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将太の寿司 外伝『―決戦!レミ咲編―』

2019/04/01 00:10:57
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(前回までのあらすじ――――至高のレミ咲と究極のレミ咲を題材に対決することとなった将太と笹寿司。将太が敗北した場合、築地市場のマグロは今後一切笹寿司が独占することになる。度重なる笹寿司の妨害を乗り越え至高のレミ咲を完成させた将太であったが―――)

「うん…」「どうしたんだよ将太クン、昨日の試作じゃ完璧だったじゃないか!あの出来栄えなら上位勢にだって食い込めるよ!」無邪気に将太のSS(スシ)を讃えるシンコの笑顔とは対照的に将太の表情には連日の修練がもたらした疲労よりもなお深い影が差していた。
(一級品のネタは揃えた…。味だって鳳寿司のみんなが太鼓判を押してくれた…。でもこの不安はなんだろう…?)将太の苦悩を他所にシンコは能天気に続ける。「でも一番驚いたのは文量とギミックだな!まさか4月1日にあんな仕掛けがあるなんて誰も思いつかないだろうなぁ」
「4月1日!もう一度言ってくれシンコ君!」将太はシンコの肩を揺さぶり問いかける。「そりゃ4月1日さ、エイプリルフールと言ったら4月1日だろ?」極めて当たり前の事柄を必死の形相で確認されたシンコの顔は困惑に包まれていた。(4月1日がエイプリルフールだなんで気がつかないなんて…僕は…馬鹿だ…!)顔を上げた将太の表情は希望への一筋の道を見出していた。「3月31日まで無料『将太の寿司』を全巻読み返してくるよ!」「将太君!?」シンコが止める間もなく将太はネットの闇に飛び込んで行った…



いくつかの断絶。いくつかの破られたページ。



(投稿者注:『将太の寿司 外伝―決戦!レミ咲編―②』は単行本の大半が先の戦災で失われて久しく、原稿そのものも焼失した。この失われた巻の内容は真のレミ咲を完成させた将太が何らかの秘策を得て笹寿司に勝利したことが後巻との繋がりで定説となっている。以下は断章、口伝、妄想を基に書き下ろした文章である。原典とのキャラクターとの相違も多々あるかと思われるがご寛恕いただければ幸いである)

かしわ手一本…!いや…二本…!会場の空気は今やどよめきで波打っていた。
「だが笹寿司の将太と俺のレミ咲…さして違いがあるようには思えないぜ!!いや寧ろ地の文の豊かさ、結末を彼女たち自身に委ねる点では上だ!!」笹寿司が不服を叫ぶ。勝利の権利は自らのみに与えられている。そう確信した傲岸な男の声だ。
そうだ、そうだと唱和する声が重なり、大きくなる。笹寿司は僅かな勝機も逃すまいと徹底した工作を行った。つまりギャラリーの買収である。
「静粛に!」仕立ての良い白スーツに身を包んだ男が一喝すると場の騒ぎは直ぐさま収まった。オールバックに髪を撫で付けた男には一筋の雷撃で沈黙をもたらしうる彫像めいた美しさと畏怖が備わっていた。
「確かに笹寿司、将太君、どちらの出来も全国に誇るべきものでした…ですが笹寿司君のネタには致命的な欠陥があったのです…!」
笹寿司の顔が怒りのあまり赤烈を超えどす黒く染まる。「待てよ、ウチのSS(スシ)に欠陥…?場合によっちゃあアンタ"次"はないぜ」SS(スシ)職人としてのプライドを公衆の面前で傷つけられた笹寿司は剥き身の恫喝を投げつける。
彫像めいた男は笹寿司の怒りをまるで意に介することなく、笹寿司の愚鈍さを嘲笑うように冷たく吐き捨てる。「投稿時間を比べてご覧なさい」
「投稿日時だって…?馬鹿にしやがって…」笹寿司は乱暴にアシスタントからタブレットを引っ手繰るとSOSOWA(スシ・オブ・スシ・オブ・ワールドアソシエイション)のページを開く。「投稿日時順にソート、これで…」目を見開いた笹寿司の顔が漆黒から蠟燭のように反転するのは一瞬のことであった。
「…もうお気付きのようですね。エイプリルフールだというのに貴方はたっぷりと推敲を重ねた作品を夕方、しかも夕方5時過ぎに投下した」
「一方将太君は午後零時直後、まさにネタを最高のタイミングで読者にお届けしたのです…」打ちひしがれる笹寿司へと更に追撃が加えられる。
「残酷なようですが貴方がしっとりと描いてきたレミ咲は…」笹寿司は言葉を遮り、自らの手で断頭台を打ち落とす。「簡潔な掌編でヤツはレミ咲を扇型に握っていた、俺の短編は4月1日には冗長に過ぎたそうだろ?」今や笹寿司は己の敗北を悟った。三百万字を超える長編はエイプリルフールに読み流すには余りに長大でネタの鮮度を活かしきれなかったのである。しかし一敗地に塗れた笹寿司の姿にも、耐え難い苦痛に喘ぐ巨人が己の矜持を守る為の痛々しい、だが何人も犯すことのできない虚勢があった。
オールバックの男の口角が僅かに緩む。物語の深い理解者を求める、その姿は笹寿司よりも悪魔らしく、メフィストフェレスを思わせた。
「テーマの理解にかしわ手一本!」
「レミ咲要素にかしわ手一本!」
「異議はないでしょう」他の審査員も口々に同調する。鳳寿司、ライバル、その辺のモブ…全ての人が将太を称えていた。そうだ、これで築地は守られるのだ………

ーーーーはるか遠き幻想の魚市場 (完).
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ひだり
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コメント



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3.891虚無太郎削除
えっちなレミ咲なら勝ってた
4.891奇声を発する(ry削除
面白かった
6.891青段削除
将太の寿司あんま知らんけど笑いました
8.891浄霊の火削除
なにこれ…なにこれ?
10.891長久手削除
執拗なSS(スシ)に笑いました
11.891終身名誉東方愚民削除
投コメ初投稿兄貴オッスオッス!
SS(スシ)でいちいち笑いました笑
どんなネタも鮮度は大切なんですね! 勉強になりました
肝心のレミ咲の内容が気になりすぎて夜しか眠れない…