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天狗の落とし文 第百二十三回

2015/04/01 15:18:03
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河童に頼んでカメラを新調した。
新聞を書くのにカメラは大切だ。
私よりもはるかに大切なくらいだ。

今でこそカメラというものはたくさんの人の手に普及しているが、昔は、カメラを持っている者というのはほとんどいなかった。
カメラを持っているというだけで周りの者から珍しがられたものだ。
カメラが発明される前のことである。

新しいカメラを首からかけ、何度かシャッターに指をかけて構え、満足して頷く。
やはり、一流の記者は一流のカメラを持たなければならない。
良い道具を持つというのは、良い仕事をするのにとても大事だ。
弘法も、書き損じた時には「こんな筆でまともな字が書けるか」と言ったという。
私も、記事の内容が悪いと言われた時には「こんなペンでまともな記事が書けるか」と言うことにしている。
記事の内容を褒められた時には「私のセンスが良いんですよ」と言うことにしている。
言うことにしているが、褒められたことがないのでまだ一度も言ったことがない。
私は謙虚なのだ。

哨戒天狗の一人が目ざとく私のカメラの変化に気付いた。
「ねえ、見てください。私、新しいカメラに変えたんですよ」
「へえ」
「一枚とってあげましょうか」
「いりません」
彼女の求めに応じて一枚写真を撮った。

このようにして知人たちがみな私のカメラの変化に気付いて撮影してくれと言ったので順々に撮っていった。
みななかなか観察眼が鋭い。

フィルムがなくなった頃に河童を訪ねて現像してもらう。
出てきた写真を見て私は驚いた。
すべて写真がまっ黒なのだ。
何も写っていない。
私は久しぶりに怒った。
粗悪品を掴ませたのではないか。
鴉天狗を怒らせたらどうなるのか教えてやろうと思った。
河童は面倒くさそうにカメラを指さした。
「レンズのカバーがつけっぱなしだよ」

これらのことからも分かるように、やはりカメラは記者にとって大切なものである。
少なくとも記者本人よりはずっと。

(射命丸文)
今年もよろしくお願いします。
長久手
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コメント



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2.14智弘削除
文ほどの一流の記者になるとファインダーを覗かずに撮る
3.14無名のプレイヤー削除
黒いのは最近の修正のためだって聞いた