まあこんなクソみたいな頭悪い作品をこの都会派魔法使いがパクるわけない。信じてほしい。アレは『何が悪いの!?』じゃなくて、頭が悪い。はっきりしている。
下ネタとキャラ壊れの塊なんて、頭悪い以外の何ものでもないでしょ? アレを本家某東方SS投稿サイトに投げ込んだなんて作者は精神を病んでいるに違いない。
さて今日はエイプリルフールだから、世の中には嘘が蔓延っている。
見るものも嘘。聞くものも嘘。触れるものも嘘。食べるものも嘘。嗅ぐものも嘘。四月一日の今日に真実なんて何もない。
嘘ばかりだ。決定的にシャレにならないものでなければ、どんな嘘をついても許される悪魔のような日である。今日を皮切りにちょっと友情がギクシャクしてしまった若人や、愛情がギクシャクしてしまった若人もたくさん居るだろう。それはそれで私的には好ましいからハッピーだ。
何の問題もない。
エイプリルフール、という面では何も問題ない。私が話しかける相手は今日も言葉を返してこないし、あるいはメディスンだが、彼女も彼女で人間の文化にそれほど興味を示さない。だから無駄に嘘をついたりしない。
去年は私が一方的に嘘をつきまくって、友情が少しギクシャクしてしまった覚えがあるから、私はエイプリルフールだからといって嘘をつかなきゃならないような相手は居ない。
ところで話は変わるけれども、幻想郷の経済について、あなたはどこまで知っているだろうか?
外の世界には幻想郷考察組合なるものが存在し、幻想郷について色々と考えているらしい。なんと、幻想郷の創造主よりも色々考えているらしい。
まあ創造主より色々考えてるといえば地球に居る人類も例外ではなく、創造主が「光あれ、大地あれ、実りあれ」と適当に創り出したこの世界で、『私は何故生まれたのか。何のために生きているのか。生命の価値とは何なのか』と、創造主でさえ考えていなかったようなことを考えているのだ。
ちなみに、この『人は何故生きているのか』という部分に焦点を当てた短編小説を、例大祭の合同誌に寄稿した。
タイトルは決まっているものの、もしものことがあって変わってしまうかもしれない。だからあんまり断言は出来ないけれど、変わらないタイトルもそこにはある。というわけで例大祭当日は『東方哲学小説合同』をよろしく!
私は出ない。蓬莱山輝夜が、核戦争とかあってまるごと文明が滅んだ世界を旅するSF小説だ。ノリ的にはこのSSみたいな一人称だから気軽に読めるかもしれない。哲学合同に寄稿しましたとか言っている割には中身はあんまり哲学してなくて、何か普通にエンターテイメントとして楽しめるものだと思っている。
おっと話が逸れてしまったが、そうそう、あなたは幻想郷の経済について、どれくらい知っているだろうか?
海のない幻想郷の塩はどこからやってくるのか、とか。人と妖怪が入り乱れる中、どのような文化がどれだけ発展しているのだろうとか、考えればキリはない。それに幻想郷はその名の通り、幻想の郷なのだ。
『世界』の数だけ、『世界』はある――何を言っているのか自分でも分からないが、つまりはそういうことなので、せめてこの、『私が住んでいる世界』の経済状況についてだけでも語りたいと思う。
幻想郷の経済は、その世界を創っている存在の経済状況に依存するのだ。
つまり、totoBIGで一等六億円を当てた奴が創っている幻想郷は経済的にとても恵まれているし、三十二歳営業職勤務のサラリーマンが創っている幻想郷は、中の上か、まあそれくらいの経済規模の世界である。
では、今私が住んでいる幻想郷の経済はどういう状況かと言えば?
――数百人の人間と妖怪が、五百円を取り合っているという状況である。
いや、取り合ってすらいない。五百円なんて正直取り合う価値もない。五百円分の資源しかない世界の中で、我々は生きているのだ。
ペットボトル入りの清潔な水に換算すると、大安売りでもせいぜい百五十リットルだ。米で言えば安い米が二キロ分くらい。
そんな経済状況の中で私は生きている。
私達は生きている。
地獄である。
人間は人間を食らうし、妖怪は妖怪を喰らうような世界である。
救いようがない。私は魔法使いだから、生活のために食事が必要な存在ではない。
だからこの幻想郷では捕食される側である。
狙われる側なのだ。
いや、生命維持のために食事が必要な存在は全てが狙う側であり、同時に狙われる側でもある。
私のような魔法使いは狙う側ではないというだけ。狙われる側なのは誰もが同じだ。
幸い私には、弱肉強食の中を生きていく力がある。そして五百円分の資源しかない幻想郷の中で生きていく能力も持っている。
だからこの幻想郷の行く末を、悲しく見守ることだって出来る。
もし、世界が五百円の価値だったら?
