Coolier - SS得点診断テスト

レミフラ

2013/04/01 21:58:32
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 翼など珍しくもない幻想郷において、ひときわいびつな羽根を揺らす。
 この少女、名をフランドール・スカーレットという。

[2時限目 超非コンティニュー]

 
 体育館裏である。
 サニー、ルナ、スター・錦野の三人がひとりの自機を囲んでいた。
「魂魄ちゃん……だっけ?」
 さて囲まれていた自機というのは誰であろう、我らが魂魄 妖夢であった。ちなみに補足しておくと、本作の登場人物はほとんどが学生服姿である。妖夢も同様に、学生服だ。個人的にはセーラー服よりもこちらの方が似合うと踏んでいるし、これはきっと正しい。
「妖精なんかこわくない……だっけ? ハハ……じゃ、これは? どーすんのよ、ホラ」
 三妖精は各々の獲物を手に妖夢に迫る。対し妖夢は、
「みょんっ」
 と良く解らない呼気と共に脇差が空を切った。サニーらの髪を結っていたリボンだけ綺麗さっぱり切り裂いた刃は、妖夢の小さな手中で自在に切断面を変える。ぴたりとサニーの喉元に、返すスペルカードが当てられた。
「違うみょん……あなたたちとは住む世界が違うみょん」
 ひとしきり脅かしたのち刃とスペルカードが仕舞われる。
「私からは干渉しないみょん。それでも弾幕りやけりゃ、どうぞ。いつでもだみょん」
 そういって、そそくさと教室へ向かう妖夢。三妖精は立ち尽くすほかない。  
 そんな妖夢の登校途上。不意に彼女の視線が熱を帯びる。
 魂魄 妖夢。彼女は今学校生活の中で一人の生徒に狙いを定めていた。
「みょん……」
 向ける熱視線の先には、そう。フランドール・スカーレットがいた。

 翻って再び三月精である。授業をフケた彼女らは近所の公園で200ml入りの牛乳瓶を傾けながらぶつくさと反省会を繰り広げる。
「気にすることないわよ」
 ルナが言った。
「だって卑怯よ、あんなの」
「それなのよね……卑怯が平気ってのは、強いのよ」
「ヤバいよー。あいつは……ガチで……」

 白玉楼の厨房に立ち、手際よく食事の用意をしながら、妖夢はつらつらと考えていた。
「みょん……フランドール・スカーレット」
 右手で鍋の火加減を調整しながら左手では大きめに切ったジャガイモを水にさらしている。
「やっぱり、あなたは間違ってるみょん。いまが[B]の出てくる時代だったらば……あるいはあなたは正しいみょん」
 次いで妖夢は灰色のキャニスタを着けたガスマスクを装面しタマネギの皮を剥いた。おろし金で直接フライパンにすりおろしたタマネギを入れてゆく。
「だけど、いまはオプションの時代なのだみょん、フランドール・スカーレット」
 タマネギを炒めつつ、合間合間にニンジンを刻んだ。じゃがいもは大きめに切ったがこちらはみじん切りだ。タマネギは焦げ付かないよう注意しながら、やや色がつくまで火を通す。
「あなたのことは十六夜ネットで調べさせてもらったみょん。とんでもない吸血鬼だったみょん」
 よく『飴色になるまで炒めると美味い』などと言われるが、あれは正直手間が勝ちすぎている。妖夢のモットーは安く早く美味く、そしてなによりも『多く』だ。
「魔法少女? 技巧派? 非コンティニューを旨とする、パターン化が必要な難解スペルばかりだみょん」
 ぶつぶつと呟きながらも手は止まらない。圧力鍋にいためたタマネギ、ニンジン、じゃがいもとカップ1杯分の水、ローリエを入れて火にかける。その間にフライパンを洗い、再びコンロに乗せ、今度は刻んだ鷹の爪と一緒にひき肉を炒めはじめた。鳥と豚の合いびき肉は安いが美味い。
「……発狂がヤバいらしいみょん。安置がないと避けられない……? スゴいみょん……」
 十分に油が出たら火を止め、クミンパウダー、コリアンダー、ターメリック、塩、そしてヨーグルトをドロドロと投入した。これが白玉楼流なのである。もうしばらく火を通してペースト状になったところで、圧力鍋の中身と一緒に寸胴鍋に移す。
「エクストラボスにはそんな弾幕も許されるみょん。でもねフランちゃん。そんなスペル、必要なのかみょん」
 ひたる程度まで水を加えて煮立たせる。とろみは少ないが、グザイと出会ったスパイスがたまらない香りを放ち始めた。じゃがいもが煮崩れないよう注意しながら鍋の底までよくお玉でかき混ぜる。
「私はそうは思わないみょん。相手を倒すために必要な弾幕。パスウェイションニードル、イリュージョンレーザー、マイティウィンド……あとは……そう」
 ひと煮立ちさせたら味の調整。塩味はどうしても足りないので、さらなる香りづけと併せてブルドックソースを加える。量は大さじ3杯程度だろうか。塩味が満足できたらガラムマサラを全体に振りかけるように入れてやる。すると一気にスパイシーさが増した。
「あとひとつ、あえて挙げるとするならあとひとつ……」
 炊飯器と食器類をトレイに乗せてちゃぶ台へ運ぶ。そのあと完成した鍋をミトンで掴んで持って行くと、皿にご飯を持った幽々子が待ち切れない様子でスプーンを握っていた。
「妖夢、今日の夕飯はなにかしら!」
「結跏趺斬」
「へ?」
「あいや失礼……なんだと思います、幽々子さま?」
 言うまでもないことだが、既に白玉楼はカレーの匂いでいっぱいだ。
「私はね、カレーだと思うな!」
「正解ですみょん」
 幽々子の大皿にカレーをよそう。
 ……白玉楼で、朝カレーが食べられる習慣はない。
 ちょっとした炊き出しレベルの量があったカレーは、翌日妖夢が弁当にする分を除いてすっかり幽々子と妖夢の腹に収まっていた。

