Coolier - 新生・東方創想話

ブルー

2010/02/13 15:06:11
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 夜眠る前の日課。闇で自分を覆うこと。とはいえ、よく忘れてあちこち火傷する。
 その日もそんなありふれた中の一つでしかなかったが、少しだけ違った。

 視界いっぱいに広がった色。次いで、眼球の焦げる壮絶な痛み。漏れ出たのは声にならない声。

 闇を展開しながらそこらをのた打ち回って、引かない痛みに身体を折りたたんでうずくまった。

 それでも、心を占めていたのはその激痛ではない。

 太陽が照らし出す空というものを見たのはその時が初めてで。

 だから、一瞬だけ見えたその鮮やかな青色を。私は、忘れることが出来ない。




                                         「ブルー」




 紅魔館の応接間で、ソファーに身を預けたレミリアは軽く額に手をやった。

「……もう一度説明してもらえる?」
「ぐすっ、でしゅから、この子は……うっ(ダバー」

 滝のように溢れる涙を袖でぐしゅぐしゅしながら話すもんだから、美鈴の言葉は全く聞き取ることが出来ない。その様は正しく男泣き。女だけども、男泣き。

「ヴぉらがみだくで、だばらごごに。わだじだめヴぇすごういうのー!」
「『空が見たくてここに』、だそうです」
「へーそーなのかー」
「……貴方のことよ?」

 咲夜の視線の先には、黒い球体がぷかぷかと浮かんでいる。球体の正体は濃い闇であり、その中心にはただいま絶賛号泣中の門番に連れられてきた妖怪がいた。

「さすがは咲夜、と言わざるを得ないわね」
「ありがとうございます」
「……ルーミア、といったかしら?」
「うん、よろしく。えーと、なんだっけ?」
「レミリアよ。レミリア・スカーレット」
「そうそう。よろしく、レミリア」

 闇が動く。そのまま屋敷の壁に思い切り突っ込んだ。鈍い音にレミリアはまたも額に手をやった。

「……いたい」
「こっちよ」

 声が掛かると、今度は真っ直ぐとレミリアのほうへ向かってくる。漆黒のそれにスッポリと包まれ、初めてその姿をはっきりと見ることが出来た。
 人懐っこい笑顔を浮かべた金髪の少女が「よろしく!」と手を差し出す。言葉だけを返すに留めたレミリアだったが、少女のほうが勝手に手を取って上下に振り回した。

「ここを訪れた理由を聞かせてもらえる?」
「でずがらごのごば」
「貴方ではなくて」
「青い空が見たいの!!」
「……そら?」
「なんでも、その妖怪は日光に弱いらしいです。それが先日、誤って太陽がさんさんと照る下で目を開いてしまい、その時に見た青空に魅せられてしまったのだとか」
「おー! うん、そのとおり!」

 やたらめったら濁点の多い言語を解読した咲夜が付け加えると、ルーミアは大きく頷いた。
 美鈴はその無邪気な様子と健気な願いにやられてしまったに違いない。ポケットから取り出したハンカチでその顔を優しく拭いてやりながら、咲夜は大いに納得した。

「酔狂なやつがいたもんね。あんな忌々しい物を見て何が楽しいんだか」
「見たことあるの?」
「それは……あんまりないけれど」
「日の光が弱い日を選んだとしても、お嬢様が直接空を眺めたとしたら、きっと眼が爛れてしまいますね。高い治癒能力があるにしたって危険です。全治5日といったところでしょうか」
「それは貴方も同じはず。なんでそこまでして見たいのよ?」
「空の色ってすごいんだよ! ましてそれが快晴の空だったなら脳がヤバイ! 空の青さで脳がヤバイ!」
「……顔が近いわ」

 確かにこれは重症ね、とレミリアは心の中で呟いて、目をらんらんと輝かせ鼻息荒く迫るその顔を押し戻す。

「この子に私の外出用の日傘を持たせてあげて。……あぁ、あげるのは古いほうね」
「はい! 私が案内します!」

 門番のほうが意気込み、ルーミアを連れ立って部屋を出て行った。レミリアは暗がりから開放されたことで、光に慣れない目をぱちぱちとさせていた。

「ずいぶんとお優しいのですね」

 客人が去ってから少しして、咲夜が言った。
 紅魔館の主人は基本的に唯我独尊であり、自分に利益のないことでは動かないというのが下馬評だ。実際、紅魔館に勤めている者に訊いてみると、「大体あってる」という返事が返ってくる。
 そんな返事を返す中の一人である咲夜は、先ほどのレミリアの対応を不思議に思ったのだ。

「……そうね。自分でも驚いているわ」
「驚いている?」
「えぇ、そうよ。こんな感情が私にあったなんて、ね」

 レミリアはそういって二人が出て行った扉を見やり、言葉を続ける。

「あの子に自分を重ねて……これはなんていうものなのかしら」

 胸に手を当て考えるレミリアを、咲夜は誇りに思った。
 今なら言える気がした。自分が唯我独尊の主人に仕える理由を、今なら胸を張って言える気がした。


 それはさておいて。


「お嬢様。日傘を一本差し上げるんですよね?」
「なによ、咲夜。藪から棒に」
「そうなりますと、残りは一本になってしまうわけじゃないですか」
「そうだけど。悪い?」