一瞬で滅ぶ。もしかしたらある世界で蓬莱山輝夜が旅をする世界は、文明の中に五百円分の資源しか存在しなかった世界だったのかもしれない。だから滅んだのかもしれない(面白いよ! 買ってね!)。
ふぅ。
パクりますと宣言したからにはせめて同じくらいじゃないといけないかな、って律儀に思っているんだけど、正直あと千文字分も喋ることがあるなんて思えない。
きっとこれから滅び行くであろう世界の中に、私、アリス=マーガトロイドは生きている。
孤独でもいい。
質素でもいい。
虚無でもいい。
淡泊でもいい。
不義でもいい。
我侭でもいい。
私は、私で在り続ける。知性が、意識が、思考が、私を創り続ける。そのためだけに生きている。在る。
魔法使いとは得てしてそういう生き物である。
だが、もしも世界が終わってしまったら、私は殆ど、無に近い存在になってしまうだろう。
存在し続ける――自信はある。それがアリス=マーガトロイドである自信。それは持っている。
でも、きっと、それは認められない。
何故ならその世界を観測する人が居ないからである。
観測されなければその命は無いも同然なのである。
あっ、リリカが寝てる。
その時、私は信じられないものを目にした。
いいや、信じられないことはない――ただ、信じたくなかった。信じたくなかったものを目にした。
考えられはした。その可能性は大いにあった。それでも、私はその可能性から目を背けていた。起こってほしくないから、というだけの理由で、目を背けていた。
でも、今から目を背けようとしても。いいや、無理だ。どうしても目に入ってきてしまう。
そこにはズタボロのメディスン・メランコリーの姿があった。
「メディスン……? メディスン! メディ! どうしたの、いや、襲われたのね、ああ、メディスン、しっかりして、メディスン!」
返事は、ない。生きているか? 元々人形に魂が宿った存在だ。生きている、というのも変な話だが。不安定な存在だからこそ、その存在は一度『ふわり』と空に浮いてしまえば、呆気無く消えて、なくなってしまうもの、なのかもしれない。
亡骸――いや、きっとメディスンは生きている。私はそう信じて、せめて私の温もりだけでも与えようと、メディスンを抱きかかえた。
人形だから? 久しぶりに抱きかかえることが出来たメディスンの身体は、酷く冷たかった。ああ、普段は抱きかかえようとしただけで、全力で逃げて、逃げる際に私の顔を蹴って、腹を殴って、恥骨を砕いていくようなメディスンが、私に、抵抗もせず抱かれている。
その事実は、メディスンの魂がこの世に存在しないことを、ただただ、残酷に、私に、突きつけている――ようで。
「メディスン……メディスン! 返事をしてよ、メディ! 答えて! 動いて、動いてよメディ! メディ!! メディ……」
どんなに強く、厳しく、激しく、叫んでも。
「いや……」
メディスンは、動かない。
動かないし、喋ることもない。その美しい顔は、眠っているまま。
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
私、は。嘆くことしか。
出来なかった――
何故?
どうしてこうなったの?
いいや、はっきりしている。
財。
この世はあまりにも、満ち足りていなかった。
生きていくための資源がなかった。
罪。
罪悪だ。
最悪だ。
悲劇であることが定められていた世界。こんな世界を創り出したこと。全ては創造主の遊戯でしかない。掌の上の悟空。盤上の駒。生命ハ哀シキノタメニ生マレ。
朽ちた。
「……ねえ」
聞いてくれる?
「もしも、この世界を救う方法があるのなら」
いいえ。この世界を救う方法は――『ある』わ。
「一つだけ、お願いしたいことがあるの」
それはあまりにも単純明快なこと。
「……助けて」
資源の流入。
「お願いします……助けて下さい」
外の世界から、この幻想郷に資源を送る方法が、たった一つだけある。
「これでメディスンが生き返るわけじゃないかもしれない。
だからメディスンの笑顔をもう一度見れるわけじゃないかもしれない。
でも、お願いします、一つだけ、お願いします」
お願いします――
「この世界に」
この作品に。
『点数を、入れて下さい』