どっきり○秘報告

作品集: 最新 投稿日時: 2011/04/01 23:59:33 更新日時: 2011/04/01 23:59:33 評価: 1/9 POINT: 1048772 Rate: 20975.94

 

分類
慣れない人が下手に便乗しようとすると大惨事になるという経験則。
 まぁ本来嘘はつくべきではなく、冗談もあまり好みではない。
 だから、生徒から『嘘をついてもいい日』を聞いた日は思わず頭突きをしてしまったわけだ。
 角付きで。
 詳しく聞くと、山の巫女から伝え聞いた外の習慣らしい。
 卯月の一日はえいぷりるふーると呼ばれていて、午前中だけは嘘をついてもいいと言う。
 その午前中という話さえ、嘘らしい。
 嘘だらけ。
 山の巫女から詳しく聞いた際、なんとけしからんと憤ったがこんな反論をぶつけられた。
 
――春の一日くらい、無礼講があってもいいじゃないですか。
 
 宴会のようなものだ、と彼女は言った。
 もちろん悪意ある嘘は責め立てられるし、誰かが不幸になっても意味がないという。
 どうせなら貴女も一つだけどうですか、と勧められる始末になってしまった。
 稗田のにも聞いてみたが、もはや里中に広まっているらしい。
 面倒なことになった。
 朝から晩まで頭突きをしたら、さすがの私の頭も多分割れる。
 頭突きはだめですよ、と釘も刺されてしまう。
 むぅ。
 
――まぁ、どうせ一日だけの話なんですから誰も不幸にならない嘘なら良いのでは?
 
 一日限りの夢。
 嘘を良しとするのは気が進まないが、皆の楽しげな雰囲気を壊して回るのも気が引ける。
 じれんま、である。
 誰の心も痛まず、笑って流せるような嘘か。
 
 
 
 
 私は、家に帰って考えた。
 許容できるのは、一回限りまで。
 さて、どんな嘘を吐いたものか。
 ……。
 思考すること、香一つ。
 誤魔化すような事柄もないのに、嘘を吐く。
 それを考えることが、こんなに難しいとは。
 誰も傷つかず、私に傷もつかず。
 笑って済ませられるような、そんな嘘。
 あのあと、稗田のにすこし助言をもらったりもした。
 
――普段からじゃ、絶対ありえないことを嘘にしたらどうですか?

 ありえないこと、か。
 ふむ、一つある。
 おそらく、今後数十年はありえないだろう話だ。
 かといって、絶対にないかといえばそれも嘘。
 ま、この嘘で傷つく者はいまい。
 若干、自虐的かもしれないが私自身もさほど気にしてはいない。
 さて、せっかくの祭りならばそれなりに人がいる場所で言ったほうがいいだろう。
 ここにきて、ついに楽しくなってきてしまった。
 ちょうど、新年度の里の集会があったはずだ。
 どうせ、嘘が許される日というのは里全体に知れ渡っている。
 たまに突拍子もない発言をしても、許されるだろう。
 私は、嘘に驚く面々を想像しながら、布団にもぐりこむ。
 
 
 
 さて、翌日の朝。
 年度はじめの集会は、基本的に和やかな雰囲気で進む。
 議題も特になく、各人が適当に抱負を述べるだけだったりする。
 行政機関でもなし、今年の農作業だってまだ大掛かりに始まっていない。
 忙しくなる前の、まったりとした季節だからこその雰囲気。
 里長の指名で、次々に順番が回る。
 いつもより冗談まじりの抱負が多いのは、やはり今日だからだろうか。
 これなら、嘘をついても許されそうだ。
 少し安心する。
 ガチガチの集会なら、さすがに嘘を吐くわけにもいかない。
 そんなところで、私に順番が回ってきた。
 まずは、手短に寺子屋の開始時期について。
 次に、勉強会のお知らせ。
 
(さて……)

 私は、ひそかに気合を入れた。
 
「皆様に、報告することがあります」

 集会の参加者は、私のほうを注目する。
 私の嘘を、聞き逃すことはなさそうだ。
 高らかに、宣言しよう。
 
「私、結婚することにしました!」

 全員、紅魔館のメイドにやられたように表情を凍らせた。
 おもっていた反応とは少し違うが、どうやら驚いてくれたようだ。
 満足。
 用も済んで、腰掛けた私を参加者の視線が追う。
 
 
 
 
 
 
 集会所が、驚きの叫びで満ちるまであと十秒。
 
 
 

 嘘が知れ渡るまで、あと数分。



 
 
 幻想郷の新年度、上白沢の結婚報告にて開幕。
お相手は私で構いませんね!
小宵
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2011/04/01 23:59:33
更新日時:
2011/04/01 23:59:33
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7. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/02 21:03:47
よかった…便秘の先生はいないようだな
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