Coolier - 迎え火 送り火 どんど焼き

2019/04/01 14:25:09
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 嘘つきたい。
 突如、
 脳内に電気がはしった。
 何かしらの神経から、
 脳に、
 嘘をつけ、と、
 命令がくだされる。
 嘘つかねば、
 フランドールは、
 重たい体を、
 むくり、
 持ちあげた。

 嘘とはなんぞ。
 フランドールは、
 嘘を知らない。
 495年、生きてきて、
 嘘をついたことなど、
 なかったからだ。
 嘘とはなんぞや。
 調べるために、
 図書館へとむかった。
 図書館。
 図書館には、
 魔女がいる。
 魔女は、
 物知りだ。
 物知りな魔女は言う。
『嘘とは、事実ではないこと。
 人間をだますために言う、事実とは異なる言葉、
 と、あるわ』
『嘘』
『そう、嘘』
『嘘』
『えっ、あ、うん、嘘よ』
『嘘』
『……まあ、そういうことよ』
 嘘、
 という感情が、
 フランドールには、
 理解ができなかった。
 理解はできなかったが、
 パチュリーは、
 フランドールを嘘つきだという。
 そういう感情のことを、
 嘘だといった。
 フランドールは、
 どうなんだろう。
 ふにゃりとした頭で、
 図書館をあとにした。

 門。
 門の前には、
 門番。
 晴れた日も、
 雨の日も、
 そこには、
 彼女がいる。
『美鈴、嘘つきたい』
『嘘、ですか?』
『嘘』
『嘘つきですよ、フランドールお嬢さまのこと』
『嘘』
『はい、嘘です』
『……嘘』
『なるほど。嘘を知りたいんですね』
『そう、知らない』
『それなら、ぎゅうっとしてあげましょう』
 美鈴は、
 フランドールを、
 ぎゅうっと抱きしめた。
 大きくて、あたたかい、
 まるで、
 お布団にくるまれているような、
 そんな気持ちに、
 フランドールはなった。
『あったかい』
『はい、これが私の嘘の気持ちです』
『嘘』
『はい、嘘ですよ』
『ありがとう?』
『どういたしまして』
 フランドールは、
 なにか、
 ぽかぽかした体で、
 門をあとにした。

 嘘とは、
 あたたかいんだなあ、
 フランドールは、
 嘘を少し、
 理解できた気がした。
 館の、
 廊下を、
 ぽとぽとと歩く。
『あら、フランドールお嬢さま、どちらへ?』
『嘘、探してたの』
『見つかりましたか?』
『うん、ううん、少しだけ』
『少しだけ? ですか』
『見せる』
 フランドールは、
 咲夜を、
 ぎゅっとした。
『あらまあ、可愛らしい嘘ですこと』
『あったかい?』
『暖かいですわ、お嬢さま』
『これが、嘘、だって。美鈴が』
『そうですね、これは嘘だと思います』
『嘘』
『でも、もうちょっと嘘を増やしましょう』
 咲夜は、
 フランドールの、
 髪をくしゃくしゃと撫でた。
 髪を撫で、
 頬を撫で、
 あごをさすった。
 なんだか、
 こそばゆい。
『これも、嘘』
『そういうことです』
『なんだか、気持ちいい』
『嘘とは、気持ちの良いものです』
 咲夜に可愛がられるままに、
 フランドールは、
 なんだか、
 頭が、
 ふわふわとして、
 咲夜とわかれた。

 こんこん。
 ノック。
 こんこん。
『だれー、開いてるわよ』
 レミリアの声。
 がちゃり、
 扉をひらく。
『おや、フランドール。めずらしいわね、どうしたの』
『嘘つきになりたいの』
『嘘つき』
『嘘をしりたいの』
『嘘』
『みんなから、教えてもらったけれど、
 それでも、まだ、わからない』
『……ふむ』
 レミリアは、
 一度頷くと、
 フランドールの、
 頭を撫でた、
『知ってる、嘘、咲夜がした』
『んー』
 レミリアは、
 フランドールを、
 ぎゅっと抱きしめた。
『知ってる、嘘、美鈴がした』
『んんー』
 レミリアは、
 頭をかかえた。
 かかえた頭から、
 ぴこん、と、
 思い浮かぶ。
『フランドール、こっちきなさい』
『あい』
 手まねきのままに、
 フランドールは、
 頬を染めた、
 レミリアの、
 そばに行った。
『目をつむりなさい』
『あい』
 言われるままに、
 目をつむった。
 瞬間、
 むにゅりと、
 唇にやわらかい感触。
 それは、
 キスだと、
 フランドールは認識した。
『キスも、嘘?』
『私からあなたへの、精一杯の嘘よ』
『私も、嘘』
 今度は、
 フランドールから、
 レミリアへの、
 キス。
 唇が、
 あたたかくて、
 頭がどくんどくんと、
 高鳴る。
 なんだか、
 いけないことを、
 しているような、
 そんな気もして、
 でも、
 心が、
 ほかほかとした。
 フランドールは、
 これが嘘なんだろうか、
 思った。

 夜、
 自室にて、
 フランドールは、
 思いかえす。
 嘘とは、
 嘘つきとは。
 みんなそれぞれ、
 嘘があった。
 でも、
 全部、
 あたたたかった。
 気持ちがよくて、
 心がぼうっとして、
 なんだか、
 不思議なもので、
 フランドールは、
 みんな、
 嘘だった。
 嘘だったから、
 今度は、
 自分から、
 みんなに、
 嘘、を、
 プレゼントしよう、
 そう、思った。
 小悪魔『フランドールお嬢さまがキス魔になった』
arca
http://twitter.com/torah_3
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コメント



0.891簡易評価
1.891奇声を発する(ry削除
良いね
2.891虚無太郎削除
これは嘘なのか、それともほかの何かなのではないか、
おれはこれを知っているのではないか、そんな気がしましたけど、
そんなことはなかったぜ!
凍えるような真実と温かい嘘とどっちがいいのか……
3.891ヘンプ削除
ホンットに良いですねぇ……大好きです
4.891891点を付ける程度の能力削除
この人の紅魔館好きです
そしてあとがきw 毎度お馴染み小悪魔ですね
5.891浄霊の火削除
好きは嘘だし嘘は好き