 怪訝そうに言われ、咲夜は少し困ってしまった。完全で瀟洒なメイドとしては、出来るだけオブラートに包みつつ、主の機嫌を損ねないようにしなくてはならない。

「いえ、それ自体は構わないのですが。なんといいますか……その……残った傘のデザインがですね……」



「ウサピーの何がいけないの!!」



 人里の傘職人に作らせた特注の日傘。それにはウサギのデフォルメキャラのイラストが、そりゃあもう余すところなく描かれていて、完成時には職人のほうから「受け取るお嬢さんによろしく」と言われてしまったくらいものだった。咲夜はそれを見るたびに、自分が苦笑いしか返せなかったことを思い出す。
そんなものを差して外を出歩こうものなら、レミリアの纏う他者と一線を画した雰囲気は当人の知らないところで骨組みさえ残さずに瓦解してしまうだろう。それは避けねばならない。

「ウサピー可愛いじゃない!」

 だから、エプロンを引っぱられ怒鳴られても、「お嬢様のほうが可愛いです」という言葉を胸にしまい、なんとか説得しようと試みる。
 この胸の高鳴りを感じるのは自分だけでいいのだと、誰にわけてやるもんかと、そんな想いだけで一生働くことが出来るメイド。それが十六夜咲夜というものだった。

「……あれ?」
「咲夜! 聞いてるの!」

 ふと、どこぞの賢人真っ青の速さで回り始める頭に疑問がよぎった。

 今の時刻は昼。紅魔館の数少ない窓からは光が差していた。といっても、紅魔館の周囲は日中濃い霧が出ていて、その光の量は部屋を最低限照らしだす程度である。この程度なら吸血鬼であるレミリアにも影響は出ない。

「……咲夜?」

 薄暗いとさえいえる応接間を見渡して、咲夜はもう一度首を捻った。

 この部屋であっても力を解かなかったあの妖怪は、日傘があったくらいで空を見ることができるのだろうか、と。

 


 



「空が見たい?」

 河城にとりは視線を上げ、上空を仰ぎ見ようとした。が、それは周囲を包む闇によって叶わない。
 視線を戻せば、ルーミアと名乗った妖怪が屈託のない笑顔で話し出す。

「空と言っても夜空じゃないよ。お日様が出てる時の青い空」
「……そもそも、あんたは何で川を流れてきたんだい?」
「日傘を差して空を見ようとしたんだけど、全然駄目で。熱くて堪らなかったから、すぐに真っ暗にして川に飛び込んだの」

 どんぶらこどんぶらこ、と流れてきた謎の黒い球体に食指を動かされ、にとりがのびーるアームでそれを回収したのは数刻前。掬い上げられたルーミアは、所狭しと広げられた発明品の数々を指差しては解説を求めた。にとりも自分の作り出した物に興味を持って貰えるのはやぶさかではなく、名称から用途、時には蛇足を交えつつ、次々とそれらをこなしていった。
 あらかたの物を解説し終えた頃、ルーミアは自らの願いを打ち明けた。これだけ様々なものを作り出せるにとりを見て、自分のそれも簡単に叶うのではないかと思ったからだった。

「ようし、私に任せなさいな。空でも何でも拝ませてやろうじゃないか」
「本当?」
「あぁ、本当だ。あんた、太陽光に弱いって言ったね?」
「そうだよ。お日様に当たるとすぐに焦げちゃうの」
「なら、簡単な話だよ。……えーと、どこへやったかな」

 端からみたらガラクタにしか見えないその山を、にとりが何かを探すようにごそごそと漁りだす。どんなすごい物が出てくるのだろうと、ルーミアは期待に胸を膨らませていた。

「お、あったあった。これだよこれ」

 やがて、にとりが取り出したのは、無駄にど派手な光沢を放つ銀色の―――。

「その名も『光学迷彩パワードスーツ』さ」









「……よいしょ」

 がちょんがちょん。

 全身を銀色の光沢に包まれたルーミアが歩くたび、晩年の一発ギャグを思わせる金属音がした。それもそのはず。この「光学迷彩パワードスーツ」は一見薄い生地にしか見えないが、内には細部にまでテクロノジーが積んである。その重量はなかなかの物で、転んでしまったら自力では立ち上がれないだろう。

「私の使ってる光学迷彩は身体の一部に取り付けるアタッチメント型なんだけど、それはその試作型。最新型が光の一部を捻じ曲げて姿を消すのに対して、そっちは全ての光を捻じ曲げる。かなり昔に作ったものだから、細かいことは覚えていないけど、それを使えばあんたは晴れて空を見れるはずさ」

 空だけに晴れてなんてうまいこと言った、と満足そうなにとりの目線の先で、ルーミアはパワードスーツに振り回されていた。がちょんがちょん。

「準備ができたらスイッチを入れて、力を解くといい」
「う、うん」

 ルーミアは一つ深呼吸をする。それから、教えてもらった腰のスイッチをONにした。背中の辺りでタービンがものすごい速さで回り始める。やがて、その音がピークに達したところで、周囲の闇を操りその身を日に晒した。