 翌日。
 妖夢が仕掛けた。
「フランちゃん。ちょっといいかみょん」
「…………」
 教室の中で妖夢に相対するフランドールはしかし、特になにかを感じ取った風でもない。いつも通りのうつろな目をしている。
「みんな。まだ授業までは時間があるみょん。ちょっと席を外してほしいみょん」
 言うが周囲に動きはない。
「これは私とフランちゃん少女同士。フランちゃん風に言えば、コンティニューできない戦いなのだみょん」
 が、刀を抜くや反応は即座に現れた。がたがたと机を押す音がして、一応にみな逃げ出してしまう。
「てっきり刃を抜く前に襲い掛かってくるかと思ったみょん。さすがに余裕たっぷりだみょん」
 その妖夢の言葉通り、フランドールは微動だにしなかった。まったく気にした風もない。妖夢の存在などどこ吹く風とでも言いたげだ。だが、妖夢とて5ボスであり自機である、舐めてかかってよい相手ではないことを、フランドールはよく解っていた。
「この……楼観剣は」
 脇差を仕舞い、長剣を抜く妖夢。フランドールは学習机に座ったままだ。
「妖怪十人分の殺傷力を持つみょん。解るみょん? こいつがどういうことか――」
 述べる妖夢を相手にせず、フランが立った。
「――――――」
 くるか、と構える妖夢に対し、フランは学習机の中からがたがたごそごそと、いくつもの……アイテム類、そしてオプション類、そして1upアイテムがまろびでてくる。
「……非コンティニューじゃ、なかったのかみょん!?」
「一応全部本物だ」
「解ってるみょん! こちとら自機だみょん」
「ボムアイテムエネミーマーカー(紅魔郷には本来ない)初期残機最大設定残機アイテム桜花結界決死結界霊界トランスFPSチートまで……」
「不安だろ、紅魔郷ルールじゃ。あいにく手持ちはこれだけだが」
 フランが妖夢に、一束のパワーアイテムを差し出した。
「学生との喧嘩のため、用意しておいた」
「こんなものを……? 学生のケンカで、みょん?」
「使うのは俺じゃねェ」
「!」
 妖夢が向き直るやそこにいは、もはやフランドールの姿はなくなっていた。
 そして誰もいなくなっていた。
「好きなモノを、好きなだけ使え」
「~~~~~」
「終わったら言え」
「~~~~~~~ッ!」
 もはや妖夢に言葉はなかった。味気ないと言ったらない。
「あ……いや、すまなかったみょん。ごめんなさいだみょん」
 その声を聴いて再び霧から実態をとったフランドールがボムを拾い上げる。
「耐久スペル戦がやりたかったわけじゃないみょん……」
「だったら片付けろ」
 既に、始業時間間近となっている。もうすぐ、上白沢教諭もやってくるだろう。
「見つかったらどーすんだ!」
「…………」
 始業のチャイムが鳴る。もはや時間の猶予はない。
「いそげ」
「解ったみょん……」

 その日の昼食は二人で一緒に食べた。
 カレー弁当は、フランドールにも意外なほどに、好評価だった。

続かない、と思う。
そういえば、3/20に石鹸屋のニューシングルが発売されましたね。
例大祭の原稿で忙しくて、まだ開封していなかったのですが。
またライブに行きたいなあ。
保冷材
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