Coolier - SS得点診断テスト

腹痛の私を看護する鈴仙、私は特別な存在なのだなあと以下略

2013/04/01 00:07:41
最終更新
サイズ
4.49KB
ページ数
1
閲覧数
650
評価数
2/5
POINT
628330
Rate
20945.17

分類タグ




 春先。まだ雪の残る幻想郷の博麗神社に、霊夢と魔理沙の姿があった。
 二人はだらりと炬燵に背を丸くしている。
 半分ほど寝ている魔理沙に、霊夢が話しかけた。

「いやあね、永遠亭ん所の兎が兎だったのよ」
「意味がわからん。日本語を話せ」
「ほら、耳があれで色々と大きい兎がいるじゃない。自称月の兎」
「いるな。うどんだかそばだかフォーだか」

 長いへにょり耳のジェスチャーをする霊夢の前で、魔理沙は落語よろしく空想の麺をすする。

「今日は朝から悪戯妖精共にからかわれて苛ついてたのよ。あの三匹をシバいたはいいんだけど、腹の虫が収まらなかったから手近な所で憂さ晴らししようと思ったのよ。異変っぽい感じが無きにしもあらずだったし」
「異変もう関係ないなそれ。……で、竹林に向かったと」
「そうよ、割と近いし筍くれるし」
「憂さ晴らしって食い気で抑えてるだけじゃあないか?」
「それぐらいもらわないと出向く甲斐がないじゃない」
「私が言うのもなんだが、強盗だなぁそりゃ」

 一方その頃、紅魔館と魔法の森で二人の少女はくしゃみをしていた。

「巫女よ。んでそういやあの兎に旦那いたじゃない、外来人の」
「いたな。いやあれが来た時は随分と賑やかだったぜ」
「妖怪じゃなく人間が起こす異変なんて、たまったもんじゃないわよ」
「まあ最近は元人間が起こすことが多いからな。天人だったり仙人だったり」

 壁がくり抜かれるような音がして、霊夢はその壁に向かって御札を投げつけてやる。外で何かが尻餅をつくような音と共に、人妻系の艶のある声で『痛いですわ』と聞こえた。

「ついでだからこの間の異変の反省とお詫びにそいつから賽銭の一つでも徴収してやろうかと思ったの。筍とは別に」
「驚いたろうな、賽銭箱の方からやってくるなんて」
「んであれがいるっていう部屋に乗り込んだら、病気だって言われたのよ。腹痛だって」
「……そういうのは事前に忠告が入るんじゃないか?」
「仕方ないじゃない、部屋を開けた時に後ろから医者が『それ、病気だからね。腹痛』って、遅いっての」
「あーたぶんわざとだな、うん。私も忠告は直前にするな。撃つと動くって」

 迷惑な話ねぇ、と霊夢は呆れ顔をする。

「で、それが寝てる横で上が白い看護服、スカート無しでその下はバニーガールの兎がいたのよ」
「また変な格好をしてるな。宇宙人もとい兎の感覚はわからん」
「私もわかんなくてさ、でも所詮妖怪だしーって思って。『ななななんで貴方がここに!?』とか言ってる横すり抜けて、枕元にあったそいつの小銭入れから徴収した次第ってわけ」
「空をとぶ異変解決の賽銭箱ってのは恐ろしいもんだな。小鈴の新しい妖怪絵巻に入りそうだぜ」

 魔理沙は人間の里で最近会っている、貸本屋の娘が嬉々として本を作る様を思い浮かべた。

「誰が妖怪よ、こっちはそいつらをむしろ退治する方よ」
「自覚がないって怖いもんだなぁ……」
「……あんた、霖之助さんに迷惑かけた覚えは?」
「ないな、いやまったく、これっぽっちも」
「自覚がないって怖いわねぇ……」

 五月蝿いな、と頬を少し染めた魔理沙は、咳払いをひとつ。

「ごほん。それでだ、賽銭は食えんが筍はあるんだろ?」

 勝手場の方に目をやると、霊夢は半目で魔理沙を睨んだ。

「……あげないわよ?」
「別にくれなくてもいいぜ。ただこの魔理沙様があれこれ作ってやって、味見をするだけだ」

 背伸びをひとつ、眠気が完全に醒めた様子で、魔理沙は立ち上がりスカートの捲れを直す。

「卓に自分の箸を用意する味見ねぇ……まあいいわ。なに作るの?」
「アク抜きをしながら考える」
「ま、期待してるわ」
「おう任せろ」

 口調とは裏腹に笑みを浮かべる霊夢に、魔理沙は胸を張って応じた。





「……あの、鈴仙さん? 僕は何も悪いことはしてないと思うんですがね……」
「ほぅ」

 永遠亭の一角に、いつもの制服姿の鈴仙と、床に伏す冴えない男がいた。
 男は時折、腹痛に顔を歪めながら鈴仙に語る。

「や、まあ確かにそれ着てくれって言ったのは僕だけど、これはただでさえ弱まってる肉体面をサポートするべく精神的滋養強壮にだ……」
「朝起きたら急に腹が痛いって、それから私が心配するのに浸け込んであれしろこれしろ言ったのはどこの馬鹿かしら。ねぇ、つくねさん?」

 怒りと冷たさの入り混じった瞳に、その男、つくねは見つめられ震えた。
 わざと目をそらして、明後日の方向に向けてつくねは愚痴る。

「感染したら困るから師匠の薬飲んだら引きこもるって言ったのに、無言で無視して枕元で看病してくれてるのは誰なのかと……」
「妖怪に人間の病気は移りませんから。それに、朝から厠三昧で脱水気味でふらふらしてるのを放っておけるわけないじゃない?」
「その怒り顔さえなければイイハナシダナーで終わるのに……」
「怒るに決まってるじゃない、ねえ? ああーあの巫女、絶対に変なセンスした兎とか言ってるし!」

 頭を抱えて唸る鈴仙に、つくねは大丈夫と前置きして努めてさわやかな笑顔を浮かべ、

「僕は非常にそそられるというか精神的な満足を得てぶろばっ!?」

 腹に打撃が連続して来た。

「いや待って待って、お腹マズイ!? 腹部柔らかいから出る! 色々出る!」
「出ちゃえばいいんですよええ、色々出れば楽になるってお師匠様も言ってましたから」

 容赦無い連打につくねは悶えながらも、普段は浮かべない腹黒い鈴仙の笑顔に、レアリティを感じていた。
 こういう機会でもないと色々はっちゃけられないものですねー
 だけど鈴仙に関しては常に本気マッハですので、この本気度にポイントの方がついてこれるかが心配ですね……

 はい、というわけでエイプリルフールじゃなく本当にで腹痛です。

 皆さんも季節の移り目には注意しましょうね!
つくね
[email protected]
http://blog.livedoor.jp/tukune_reisen/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.307200簡易評価
3.46494ナルスフ削除
意外とあまあまでもなかった上にほとんどレイマリが世間話してただけだったあああああ!
俺は自分の部屋に戻るぞおおおお!
5.274636指導員削除
もっとはっちゃけてよかったのに…
でもささやかさが逆にリアルで笑わせてもらいました
おだいじに