 急に差し始めた日の光から眼を手のひらで庇いつつ、にとりが辺りを見回すとルーミアの姿はない。姿を消すことには成功したようだ。

「どうだい。空は綺麗かい?」
「ねー、にとり」
「なんだい、その声は。せっかく念願叶ったっていうのにさ」

 不満そうなルーミアの声に、にとりは何か言ってやろうかと思ったが、どの方向に向かって話したらいいか分からなかったので結局何も言わずに空を見上げた。今日は快晴で、確かにそれは素晴らしいものに思えた。



「これ、真っ暗で何にも見えないよ?」



 河城にとりはとんだお茶目さんだった。
 試作品である「光学迷彩パワードスーツ」は全ての光を捻じ曲げるのである。その場合、それを着込んだ者の見る世界はどうなるのか。そう、答えはダーカーザンブラック。「何にも見えない」というルーミアの言葉は、それを実に端的に表していた。
 

 がちょんがちょん。


「……っ! 駄目だ!」

 起きた事態に、弁明に悩んでいたにとりもそんなものは脇へ放り出す。

「こわいよー!! これ、こわいのー!!」

 ルーミアは日常を暗闇の中で過ごす。だが、そんな彼女であっても、自分の視界を支配する完全な黒を前に錯乱してしまっていた。それこそがダーカーザンブラック。黒よりもなお暗い黒。闇に慣れすぎていたことが、逆にルーミアのパニックを加速させていた。
 何も見ることが出来ない状態、そしてその本人の姿も見えない状態で動いてしまえば、その位置を把握できる者は誰もいない。案の定、にとりががむしゃらに探してみても、パワードスーツを着込んだルーミアを発見することは出来なかった。金属音は鳴り続ける。

「ルーミア! スイッチを切れ! 切るんだ!」

 にとりの必死な訴えも、ルーミアには届かない。焦る自分を押さえつけ、にとりが辿りついた解決策はある言葉を実践すること。

「見るんじゃない、感じるんだ」

それは一種の根性論であった。だが、根性論であっても策は策。にとりは精神を集中していく。

「ふぅ……」

 がちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょんがちょん。

「やかましい!!」

 悪態をついても音は鳴り止まない。にとりは仕方がないと思い直して、再度精神の集中を試みた。

「……」

 さすがは科学者の端くれ。一度始めてしまえば、その集中力には眼を見張るものがあった。絶えず鳴る金属音を物ともせず、にとりは感覚を研ぎ澄ませていく。

「……今、助ける」

 がちょん。右。がちょん。正面。がちょん。左。もう見なくてもその位置が手に取るように分かる。あとはタイミングを合わせるだけだ。慎重にその時を待つ。


 河城にとりは人見知りである。今日会ったばかりのルーミアと打ち解けたのは、彼女にしてみれば奇跡にも近い出来事だった。
 だから、今日できたばかりの友人を、にとりは見捨てることなんてできなかった。その友人との明日を守ることに全力だった。ルーミアを失うなんて、もう考えられなかった。


 そして、―――その時が来る。


「そこだぁぁぁあああ!!」

 狩人の如く鋭敏になったにとりの聴覚が捉えたのは、ぼっとん、という何かが川に落ちた音だった。








 くたびれた白衣を服の上から羽織った永琳は、手元のカルテを見やり、回転椅子を鳴らして正面に向き直る。そこから繰り出された足を組みかえるという動作は蠱惑的といってもいいほど妖艶で、男なら「ありがとぉごぜえますだ! ありがとぉごぜえますだ!」と喜んで財布を差し出すほどのものであったが、残念ながらルーミアは話すことに夢中で気づかない。

「それで……私のところに?」
「うん。永遠亭の薬師は天才だと聞いたから」

 カルテには読めるか読めないか絶妙の具合で「そらがみたい」という文字が踊っていた(ダンスの意味で)。永琳は静かに考えていたが、一つ頷くとそれにボールペンを走らせる。書き込まれた文字は「承諾」。

「そこまで言うなら、やってみましょうか」
「ありがとー!」

 大げさに振られる自分の片手を見て、永琳は頬をかいた。





「太陽光と一括りにいってしまっているけれど、その光は大まかに三つに分類できるわ。一般的に『光』と呼ばれる可視光線。それから、目に見えない赤外線と紫外線。まずは、貴方の身体が何に対して反応しているのかを調べる必要があるわね」
「へー、そーなのかー?」

 分かったような、分かってないような返事を返すルーミアを余所に、永琳が三本のペンライトを取り出した。

「これは私の予想だけど、おそらく紫外線、もしくは三種の光の混合が原因だと思うわ。可視光、赤外線なんかで死に目を見るのなら、今まで生きてこれないでしょうし」
「そ、そーなのかー」
「そうなのよ。それじゃあ、試してみるから腕のところを捲くってくれる?」
「……い、痛くない?」
「場合によっては痛みを伴なうけれど、どれも弱い光だから虫に刺された程度で済むと思うわ」

 念を押してくる潤んだ目に、永琳は里の子供たちの予防接種を思い浮かべた。

 まずは可視光、赤外線のそれぞれ一本ずつ。差し出された腕の肌の白さを羨ましく思いながら、両方とも手早く済ませる。やはり、異常は見られない。残った一本のボタンに指を添え、ほとんど瞬きせず見守る少女に目を細めた。

