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アリスの誕生日

2013/04/01 23:11:49
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きょうはわたしの誕生日です。
幻想郷のほかのみんなはいつもばたばた忙しいので、わたしはたいがいひとりで過ごすのですが、今年はちがいます。
魔理沙がきてくれるのです。
魔理沙はいつもみんなの人気者で、わたしはとても誘いたがったのですが、なにせ人気者だから、きっとだめだろうな、と思っていました。
ですので、ああ、いいよ、って魔理沙があっさり答えたとき、わたしは、そうだよね、またね、と言ってしまったくらいでした。
わたしの家にやってきてくれた魔理沙は、いつものエプロンドレスじゃなくて、もうちょっとひらひらしたかんじの、とてもきれいなドレスを着ていました。
へっへー。プレゼントも持ってきたぜー。
魔理沙の手には、ケーキがありました。
ど、どうしたの。そんなもの。
どうしてって。誕生日だろ? プレゼントを用意するのは当然じゃないか。
わたしは、いままで誕生日に親以外からプレゼントをもらったことがなかったので、とてもうれしくなりました。
魔理沙とふたりですごす誕生日は、とてもたのしいものでした。
わたしたちは、ふたりで人形遊びをしたり、お互いの魔法を見せ合いっこしながら、すごしました。
魔理沙が作った、キノコを混ぜ合わせた不思議な液体を飲むと、わたしはなんだかふわふわしてきて、頭がぼーっとしました。魔理沙は、そんなわたしをみて、けらけらと笑っていました。魔理沙も真っ赤な顔をしているので、わたしはけらけら笑いました。
夜がふけてくると、わたしたちは魔理沙の用意してくれたケーキを食べることにしました。
ケーキを切ると、それはきれいな虹色をしていました。
だって、アリスといったら七色だろ? と、魔理沙は言ってくれました。
わたしはとてもうれしくなって、せっかくのケーキの味もよくわかりませんでした。
ケーキを食べ終わり、いっしょにおふろに入ったあと、わたしたちはパジャマに着替えました。
いつもひとりだとずいぶん大きいとかんじていたベッドも、今日はちょうどいいくらいです。
ベッドに魔理沙と並んで腰かけて、たわいもない冗談を話していました。とてもたのしい時間でした。
たのしすぎて、わたしは怖くなりました。わたしはいつも、こういう楽しいことがあると、痛いしっぺがえしを食らっていたのです。
そういった過去のトラウマからか、楽しいことが続くと、わざとそれをぶち壊そう、としてしまうのです。
言わなくてもいいことを、つい、ぽろっ、と言ってしまうのです。
……ほんとうに来てくれるなんて、思わなかった。
会話が途切れたときに、思わず、本音が口をついてしまいました。
後悔しましたが、もう出てしまったものは、取り消せません。
ふうん。どうして? と、魔理沙は聞いてきます。
……だって、わたしがみんなを呼んでも、いつも来てくれないじゃない。
それはね。みんな遠慮しているのさ。と、魔理沙は言いました。
アリスはきれいで、人気者だからね。きっと誰かといっしょにいるんだろうな。
そう思って、みんなお互いに牽制しちゃってるんだよ。
ほら、クラスの人気者ってさ、いつもはいろんな仲良しグループに混ざったりしちゃうのに、いざ、卒業旅行とかの夜になると、みんながこっそりと外に出たり部屋でトランプをしているのに誰も声をかけてくれなくて、なんとなくひとりでずっと温泉に浸かっちゃったりするじゃないか。
アリスは、そういう雰囲気があるんだよな。
だから、結局ひとりぼっちになっちゃうんだよ。
そうなのかな。
そうさ。
魔理沙は、へへん、と胸を張る真似をしました。
そーいうこと知ってたからさ、だから私、今日はぜったい空けておこう、って思ってたんだ。
え? と、わたしは思わず聞いてしまいました。
魔理沙は、わたしから声をかけられるのを待っていた、っていうの?
へへん。そうさ。と、魔理沙はこともなげに言います。
うれしくて、おもわず胸がつまりました。
うつむいたわたしをみて、魔理沙が、おいおいなんだよ、と笑っています。
……わたしは、ほんとうはみんなにさけられてるかもしれない、ってずっと思っていたことも、魔理沙に打ち明けました。
ほら、わたしって、ひとりで森のなかに住んでいて、話すのは人形だけで、藁人形とか打つのが趣味で、妙な丸薬でトリップしたりするじゃない。
だからみんな、そんなわたしにドン引きしてて、怖がってると思っていたの。
いままでそういうこと、よくあったから。
だから、魔理沙に言われて、わたし、とても、うれしかったの。
そんなことは、ぜんぶうそだよ、と魔理沙は言いました。
そうさ。うそなんだ。
いやな思いをした過去なんて、そういうことにしちゃえばいいのさ。
うそ。うそにしちゃって、いいの? ほんとうに、いいの?
そうさ。少なくとも、わたしにとってのほんとうは、今、目の前にいるアリスだけだよ。
魔理沙は、そこできょとん、とわたしをみると、苦笑しました。
おいおい。どうして泣いてるんだよ。そんな私、泣かせるようなことを言ったか?
みっともないな、と思いながら、涙はとまりませんでした。
こんなにうれしいことは、いままで味わったことがなかった。
まるで夢みたい。と、わたしは声に出してしまいました。
魔理沙は、ほんとうにアリスはおおげさだなあ、と笑います。
さあ。そろそろ寝ようぜ。
うん、と、わたしは答えて、魔理沙と一緒にベッドにもぐりこみました。

明日も。明後日も。明々後日も。
こんなふうに、いつもは大きなベッドが小さく思えて。
いつもはひんやり冷たい布団があったかく思えて。
そんな日が、ずっとずっと、続くのでしょうか。
わたしは、そんなことを思いながら、しあわせな気分になって、電灯を消しました。
私はアリスが大好きです。
藍田 真琴
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コメント



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1.274636指導員削除
ああこれウソ落ちだな。
そう思っていた時期が自分にもありました
3.274636指導員削除
夢オチだと思った鬼畜な自分を反省
5.274636指導員削除
嫌な予感がしたけどよかった…本当によかった…!