萃夢想全クリしてからのほうが、いいような。
知らなくてもあんまり問題ないけど、後の楽しみが減るような。
高貴で、威厳に満ちたレミリア様が書きたいのですが……
もっといいイメージが欲しいので、意見などお教え頂けるとありがたいです。
↓
「……咲夜。今日の紅茶、いまいちね」
空には満月、雲ひとつ無い快晴。吹き抜ける風は怜悧な白刃、テラスの傍らで夜の支配者へと赦しを乞う――涸れた木々の枝葉を脅かす。
白い椅子に白いテーブル、白いティーカップに白金のスプーン。いずれも劣らぬ、古き時代に生を受けた高級感漂う逸品揃い。それらを手繰る、白く儚き少女の手が優雅にカップを持ち上げ、小さく上品な口元へと運ぶ。白磁の陶器に満ちる液体は蠱惑的な香りを放ち、少女の鼻腔を楽しませる。――暖かな湯気が、夜風に揺れた。
その紅茶は――――
赤く、紅く。まるで――絞りたての生き血のように、鮮やかな真紅を誇っていた。
「そうですか? 普通ですよ、お嬢様。いつもどおり、人間の里から――鮮度の高いものを厳選して摘んできた――最高級の紅茶なんですけど」
高貴なる満月の背後より、十六夜の月は反論する。
「…………わかってないわね、咲夜。私が言ってるのは――」
むー。と膨れっ面をしながら、幼きデーモンロードは従者の不明を指摘する。
真紅の満たされたカップを片手で弄び、ちゃぷちゃぷと水面を波打たせながら、おもむろにその中身を――背後の従者にぶちまける。
ぱしゃっ
石畳に広がる紅海。予備動作も無く放たれた液体は――その場にいた筈の従者の体を濡らす事無く、虚しく地に堕ちる。
「ああもう、いきなり何をするんですか? お嬢様。此処に居たのが美鈴あたりなら、やけどをしてしまいますよ? 非道いですわ」
つい先程まで立っていた場所の――反対側から、いじけたように呟く従者。
「いいじゃない、濡れなかったんだから。結果オーライって奴よ、よく知らないけど」
「ご自分で言いますか……はぁ、もういいです。そーいうことで」
我侭な主の言い様に溜息を吐きながら、十六夜咲夜は脱力する。
「ふふ――可愛いわね、咲夜は。貴女のそういう所――――好きよ」
からかい混じりの主の本音に、心無し頬を紅く染める咲夜。そう、どんなに我侭で理不尽な命令を乱発する――永遠に幼き暴君でも、時折こういう…堪らなく自分にとって嬉しい言葉をかけてくれるから。この愛しい少女の為なら――どんなことでも、たとえそれが人の道徳や常識からかけ離れたことでも――咲夜は躊躇わない。
「……からかわないで下さい。で、なにが不満なんです?」
内心の嬉しさを隠し、瀟洒なメイドは尋ねる。
「うん。――紅茶の話ね。確かに咲夜の言うとおり……この紅茶はいつもと変わらないものではある」
「ええ、さっきからそう言ってるじゃありませんか」
「――慌てないの。まだ解答を導くには早いわ」
「………」
夜空に浮かぶ月のように、従者は沈黙を保つ。
「――――――格よ。足りないのは」
片目を瞑り、紅き唯一の満月で…遥か上空、不遜に輝く――黄金の満月を睨みながら――永遠に紅い幼き月は断言する。
「……格、ですか」
「そう…格、よ」
いまいち理解してない従者を尻目に、彼女は言葉を続ける。
「最高の紅茶を最高たらしめてるのは、その紅茶を飲むもの――即ち、この私の威厳、風格に依るものが大きい」
取っ手に指を入れ、くるくるとカップを弄ぶ。
「だが、今夜の幻想郷は―――私の存在を、虚仮にする気配で満ちている」
手の中でぴたり、と止まるカップ。
「幻想郷の夜の支配者である…この私に……なんの断りも無く、勝手な事をしている奴がいる。あまりにも微弱な気配で、まだ場所は特定出来ないけど――」
握ったままのティーカップがみしり、と軋んだ音を立てる。
「捨て置いていいものでは…………無い」
「…………」
主の纏う雰囲気が――絶対零度にまで冷たく…鋭くなるのを感じ、咲夜はぞくりと身を震わせる。
両の瞼を閉じ、謳うように囁く。
「――――ノーブレスオブリージュ」
首を傾げる瀟洒なメイド。
「…………?」
「…………咲夜は、不勉強ね」
「……なんかの、スペルですか?」
紅魔の嬢は目を閉じたまま―――
―――くすくすと哂う。
「…………高貴なるものは、それに見合った義務を負うもの。
―――紅の貴族たる私に相応しい言葉だわ。…そう思わない?」
――――………………
白いテーブルは薄紅い霧に覆われ、微細な振動を始める。……まるで目の前の悪魔に、脅えるように。
「………………そう、です…ね。―――レミリア、お嬢様」
「――――――ふふふふふ、身の程知らずな愚者どもに……思い知らせてやらねば、な?」
静かに 静かに 紅き魔眼が開く
―――ばしゅん
紅き峻烈な眼光を受け―――――瞬時に粉塵と化す、白の器物たち。
――ピシュッ
針のように砕け散った白磁の破片が――咲夜の頬を掠める。
つう―――――
流れ落ちる紅き涙。夜風に芳醇な香りが混じる。――くるり、と振り向く紅魔。
「…………出がけに少し――――――飲んでいくのも、悪くないか」
口元から―――紅い筋を滴らせながら、ばさりと夜空を舞う…蝙蝠の翼。
真紅の貴族
夜王 レミリア・スカーレットの行幸は