「いくわ」
「……うん」

 意を決してカチッと押し込む。しかし、変化は起きなかった。残るは混合光のみである。

「ね、ねえ、もうやらなくてもいい?」
「そうねえ……」
「痛いの嫌だよぅ……」

 身を竦ませて、明らかに怯えている様子のルーミア。それをじっと見つめた永琳は。それをしげしげと眺めた永遠亭薬師は。それに熱い視線を注いだ、先生と慕われるその麗人は。


 ―――――ゆっくりと、唇を舐めた。


「是非、やりましょう!!」
「なんで!?」

 抗議の声も、もはや永琳は聞いていなかった。逃れようとするその腕を左手で捕らえ、荒くなった息遣いを抑えようともせず、ペンライトの内一本を口に咥えた。残りの二本を器用に右手で構える。

「うふ、うふふふふふふふふふ」
「やあ! やだやだやだ!! やなのー!!」

 悲鳴は甘美な声。永琳を楽しませるエッセンスでしかなかった。既に光を放っている口の一本を、ルーミアの腕に照準を合わせ、右手の赤外線と紫外線の二本もそこに重なるようにボタンを押した。サディスティックな笑みを浮かべたその姿は、その筋の人ならば「ありがとぉごぜえますだ! ありがとぉごぜえますだ!」と(以下略

「熱い! やめて!! やめて、あつ……熱くない?」
「……う?」
「熱くないよ?」
「ヴぇ!? ヴぉんなごほっおぇっ……そんなばかな!?」

 うっかりペンライトを喉で愛撫しそうに永琳が、口の端から垂れた唾液を拭いながら驚きの声を上げた。

「ほんとだよ?」
「な、なら、これとこれはどうなの!?」

 今度は赤外線と紫外線の二本でルーミアの腕を照らす。何も起きない。永琳は追い詰められたかのように、床に落ちていた可視光のライトを拾い上げ―――。


 愕然とした。ただ愕然とするしかなかった。
 全ての組み合わせを試してみても、ルーミアの肌が焼けることはなかったのだ。








「ごめんなさい。私は貴方の力になれないわ」
「そーなのかー」

 肩を落とす永琳とは裏腹に、ルーミアはのんきな様子。永琳が落胆しているのは、何も先ほどのことだけが原因ではない。一人の学者としての欲求を我慢しなければならないからだ。
 ルーミアという妖怪を研究してみたかった。無垢な少女の純潔な身体を徹底的に舐り回し(性的な意味ではない)、そのことごとくを弄り倒したかった(もちろん性的な意味ではない)。

「私にもっと時間があれば良かったのだけど。いいえ、いっそのことあのメイドみたく、時間を止められれば良かったのよ」

 だが、永琳は永遠亭の薬師だ。通常の業務がある。一つのことにかまけている時間はなかった。そう思い、泣く泣く断念しようとしていた。少なくとも、この時まではそう思っていた。

「なんだー。天才ってあんまり他のやつと変わらないなー」

 ルーミアがそう告げるまでは、思っていたのだ。

「……なんですって」

 「承諾」という文字の脇に「不履行」と書き込んでいたボールペン。それが真ん中からバキッと折れた。

「ん? だから、天才って」
「うふふ、うふふふ。ふふふ、あは、あひゃ! ひひひははははは!!」

 ルーミアが言い終える前に響き渡ったけたたましい哄笑は、艶のあったものとは異質で、常人ならば光の速さで土下座をかましてしまうぐらいの迫力を備えていた。

「……んー? どうしたの?」

 しかしながら、永琳の学者としての心に火を付けただけでは飽き足らず、片っ端から燃えそうなものを投げ込んだ末、最後には油までもを注ぎ込んだ張本人は、目の前で轟々と燃える炎に全くもって気づかない。

「ふふふ、そうね。私が間違っていたわ。時間がなかったら、寝なければいいのよね。さすが天才の私。こんなこと、凡人だったら思いつきもしないでしょう」
「そーなのかー?」
「そうよ。そうに決まってるわ。ごめんなさい、さっきの言葉を撤回させて。青空が見たいのでしょう? いいわ、見せてあげる」
「ほんと!? ありがとー!!」
「うふふ、私に任せておきなさい」
 
 変わらず邪気のない感謝に返された微笑みは、夜空に浮かぶ三日月によく似ていた。




 走り出した天才は、もう誰にも止められない。







 その薬師の弟子、曰く。
『師匠ったら、毎日あの娘とお風呂に入るんですよ!! べ、別に羨ましくなんてありません!!』

 ウサギたちの長、曰く。
『いや、あの薬師もやるねぇ。なんてったっけ? そう、ルーミア。そのルーミアを裸にしてさ、なんか薬みたいの塗ってたよ。あれが俗に言う、ローショ(そこまでよ!!』



 一週間と三日。つまりは十日。わき目も振らずに走り続けた天才は、好物から身体にあるホクロの数、果ては首のところを掻いてやると猫みたいに力が抜けてしまうことまでも、ルーミアに関連するありとあらゆる事柄を調べて、記して、暴き尽くした。出来上がったそれは、間違いなく素晴らしい研究成果であった。

「はにゃー……」
「ふはは! これぞ天才の力! 思い知るがいいわ!!」
「く、くすぐった……やめはにゃー……」
「ふふ。さて、次はどうやって貴方を可愛が…………って違うわ!!」

