処のところ、飛翔出来ず捕らえられる妖怪が多い。
里の広場の人々に、発見した気配はない。酔ってまともに見ていないのかもしれない。
影は翼を必死に振るい、風を掴み損ねて墜落した。
わたしの庭の、足跡ひとつない雪原に。
雪明かりに潜む、灰桃色の髪をしていた。肌は白妙、みすぼらしい泥茶けた藁を纏っていた。どうやら、生まれて間もない妖怪の娘らしい。頭の中の『幻想郷縁起』を探っても、該当する者がいない。名前もまだないだろう。
童女の落書きのような、飛行に不向きそうな羽翼がはためいた。北風の恵みを得られずにいる。舞い上がれない。頑張ってと、声援を掛けたくなった。
険しい眼差しが、わたしを射抜いた。恐れられている。恐れるべきは、わたし達人間の方なのに。
彼女は世界に必要とされていない。わたしもそのうち要らなくなる。
助けたかった。彼女を救うことで、救われたかった。ともし火が尽きる前の、最後の我儘だ。
――おいで。身体を温めましょう。
――私を襲わないの?
痩せこけた骨の手を、差し伸べた。
――わたしは稗田阿弥。もうすぐ消える、御阿礼の子。なんて言っても、わからないでしょうね。
ぬるま湯に浸した布で、肌の泥汚れを拭き取った。雀茶の紬の背面を裂いて羽を通し、彼女用の着物にした。もう着ることのない服だ、破くことにためらいはなかった。白い帯を巻いたら、本物の雀のように見えてきた。人間を惑わす、悪戯な夜雀。
彼女はちんまり礼を述べ、わたしの病んだ布団に入った。わたしを引っ張って、共に寝かせた。人生の終末期に、妖怪と同衾するとは思わなかった。誰かの温もりを受けるのは新鮮だった。新鮮だと感じる己が、哀しかった。
ら ら らら ら。わたしと向き合って、彼女は歌っていた。言葉の意味を持たない、声任せの歌だ。夜霧を撫でるような、可憐な声をしていた。妖として成長したら、聴衆全てを魅了するかもしれない。もっと聴いていたかった。
わたしは知っている童謡を、拙く歌って聞かせた。雪の歌、雨降りの歌、紅葉の歌、夜の夢の歌。彼女は一語ずつ覚え、一語ずつうっすら忘れた。手鞠と三日月と野兎が混ざり合った。
歌うほどにわたしは肺を弱め、呼吸に血を絡ませた。彼女はわたしの手を尖鋭な爪で掻いた。
――貴方は死ぬの?
――はい。
爪ごと手を握り締めた。精神に彫り付けるように願った。
忘れっぽい彼女に、忘れて欲しくないことがあった。
――とびきり元気に歌って、可愛い夜雀。
妖術や魔術が幻となっても、歌曲は残り続けるだろう。人間も妖怪も、声ある者は歌う。歌えば、彼女は生き続けられる。
――その歌が貴方になる。
未来の視えない求聞持の、祈るような予言。彼女は聞いて、
――うたう。
笑顔で応じてくれた。
肩を揺さぶられ、起こされた。瞼は重たくて、持ち上げるのに気力を要した。
木窓が開け放たれ、冬の冷風が吹き込んだ。
外は未だ暗く、驚くほど青かった。夏空や藍染や瑠璃でも、これほどまで青くはない。わたしの知らない幻想郷の色だった。
月の眠った夜の青を背に、一羽の小鳥が立っていた。小柄な黒影が爪先から伸び、幻想の翼を縁取った。これが死神なら、お迎えも悪くないかもしれない。
彼女は雀の着物の袖を巡らせ、
――起きた? 今から、
「今から、貴方を攫ってあげる」
身体が宙に浮いた。
大気のわななきを顔面に浴び、私は目覚めた。寒い。寝衣一枚だ。頬に凍える風を受けている。髪の房がでたらめに舞う。眼下が遠い。
私とわたし、阿求と阿弥が交差する。四つの目が、幻想郷を見下ろしていた。
阿弥が見るのは、青白い世界。雪に埋もれた田畑と人家、衰退していく妖気。おしまいの絶望の国。
