Coolier - 新生・東方創想話

二人のための日

2010/02/11 21:03:59
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二月十四日、朝。
目を開けると幽香の顔があった。
夢だと思ったので抱き寄せてキスをしてしまった。

目が覚めてから激しく後悔。




「おはようのキスを、と思ったけど。まさかアリスの方からしてくれるなんてねぇ。
 顔真っ赤よ?」
枕を抱いて顔を隠す。穴があったら入りたい。
恥ずかしくて幽香の顔が見れないし…。
「何しに来たのよ」
「いちゃいちゃしに」
即答ですか。
デートプランを練っても無駄だろうとは思ってたけど、まさか朝一でやってくるなんて。
まだ心の準備が出来てないじゃない。
時間を稼いで体勢を立て直さないと。
「鍵かけてたと思うんだけど」
「軽く捻ったら開いたわよ?」
「・・・。壊したわね」
「悪気は無かったのよ」
いけしゃあしゃあとまあ。
後で河童にでも修理を頼むとして、今日のとこは魔法で封鎖しておこう。
人払いの魔法をかけるつもりだったし、ちょうどよかったかもしれないわね。
「身だしなみ整えるから、少し待っててくれる?その後で朝食にでもしましょうか」
「可愛いからそのままの格好でもいいわよ」
今の格好はと言うと、フリル付きのピンクのネグリジェとスリッパを着けている。
可愛いと言ってくれたのは嬉しいけど、流石にこのままでは締まらない。
着替えないと一日が始まった気がしないし。
「やっぱり着替えてくるわ。そんなに時間はかからないから」




上海に手伝わせて身だしなみを整えてから、朝食の支度に取り掛かる。
二人分のクロックマダムとシーザーサラダを作って、紅茶とレモン水を用意する。
それを向日葵の刺繍入りのテーブルクロスの上に並べて出来上がり。
朝食ならこれくらいで十分だろう。
エプロンを外して、髪を結わえていたゴムを取る。
手を合わせていただきます。
朝食の準備をしてる間中ずっと幽香の視線を感じてたけど、どこか変だったかしら?
笑顔の感じからすると、悪意はなさそうだけど。変なの。




「いつ家に来たの?」
「あなたが起きる一時間ほど前かしら」
「そんな早く来て何してたのよ」
「アリスの寝顔を見てたわ。普段のすまし顔とは全然違って、無防備で可愛いかったわよ。
 そのまま襲っちゃおうかと思ったくらい」
「家に来るのは私が起きてるときにしてよね。そうやって忍び込まれるんじゃ安眠できないじゃない」
次からは勝手に入れないように結界でも作ろうかしら。
それか上海にバリケードを作ってもらうか。対魔理沙用にもなるし、後で考えておこう。
「アリスの寝顔が見たくなったら泊まってくことにするわ。
 特別に腕枕でも膝枕でも、お好きなのをしてあげる」
幽香はにこやかにそうのたまってくる。どっちにしても幽香が得するんじゃないの。
そうやって宣言されるのも何となく嫌だけど、断ってもどうせ不法侵入されるんだろうし。
少し甘えちゃおうかしら。
「考えておく」
「夜までには返事聞かせてねー♪」
・・・。
いやまあ、いいけどね。
腕枕と膝枕、どっちにしようかしら。







「何よその手は」
「分かってるくせに焦らさないの」
朝食を済ませてしばらく大人しくしてたかと思うと、唐突に手を目の前に突き出してきた。
少し拗ねたように頬を膨らませているあたり、私が言い出すのをずっと待っていたのかもしれない。
寝起きドッキリをされたお返しに、ちょっといじわるしてあげよう。
「チョコはないわよ」
「キッチンにチョコの材料はあったわよね?」
何で確認してるのよ。
食事の準備は全部私任せにしてキッチンに寄り付かないくせに。
「プレゼントが待てない子供じゃないんだから」
「好きな人からのプレゼントは少しでも早く貰いたいじゃない」
普段強気なくせに時々妙に乙女チックになる。たまにしか見せないその表情が凄く可愛い。
もうちょっと遊んでいたいけど、焦らすのはそろそろやめにしておこう。
加減を間違えると暴君に早代わりしてしまうのだから。
「急がないの、これから作るのよ。好きな人には、出来立ての一番美味しいのを食べてもらいたいもの」
「楽しみにしてるわ。とびきり美味しいのを作ってね」
抱きついて頬にキスしてきたかと思うと、上海を抱きしめてソファーに飛び込む幽香。
素直すぎる感情表現に戸惑う事も多いけど、あんなに喜んでもらえるならこっちも作り甲斐がある。
いろんな意味でお姫様なのよね、ほんと。
慣れたとは思ったけど、不意打ちは止めて欲しいわね。
まだ心臓がバクバクしてるじゃないの…。