 見てもらえただろうか。やはり、ノリツッコミであっても天才は一味違う。まずは乗っかるという動作にしてもどこか知性に満ち溢れていて、さらにはその三点リーダ四つ分の絶妙な間。流れるような突込みへの移行。歴代のお笑い芸人たちが感嘆を漏らす、次世代を担うようなノリツッコミであった。

「違う違う違うわ!! この子に青空を見せなくてはならないのに!!」

 ルーミアが太陽光に焼かれる理由だが、未だ解明されていない。身体データを取ってみても平凡な記録を残すだけ。次々に施した実験でも芳しい結果は得られなかった。しかし、それは些細なことである。ルーミアは可愛い。この研究成果はそれを如実に表しているではないか。それだけで永琳の知的好奇心は満たされると思ったが、そんなことはなかったぜ。

「必ず!! 必ず、一週間後には!!」
「なんだー。まだ一週間もかかはにゃー……」





 走り出してしまった天才は、そう簡単には止まれない。









「雲も少なく、星がよく見える。……いい夜ね」

 宣言どおり、ちょうど一週間後の夜。月明かりが照らす下、なにやらいかつい設備に囲まれた永琳とルーミアの姿があった。

「貴方は今宵、奇跡を目の当たりにするの。心の準備はいいかしら?」
「……うん」

 永琳が唱えた方法は実に大胆なものだった。太陽を造ってしまおうというのだ。

 その永琳が現在操作している装置。彼女はこれを完成させるため、三日三晩一睡もせずに設計図を書き上げ、間の一日を睡眠に当て、さらに残りの三日を不眠で製作に奔走するという非人道的なメニューをこなしていた。

「エネルギー重点開始!」

 製作に一役買ったのが、灼熱地獄跡地に住む霊烏路空という地獄烏だ。
 その地獄烏は太陽の化身である八咫烏をその身に取り込んだらしい。話を聞いた永琳がお空を買収するまでの手際は、あの因幡てゐでさえも賞賛した。ちなみに、その代金は駄菓子屋でのお菓子食べ放題である。特にヨーグルがお気に入りな様子だった。

 お空の協力を得て開発された「八意式人工太陽製造機」。その性能は、単純に太陽を造るというものではない。本物と同様の太陽を造ったとしても、それはきっとルーミアの身を焼いてしまうだろう。それでは何の意味もない。永琳が提案したのは、「可視光のみを放つ太陽」を造ることだった。

「……六十、八十。これでこちらの準備も完了」

 太陽の光が何故、ルーミアに影響を及ぼすのか。それは定かではないが、いわゆる光である可視光のみならば、何の影響も出ないことは既に実証済みである。「八意式人工太陽製造機」はそんな太陽を造りだし、空高くまで打ち上げる。さすがに本家の太陽ほどの光の量は再現できなかったが、直接空を照らすのでそこまでの量は必要ない。そもそも、そんなものを造りだしてしまったら、幻想郷は地獄の火炎に包まれてしまうだろう。

「……見られるの?」
「えぇ、もちろん」
「青空……見られるの?」
「えぇ、絶対に」

 永琳が電子パネルを操作すると、途端に轟音が鳴り出した。装置に取り付けられた「製造中」のランプが点灯する。音に驚いた鳥たちが木々を飛び立っていった。音が止むと、ぽおんと軽い音とともにランプは「製造完了」へ。

「カウントダウンへ入るわ。……五、……四」

ルーミアは今、力を使っていない。月光が照らし出したのは期待と不安が入り混じった表情。それでもその眼差しは、決して夜空から外さなかった。

「三、……二、……」

 永琳の目線は装置の大筒へ向かっていた。その先から人工太陽が発射される予定だ。

 見ているものは違えど、二人が願うことは同じ。どうか、成功しますように。どうか、青空が見えますように。

「一、……ゼロ。……人工太陽、発射!!」

 地を揺らす爆発音。それは、大筒がその砲身から人工太陽を撃ちだした音だ。放たれた白い光が辺りを包み込む。

 永琳が瞑った瞼を再び開くと、そこに広がっていたのは正に白昼の光景。時刻はまだまだ夜更けだというのに、それはさんさんと世界を照らしていた。大きくガッツポーズをして、喜びを表現する。

 人工太陽の製造は、完全無欠に成功だった。

 参ってしまったのは、幻想郷の住民たちである。ある者は快眠から叩き起こされ、ある者は突然の太陽の出現に絶句し、夜の散歩中だった吸血鬼は動揺して泣きべそを掻き、付き添いのメイドはここぞとばかりにそれを抱きしめ、博麗の巫女はぐっすりと眠っていた。