私阿求が見るのは、青と白銀の大地。夜の色を照り返す田畑と人家、活気ある生活風景。灯を手に歩むは人か妖か、生き生きとしている。おわらなかった理想の国。
「此処は」
「空の上に決まってるじゃない」
阿弥も私と同じことを訊いて、夜雀に笑われた。
ミスティアは私の膝裏と背中を支えて、高度を上げた。雲で濡れない程度の、適当な位置まで。
空を飛んでいる。初めてではない。前の私も辿った道、羽ばたいた景色だ。
夢の園の真ん中真上で、ミスティアは滑空移動を止めた。博麗神社や妖怪の山、魔法の森、人里、三途の川。愛しい幻想郷の、東西南北が見渡せる。
愉快な夜雀、ミスティア・ローレライのソロコンサートへようこそ。ただ一人の歌い手は、私に微笑んだ。
「特別に、貴方のために歌うわ」
私とわたしの見詰める中、夜雀は肺を空気で満たした。指揮者は冬季の星座達、夜闇の鼓動。歌われるのは、
「忘れないでいて 夜の底に響く声」
阿弥の日記にあったあの歌。
透き通る声が、何処までもうららかに放たれた。
わたしが望んだように、とびきり元気に。死せる心身を再度立ち上がらせる。手を差し伸べられていたのは、わたしの方だ。
「闇は瞬き 貴方のためだけの歌になる」
ひと一人抱きかかえているのに、夜雀の歌声は萎まなかった。むしろ勢いを強め速めている。
本当に優れた歌には、主の魂が宿るという。彼女のアカペラは、彼女の魂を燃やして出来ている。熱い。
「ゆめは消えない 翼で護られてる」
歌詞からわたしは意志を感じ取った。「ゆめ」は幻想郷、「翼」は彼女達。妖怪は外の人間に否定されても敗れない、幻想郷は生き続ける。そう、
「抗い続ける」
続きを私は知っていた。阿弥の終焉を彩ったメッセージ。私はミスティアに合わせ、
「道はさえずるから」
最後のワンフレーズを歌い上げた。
苦悩に枯れた阿弥の瞳に、涙が一粒浮かんだ。歌に惑わされ、揺るがされていた。わたしは長くはないけれど、この先も幻想郷はきっと大丈夫。ゆめは簡単になくなったり、亡びたりしない。これほどに歌える妖怪が、まだいてくれるのだから。もう筆は十分に持てないけれど、この歌だけは必ず残そう。未来に希望を持って逝ける。頑張れ、次のわたし。
私もまた、目元を濡らしていた。ミスティアのおかげで先代と記憶が繋がり、重なった。百数十年越しの希望や感動が、帰ってきた。時空を超えて励まされた。転生を続けていて、本当に良かった。
「知ってるの? この歌。即興のはずなんだけど」
「貴方だったのですね、ミスティアさん」
「何のこと」
――とびきり元気に歌って、可愛い夜雀。その歌が貴方になる。
彼女は阿弥の願いを忘れず、歌い続けた。結果、歌で人を惑わす妖怪として知られ、ミスティア・ローレライとなった。歌に執着し、声を失ったショックに涙したのは、過去のわたしが希求したから。
歌で人を泣かせたことがあると、彼女は声を張った。嘘偽りではなかった。他ならぬわたしが泣いたのだ。
私はミスティアのジャンパースカートの胸に、顔を埋めた。首に手を回して、固く抱いた。
「忘れていてごめんなさい。あの時私を助けてくれて、ありがとう」
「助けたかな」
嬉しさと共に、哀しさが襲ってきた。他の御阿礼の子と記憶を共有したのは、今回が初めて。重なることはまずないと言っていい。
死と転生の度に、『幻想郷縁起』編纂以外の記憶は削ぎ落とされる。楽しかったことも、苦しかったことも。
どれほど日記に言葉を費やし書いても、感情は正確には再生されない。次代の私が今の感激を味わうことは、二度とない。以前の私が阿弥の日記を、乾いた目で読み飛ばしたように。
仕方がないと、諦めたくない。手放さずにいたい。我儘だとしても。
「全て、忘れずにいられたらいいのに」