ー少女調理中ー





「出来たわよー」
「待ちかねたわ」
私がお菓子を作っている間、幽香は上海と遊んでいたようだ。
いつの間にか上海が三つ編みのおさげになっている。中々似合うわね。
というより、幽香って案外器用なのね。今度裁縫を手伝ってもらおうかしら。
「フォンダンショコラよ。温かいうちに食べてね」
「いただきます」
待ちわびていたのか、チョコ菓子を前に目を輝かせている。
焼き加減が難しいお菓子だからオーブンに入れてからも目が離せなくて、相手できなくて申し訳なかったけど。
喜んでもらえるかしら?


喜ぶ顔が見たくて見つめていたけど、幽香は一向に手を動かす気配が無い。
作り立てを食べて欲しいんだけど。
チョコが気に入らないんじゃなくて、これはきっと…。
「あーん」
やると思ってたけどね。
幽香は口をあけて食べさせてくれるのを待っている。
いつもこういう無邪気な悪戯をして、私を困らせて楽しんでるんだから。
いつもなら誤魔化して断るとこだけど、今日は特別な日だからあなたに付き合ってあげるわ。
折角作ったんだし、楽しく食べて欲しいもの。
ただし、いつもやられてばかりじゃないわよ。

作っておいた生チョコを口に咥え、幽香の口まで運ぶ。
幽香の口の中にチョコを落とし、軽くキスを一つ。

「美味しい?」
仕上げに至近距離でにっこりと微笑んでみる。
効果抜群。(こっちも相当恥ずかしかったけど。)
幽香は驚きすぎてしばらく動きが止まってたけど、チョコを飲み込んで顔を真っ赤にしている。
いつもはあんなだけど、攻められると案外弱いのよね。
今日は私がいっぱい虐めてあげるんだから。
恥ずかしさで逃げ出そうとする幽香を軽く抑えつけ、席に座らせる。
「幽香に喜んで欲しくて作ったんだから、出来立ての温かいうちに食べてね」
笑顔で縛りつけ、フォンダンショコラを適当な大きさに切って幽香の口まで運ぶ。
自分で言い出したからか、恥ずかしがってもちゃんと食べてくれた。
一回やったらもういいって断られちゃったけど。


幽香はその後も顔を真っ赤にしたまま俯いてもくもくと食べていた。
正直、ここまで効果があるとは思わなかったけど。
こうやってからかって遊ぶのも楽しいわね。
幽香の気持ちが少しだけ分かった気がする。






「美味しかったわ」
「本当?」
「嘘ついてどうするのよ」
「動揺して味なんて分からなくなってないか心配だったのよ」
「そう思うならまた作ってくれればいいわ」
「そうね。幽香の笑顔が見たくなったらまた作るわ」
あ、また恥ずかしがって顔を逸らした。
まだ普段の調子が戻ってないみたい。もう少し遊べそうね。
「今日は随分積極的ね。何か心変わりでもあったの?」
「今日はそういうイベントだもの。年に一度くらいそういう日があってもいいじゃない」
「年に一度にしてよね」
「それはどうかしら」
「随分意地悪になったのね」
「それはきっと幽香の影響ね」
「ほんとに意地悪ねえ」
紅茶を飲んで小休止。
普段のお返しはこのくらいで十分ね。



「アリスから愛情たっぷりのチョコを貰ったことだし、私もお礼をしないとね」
「何か作ってきたの?」
少し驚かされた。
またいつもみたく好き勝手荒らして帰っていくとばかり思ってたのに。
何か持ってきたようには見えなかったけど。
幽香は立ち上がり、手を一つ叩き芝居がかった動作で一回り。
「花の妖怪の魔法をご覧あれ」
幽香が手を振ると、見る間に家が赤いバラで覆われていく。
壁や天井はおろか、床まで赤い絨毯をひいたようにバラの花びらが舞っている。
瞬く間に視界が赤と緑で埋め尽くされ、部屋が芳潤な香りで満たされる。