 騒動の当事者である永琳は浮かれる自分に気づき、一つ咳払いをする。

「どう? 天才に掛かればこの程度容易いものよ」

 心の中ではバック宙から歓喜の舞まで披露していても、あくまで平静を装った。ここが決め所だと確信していた。天才とはそんなことだってお見通しなのである。

「また、何か困ったことがあったら私のとこ……ろ……に……」

 だが、振り返り、立ち尽くす。

「……どうして」

 零れ出たのは、問いかけ。

 咄嗟の行動だったのだろう。黒い球体はいつもより小さく、薄い。そのため、外からでも中の様子が透けて見えた。

 問いかけは、意識を失った少女に対するものだったのか。それとも、この計画を打ちだした自分へ対するものだったのか。本人さえも分からない。










 「人工太陽製造計画」と題された計画書を力任せに破り捨てる。どんなに細かくちぎっても気分は晴れなかった。頭をがりがりと掻き毟って、永琳は机に突っ伏す。

 『光』のみを放つ人工太陽。それは、ルーミアの全身に火傷を負わせた。『光』が無害であることは実証済みであったのにもかかわらず、だ。
 幸い、永琳の迅速な処置もあって、ルーミアは一命を取り留め、数日の入院の後に退院していった。だが、永遠亭からその姿がなくなった今でも、研究は続けられている。

「何故、太陽に反応するのか。それさえ分かれば……」

 結局、最後には同じ壁にぶち当たる。先日の結果は自身の力を過信した故の報いだろう。礼を述べたルーミアの顔を思い出して、永琳の胸はずきずきと痛んだ。

「あぁー……もう!!」

 苛立ちの声と共に顔を上げると、窓からは月が見えた。綺麗な円形の満月が、本来なら暗闇であるはずの夜をほのかに照らしだす。

「満月が太陽くらい明るければねぇ……」

 あの子もきっと空を見れたはずなのに。そんなことを考えて、永琳は思わず笑ってしまった。その浪漫主義的な、らしくない考え方を嘲るように笑った。
 一頻り笑った後で、自分らしい考え方をしようと思い立ち、手始めにさきほどの考えを訂正していくことにした。

「『満月はこれ以上明るくならない』……ふふふ」

 ようやく自分らしい。そう、リアリストとはこうでなくてはならない。調子が出てきたようなので、もう少し捕捉することにした。

「『満月はこれ以上明るくならない。もし、明るくなったとしても、ルーミアは空を見ることなんて出来ないでしょう。何故ならば、月というものは――――』」

 永琳の目が、驚愕に見開かれる。弾かれたように空を見上げ、満月を食い入るように見つめた。

「師匠ぉー。お客様がみえています。……師匠ぉー?」

 弟子の呼びかけに、返事をしている暇はなかった。










 睡魔に負け、適当な木の幹に背を預けた。闇を操ろうとして、ふと、それを止める。身を起こして周りを見渡し、見晴らしの良い位置に座りなおした。

 私の空の色は、黒。
 私を照らすのは、月光。
 夜空が嫌いなわけではない。むしろ、自由に飛びまわれるその空が、私はとても好きだ。

 だけど、私は見てしまったのだ。
 頭が真っ白になるような激痛で、叫びさえ飲み込んだあの日。憎たらしいしか思っていなかった太陽が照らしだす空を、私は見てしまったのだ。

 爛れた眼球の再生を待つ間、何度それを夢想したことか。傷が癒えたあとも、心に刻まれたその光景は私を行動させる原動力となった。

 魔法使いに会った。
 巫女に会った。
 一緒にいた別の巫女とも話した。
 巫女に言われて吸血鬼に会った。
 川を流れて河童と友達になった。
 空を飛んでいたら鴉天狗とぶつかった。痛かった。
 お詫びに教えてもらった薬師に会った。可愛がられた。くすぐったかった。

 いろいろな所へ行った。いろいろな種族に会った。そして、私は。

 私は、闇と共に生きる日々に戻った。
 結局青空を見ることは叶わなかったが、悲しいとは思わなかった。友達も増えたし、何よりも自分のために動いてくれたことが嬉しかった。ただ、結果としてそれらを裏切ったことを申し訳なく思った。

 寄りかかった木にコツンと頭の後ろを当てると、いつもの空が見えた。星が光り、月の浮かぶ夜空が見えた。

 本当の願いは、青い空を飛び回ること。でも、それを願うのは欲張り過ぎだと思った。語るときには、「見たい」とした。それだけでも私は満足だったから。ところが、それすらも文字通りの絵空事だった。


 だから、私は―――――あの日を繰り返そうと思う。


 苦痛を想起して震えだす身体を、両腕で抱いて押さえつける。深呼吸を何度したって、心臓は狂ったように鳴り続けた。気持ちだけやせ我慢してみても、身体は正直だ。怖い。怖くて怖くて堪らない。
 薬師に手当てを頼むことを考えた。実験の失敗で火傷を負った私を介抱してくれたからだ。でも、私の身体に薬を塗るときの悲痛な表情を思い出してやめた。私のわがままであんな顔をさせるわけにはいかない。

「……青」

 自分に言い聞かせるように呟く。

「空の、……青」

 夜が明けるのではないかと思うほど長く感じられた時間を置いて、ようやく静かになった身体と心臓。肺にたまっていた空気を吐き出して、新しいものを吸い込む。十分に落ち着いたのを確認して、私は瞼を落とした。











