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とある京都の古本屋で見つけた入試の問題 その2

2015/04/01 00:28:31
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第一問


 次の(1)~(4)の文章を読んで、下記の設問A・Bに答えなさい。

(1)空海が、唐より様々な密教儀式を持ち帰ると、その大きな効力から、朝廷や多くの貴族が密教修法による霊的防御を取り入れた。最澄も、弟子の円仁や円珍を唐に派遣して密教を学ばせ、比叡山結界に密教修法を積極的に取り入れた。

(2)酒呑童子は、もともと平安京の鬼門にあたる比叡山に住まっていたが、最澄が比叡山延暦寺を建立するとこれに対抗できず、京都盆地の西端にあたる大枝山へと拠点を移した。

(3)10世紀中頃に天台座主となった良源は、比叡山を護持するため、あえて仏道輪廻より外れ、すぐれた霊力と密教修法の理解を持つ天狗となった。

(4)12世紀中頃に天皇であった崇徳天皇は、政争に敗れて流刑になると、信心深い天皇だったので強力な天狗となり、世を乱して人々に恐れられた。


設 問

A 鬼と天狗との差異について、その成り立ちを踏まえながら、60字で述べよ。

B 密教の展開を踏まえて、10世紀ごろに起こった人間・妖怪関係の変化を、120字で述べよ。


解答・解説

Aについて

解答例:鬼は山など自然の中より現れ、人を脅かす妖怪であるが、天狗は顕密仏教を会得し、霊力にすぐれた人間が魔に堕ちた妖怪である。(59字)

主題:鬼と天狗との差異
条件:成り立ちを踏まえる

 ここでは、鬼と天狗との違いについて問われている。これは、幻想郷史を抑える上でよく問われるものである。しかし、「成り立ちを踏まえて」が捻ってある。一般に、鬼と天狗との違いは、仏教的かそうでないか、という差の面からしか述べられないため、この条件には戸惑っただろう。
 本問で注目すべきは、設問文の(2)と(3)である。(2)では、鬼の代表例である酒呑童子の例が挙げられており、「もともと……比叡山に住まっていた」「最澄……に対抗できず」とある。すなわち、鬼はもともと、何もいなかった比叡山に住んでおり、天台宗に敗れて逃れたのである。また(3)では、天台座主の良源が、天狗になったことを述べている。
 これらを考えれば、鬼が昔から山に住んでいた存在であるのに対し、天狗が顕密仏教僧から変じるものである、ということが読み取れるだろう。以上の点をまとめればよい。

Bについて

解答例:自然から生まれた鬼は、従来世を乱す妖怪として恐れられたが、空海により密教修法が導入されるとこれに敵わず駆逐されていった。しかし、密教修法を習得しながら魔に堕ちる天狗が現れ、やがて鬼に代わって人間から世を乱す存在として恐れられるようになった。(120字)

主題:10世紀の人間・妖怪関係の変化
条件:密教の展開

 変化を問われているので、10世紀に何がどのように変わったのか、ということを明確にしながら論述していくことが重要となる。まず、設問文を順番に見ていきながら、本問に必要な論点をあげていこう。
 (1)については、密教修法の効力が極めて高かったこと、京の鬼門にあたる比叡山にも密教修法が取り入れられたことが述べられている。ここからは、密教修法が、霊的守護を行う上で極めて重要な技術であったと読み取れる。
 (2)は、酒呑童子が延暦寺によって比叡山から逐われた記述だが、(1)で比叡山が密教修法を取り入れた、という点と合わせて考えると、密教修法によって鬼である酒呑童子が逐われた、と読み取ることができる。
 (3)は、良源が天狗になった逸話である。ここでは、天狗が現れるのが10世紀より後であることも想起しておきたい。すなわち、密教の定着とともに天狗が登場するのである。
 (4)は、天狗が世を乱したとうことを読み取る。崇徳院といえば怨霊というのは皆の知るところであろうが、「鬼」ではなく「天狗」に変じているところが、12世紀なのである。
 以上の読み取りを踏まえて、論点を整理すると以下のようになる。すなわち、①元来、自然から生まれる存在として恐れられた鬼は、②密教修法が導入されると駆逐されるようになり、姿を消した。③一方で、密教修法を習得しながら魔に堕ちる天狗という妖怪が現れ、④鬼にかわって世を乱す存在として恐れられた。となる。これを、120字におさめればよい。




第二問


 次の文章を読んで、下記の設問A・Bに答えなさい。

 1478年に生まれた万里小路度房(までのこうじのりふさ)は、1491年にはわずか一町二段の田地しか持たない百姓であったが、1518年には百十八町四段の大地主に成長している。
 時の稗田当主である稗田阿夢は、「夢記拾遺」の中で「最近の人里では、これまで力のある者がみな没落し、力のなかったものが力を得て、まるで天地がひっくり返ったようである。これも皆、妖怪共のしわざである。とりわけ、万里小路という男は、多くの妖怪と親しんでおり、いたずらに妖怪を人里に呼び寄せている」と書いている。
 しかし、阿夢が死んだのちの1531年、度房の子・保房(やすふさ)が新たに小路村をひらいてここの乙名となると、その地位を稗田家も認めざるをえなくなる。さらに1538年からは、小路村の万里小路家も含めた人里四村の乙名を集めて、全体の問題解決に取り組む乙名合議も開催されるようになった。