「無理ね。私、忘れたことすら忘れてる」
ミスティアがこめかみを指して笑った。おどけて舌を出す。
「でもね、歌うことだけは忘れない。私はとびきり元気な歌になるの」
気持ち良さそうに、ミスティアは惑乱の声を遥か彼方まで飛ばした。
阿弥の時代と比べて、格段に上達している。騒々しいだけなどと批判して、悪かった。
進歩。歌う彼女を見て、ひとつの可能性と熱が生じた。
彼女は歌い続けることで、妖怪の力を強めた。恐れられ名前を与えられ、歌でより心を震わせるようになった。
私は求聞持、九代目阿礼乙女。代々の命に従って、『幻想郷縁起』を編んできた。自分なりに工夫を加えた点もあるけれど、惰性でやってきた部分もある。今からでも遅くない、意味と意志を宿して書き続ければ、何かが変わるのではないだろうか。言葉を費やすほどに、私は書いていない。諦めず、抗え。幻想郷の住民や次代の御阿礼の子が読み始めた途端、嗚咽するくらいに。
――その歌が貴方になる。
ならば、言の葉が私になる。
「私は歌い続ける 貴方は書き続ける 御魂が揺らめき果てるまで」
高歌放吟中の、ミスティアの襟を引いた。
「私を家に帰してください。筆を執らないと死んでしまいそうです」
彼女のことを綴ろう。数日間の介抱、スケッチの清書、人攫いコンサートと歌詞。
幻想郷全体を見直そう。妖怪にお願いして、また空から俯瞰しよう。阿弥の嘆きを乗り越えた楽園を、細かに書き留めたい。
歌う一夜は、絶対に忘れない。求聞持の筆と名にかけて。
五弁の桃の枝が、私室を彩る頃。
「わすれないでいて よのそこにひびくこえ」
「珍しいですね。貴方が歌ですか」
細筆を繰りながら、歌っていたらしい。中庭に降り立った閻魔様に、気付かされた。恥ずかしい、人に聴かせられる技量ではない。
私はおやつの花見団子を薦め、
「旧い友人に贈られました」
春めいた淡い空を見上げた。
彼女は今日も、何処かで賑やかに歌を振り撒いているだろう。私や阿弥のことを忘れて。それでいい。歌うことさえ忘れなければ、彼女は彼女でいられる。
私は記録し、記憶する。両腕で、それが不可能なら足や口でも。
長生きしたいなと漏らしたら、悔悟の棒で手をはたかれた。
足ることを知れと言われても。此処には少し、愛しいものが多過ぎる。
結末は変わらずとも、そこに救いはあったのですね…。
頑張れ、次のわたし、グッと来ました。
では。
何かしら感じてくだされば幸いです。
>救い
最後に持っていけるものが、幸せや希望だといいなと思います。
>勇気を頂きました
ありがとうございます。少しでも心を動かせると、書いてよかったなぁとほっとします。
>どこに埋めましょうか?
背戸の小やぶに埋めてはなりません。苦しそうです。
月夜の海に浮かべればいいのかもしれませんが、生憎幻想郷には海がありません。
夜空の青が海の代わりになりますように。
おいしい和菓子を頂いたような気分です。
ほっと一息つかせてもらいました、素敵なお話をありがとうございます。
あぁ、歌を聴きすぎたようだ。鳥目にされちまったかな……
これらは我々死ぬ生が得た永遠だと思うんですよ。素晴らしいお話でした。
ミスティアも阿求もやらないといけないことが魂に刻み込まれているんでしょうねぇ。
そして、それを苦に思っていない、思わないようになった。
そうやって行動すると人、妖の心を震撼させるんでしょうねぇ。
言葉の選び方や、節回しが綺麗で、思わずため息が出ます。
ミスティアの生き方が、実に彼女らしくてよかった。
音楽好き、という点で阿求とミスティアの交流が書けるなんて、本当に素晴らしい。
阿求の(阿弥の)生き方から力をもらう気がします。
良いものを読ませていただきました。