 バン。バンバン。パラパラパラ。

「……ん」

 どこかで何かが弾けるような音がした。

 バン。バンバン。

「……んー?」

 寝ぼけ眼を擦りつつ、音がした方向へ顔を向けた。ぼやけていたものが、だんだんと鮮明になっていく。

 目の前に広がっていた光景は、とても美しかった。美しすぎて、見蕩れてしまった。

「え?」

 思考が止まる。自分の身体に視線を走らせた。何も、変化はない。無意識にほっぺたをつねっていた。

「……いだい」

 それだけでは信用ならなかったので、振り返って寝床にしていた木に頭突きをしてみた。

「……いたい」

 もう一度、振り返って確かめる。明瞭になった頭と視界で、それを見極める。



 青空が、広がっていた。









 月は光を放ってなどいない。ならば、何故それは夜空で光り輝き、地上を照らすのか。
 それは、太陽の光が月に反射しているからだ。月の光というものは、もともと太陽の光なのである。

 だが、ルーミアは月の光に身体を焼かれることはなかった。

 これらが示していることに、八意永琳は気が付いた。だから、天才は再び走り出した。
 打ち出された計画は、幻想郷を巻き込むだけでなく、そこに住む住人たちの協力を必要とするものだった。

 天才は走った。今度は、住人たちの助力を得るために物理的に走った。

 買収し直した霊烏路空。以前の実験を見て、自ら永遠亭へ訪れた河城にとり。それから、診療の際にルーミアが会ってきたと話した者たちの協力を得て、永琳の計画は始動した。

 その計画とは、幻想郷全土をあげての祭りを開催し、そこで花火を打ち上げるというものだった。もちろん、ただの花火ではない。それは、「人工太陽製造機」の技術を応用したもので、いわば「弾ける人工太陽」であった。


 博麗神社と守矢神社の信仰。
『私の信仰力は53万です』
『……後で少し分けてくれない?』

 魔法使いと鴉天狗の機動力、情報発信力。
『私は、祭りが好きだから手伝うんだぜ?』
『独占ッッッ! ウチのッッッッ!! 独占ッッッッッ!!!』

 地獄烏の究極のエネルギー。
『美味! ヨーグル美味!!』

 紅魔館にて研究されていたロケット技術。
『日傘では駄目だったの? ……しょうがないわねえ』

 そして、月の頭脳と河童の科学力。

「やった!!」
「えぇ、やったわ」

 両者の挙げた手のひらが打ち合わされて、快音が鳴った。


 結集した力は、幻想郷史上最大の祭典のために。
 祭典の名は「青空祭」。各地で打ち上げられた花火、「ブルー」が世界の暗闇を眩く照らす。

「でも、あの光って前のと一緒なんでしょ?」

 地べたに広げられた敷物の上に腰を下ろした輝夜が、疑問の声を上げた。片手に載った漆の盃には、並々と日本酒が注がれている。

「そうよ。『ブルー』は人工太陽の応用型。生産コストを大幅に削減して、消耗品に仕上げたわ」
「ついでに、私の技術をフルに使って生産速度を飛躍的に向上、各地にばら撒くための大量生産だね」
「それじゃあ、また失敗しちゃうんじゃない?」
「輝夜はあれを見て、なんだと思う?」
「え? ……花火でしょ?」
「そういうことなのよ」
「そういうことって……どういうこと?」
「難しく考えすぎていたってこと。私はルーミアを科学の枠内に当てはめて考えていたけれど、それがそもそもの間違い。妖怪ってものは理論では語れないわ」
「……つまり?」
「ルーミアの身体が反応していたのは『太陽の光』ではなく、『太陽』そのものだったのよ」
「ふーん」

 輝夜は興味なさそうに言って、盃の中身を飲み干した。

 太陽とは、何なのか。
 科学的な見地から見て同様なら、それは太陽なのか。
 外見が瓜二つなら、それは太陽なのか。
 及ぼす影響が同じなら、それは太陽なのか。
 それらが成立する場合もあるだろうが、今回に限っていってしまえば、違う。

 ルーミアが天敵とした『太陽』とは、万人がそれを『太陽』と認識できる時点で概念として成り立っていた。

 月明かりの下、真剣に夜空を見つめるその姿を思い出し、全てを理解した永琳は「ブルー」を造りだした。それの中身が人工太陽であろうと、見るもの全員がそれを『花火』であると認識するように。
 実際、輝夜は言ったではないか。『花火でしょ?』と、逆に問いかけさえしたではないか。それは青空祭の目的が達成されたことを意味していた。

「自分から訊いておいて、その返事?」
「怒った?」
「怒ってはいないけれど……なぁに、焼きもち?」
「んー……そうかも」

 事も無げに返して微笑んだ輝夜に、永琳は苦笑する。靴を脱いでからその隣に座った。

「おい! あれだ! あれを見ろ!!」

 にとりが青い空を指差す。その先を見て緊張の糸が切れたのか、永琳を急激な睡魔が襲った。

「輝夜、膝を貸してくれない?」
「嫌よ」
「……断られるとは思わなかったわ」
「駄目に決まってるじゃない。だって―――」

 どこからか聞こえる太鼓の音、笛の音。花火の音はまだ止まない。負けじとかき鳴らされるのは、騒霊たちの軽快な演奏。どっと笑い声がして、それに呼応するように周囲のウサギたちが歌いだした。

