Coolier - 新生・東方創想話

紅い月、黒い月(3)

2003/08/03 11:42:57
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「~~~~~~~~ッ!!?」

あまりといえばあまりにも突然の出来事に、霊夢の脳が一瞬で思考を停止する。
そしてその一瞬の隙に、舌が唇を割り中へ中へと入っていく。
唇と唇、舌と舌が触れあいそれがいやらしい音を立ててかき回される。
一瞬で頭の中が真っ白になった霊夢は数瞬かかって正気を取り戻し、唯一動かせる首を激しく振って抵抗する。
そして、ようやくルーミアの侵略を阻止する事ができた。

「ん~、さすがにすごい霊力。1回じゃとても吸いきれないわ」
「な・・・・何考えてんのよあんた!」
「約束どおり霊力はもらったよ。まだほんの一部に過ぎないけど」
「何を・・・!」

強がる霊夢を目眩が襲ったのはその時だった。


「あ、あれ・・・・・?」
「一部とはいえ、かなりの霊力をいきなり無くしたんだからね。目眩は当然」
「あんた・・一体何したの?」
「何って、あなたの力を奪ったのよ。口移しで」

さらりと言ってのけるルーミアに、以前会った時のような子供っぽさは感じられない。

「あなたを殺してもよかったんだけど」
「殺すな・・」
「そんな事したら器を失った霊力が暴発する。私の中でそんな事したら私自身が消滅しちゃいそうだから」

「それに、楽しみは長く残していたいしね・・・」

再び、二人は唇を重ねあう。
重ねては離し、重ねては離し。そんな事を何度も繰り返した。
霊夢に抵抗する力はすでになく、ただルーミアの成すがままにされていた。


「ふ~もうお腹いっぱい!でもまだ霊力は残ってるみたいね?」
「あ・・・ぁ・・・・」
「答える気力もない、か・・・意識も無くなりそうだねぇ」

霊夢の髪をつかみ上げる。
瞳は虚空をさまよい、口はだらしなく半開きで涎が垂れている。
『あの』博麗神社の巫女がこんな姿になっていると、誰が思いつこうか。


「だけど、そんなに苦しいなら・・・」

ルーミアの目がすぅっと細くなり、口の端がさらにつり上がる。
もう、少女の姿をした妖怪ではない。ただの妖怪としての本性を晒しつつあった。

「そんな意識、無くしちゃえば楽になれるのに」
「・・やめ・・・・・」
「や め な い よ」

もう何度目なのか、再び唇が重なり合う。
その時、常闇の中に光が差し込んだ。



「なっ・・・・・・結界が破られた!?」

闇の球体の一部がすっかり抉り取られ、そこから紅い光が差し込んでくる。
そして闇の外には、羽の生えた少女が月を背に佇んでいた。

「紅符『スカーレットマイスタ』!」

少女から放たれた無数の光弾が、闇を次々と撃ち抜いていく。
程なく、闇は原形をとどめなくなり収束すると同時に『本体』のルーミアが姿を現した。

「スカーレットデビル!?な、なぜこんな所に・・・・」
「下級妖怪ごときが随分と思い上がっているみたいね。私のお友達を嬲ってくれて」
「(強い・・・・今の私でもコレに勝てるか・・・?)」
「月が紅い・・・こんな夜だから私も本気を出せそうよ」

少女から紅いオーラが立ち上る。次の瞬間、金属の軋みにも似た音を発しルーミアは消えた。
その一部始終を見届けていた霊夢は、少女がゆっくり近づいてくるあたりで
再び意識を闇の中へ沈めてしまった。



「霊夢、起きてよ。ねえ、霊夢!」

少女の急かす声で目が覚めた。

「う、んん・・・・・」
「あっ起きた!心配したのよ~」
「レミリア・・・そうか、来てたんだね。ていうか、ここ何処?」
「霊夢のお家。ものすごく疲れてるみたいだったから、鍵を壊して
 お家に入っちゃった。ゴメンね」

あたりを見回せば、見覚えのある縁側に部屋のつくり。間違いないようだ。
自分は布団の上にいる。彼女が敷いてくれたのか?


「それは構わないけど・・・レミリアにかっこ悪いところ見られちゃったかな」
「アイツが悪いのよ。何をしてたのか知らないけど」
「・・そうだ、アイツ・・・あの妖怪はどうなったの?」
「霊夢をいじめた奴だから粉々にしてやろうと思ったけど、逃げられちゃった」
「そこまでしなくてもいいわ・・・ああいう、何処にでもあるような物を力の根源にしてる奴ってのは、
 何度倒しても力の根源がある限り無限に復活するって言うから」


顔色が悪い。
元気がない。
幼いレミリアにも霊夢の異常は目に見えて分かるほどだった。

「何か、されたんでしょ?」
「・・・やっぱ、分かる?」
「分からない方がおかしいと思う」

「そうだよね・・・・・・・私、あの妖怪に霊力をかなり奪われたの。
 時が経てばいずれ回復するんだけど、もしかしたら死ぬんじゃないかとか
 無力な普通の人間になっちゃうんじゃないかとか考えさせられちゃって
 とにかくものすごく怖かった・・・・」
「大切な何かを失う恐怖って奴に似てるね・・・なんとなく分かる」

涙声の霊夢をレミリアが優しく抱きかかえた。
レミリアの方が見た目が幼いためかその姿は滑稽か、
または年不相応の背伸びをしているお嬢さんにも見える。

「疲れてるでしょ?もう寝た方がいいよ」
「うん・・・・ありがとうレミリア・・・」
「お休み、霊夢・・・」

それを最後に、霊夢は頭を布団につけそのまま寝息を立て始めた。


眠り続ける霊夢を見て、レミリアは心の中で色々付け加えていた。

「誰にも霊夢は渡さない・・・あなたを殺すのも喰いつくすのも、他の誰でもないこの私」
「そのためなら何だってするわ・・・いざとなったら運命も変えてやる」
「本当なら今すぐ喰いたいところだけど、霊力が回復するまでお預けにしておくわ」


紅い月がいつもよりさらに紅かった、真夜中の幻想郷の話。
散々間隔があいた挙句にこんなのしか作れない・・・_| ̄|○

精進あるのみですね。
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コメント



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1.50七紙削除
霊夢が妖怪たちに人気って言うのはこういうことだったのかー! (((( ;゚Д゚)))ガクガク
2.50ななぃ削除
みんな、霊夢を食べちゃいたいくらい好きなんです。
3.30視線削除
ルーミアが……格好良かった。
4.40奈々詩削除
妖怪の皆さんの好物は霊夢だったのか・・・・!!
8.501東方ファン削除
レミリア霊夢食うんかい
22.70na7氏削除
レミリアが霊夢を食う気満々だった辺りに絶望さを感じた。