「あなたと出会ってからの幸せな日々と同じ数のバラをプレゼントするわ。
 数が多くても気にしないでね。それだけ幸せ一杯ってことよ」


にこやかに、自慢げに微笑んでいる幽香。
バラのプレゼント以上に、その鮮やかな笑顔に釘付けになる。
そして、
思わず抱きついてしまった。


「それとこれよ」
幽香は大事そうに、何かの乗ったお皿をテーブルに置く。
幽香を抱きしめたまま、そのプレゼントを確かめる。
それは白いルギャールのお皿と、たくさんの色とりどりの小ぶりなバラの花。
艶のあるこの小さなバラはミニローズ? …いや、これは。
「幽香、これって」
「そ、私が作ったのよ」


飴を練って花を造る業があるのは知っていた。
でもそれは高温の飴を扱うため、慣れてないと火傷してしまう。
それに、ちゃんと造れるようになるまで相当な練習が必要なはずだ。
幽香が普段からこういうことをしているとは思えないし。
飴細工のバラを見ると、そのどれもが完成度が高く本物と見紛えるほど。
それをこれだけの数作るなんて。
「幽香、手は大丈夫なの?」
「正直まだひりひりするわね」
「…馬鹿」
「アリスのために、自分の手で形の残るものを作りたかったのよ。
 喜んでもらえた?」
幽香をぎゅっと強く抱きしめる。
「ええ、これ以上ないくらい」
素敵な花のお返しに、

    これ以上ないくらいの素敵な笑顔で応えてやる。

今日くらいは主導権を握りたかったけど、やっぱり幽香には敵わないみたい。
これからもよろしくね。大好きよ、幽香。
たまにはアリスさんも牙を剥く。でもやっぱり幽香さんには敵わないのでした。
幽香さんは普段イケイケで攻めるけど、攻められると案外脆かったり。不意打ちで可愛い悲鳴をあげさせたいです。
クールビューティーを気取るアリスさんと、ドS乙女幽香さん。
幽アリは夢が広がりますね。
みをしん
http://tphexamination.blog48.fc2.com/
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コメント



0.4180簡易評価
7.100名前が無い程度の能力削除
グレイトゥ!! そしてチョコレイトゥ!!
8.100名前がない程度の能力削除
ゆうかりーん
おれだー
膝枕してくれーーーーーーーーー
12.100名前が無い程度の能力削除
これは良い幽アリ!!!!!
15.100ぺ・四潤削除
お好きな枕していいんだったらおっぱい枕してくれーーー!!!

ああ、せっかく治したのにまた来週歯医者予約しないと……
19.100名前が無い程度の能力削除
甘い甘い甘過ぎるこれぞ幽アリよ!!
22.80名前が無い程度の能力削除
甘すぎて辛い…
25.100名前が無い程度の能力削除
砂糖を口から垂れ流しそうなくらい甘い!
31.100名前が無い程度の能力削除
あ゛ま゛い。べた惚れ具合にあてられて吐く砂が止まりません。
33.100奇声を発する程度の能力削除
甘甘甘甘……
34.90名前が無い程度の能力削除
チョコより甘い良い幽アリを見させてもらいました。
36.80名前が無い程度の能力削除
ベタベタの甘々でよろしい
38.100名前が無い程度の能力削除
甘い、甘すぎるッ!!
甘すぎて辛いです
44.100名前が無い程度の能力削除
あんまぁぁぁい!
49.100名前が無い程度の能力削除
さいっこうの幽アリだった!
幽香可愛いすぎ。
52.90名前が無い程度の能力削除
甘っ甘いwww
53.100華彩神護削除
幽アリのアリス攻めか…いいですね。
幽香が乙女
54.90名前が無い程度の能力削除
幽香やりますねえ
59.80名前が無い程度の能力削除
何故俺のジャスティスを知っているんだ!?
64.100名前が無い程度の能力削除
ぎゃあああああ

糖分の過剰摂取で死にそうになりました
72.無評価名前が無い程度の能力削除
幽アリで検索した俺大勝利。口から砂糖……じゃなくてチョコレートが!
74.90ずわいがに削除
「甘い」って言おうと思ったらそんな次元じゃなかった。心臓がバクバクする程言葉に出来ない……
75.100名前が無い程度の能力削除
はいはい甘面白……ゲフッ
誰か……コーヒーか出涸らしの茶を持ってきてくれないか……
77.100名前が無い程度の能力削除
\すげえ/
78.100名前が無い程度の能力削除
甘い、この言葉が弱いと思う日が来ようとは・・・。
83.100名前が無い程度の能力削除
こんなにも素晴らしい幽アリSSが読めて幸せですわ。
甘くて最高でした。
92.100名前が無い程度の能力削除
素敵でした
104.90幻想削除
なんという甘い幽アリ………