設 問

A 度房のような存在がなぜ現れたのか、間に起こった出来事を踏まえて、60字で述べよ。

B 「夢記拾遺」のこの記述は、「人里」の記述の初出としても知られている。このことも踏まえながら、乙名合議が成立する過程を90字で説明せよ。



解答・解説

Aについて

解答例:第一次結界設置により幻想郷に妖怪が増え、この協力を得て安定生産を確立した百姓が、没落百姓の田地を獲得し大地主となった。

主題:度房とはどういう人物か
条件:間に起こった出来事を踏まえる。

 本問を考える上では、まず万里小路度房という人物がどのような人物か、設問文中から読み取る必要がある。設問文を見てみると、1491年には小さな百姓であったのが、1518年には大地主になり、稗田の当主から大きな反発を受けている。
 ここまで抑えた上で、条件にある「間に起こった出来事」を考える。1491年から1518年の間に起こった出来事と言われれば、すぐに「第一次結界設置」、すなわち「幻と実体の境界」の設置に思い当たりたい。「幻と実体の境界」は、外の世界で幻想になってしまったものを、結界内部に取り込むもので、外の世界で生きていけなくなった妖怪を呼び寄せるものである。これによって、幻想郷は外の世界と比較して妖怪の多い世界へと変貌していくことになる。
 それでは、なぜ「第一次結界設置」が、万里小路度房の地主化を導く結果となったのか。それを考えるヒントが、稗田阿夢の書いた文章に書かれている。万里小路度房は「多くの妖怪と親しんで」いる存在であり、「妖怪を人里に呼び寄せてい」たのである。「呼び寄せ」て何をしていたのか、という点については考えが必要だが、ここで近世以降の幻想郷が、飢饉の少ない地域であったことを思い起こしたい。幻想郷とは妖怪の協力で、凶作を防いでいたのである。
 すなわち、万里小路度房は、妖怪が増大する中で、妖怪と協力関係を持つことで安定的な農業生産を確保し、それを背景に大地主へ成長したのである。
 以上から、論点をまとめると以下のようになる。①第一次結界設置によって妖怪が増えると、②妖怪に協力を求めて安定生産を確立する百姓が登場し、③彼らが没落した他の百姓の田地を吸収する形で新興地主として頭角を表した。これを、字数にあうようにまとめれば良い。


Bについて

解答例:幻想郷では村単位で問題解決が行われたが、第一次結界設置により人間同士の連帯感が強まると、旧家と新興地主との対立を解消する形で、幻想郷全体の問題解決を行う、四村の乙名合議が成立した。(90字)

主題:乙名合議成立の過程
条件:「人里」という言葉の現れた理由

 本問で問われているのは乙名合議の成立についてである。設問文を見てみると、稗田家が村の乙名を集めて合議を開催するようになったことが示されているから、これを念頭に置こう。それ以前は、村を越えた合議というものはなく、基本的に村単位での行政が行われていた。それが、1538年からは乙名による合議によって、村単位を越えた幻想郷「人里」全体での行政がなされるようになったのである。これを見れば、幻想郷内に所在する四村が、連帯感を強めたことを想定できる。当然、その背景には「第一次結界設置」により妖怪が激増し、人間側もそれによって「人間」であることを強く認識することになったのが背景にある。
 従来稗田家の反発を受けていた万里小路家も、乙名に認められていることにも注目しておきたい。1510年頃の段階では、従来からの有力家と新興地主との間での対立があったが、乙名合議という形で幻想郷人里全体での連帯感が強められる中で、こうした出自をめぐる対立も解消されているのである。
 さて、乙名合議の性質についてわかったところで、条件にあるように、「人里」がどういう意味かを抑える必要がある。「人里」とは、この時代から現れてくる、幻想郷に所在する三つないし四つの村を総称する呼び方である。つまり、幻想郷内にある村が、同じ共同体であることを自ら認識するようになったことを、「人里」の言葉の出現は示しているのである。
 以上のことを踏まえて、論点をまとめると以下のようになる。①従来バラバラであった幻想郷の村々が、②第一次結界設置によって連帯するようになった。③その過程で旧家と新興地主との対立緩和も進んでゆき、④四村の乙名が話し合って村単位を越えた問題解決を行う乙名合議が成立した。



……以下入力中。
 あと2問分あるのですが、四月馬鹿に入力が間に合いませんでした。
 もし時間があるなら、明日また打ち込んでおきます。
 時間がなければまたの機会にでも。
 京都寺町にある某古本屋に遊びに出かけたところ、また入試問題を発見しました。
 こんどは、別の科目のようですが、面白そうだったので打ち込んで公開してみます。
 解答解説もついていますし、問題もなんか垢抜けてないので、入試じゃなくて模試なのかもしれませんね。
打ち込み:A.feudatorius
[email protected]
http://historie-sphe.6.ql.bz/
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コメント



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2.14無名のプレイヤー削除
おお、これでしっかり勉強すれば幻想郷史でいい点が取れそうです
3.33削除
そそわ作家の皆様なら満点ですね

私は作家未満なようです
4.無評価白澤塾 広報削除
模擬試験問題の流出に関する一部報道について

春宵一刻千金の候、皆様いよいよご盛栄のこととお慶び申し上げます。
本日、一部で報道がございました弊塾模擬試験、
もしくは幻想郷に所在する大学の入試問題が外界へ流出したという問題について、
現在、その真偽、および問題の内容について、確認中でございます。
結界管理者他、関係機関と連携のうえ調査にあたっております故、
詳細については現時点ではご説明いたしかねること、ご了承ください。
塾生、および関係者の方々には、ご迷惑をお掛けしてしまい、お詫び申し上げます。

なお、一部報道機関にて「流出問題は第130季実施、第1回妖怪山大学模試 日本史である」
という報道がございましたが、
これつきましては、弊塾で確認の結果、問題が異なるということが確認されました。

第131季卯月の1 白澤塾 広報