「―――もったいないわ」

 そうだ。眠ってしまうなんてもったいない。

 だって、宴は始まったばかりなのだから。








 地面に突き立てられたパラソルの下、テーブルを挟んでティータイムを楽しむ吸血鬼の姉妹。傍らには直立不動のメイド。

 珍しく外出に誘われた妹は何か裏があるのではないかと疑い、緊張した面持ちでティーカップに手を付けようともしなかった。けれど、花火の音が鳴ってからは顔を斜め上に向けたまま、惚けたように動かない。
 打って変わって優雅に空を見つめていた姉の視線が、何かを見つけたように止まる。その口元が少しだけ緩んだ。

「咲夜。お酒が飲みたいわ」
「はい、お嬢様」

 すっかり冷めてしまった妹のほうの紅茶を淹れ直してから、メイドはトランクからワインのボトルとグラスを取り出す。

「グラスは二つね」
「……妹様はアルコールを飲まれるんでしたっけ?」
「あら、飲むのは貴方よ?」

 遠慮するのを半ば強引に押し切ると、諦めたように頷いた。お互いのグラスを交わして一口含む。咲夜がひとまずグラスを置くと、レミリアは自分のそれに感情のない瞳を向けていた。

「青空に月なんて……見るものが見たら滑稽なのかもしれないわね。結局、水と油のように、私たちと日の光とは交わることなんてできない」
「でも……それは……」

 咲夜は何か言おうとして、何も言えず、押し黙る。自分は人間で、それをどうすることもできないから。

「そうねえ……でも、まぁ……」

 無表情でグラスを回していたレミリアが、紅茶には目もくれない妹を見て。先ほどと同じ方の空を眺めて。最後に、咲夜へ向き直る。
 その表情を見て、また一つ、咲夜の仕える理由が増えた。


「幸せそうだからいいんじゃない?」



 無数の照明に照らしだされた広くて青い舞台では、小さな影が一つ、祭囃子に合わせて揺れていた。




 
 
 お疲れ様でした。まずはここまで読んでいただいたことに感謝を。


 多いですね。登場キャラ多いですね。すっごく神経使います。一言しかなかったり、話さなかったりしますが、できるだけキャラの色が伝わるようにと心掛けました。

 誰かを助けたいという気持ちは誰にだってあるはずです。だけど、そこに世間体やら、労力やら、金銭やら、なにやら、しがらみが折り重なって助けないという選択肢を選ばせるんだと自分は考えています。なぁにを語ってんだ。おっぱい。


 少しでも楽しんでいただけましたら、書いた人がもんどりうって倒れます。
フリーダム鈴木
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コメント



0.2240簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
存分にもんどりうってもらいましょうか
5.100名前が無い程度の能力削除
MDU!MDU!
9.90名前が無い程度の能力削除
すげぇジーンと来た。
10.100名前が無い程度の能力削除
なんか昔を思い出した。いい作品です。
17.100名前が無い程度の能力削除
まずはもんどりうってください。話はそれからです。

演劇に近い、いいお話でした。緩急がついていて読んでいて退屈することもありませんでしたし、各キャラも特徴が出ていて生き生きしていました。
20.100名前が無い程度の能力削除
こんなお話、大好きです!
できれば150点とか入れたいくらい。

月の浮かぶ青い空を楽しげに飛び回る小さな影。
そんな視覚的イメージが鮮やかに想起される、美しいお話でした。

永琳、レミリア、にとり、それぞれとても味のある肉付けがなされていてすごく魅力的でした。
23.90名前が無い程度の能力削除
これは存分にもんどりうっていただきたい。
キャラそれぞれが活き活きしていて情景が良く浮かびます。いい作品に会えました。
27.100名前が無い程度の能力削除
感動した
言葉に出来ない
おっぱい
29.80名前が無い程度の能力削除
よし、もんどりうとうか、倒れよか
30.100名前が無い程度の能力削除
もんどりうってもらいましょう。
39.100山納豆削除
とても心暖まるお話でした。
もんどりうって生きていきましょう。
40.100名前が無い程度の能力削除
ひとしきりもんどりうったら次作を書いて頂きましょうか
41.90名前が無い程度の能力削除
ルーミアが特にいい感じ
にとりの所でワロタw
42.100名前が無い程度の能力削除
こういう終わり方はため息がでるくらい好きなんですよもう本当に
とりあえず作者はもんどりおっぱい
43.100ずわいがに削除
はっちゃけたギャグかと思いきや(いや、確かにそういう場面もあったけどww)とんでもなく良い話じゃありませんか!?
妖怪ならではの『概念』による弱点、非常に面白い発想でした。
たしかに精神によるところの妖怪では太陽と認識してしまった時点でダメなのかもしれませんね。
しかしそれを太陽とは認識出来ない、かつ明るく空を照らすものとして花火にするなんて素敵じゃないですか。面白かったです!
45.100名前が無い程度の能力削除
胡散臭い人物がガチで誰かの為に尽力する姿は感動できますね
これだけ爽やかな話は滅多に無いです
51.100名前が無い程度の能力削除
100点じゃ足りない、500点を入れたい気分。
初めは「吸血鬼でもないのに日光で火傷?」とも思いましたが、なるほど概念状の「太陽」に弱いということなのですね。素晴らしいお話でした。
57.100名前が(ry削除
一人の少女の願いを叶えるために動いたえーりんに心打たれました!こういうSS見てるとなんか癒されるな。