―――――――――――――今、始まる
知らなくてもあんまり問題ないけど、後の楽しみが減るような。
高貴で、威厳に満ちたレミリア様が書きたいのですが……
もっといいイメージが欲しいので、意見などお教え頂けるとありがたいです。
↓
「……咲夜。今日の紅茶、いまいちね」
空には満月、雲ひとつ無い快晴。吹き抜ける風は怜悧な白刃、テラスの傍らで夜の支配者へと赦しを乞う――涸れた木々の枝葉を脅かす。
白い椅子に白いテーブル、白いティーカップに白金のスプーン。いずれも劣らぬ、古き時代に生を受けた高級感漂う逸品揃い。それらを手繰る、白く儚き少女の手が優雅にカップを持ち上げ、小さく上品な口元へと運ぶ。白磁の陶器に満ちる液体は蠱惑的な香りを放ち、少女の鼻腔を楽しませる。――暖かな湯気が、夜風に揺れた。
その紅茶は――――
赤く、紅く。まるで――絞りたての生き血のように、鮮やかな真紅を誇っていた。
「そうですか? 普通ですよ、お嬢様。いつもどおり、人間の里から――鮮度の高いものを厳選して摘んできた――最高級の紅茶なんですけど」
高貴なる満月の背後より、十六夜の月は反論する。
「…………わかってないわね、咲夜。私が言ってるのは――」
むー。と膨れっ面をしながら、幼きデーモンロードは従者の不明を指摘する。
真紅の満たされたカップを片手で弄び、ちゃぷちゃぷと水面を波打たせながら、おもむろにその中身を――背後の従者にぶちまける。
ぱしゃっ
石畳に広がる紅海。予備動作も無く放たれた液体は――その場にいた筈の従者の体を濡らす事無く、虚しく地に堕ちる。
「ああもう、いきなり何をするんですか? お嬢様。此処に居たのが美鈴あたりなら、やけどをしてしまいますよ? 非道いですわ」
つい先程まで立っていた場所の――反対側から、いじけたように呟く従者。
「いいじゃない、濡れなかったんだから。結果オーライって奴よ、よく知らないけど」
「ご自分で言いますか……はぁ、もういいです。そーいうことで」
我侭な主の言い様に溜息を吐きながら、十六夜咲夜は脱力する。
「ふふ――可愛いわね、咲夜は。貴女のそういう所――――好きよ」
からかい混じりの主の本音に、心無し頬を紅く染める咲夜。そう、どんなに我侭で理不尽な命令を乱発する――永遠に幼き暴君でも、時折こういう…堪らなく自分にとって嬉しい言葉をかけてくれるから。この愛しい少女の為なら――どんなことでも、たとえそれが人の道徳や常識からかけ離れたことでも――咲夜は躊躇わない。
「……からかわないで下さい。で、なにが不満なんです?」
内心の嬉しさを隠し、瀟洒なメイドは尋ねる。
「うん。――紅茶の話ね。確かに咲夜の言うとおり……この紅茶はいつもと変わらないものではある」
「ええ、さっきからそう言ってるじゃありませんか」
「――慌てないの。まだ解答を導くには早いわ」
「………」
夜空に浮かぶ月のように、従者は沈黙を保つ。
「――――――格よ。足りないのは」
片目を瞑り、紅き唯一の満月で…遥か上空、不遜に輝く――黄金の満月を睨みながら――永遠に紅い幼き月は断言する。
「……格、ですか」
「そう…格、よ」
いまいち理解してない従者を尻目に、彼女は言葉を続ける。
「最高の紅茶を最高たらしめてるのは、その紅茶を飲むもの――即ち、この私の威厳、風格に依るものが大きい」
取っ手に指を入れ、くるくるとカップを弄ぶ。
「だが、今夜の幻想郷は―――私の存在を、虚仮にする気配で満ちている」
手の中でぴたり、と止まるカップ。
「幻想郷の夜の支配者である…この私に……なんの断りも無く、勝手な事をしている奴がいる。あまりにも微弱な気配で、まだ場所は特定出来ないけど――」
握ったままのティーカップがみしり、と軋んだ音を立てる。
「捨て置いていいものでは…………無い」
「…………」
主の纏う雰囲気が――絶対零度にまで冷たく…鋭くなるのを感じ、咲夜はぞくりと身を震わせる。
両の瞼を閉じ、謳うように囁く。
「――――ノーブレスオブリージュ」
首を傾げる瀟洒なメイド。
「…………?」
「…………咲夜は、不勉強ね」
「……なんかの、スペルですか?」
紅魔の嬢は目を閉じたまま―――
―――くすくすと哂う。
「…………高貴なるものは、それに見合った義務を負うもの。
―――紅の貴族たる私に相応しい言葉だわ。…そう思わない?」
――――………………
白いテーブルは薄紅い霧に覆われ、微細な振動を始める。……まるで目の前の悪魔に、脅えるように。
「………………そう、です…ね。―――レミリア、お嬢様」
「――――――ふふふふふ、身の程知らずな愚者どもに……思い知らせてやらねば、な?」
静かに 静かに 紅き魔眼が開く
―――ばしゅん
紅き峻烈な眼光を受け―――――瞬時に粉塵と化す、白の器物たち。
――ピシュッ
針のように砕け散った白磁の破片が――咲夜の頬を掠める。
つう―――――
流れ落ちる紅き涙。夜風に芳醇な香りが混じる。――くるり、と振り向く紅魔。
「…………出がけに少し――――――飲んでいくのも、悪くないか」
口元から―――紅い筋を滴らせながら、ばさりと夜空を舞う…蝙蝠の翼。
真紅の貴族
夜王 レミリア・スカーレットの行幸は
―――――――――――――今、始まる